ミソハギとエゾミソハギの違いは?似た種類の見分け方を解説!

植物
Lythrum anceps

ミソハギとエゾミソハギはいずれもミソハギ科ミソハギ属に含まれ、水辺や湿地で見かけることが多い多年草です。ビオトープで植えられていることも多く花の形はほぼ同じで2種の区別がつかない人がいるかもしれません。しかし、全草の毛状突起に加え、葉の形を確認することで確実に区別できるでしょう。受粉は自家受粉可能ですが虫媒も行いハナバチが貢献していることが多いようです。本記事ではミソハギ属の分類・形態・生態について解説していきます。

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ミソハギ・エゾミソハギとは?

ミソハギ(禊萩) Lythrum anceps は別名ボンバナ、ショウリョウバナ(精霊花)。日本の北海道・本州・四国・九州;朝鮮に分布し、水辺に生える多年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。

エゾミソハギ(蝦夷禊萩) Lythrum salicaria は日本の北海道・本州・四国・九州;ユーラシア・北アフリカ・オーストラリアに分布し、水湿地に生える多年草です。アメリカ大陸には本来分布しませんが外来種として侵入しており、北アメリカでは1814年が初記録でおそらく船舶のバラストに混入して持ちこまれたと考えられています(Flora of North America Editorial Committee, 2021)。「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されています。

いずれもミソハギ科ミソハギ属に含まれ、水辺や湿地で見かけることが多い多年草です。花は4~6枚の花弁を持ち、濃いピンク色をしており、在来種としては非常に派手なことからビオトープなどでも植栽されている様子を見かけます。

ミソハギの和名の由来はハギに似て花のついた一枝で盆の供物にみそぎとして水をかけて浄める風習がありそこから禊萩になったという説と、溝に生えることから溝萩になったという説があります。

他にも葉は前縁で対生または輪生し、茎には4つのりょうかどのこと)がある点などが共通しています。

しかし、2種の区別がついていないという人もいるかもしれません。

ミソハギとエゾミソハギの違いは?

ミソハギとエゾミソハギの区別は比較的簡単です。

ミソハギでは全草無毛で葉や茎はざらつかず、葉は無柄でほとんど茎を抱かないのに対して、エゾミソハギでは全草に毛状突起が密生しざらつき、葉は長披針形・円脚で、無柄で半ば茎を抱くという違いがあります。

写真を見ると明らかにエゾミソハギでは毛のようなものがあるという印象を受けると思います。葉を見るとエゾミソハギでは葉柄はありません。

ミソハギの葉:葉柄があり、茎を抱かない。
ミソハギの花:茎に毛はない。
エゾミソハギの葉:葉柄が無く、茎を抱く。毛状突起もわずかにある。|By Wouter Hagens – Own work, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2547110
エゾミソハギの花:茎・萼ともに毛状突起が目立つ。|By Ivar Leidus – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=117679887

他に似た種類はいる?

ミソハギ属は日本には3種しか分布しておらず似た種類は少ないです。

コメバミソハギ Lythrum hyssopifolia は熱帯アメリカ原産で、路傍や水湿地に生えますが、葉は広線形で長さ0.5~2cm、花は花序を作らず葉腋に単生し、花色も薄いので簡単に区別がつきます。個体数は少ないです。

受粉方法は?

どちらも派手な花からわかるように虫媒花です。

ミソハギではハナナガモモブトハナアブ・イチモンジセセリ・ホソメンハナバチ・ノウメンハナバチなどが訪花した記録があります(Kato & Miura, 1996)。

エゾミソハギでは自家和合性があり、自家受粉するものの、昆虫による他家受粉を行うことで種子の生産量が増えることが分かっています(Geerts & Adedoja, 2021)。

アメリカ合衆国ではミツバチ類が訪花した昆虫の90%を占め、南アフリカではケープミツバチ Apis mellifera capensis とカバマダラ Danaus chrysippus (蝶の一種)が顕著という結果が出ています(Geerts & Adedoja, 2021)。

しかし、原産地での研究ではないので日本ではどのような昆虫によって受粉しているのかの研究は不足しています。

引用文献

Flora of North America Editorial Committee. 2021. Flora of North America: Volume 10, Magnoliophyta: Proteaceae to Elaeagnaceae. Oxford University Press, Oxford. 488pp. ISBN: 9780197576076

Geerts, S., & Adedoja, O. 2021. Pollination and reproduction enhance the invasive potential of an early invader: the case of Lythrum salicaria (purple loosetrife) in South Africa. Biological Invasions 23(9): 2961-2971. https://doi.org/10.1007/s10530-021-02549-w

Grabas, G., & Laverty, T. 1999. The effect of purple loosestrife (Lythrum salicaria L.; Lythraceae) on the pollination and reproductive success of sympatric co-flowering wetland plants. Ecoscience 6(2): 230-242. https://doi.org/10.1080/11956860.1999.11682524

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

Kato, M., & Miura, R. 1996. Flowering phenology and anthophilous insect community at a threatened natural lowland marsh at Nakaikemi in Tsuruga, Japan. Contributions from the Biological Laboratory, Kyoto University, 29(1): 1-48. ISSN: 0452-9987, http://hdl.handle.net/2433/156114

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