サツマモンナガレアブの日本国内記録と奈良県の初記録を報告!(『月刊むし』掲載論文)

動物
Suragina satsumana

本記事では以下の雑誌にて公表した「奈良県におけるサツマモンナガレアブの記録」の報文の下書きを掲載します。

引用方法:池田健一. 2021. 奈良県におけるサツマモンナガレアブの記録. 月刊むし 602: 46-47. ISSN: 0388-418X

サツマモンナガレアブの奈良県初記録を想定して執筆したものです。

微細な表現などに変更が加わっている可能性はありますが、引用文献などは同様です。より正確なものをお求めな場合は雑誌よりご参照ください。

スポンサーリンク

サツマモンナガレアブの国内・関西分布状況

サツマモンナガレアブ Suragina satsumana (Matsumura, 1916) は国内では北海道,本州,四国,九州,対馬,種子島,屋久島に分布するナガレアブ科の一種である(永冨,2018)。成虫出現期は6月中旬~8月中旬で,河川の支流や灌慨用水路に生息し,成虫(雌)がウシから吸血したとの報告があるとされる。

近畿地方でも兵庫県(永冨,2018),大阪府(大阪市立自然史博物館,2008最終更新),京都府(境ら,2012),三重県(篠木・矢崎,2017)などで分布が確認されているものの,奈良県では奈良県野生生物目録(奈良県レッドデータブック改訂委員会,2017)に記載がない。

筆者の分布記録

筆者は2013年7月2日13時半頃に奈良県奈良市中町近畿大学奈良キャンパスにて本種♀を撮影したのでここに報告する。

1♀(写真), 奈良県奈良市中町近畿大学奈良キャンパス, 2. VII. 2013, 筆者撮影.

サツマモンナガレアブの雌成虫

撮影地は当キャンパスのクラブハウスで何らかの理由で内部に入り込んだと思われる。撮影地点から最も近い河川である富雄川まで約1.5km離れており,本種の行動範囲は不明だが,かなり距離があると思われる。付近では小規模な棚田があり(井藤ら,2013),本種は灌慨用水路でも発生が確認されているが(永冨,2018),この棚田の水源は湧水であり(井藤ら,2013),どの地点で発生したかは不明である。成虫の餌資源に関しては当キャンパスでは撮影時時点でウシを含む家畜は飼育していなかったため,野生哺乳類によると思われる。当キャンパス内ではホンドタヌキ,ノネコ,アライグマ,イノシシなど少なくとも8種の中大型哺乳類が確認されており(藤井・澤畠,2016;澤畠・合田,2019),いずれかの種を寄主としている可能性がある。

引用文献

藤井太基・澤畠拓夫,2016.近畿大学奈良キャンパスに出現したニホンザル.近畿大学農学部紀要 49: 49-51. https://kindai.repo.nii.ac.jp/records/17912

井藤大樹・今田彩乃・石田孝信・水出千尋・細谷和海,2013.近畿大学棚田ビオトープにおける水生動物相 棚田における生息場所間の比較.近畿大学農学部紀要 46: 81-89. https://kindai.repo.nii.ac.jp/records/5341

大阪市立自然史博物館,2008最終更新.大阪府産のアブ類.http://www2.mus-nh.city.osaka.jp/CGI/Guide/Guide.exe?A_G81=*&THTM=Ent%5CAbu-list

境優・夏原由博・加藤真,2012.芦生研究林上谷流域における渓流の底生動物分布パターン.森林研究 78: 19-27. http://hdl.handle.net/2433/193448

篠木善重・矢崎充彦,2017.サツマモンナガレアブの県初記録.ひらくら 61(4): 99.

澤畠拓夫・合田愛,2019.里山の散策道脇の林床植生の有無,散策道を利用する野生動物とマダニ生息個体数との関連.ランドスケープ研究 82(5): 719-724. https://doi.org/10.5632/jila.82.719

永冨昭,2018.ナガレアブ科.川合禎次・谷田一三共(編),日本産水生昆虫 科・属・種への検索 第2版: 1455-1461.東海大学出版部,平塚.

奈良県レッドデータブック改訂委員会,2017.奈良県野生生物目録.くらし創造部景観・環境局景観・自然環境課,奈良.

タイトルとURLをコピーしました