セイタカアワダチソウ・アキノキリンソウ・ミヤマアキノキリンソウの違いは?キリンソウとの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Solidago altissima

セイタカアワダチソウ・アキノキリンソウ・ミヤマアキノキリンソウはいずれもキク科アキノキリンソウ属に含まれ、秋に小さめの黄色い花(正確には頭花)を咲かせる代表的な多年草です。特にセイタカアワダチソウは地域によっては大繁殖するため、よく知られています。3種はセイタカアワダチソウを「キリンソウ」と呼ぶ人もいるためか、かなり混同されているようです。しかし、セイタカアワダチソウのみが外来種であり、頭花の大きさや茎の高さの違いで簡単に区別することができるでしょう。アキノキリンソウとミヤマアキノキリンソウに関しては細かい部分を見る必要がありますが、そもそも生息地が大きく異なっています。キリンソウとアキノキリンソウは全く異なる種類です。本記事ではアキノキリンソウ属の分類について解説していきます。

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セイタカアワダチソウ・アキノキリンソウ・ミヤマアキノキリンソウとは?

セイタカアワダチソウ(背高泡立草) Solidago altissima は別名セイタカアキノキリンソウ。北アメリカ(カナダ~メキシコ)原産で、東アジア・オーストラリア・コーカサスで観賞用に栽培されていたものが野生化し、川の土手や荒れ地に大群生する多年草です。日本では戦後西日本から広がりはじめ、河川敷のオギ群落に侵入して圧倒したり、埋立地に大群落を形成します。

アキノキリンソウ(秋の麒麟草) Solidago virgaurea subsp. asiatica は日本の北海道、本州、四国、九州;朝鮮に分布し、乾いたススキ草原、明るい林縁、河原などに生える多年草です。

ミヤマアキノキリンソウ(深山秋の麒麟草) Solidago virgaurea subsp. leiocarpa は日本の北海道、本州中部以北;東北アジアに分布し、亜高山帯〜高山帯の草地、砂礫地に生える多年草です。

いずれもキク科アキノキリンソウ属に含まれ、秋に小さめの黄色い頭花を咲かせる代表的な多年草です。特にセイタカアワダチソウは地域によっては大繁殖するため、良い意味でも悪い意味でも非常に目立つ存在です。これは他の植物の生長を阻害する化学物質を分泌するためで、「アレロパシー」として知られています(藤井,1990)。

時にブタクサと勘違いされますが、全く異なりブタクサのように花粉症の原因になることはありません。

アキノキリンソウ属は多くのキク科と同様に「頭花(頭状花序)」をつけます。頭花とはキク科に多く見られ、他の植物における花が集合している花序(=花の並び)のことです。その証拠にそれぞれの花に雄しべと雌しべの構造があり、特別に「小花」と呼ばれることもあります。普通の人は頭花のことを「花」と呼びますが、本来は異なります。

キク科の小花には花冠の先端が片方に大きく伸びて広がる「舌状花」と花冠が筒状になっている「筒状花(管状花)」の2種類があり、キク科の種類によって異なる組み合わさり方をしていますが、アキノキリンソウ属では舌状花は5~7個前後で、筒状花は少数といった構成になっています。

セイタカアワダチソウのことを単に「キリンソウ」と呼んでしまう人もいるようで、これらの種類を混同してしまう人は多いかもしれません。

セイタカアワダチソウ・アキノキリンソウ・ミヤマアキノキリンソウの違いは?

しかし、セイタカアワダチソウとアキノキリンソウ・ミヤマアキノキリンソウの間には大きな違いがあり、普通は頭花を見るだけですぐに分かります。

具体的にはセイタカアワダチソウでは頭花は径3mm以下とかなり小さいのに対して、アキノキリンソウとミヤマアキノキリンソウでは頭花は径6~10mmと大きめであるという違いがあります。写真で見て分かるレベルです。

また、セイタカアワダチソウでは茎は高さ1~2mとかなり高いのに対して、アキノキリンソウとミヤマアキノキリンソウでは茎は高さ80cm以下と低いという違いもあります。これは「セイタカアワダチソウ」という和名の通りです。

この2点で十分大別できるでしょう。

アキノキリンソウとミヤマアキノキリンソウに関しては、変種関係にあるため大きな違いを見つけることは難しいです。

しかし、ミヤマアキノキリンソウというのはアキノキリンソウが亜高山帯〜高山帯に適応した姿です。したがって、アキノキリンソウは平地で、ミヤマアキノキリンソウは亜高山帯〜高山帯で普通は見かけることになるでしょう。

形態的には、アキノキリンソウでは頭花がまばらにつき、総苞片(頭花全体覆う下側にある緑色の葉のようなもの)が4列であるのに対して、ミヤマアキノキリンソウでは頭花が密につき、総苞片が3列であるという違いがあります。しかし、中間的な個体も存在するようです。

アキノキリンソウ属は他にも多くの種類がいますが、多くは一時的なアメリカからの帰化なのでここでは省略します。

オオアワダチソウ Solidago gigantea subsp. serotina はセイタカアワダチソウに似たかなりメジャーな帰化種ですが、鋸歯は10対以上で、茎や葉はほとんど無毛であることから区別できます(セイタカアワダチソウは鋸歯が10対以下で、茎や葉は有毛)。

セイタカアワダチソウの頭花:かなり小さく、舌状花の花冠も細く、目立たない
セイタカアワダチソウの果実
アキノキリンソウの葉:下部の葉は鋸歯があるので、鋸歯の有無を区別点にしてはいけない
アキノキリンソウの頭花:大きめで、舌状花の花冠は太く、かなり目立つ|By Anonymous Powered – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=126738792
ミヤマアキノキリンソウの葉
ミヤマアキノキリンソウの花|By Σ64 – Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11344415

セイタカアワダチソウ・アキノキリンソウとキリンソウの違いは?

セイタカアワダチソウ・アキノキリンソウとキリンソウが混同されることはあるかもしれません。おそらく、どちらも小さめの黄色い花または頭花をつけるためか、類似した名前が付けられています。

しかし、キリンソウ Phedimus aizoon var. floribundus はベンケイソウ科キリンソウ属で、セイタカアワダチソウやアキノキリンソウのようにキク科ではありません。

キリンソウは肉厚の葉と星型の黄色い花が特徴的な種類です。よく観察すればセイタカアワダチソウやアキノキリンソウとは全く異なることが分かるでしょう。

キリンソウの全形

引用文献

藤井義晴. 1990. 植物のアレロパシー. 化学と生物 28(7): 471-478. https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu1962.28.471

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

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