フトモモ・レンブ(ジャワフトモモ)・アデクの違いは?似た種類の見分け方を解説!ふさふさの花には鳥がやってくる?しかも受粉なしでも果実を形成可能!?

植物
Syzygium samarangense

フトモモ・レンブ・アデクはフトモモ科フトモモ属で葉が全縁、果実が生食されることで著名な植物です。植物園や沖縄などで見かける機会があるかもしませんが、熱帯の植物であるため、日本本土に住んでいると見かける機会が少なく、区別が付いていない人が多いかもしれません。しかし、花序の生え方、葉の大きさ・形、果実の大きさ・形を比較することで確実に区別することが出来ます。全て果実が生食が可能ですが、レンブが最も人気で、栄養素も豊富です。そんなフトモモ・レンブの花は雄しべが顕著に長く、「ふさふさの」花で、かなり特徴的と言えるでしょう。この花にはタイヨウチョウという鳥とミツバチが主にやってくることが研究で明らかになっています。ふさふさの花になっているのは、昆虫に比べると体の大きな鳥に適応すると考えられますが、匂いに関しては昆虫へアピールするために発達したものかもしれません。しかし、実際にはこのような他家受粉も行いますが、動物を介さないアポミクシスや自家受粉といった繁殖システムも駆使し、受粉なしに種子の大量生産も可能にしているという面白い性質もあります。果実はヒト目線でばかり取り上げられますが、野生下ではオオコウモリの仲間が食べており、研究が不足していますが、地域によっては希少動物の貴重な餌資源になっているかもしれないという点は見過ごせない事実です。本記事ではフトモモ・レンブ・アデクの分類・利用方法・食用・送粉生態・種子散布について解説していきます。

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果実が生食される熱帯の常緑樹

フトモモ(蒲桃) Syzygium jambos は原産地は諸説あり、日本の文献ではインド、中国の文献では西マレーシアと東南アジアとされます(Wu et al., 2007)。東南アジア、東アジアで広く栽培され、日本でも大隅半島以南で稀に栽培され、屋久島、奄美大島、沖縄島、石垣島、西表島、小笠原諸島(父島)で野生化しています。原産地では混交林、山の斜面、川辺、川の谷に生える常緑高木です。和名は中国名の「蒲桃(プータオ)」に由来します。

オオフトモモ(大蒲桃) Syzygium samarangense は別名ジャワフトモモ、レンブ(蓮霧)。マレー半島、アンダマン・ニコバル諸島が原産で、先史時代にフィリピンに導入されました。タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、台湾で栽培され(Morton, 1987)、日本でも沖縄で栽培されることもあります(海洋博覧会記念公園管理財団,2009)。原産地では沿岸の森林に生える常緑高木です(Morton, 1987)。最も信頼できる和名と学名の対応リストである『Ylist』ではオオフトモモとしていますが、本記事では分かりやすさからレンブと呼んでいきます。レンブはマレー語のjambuが台湾語のjambuとなり、音訳で蓮霧と漢字表記されたことに由来します。

アデク Syzygium buxifolium は日本の九州南部、屋久島、種子島、奄美大島以南の琉球;台湾、中国南部、ベトナムに分布し、乾燥したマツ林やシイ林などに生える常緑小高木です。

いずれも、フトモモ科フトモモ属で葉が全縁、果実が生食されることで著名な植物です。味はレンブについてはリンゴと梨を合わせたような淡い味わいで、サクサクして爽やかな酸味があるが果汁は少ないとされます。しかし、熱帯の植物であるため、日本本土に住んでいると見かける機会が少なく、区別が付いていない人が多いかもしれません。

フトモモ・レンブ・アデクの違いは?

しかし、フトモモ・レンブ・アデクは植物学的には以下のような違いが挙げられます(Wu et al., 2007)。

まず、フトモモとレンブは腋生または葉の下の側枝に花序が生え、葉身長は10~20cmであるのに対して、アデクは枝の末端または亜末端に花序が生え、葉身長は6cm以下です。

フトモモとレンブの違いとしては、フトモモは葉身の先端が明らかに尖るのに対して、ジャワフトモモは葉身の先端が丸い~鈍角~やや鋭角となっています。

また、最も食用として注目される部分である果実の形態にも違いがあります。

フトモモとレンブでは果実は赤~黄色、楕円形~梨形で、直径2.5~5cmと大きいのに対して、アデクでは果実は紫褐色、球形で、直径0.5~0.7cmと小さいです。

フトモモとレンブの果実の違いとしては、フトモモでは淡黄色~赤色、球形~楕円形で、直径2.5~5cmであるのに対して、レンブでは暗赤色、梨形~円錐形で、直径4~5cmです。

なお、日本に自生するフトモモ属の仲間としては他にヒメフトモモ(アデクモドキ) Syzygium cleyerifolium がいますが、こちらはアデクによく似ているものの、小笠原諸島に固有で、聟島、父島列島、母島列島に分布し、花柄が1mm以下でほぼ無く、花柱も2mm以下という違いがあります。

フトモモの葉と花:葉先はよく尖っている|By Franz Xaver – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64977018
フトモモの果実|By JMK – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=24350749
レンブの葉序
レンブの葉上面
レンブの葉下面
レンブの樹皮
レンブの花
レンブの未熟果
レンブの果実|『苗木部楽天市場店』より引用・購入可能
アデクの葉|『トオヤマグリーン楽天市場店』より引用・購入可能
アデクの花|By 阿橋 HQ – 小葉赤楠 Syzygium buxifolium [香港雲泉仙館 Ping Che, Hong Kong], CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=91908986

フトモモ・レンブ・アデクの利用方法は?

フトモモ・レンブ・アデクは全て果実を生食することができます。

ただし、アデクの果実は小型で果実を目的に商業的に利用されることはありません。フトモモとレンブは栽培されることもありますが、特にレンブが東南アジアで人気の果物となっています。しかし保存が利かないので、日本で食べるには沖縄に行くか通販で買うかに限られるでしょう。

フトモモは果肉の割合が高く、魅力的な香り(バラっぽい匂い)と味(甘くて少し酸っぱい)があり、ジュース、ゼリー、ジャムの材料としてよく使われます(Sun et al., 2020)。また、環境への適応性が高く、多くの国で観賞用木として植栽されている一方、一部の熱帯で野生化も確認されています。

タンニン、フェノール酸、その他の抗酸化物質を高濃度に含むフトモモの葉や果実の抽出物は糖尿病、炎症、胃腸障害の治療薬として報告されており、研究が進んでいます。

レンブはサクサクとした食感とジューシーな果実は栄養価が高く、深紅色から白色まで様々な色があります(Banadka et al., 2022)。利用方法は生食のほか、ジャム、ゼリー、ジュース、サラダ、ワインなどに利用され、飾り付けにも使われます。栽培は技術の向上により、広い地域で広がりつつあります。

レンブの栄養素としては、アルカロイド・テルペン・タンニンなどの二次代謝産物、カルシウム・銅、塩素・鉄・マンガン・マグネシウム・リン・カリウム・硫黄・亜鉛などのミネラル、ビタミンB3(ナイアシン)・ビタミンB2(リボフラビン)・ビタミンB1(チアミン)・ビタミンCなどのビタミンが挙げられます。

また、レンブの樹皮、果実、花には、抗菌、抗がん、抗糖尿病、抗炎症、抗変異、抗侵害受容活性、抗酸化活性、抗潰瘍効果、創傷治癒活性などの薬理作用があるとされ研究が進んでいます。

フトモモ・レンブ・アデクの花の構造は?

フトモモは日本では花期は3~5月で、短い頂生の集散花序につき、花は白色または帯緑白色、径約4cm、萼筒は倒円錐形で先端は浅く4裂し、長さ7~10mmです。雄しべは著しく多く、花弁より長いです。

レンブは日本では花期は4~5月ですが、タイの例では花は2~3月、乾季の終わり頃から暑季の始め頃に咲き(Chantaranothai & Parnell, 1994)、枝の先端で垂れ下がった集散花序になっています(Morton, 1987)。個々の花は香りが良く、黄白色で多数の雄蕊が放射状に伸びていることが特徴です。

アデクは日本では花期は5~7月で、円錐状集散花序は頂生または腋生し、花は白色で6~9mm。基部に小苞があります。萼筒は倒円錐形で長さ3~4mm、萼裂片はごく低い4歯があり、長さ0.5mm以下で幅約1.5mmです。花弁は4個で白色、広卵形~ほぼ円形、長さ約2mm、早落性。雄しべは多数で長さ3~5mm、萼筒の上縁に付きます。

アデクでは雄しべがフトモモやレンブに比べると短いですが、その他の基本構造は同じです。

レンブの花

フトモモやレンブの花にはタイヨウチョウとミツバチがやってくる!?

フトモモやレンブの花のような「ふさふさな」形に日本ではあまり例がないかもしれません。このような花にはどんな動物やってくるのでしょうか?

栽培種であるフトモモ、レンブに加えて、東南アジアに分布する野生種である Syzygium megacarpumSyzygium formosum の4種についてタイでこの事に関する研究が行われています(Chantaranothai & Parnell, 1994)。

このタイの研究によると、フトモモとレンブについてはやってくる数自体は多くありませんが、キバラタイヨウチョウ Cinnyris jugularis という花蜜を餌にする鳥がとても重要という結果が得られています。一般にタイヨウチョウ科の仲間はユーラシア大陸に分布する蜜食性の鳥として知られており、枝に止まり、花を傷つけないように丁寧に蜜を吸っていきます。

キバラタイヨウチョウ♂の全形|By Lip Kee Yap from Singapore, Republic of Singapore – Olive-backed Sunbird (Cinnyris jugularis) male, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5580282

確かにこのふさふさの花は嘴や舌が長い鳥に対抗するように大きく、長く、雄しべや雌しべが伸びています。フトモモとレンブの花は鳥による受粉に適応するために進化したのかもしれません。

しかしやってくる動物はそれだけでありません。昆虫も多く訪れています。フトモモとレンブでは一日に15~20匹程度のトウヨウミツバチ Apis cerana cerana や5~15匹程度のセイヨウミツバチ Apis mellifera が訪れる結果も示されてます。セイヨウミツバチはタイでは外来種ですが、このことを踏まえると完全に鳥専用の花に進化しているというわけではなく、ミツバチに対しても花がアピールしており、受粉の確実性をあげていると考えられそうです。例えば、フトモモやレンブの花は香りが強いですが、鳥は嗅覚が鈍く、このような匂いを認識することが出来ないと一般的には考えられています。そうだとすると、この点に関しては昆虫による受粉への適応と考えられそうです。

なお、Syzygium megacarpumSyzygium formosum については記録が不足していますが、Syzygium megacarpum では1個体だけ、蝶も訪れたことが記録されています。

この他にも日本の小笠原諸島での研究によると、レンブの花がオガサワラオオコウモリ Pteropus pselaphon によって利用しています(鈴木・鈴木,2014)。上述のタイの研究ではオオコウモリに関する研究は不足しているので、もしかすると、昼夜で訪れる動物が異なるといったことがあるのかもしれませんが、まだよく分かっていません。

一方、アデクの花の送粉生態の研究は発見できませんでした。しかし、フトモモやレンブに比べると小型なため、やってくる動物の構成は異なる可能性が高いでしょう。インターネット上では『蝶・カミキリ・昆虫を楽しむ!(九州・沖縄を中心に)』というサイトでサキシマトゲヒゲトラカミキリ Demonax masatakai が花に訪れる様子が撮影されており、他にカミキリムシが5~6種訪れると言います。

フトモモとレンブは受粉がなくても果実を作ることができる!?

ただ、実際のところフトモモやレンブの果実の半分程度は花粉なし、つまり受粉なしに形成されており(これをアポミクシスと言います)、訪花動物の役割は少し薄めです。栽培品種に至っては訪花動物は全く影響せず、子はクローンとなっています。また、受粉はするものの、自分の花粉を用いて受粉する自家受粉も行うフトモモ属も存在しています。

このようなアポミクシスは訪花動物を待ったり、自分の花粉を受粉させる手間がないため、大量繁殖に適した手法だと考えられます(Clausen, 1954)。栽培品種でそうなっているのは必然的だと考えられます。栽培品種についてはヒトの手によって進化したと考えられますが、非常にヒトにとっては都合が良い性質が元々備わっていたと言えるでしょう。

これだけを聞くと、全てアポミクシスで果実を作ったほうが効率的であると感じられるかもしれません。しかし、他家受粉(訪花動物を用いて他の個体から花粉を得る受粉)を部分的に行うことで、他個体の遺伝子を取り込み、寄生菌・昆虫や自然環境の変化に柔軟に対応できるようにしていると考えられています。

フトモモやレンブが属するフトモモ属では、この他家受粉、自家受粉、アポミクシスの3つを巧みに使い分け、大量繁殖と他の個体の遺伝子の取り込みを行います。自家受粉までは多くの植物でも見られますが、アポミクシスは究極の形と言えるかもしれません。

果実は液果で種子はコウモリによって散布される

フトモモ属の果実は共通で液果です。

フトモモの液果は淡黄色~赤色、球形~楕円形で、直径2.5~5cmで、芳香を放ちます。

レンブの液果は暗赤色、梨形~円錐形で、直径4~5cmです。

アデクの液果は紫褐色、球形で、直径0.5~0.7cmと小さいです。

この果実はヒトが食べることばかり注目されますが、本来はどのような動物によって食べられて種子は散布されているのでしょうか?特にフトモモは日本でも野生化しており、気になる所です。

原産地ではないものの、南西諸島で行われた研究ではオリイオオコウモリ Pteropus dasymallus inopinatus が(宮城・嵩原,2000)、小笠原諸島で行われた研究ではオガサワラオオコウモリが(鈴木・鈴木,2014)、それぞれフトモモやレンブの果実を食べていた記録があります。

フトモモとレンブの果実は大型で、種子もかなり大きいことから鳥よりも大型の動物に好まれる可能性が高いでしょう。また、果実にバラのような芳香があることも、鳥よりも哺乳類にアピールしていることを示しているでしょう。

しかし、アデクはかなり小型の果実であるため、オオコウモリだけが好むのかは分かりません。私の調査では具体的な研究は発見できませんでしたが、フトモモやレンブとは種子散布の担い手が異なることは十分考えられそうです。

日本ではフトモモやレンブは外来種であるため、自然な形とは言えないかもしれませんが、原産地では貴重な希少動物の貴重な餌資源になっているかもしれません。アデクも同様です。研究が不足していますが、このような生き物の関わりの観点から自然を見るのも重要でしょう。

引用文献

Banadka, A., Wudali, N. S., Al-Khayri, J. M., & Nagella, P. 2022. The role of Syzygium samarangense in nutrition and economy: An overview. South African Journal of Botany 145: 481-492. https://doi.org/10.1016/j.sajb.2022.03.014

Chantaranothai, P., & Parnell, J. A. N. 1994. The breeding biology of some Thai Syzygium species. Tropical Ecology 35(2): 199-208. ISSN: 0564-3295, https://www.researchgate.net/publication/259581282

Clausen, J. 1954. Partial apomixis as an equilibrium system in Evolution. Caryologia Supplement 6: 469-479. ISSN: 0008-7114, https://www.abebooks.com/22648028858/bd

海洋博覧会記念公園管理財団. 2009. 熱帯くだもの図鑑. 東洋企画印刷, 糸満. 159pp. ISBN: 9784938984625

宮城朝章・嵩原建二. 2000. 末吉公園の植物とオオコウモリの餌植物について. 沖縄県立博物館紀要 26: 47-84. https://okimu.jp/userfiles/files/page/museum/issue/bulletin/kiyou26/26-4.pdf

Morton, J. 1987. Java Apple. pp.381-382. In: Morton, J. F. & Dowling, C. F. eds. Fruits of warm climates. Florida Flair Books, Miami. 505pp. ISBN: 9780961018412

鈴木創・鈴木直子. 2014. 小笠原諸島におけるオガサワラオオコウモリの食性. 小笠原研究 41: 1-11. http://hdl.handle.net/10748/7319

Sun, Z., Huang, Q., & Feng, C. 2020. Complete chloroplast genome sequence of the rose apple, Syzygium jambos (Myrtaceae). Mitochondrial DNA Part B 5(3): 3460-3462. https://doi.org/10.1080/23802359.2020.1826000

Wu, Z. Y., Raven, P. H., & Hong, D. Y. eds. 2007. Flora of China. Vol. 13 (Clusiaceae through Araliaceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. ISBN: 9781930723597

出典元

本記事は以下書籍に収録されていたものを大幅に加筆したものです。

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