キキョウソウ・ヒナキキョウソウ・キキョウの違いは?似た種類の見分け方を解説!「閉鎖花」はどのような役割がある?果実は種子を孔から零していた!?

植物
Triodanis perfoliata

キキョウソウとヒナキキョウソウはいずれもキキョウ科キキョウソウ属の北アメリカ原産の一年草です。現在の日本では帰化種として町中で頻繁に見かけ、生える場所も殆ど同じ上に、上部には紫色の5深裂した花冠の花が咲くことから野外で判別は難しいかもしれません。しかし、葉・花・果実にそれぞれ違いがあり、特に葉は時期に関わりなく違いを判断できます。キキョウとは花の大きさが異なります。花は開放花と閉鎖花の2タイプがあり、開放花は花冠が星形に5深裂した紫色の花です。閉鎖花は花冠をつけません。閉鎖花は内部を外に開かず、自家受粉し、開放花はハナバチなどによって他家受粉します。このような2種類の受粉方法が外国の都市部でも生育できる秘訣なのでしょう。果実は蒴果で、子房に開いた孔から種子が風に乗って飛んでいくことで分散します。本記事ではキキョウソウ属の分類・形態・送粉生態・種子散布について解説していきます。

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キキョウソウ・ヒナキキョウソウとは?

キキョウソウ(桔梗草) Triodanis perfoliata は北アメリカ原産で、日本では公園や道路の生け垣や植え込みなどの陽地に生える一年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。中国でも帰化しています。

ヒナキキョウソウ(雛桔梗草) Triodanis biflora は北アメリカ原産で、日本では道ばたや造成地などの乾いた裸地に生える一年草です。日本では横浜で1931年に採集されたのが最初の記録です。中国でも帰化しています。

いずれもキキョウ科キキョウソウ属の北アメリカ原産の一年草です。現在の日本では町中で頻繁に見かけ、生える場所も殆ど同じ上に、上部には紫色の5深裂した花冠の花が咲きます。中部以下の茎葉からは閉鎖花もつける点も同じで、その違いは野外では難しいかもしれません。

キキョウソウとキキョウの違いは?

名前の由来となったキキョウ(桔梗)との違いがそもそも分からないという人もいるかもしれません。

キキョウは日本の北海道、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、ウスリーに分布する山野の明るい草地に生える多年草です。

しかし、現在では自生は極めて稀で、観賞用に栽培されている個体が殆どです。したがって町中でキキョウを見かけるのはキキョウソウ類と違って、庭先や花壇だけでしょう。

キキョウソウ類とキキョウの違いとしては沢山ありますが、そもそもサイズが全く異なります。

キキョウソウ類では直立した茎は20~80cmですが、キキョウでは茎は40~100cmと重なりますが、基本的にはキキョウの方が大きいです。

花のサイズは全く異なり、キキョウソウ類では花冠は直径1~1.8cmしかありませんが、キキョウでは花冠は直径3〜5cmもあります。

分類学的には、閉鎖花の有無が重要です。キキョウソウ属では「閉鎖花」と呼ばれる葉の上に花冠がつかない花がありますが、キキョウではそれがありません。

キキョウの葉上面
キキョウの葉下面
キキョウの花

キキョウソウとヒナキキョウソウの違いは?

キキョウソウとヒナキキョウソウの間には多数違いがありますが、一番時期や個体差に関わらず違いを判断できるのは葉だと思います。キキョウソウとヒナキキョウソウの茎の中部以上の葉はどちらも無柄ですが、かなり形に違いがあります。

キキョウソウでは茎の中部以上の葉は楕円形心脚、長さは幅と同長か短く、鋸歯は目立ち、基部は茎を抱きますが、ヒナキキョウソウでは茎の中部以上の葉は卵形で、長さは幅より明らかに長く、鋸歯は低く、茎を抱きません。

次に分かりやすいのは花で、キキョウソウでは開放花は葉腋に1~2(~3)個ずつつき、花冠は直径1.5~1.8cmであるのに対して、ヒナキキョウソウでは開放花は通常上部に1(~2)個だけしかつけず、花冠は直径1~1.3cmしかありません。

果実にも違いがあり、キキョウソウでは蒴果の孔は上端(萼裂片を除く)から1~1.5mm(蒴果の中央部)にあるのに対して、ヒナキキョウソウでは蒴果の孔は上端(萼裂片を除く)から約0.5mm(蒴果の上部)にあるという違いがあります。この違いを挙げる文献は多いですが、中々野外で都合よく観察できないかもしれません。

キキョウソウの葉と閉鎖花
キキョウソウの花
ヒナキキョウソウの茎葉と閉鎖花
ヒナキキョウソウの根出葉
ヒナキキョウソウの花
ヒナキキョウソウの果実

花の構造は?

キキョウソウ属は開放花と閉鎖花の2タイプの花をつけます。

キキョウソウ属の開放花は共通で紫色の花冠が星形に5深裂し、上向きに咲くキキョウ科では典型的な形をしています。しかし、同じキキョウ科でも下を向くホタルブクロ属ツリガネニンジン属も知られています。

一方、閉鎖花は花冠をつけず、内部が開くことはありません。茎葉に1つずつ付きます。

キキョウソウは花期が5~7月。花は無柄か短い柄があり、葉腋に1~2(~3)個ずつつきます。伸長しながら下部~中部に閉鎖花をつけ、上部に開放花をつけます。開放花は萼裂片が5個、花冠が5深裂し、紫色、直径1.5~1.8cm。閉鎖花は萼裂片が3~4個で花冠はほとんど退化しています。

ヒナキキョウソウは花期が4~7月。花は普通茎頂のみに1(~2)個しかつけません。開放花は紫色の星形の花で花冠は直径1~1.3cm。頂部の花以外はほとんど閉鎖花になります。萼裂片は通常5個ですが、閉鎖花では3、4個も多いです。

受粉方法は?

閉鎖花は内部を外に開かず、花の中で雄しべと雌しべを接触させ、自家受粉します。これを閉花受精と呼ばれます。そのため、一定数は昆虫に頼らず、種子を生産することができる上に、花冠を作らなくてすむので、その分種子生産にエネルギーを回すことができるでしょう。

しかし、自家受粉だけでは自然環境の変化や寄生生物に対抗するための遺伝的多様性が不足する可能性があります。また、研究では開放花からできた種子の方が正常に発育しやすく、発芽後も丈夫に育つことが分かっています(Gara & Muenchow, 1990)。そのため、訪花昆虫のよる他家受粉は不可欠でしょう。

アメリカ合衆国での研究によると、キキョウソウではハキリバチ科、アナバチ科、ジョウカイボン科が訪れ、コハナバチ科とマルハナバチ属がたまに訪れるという記録があります(Gara & Muenchow, 1990; Stewart, 2013)。

ただ、これらの種類は訪花昆虫の中では比較的大型で、日本の都市部で見られるキキョウソウ類の個体がこれらの昆虫によって受粉しているかは疑問です。もしかすると、自家受粉の割合が大きい、あるいはコハナバチ科の割合が大きいといった違いが起こっている可能性が考えられますが、日本での研究は不足しています。

閉鎖花と開放花の2タイプを利用することが、都市部でも生育できる帰化種として生存できる大きな要因であると言えるでしょう。

ヒナキキョウソウの方がキキョウソウより花が少ないということは、ヒナキキョウソウの方が閉鎖花が多く、自家受粉に頼っているということを示しており、昆虫が少なく環境が安定している都市部では有利にも思えますが、それほど大きな違いであるのかは不明です。ヒナキキョウソウの訪花昆虫は不明ですし、このような2種の生態の違いも分かっていません。

果実の構造は?

果実はキキョウソウ属共通で蒴果です(Wu et al., 2011)。蒴果は乾いた果実(乾果)の一種で、一つの果実が複数の癒着した袋状果皮からなります。蒴果は開放花、閉鎖花両方からできます。

キキョウソウの蒴果は長さ4~6mm、円筒形で、熟すと子房壁が舌状にめくり上がり、孔が開きます。蒴果の孔は上端(萼裂片を除く)から1~1.5mm(蒴果の中央部)にあります。孔から種子が落ちます。種子は長さ約0.5mm、褐色、レンズ形、扁平な惰円形。

ヒナキキョウソウの蒴果は長さ6~10mm、長楕円状の円筒形、内部は3室に分かれ、熟すと子房壁が舌状にめくり上がり、孔が開きます。孔は上端(萼裂片を除く)から約0.5mm(蒴果の上部)にあります。孔から種子が落ちます。種子は光沢のある褐色で、長さ約0.5mmの扁平な楕円形。

種子散布方法は?

多くの蒴果は熟すと乾燥して内部から種子を零しますが、キキョウソウ属の場合全体が開くのではなく、子房壁の一部がめくり上がることによって孔ができ、そこから種子が零れるという点で独特です。

これによって重力散布と風散布が行われると考えられています(Tackett, 2021)。子房壁の一部がめくりあがって種子を零すという手法を取ることの利点は特に考察されていませんが、上部が開くよりは効率よく風が孔を抜けていき、種子が飛んでいきそうに思えます。扁平な楕円形も風を受けるのに最適でしょう。

キキョウソウとヒナキキョウソウで孔の高さに違いがありますが、これが生態的に意味のある違いなのかは不明です。

引用文献

Gara, B., & Muenchow, G. 1990. Chasmogamy/cleistogamy in Triodanis perfoliata (Campanulaceae): some CH/CL comparisons in fitness parameters. American Journal of Botany 77(1): 1-6. https://doi.org/10.1002/j.1537-2197.1990.tb13521.x

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

Stewart, E. R. 2013. Hybridization in two subspecies of Triodanis perfoliata, a cleistogamous annual plant (Campanulaceae). Thesis, East Carolina University. http://hdl.handle.net/10342/4196

Tackett, M. 2021. Understanding Dispersal Corridors and Population Structure in a Widespread Annual Plant. Doctoral dissertation, Southeast Missouri State University. https://www.proquest.com/openview/5a9449a97a8f42d7c5d400a5422fc0d0/1?pq-origsite=gscholar&cbl=18750&diss=y

Wu, Z. Y., Raven, P. H., & Hong, D. Y. eds. 2011. Flora of China. Vol. 19 (Cucurbitaceae through Valerianaceae, with Annonaceae and Berberidaceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. ISBN: 9781935641049

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