エニシダとヒメエニシダの違いは?似た種類の見分け方を解説!花は「破裂」してハナバチに花粉をつける!?

植物
Cytisus x spachianus

エニシダとヒメエニシダはいずれもいずれもマメ科で日本の分類ではエニシダ属に含められ、小さな三出複葉をつけ、春頃に黄色い蝶形花を咲かせることが大きな特徴です。園芸では観賞用に栽培されますが、「エニシダ」という名前でヒメエニシダが販売されることも増えており間違えられることが増えています。しかし、葉には決定的な違いがあり、これを確認すれば間違えることはないでしょう。エニシダの花は「破裂」してハナバチに花粉をつけることが知られています。本記事ではエニシダ属の分類・形態・生態について解説していきます。

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エニシダ・ヒメエニシダとは?

エニシダ(金雀枝・金雀児) Cytisus scoparius はヨーロッパ原産で、世界中で観賞用に栽培され時に逸出する落葉低木です。日本でも観賞用として庭園によく栽培され、逸出して野生化することがあります(林,2019)。

ヒメエニシダ(姫金雀枝) Genista x spachiana はカナリア諸島(アフリカ大陸北西沖、スペイン領)原産の Genista canariesisGenista stenopetala の園芸雑種の常緑低木です(Sheppard et al., 2006)。『Ylist』では Cytisus x spachianus という学名が当てられていますが、世界的には Genista 属に含められてます。暖地で鉢植えや庭木にされます。

いずれもマメ科で日本の分類ではエニシダ属に含められ、小さな三出複葉をつけ、春頃に黄色い蝶形花を咲かせることが大きな特徴です。

どちらも園芸では観賞用に栽培されますが2種の区別がついていない人は多いかもしれません。「エニシダ」という名前でヒメエニシダが販売されることも増えており間違えられることが増えています。原産地も違い、全くの別種であるのにこのような事態は減らしたいです。

エニシダとヒメエニシダの違いは?

エニシダとヒメエニシダは主に葉に決定的な違いがあります(林,2019)。

具体的にはエニシダでは葉柄がないものが多く、三出複葉と不分裂葉が交じり、葉先は尖り、毛は少なく、濃い緑色であるのに対して、ヒメエニシダでは明確な葉柄があり、三出複葉のみで、葉先は丸く、毛が多く、明るい緑色であるという違いがあります。

全体としてもエニシダは固い印象で、葉も斜め上にまっすぐ生えることが多いですが、ヒメエニシダでは柔らかい印象で、葉は垂れ下がります。

エニシダには花の竜骨弁が赤いホオベニエニシダ Cytisus scoparius ‘Andreanus’ も知られています。

現在は花数が多いためか、ヒメエニシダがかなり増えています。

エニシダの枝
エニシダの葉:三出複葉と不分裂葉が交じり、葉先は尖り、毛は少なく、濃い緑色。
エニシダの花:破裂したあとのため雄しべと雌しべがカール状に丸まっている。|By I, Tony Wills, CC BY 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3213597
ヒメエニシダの葉上面:明確な葉柄があり、三出複葉のみで、葉先は丸く、毛が多く、明るい緑色。
ヒメエニシダの葉下面
ヒメエニシダの花
ヒメエニシダの花序:枝の毛は目立つ。

受粉方法は?エニシダの花は「破裂」する!?

エニシダの受粉方法は典型的なマメ科の蝶形花の形をしており、他のマメ科と同様の虫媒花ではあります(田中・平野,2000;田中,2001)。

しかし、受粉方法はやや異なっています。

蝶形花は上側の花びらである旗弁と下側の花びらの外側の翼弁と内側の竜骨弁に別れますが、そのうち翼弁は紫外線を反射していることが分かっています。

つまりヒトには均一に黄色い花のように見えますが、昆虫には花の下側が色がついているように見えているのです。

これにトラマルハナバチ・ミツバチ・ヒゲナガハナバチなどのハナバチが蜜標だと認識し、惹きつけられて、蜜を吸おうとするわけですが、実際にはエニシダの花には蜜がありません。

ハナバチは中脚と後脚を使ってエニシダの花の竜骨弁で踏ん張ることになりますが、その刺激で竜骨弁は急激に破裂するように開き、中のバネ状に収まっていた雄しべと雌しべを叩きつけます。

こうすることで、エニシダはハナバチに雄しべの先にある花粉をハナバチに振りかけ、またハナバチの背中にある他個体の花粉を付着させることで、受粉を成功させています。

ハナバチにとっては蜜がなく一方的に不利益を被っているようにも思えますが、花粉は重要なタンパク質源であり、わざわざハナバチがやってくるのはこちらを目的にしていると考えられます。

引用文献

林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447

Sheppard, A., Haines, M., & Thomann, T. 2006. Native-range research assists risk analysis for non-targets in weed biological control: the cautionary tale of the broom seed beetle. Australian Journal of Entomology 45(4): 292-297. https://doi.org/10.1111/j.1440-6055.2006.00553.x

田中肇. 2001. 花と昆虫、不思議なだましあい発見記. 講談社, 東京. 262pp. ISBN: 9784062691437

田中肇・平野隆久. 2000. 花の顔 実を結ぶための知恵. 山と渓谷社, 東京. 191pp. ISBN: 9784635063043

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