ホタルカズラとミヤマホタルカズラの違いは?名前の由来は2説ある?花は日陰になっても受粉できる秘密を持っていた?(花の生態がわかる写真図鑑 66)

ムラサキ科
Aegonychon zollingeri

ホタルカズラとミヤマホタルカズラは似た名前であるので混同されることがあるかもしれませんが、そもそもホタルカズラは在来種なのに対して、ミヤマホタルカズラは園芸種という大きな違いがあります。葉の形、花の形も見た目でわかるほど違います。ホタルカズラの名前の由来には2説あり、花の距の根本部分は赤いぼかしに由来するというものと、花の色がやや蛍光色に見え、あちこちにぽつぽつと咲くからというものがあります。そんなホタルカズラとミヤマホタルカズラですがどちらも花は口の長い昆虫が訪れることに適応していることが最近の研究で分かってきています。特にホタルカズラは驚くべきことに日向の時はハナバチやツリアブに依存していますが、日陰の時はセダカコガシラアブという全く別の昆虫に受粉を頼っていることが分かってきました。果実は堅果で近縁種の研究から鳥散布だと思われます。本記事ではホタルカズラとミヤマホタルカズラの分類・歴史・送粉生態について解説していきます。

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ホタルカズラは在来種で、ミヤマホタルカズラは園芸種

ホタルカズラ(蛍葛) Lithospermum zollingeri は朝鮮、中国、台湾、日本の北海道・本州・四国・九州に分布し、日当たりの良い草地や、乾いた雑木林に生息する多年草です(門田ら, 2013;神奈川県植物誌調査会,2018)。全体が荒い毛で覆われていることと、名の通り匍匐枝を出しているのが大きな特徴です。私の経験でも山地の歩道際などの林縁から這い出て咲いている様子をよく見た覚えがあります。

一方、ミヤマホタルカズラ(深山蛍葛) Glandora diffusa はヨーロッパ(フランス、ポルトガル、スペイン)、西アジア(モロッコ)原産で海岸の砂浜や松林、藪の傍などに生える多年草です。日本では観賞用に栽培されます。

ホタルカズラとミヤマホタルカズラの違いとしてはそもそもホタルカズラは在来種なのに対して、ミヤマホタルカズラは園芸種です。葉の形もホタルカズラでは狭長楕円形となっているのに対してミヤマホタルカズラは葉は細く小さく堅くなっています。また、花に関してはホタルカズラでは白い5本の稜がありますが、ミヤマホタルカズラではありません。

名前が似ており、同じくムラサキ科に属しますが、現在の分類では属は異なっており、しっかり観察すれば見間違うことはない2種となっています。


[ 山野草苗 ] ホタルカズラ
ホタルカズラの花
ホタルカズラの花、カニグモの幼体がみられる
ミヤマホタルカズラの葉
ミヤマホタルカズラの葉
ミヤマホタルカズラの花
ミヤマホタルカズラの花

名前の由来は花からだが、2つの説ある?

ホタルカズラは比較的目立つ花なのですが、歴史的には同属のムラサキのように人々の間で目立った扱いは受けてこなかったようです。しかし、とても山の中では珍しい小型の青色の花を咲かせるので可愛い印象を受けます。

ホタルカズラの花は4~6月の春に咲き、花冠は鮮やかな青色~青紫色、先は深く5裂して平開し、裂片の中央に沿って5本の白色の隆起があります。

ミヤマホタルカズラの花は4~5月の春に咲き、花冠は青色、先は浅めに5裂して平開し、裂片の中央に白色の隆起はありません。

2種共通で、花の距(花弁の筒状になっている部分)は長く、蜜を吸うことができる昆虫は口が長いものに限られることが予想されます。花の距の根本部分は赤いぼかしが入っており、この赤いぼかしの役割は証明されたわけではないですが、口の長い昆虫達に蜜の在り処をアピールするためのものかもしれません。

名前の由来はこの花の色がやや蛍光色に見え、あちこちにぽつぽつと咲くことから蛍に例えたことからこの名がついたという説がある一方で、赤いぼかしを蛍の光に例えた、という説もあります(高橋,2018)。

ホタルカズラには口の長い昆虫がやってくる

ホタルカズラの花はやってくる昆虫については近年になって日本で詳しい研究がなされています(Ushimaru et al., 2021)。この研究では兵庫県で花に訪れた昆虫を380例も記録しています。その結果訪れる昆虫は、ニッポンヒゲナガハナバチが54%、ビロウドツリアブが27%、セダカコガシラアブが16%を締めており、この3種が受粉の大部分を担っていると考えることができそうです。後はわずかにクマバチとチョウの訪花の記録があった程度です。この3種はいずれも口の長い昆虫で、日本では個体数も多く、日向で忙しなく花に訪れており、ホタルカズラの生息地によく合っています。

ニッポンヒゲナガハナバチ(参考写真、筆者撮影)
ビロードツリアブ(参考写真、筆者撮影)
セダカコガシラアブ(参考写真、筆者撮影)

日陰になっても受粉できる秘密?

この研究では単純に訪れる虫の種類を調べるだけではなく、ホタルカズラのような小型の草本に隣接する草本や低木が覆いかぶさったり、高木によって日陰になることで、花に訪れる昆虫が減るかどうかも調べることを目的に行われました。ホタルカズラのような小型の草本にとっては他の植物が覆いかぶさったり、他の植物のせいで日陰になると、昆虫から花が見えなくなったり、気温が低くなって日向で活動する昆虫にとっては寒くなってしまい、受粉が妨げられてしまうという可能性があるのです。また物理的に他の植物が邪魔で、花に近づけない、ということも考えられるでしょう。

このような考えのもと、行われた実験の結果としてはやはりこの仮説を支持していました。ただし、その影響にはやってくる昆虫の種類の間で差があることもわかりました。ニッポンヒゲナガハナバチやビロウドツリアブでは大きく影響を受けましたが、セダカコガシラアブでは影響は比較的少なく、日陰の花では唯一見られた昆虫となっていたのです。その理由についてはセダカコガシラアブは体が黒く体温維持が他の昆虫より得意であったことが原因と考えられています。

この結果は本来日向で花を咲かせるホタルカズラが日陰になってもセダカコガシラアブに受粉を頼ることで子孫を残しているという可能性を示しています。これはホタルカズラの柔軟性を示すものですごく面白いですよね!

とはいえ、他の植物に覆われることはホタルカズラのような小型の草本にとっては悪影響が大きそうです。自然のままが望ましいですが、人の手が加わった林などでは時には適切な手入れも必要なのかもしれません。

ミヤマホタルカズラの花でも似た傾向になっている

一方ミヤマホタルカズラに訪れる昆虫は、スペインでの研究によるとマルハナバチ属の一種 Bombus pascuorum、ケブカハナバチ属の一種 Anthophora sp.、ツリアブ属の一種 Bombylius sp. の3種で大部分を占めるという結果が出ています(Ferrero et al., 2011)。遠く離れたスペインの地でも日本のホタルカズラと似た結果になっているのは驚きです。これはやはりミヤマホタルカズラの花の形がホタルカズラに似ているからでしょう。

一方でセダカコガシラアブのような日陰に訪れる昆虫はこの研究では発見されていません。これは研究の観察が偏っていたからなのか、生息環境やホタルカズラと花の形が微妙に異なることに原因があるのか分かりませんが、興味深い現象です。

ミヤマホタルカズラに訪れるハナバチ
Ferrero et al. (2011): Fig1Aより引用

果実は堅果で鳥散布?

ホタルカズラの堅果は4分果になり、分果は白色~淡黄褐色、長さ(2.5~)3~3.5mmの傾いた卵形、平滑、光沢があり、腹面は凹面、中央に縦溝があります。

ミヤマホタルカズラの堅果は分果になり、長さ2.5~3mm×幅1.5~2.5mm、類卵形、類鈍形、平滑(細かいいぼ状)で、白色または白灰色、光沢があります。

種子はどのように散布されるかについては調べられていないと思われます。しかし、果実は明らかに白色で動物から見て目立ち、更にスウェーデンでは、ほぼ同様の色の果実を持つセイヨウムラサキ Lithospermum officinale の種子に実験的に化学的処理(酸に浸す)と機械的損傷(種子をサンドペーパーで引っ掻く)を行ったところ、発芽率は増加することを示した実験があり(Åberg, 2015)、これらの種類でも少なくとも鳥散布であることは確実でしょう。具体的な鳥の種類の調査が期待されます。

引用文献

Åberg, A. 2015. Could Lithospermum officinale be bird dispersed? : A greenhouse experiment. Uppsala University Independent thesis, Advanced level. 20pp. https://www.diva-portal.org/smash/record.jsf?pid=diva2%3A859974

Ferrero, V., Castro, S., Sánchez, J. M., & Navarro, L. 2011. Stigma–anther reciprocity, pollinators, and pollen transfer efficiency in populations of heterostylous species of Lithodora and Glandora (Boraginaceae). Plant Systematics and Evolution 291(3): 267-276. https://doi.org/10.1007/s00606-010-0387-x

門田裕一・永田芳男・畔上能力. 2013. 山に咲く花 増補改訂新版. 山と溪谷社, 東京. 616pp. ISBN: 9784635070218

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

高橋勝雄. 2018. 野草の名前 春 和名の由来と見分け方. 山と渓谷社, 東京. 240pp. ISBN: 9784635048347

Ushimaru, A., Rin, I., & Katsuhara, K. R. 2021. Covering and shading by neighbouring plants diminish pollinator visits to and reproductive success of a forest edge specialist dwarf species. Plant Biology 23(5): 711-718. ISSN: 1435-8603, https://doi.org/10.1111/plb.13267

ムラサキ科植物
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