ヒメヒオウギズイセン・ヒオウギズイセン・ヒオウギの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Crocosmia x crocosmiiflora

ヒオウギズイセン(ヒオウギスイセン)とヒメヒオウギズイセン(ヒメヒオウギスイセン、モントブレチア)はいずれもアヤメ科ヒオウギズイセン属でアフリカ原産の多年草です。普通観賞用に栽培され、地下に球茎があり、赤い花をつける点も大きな共通点で、混同している人は多いかもしれません。しかし、この2種の間には花の開き具合や色合いに違いがあります。現在日本で主流を占めているのはほとんどヒメヒオウギズイセンです。ヒオウギはヒメヒオウギズイセンの名前の由来になった植物ですが、こちらは球根がなく、花も模様があることから花があれば判別は容易です。本記事ではヒメヒオウギズイセン・ヒオウギズイセン・ヒオウギの分類について解説していきます。

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ヒオウギズイセン・ヒメヒオウギズイセンとは?

ヒオウギズイセン(檜扇水仙) Crocosmia aurea は別名ヒオウギスイセン。アフリカ東部~南部に分布し、日陰の森や川の土手に生える多年草です(RBG Kew, 2023)。日本では観賞用に栽培されます。花期は6~8月。

ヒメヒオウギズイセン(姫檜扇水仙) Crocosmia x crocosmiiflora は別名ヒメヒオウギスイセン・モントブレチア。南アフリカ共和国原産で、ヒオウギズイセンとヒメトウショウブ C. pottsii の栽培雑種として1880年にヨーロッパ(フランス)で育成された園芸植物です。日本では明治中期(1890年頃)に渡来し、観賞用に栽培されます。栽培されていた個体が日本全土に帰化しています。花期は6〜8月。

いずれもアヤメ科ヒオウギズイセン属でアフリカ原産の多年草です。普通観賞用に栽培され、地下に球茎があり、赤い花をつける点も大きな共通点です。

インターネットではヒメヒオウギズイセンのことばかり紹介され、ヒオウギズイセンという植物、あるいはヒメヒオウギズイセンとの違いがわからないという人もいるかもしれません。

ヒオウギズイセンとヒメヒオウギズイセンの違いは?

しかし、ヒオウギズイセンとヒメヒオウギズイセンには大きな違いがあります。

ヒメヒオウギズイセンは上述のようにヒオウギズイセンとヒメトウショウブの雑種です。そのため、ヒオウギズイセンとヒメトウショウブの中間的な性質があります。

具体的には花の開き方でヒオウギズイセンでは普通の花のように花がしっかり開き切るのに対して、ヒメトウショウブでは花が閉じて筒状になります。

そのため、ヒメヒオウギズイセンではその中間でやや花が開くものの、完全に内部は見えないという状態になっています。

また、ヒオウギズイセンでは花被片の内部が一様に黄色いのに対して、ヒメヒオウギズイセンでは花被片の内部が橙赤色で基部はしばしば黄色をおびているという違いがあります。

花被片というのは花びら(花弁)のことであると考えて下さい。萼と区別がつかないのでこう呼ばれます。

加えて名前の通り、ヒオウギズイセンでは草丈最大120cmまで成長しますが、ヒメヒオウギズイセンでは最大90cmで留まります。

以上で区別はつくでしょう。ただ最近は日本で見られるのは殆どヒメヒオウギズイセンになってきています。

ヒオウギズイセンの葉|By Hectonichus – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16866505
ヒオウギズイセンの花|By Hectonichus – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16866403
ヒメヒオウギズイセンの葉
ヒメヒオウギズイセンの花
ヒメヒオウギズイセンの花序
ヒメトウショウブの花|By peganum from Small Dole, England – Crocosmia pottsii tall form, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=47473318

ヒメヒオウギズイセンとヒオウギの違いは?

ヒメヒオウギズイセンの名前の由来はヒオウギにありますが、これら2種にはどのような違いがあるのでしょうか?

ヒオウギ(檜扇) Iris domestica は日本の本州(関東地方以西)、四国、九州、琉球;朝鮮半島、中国、東南アジア、インドに分布し、山地の草原に生育する多年草で、栽培もされます(神奈川県植物誌調査会,2018)。

まずこれら2種はどちらもアヤメ科であるものの、ヒメヒオウギズイセンはヒオウギズイセン属に含まれるのに対して、ヒオウギはアヤメ属に含まれます。そのため、大きな違いがあることが予想されるでしょう。

具体的には、ヒオウギズイセン属では球茎(地下茎が澱粉などの養分を蓄え球形に肥大したもの)から茎を出し、穂状花序を出すのに対して、アヤメ属では根茎から茎をだし、総状花序を出すという違いがあります。

そのため、ヒメヒオウギズイセンは球根の一種である球茎があり、球茎を植えることで育てることができますが、ヒオウギはそうなっていません。「スイセン(水仙)」という名前はここから来ています。ただしスイセンの球根は鱗茎(地下茎に多肉の鱗片葉が多数ついたもの)です。

また、ヒオウギでは花が開ききり、花被片に模様があることも大きな特徴でしょう。

ヒオウギの葉
ヒオウギの花

引用文献

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

RBG Kew. 2023. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

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