ヒラドツツジ・クルメツツジ・サツキの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Rhododendron x obtusum 'Sakamotoi'

ヒラドツツジ・クルメツツジ・サツキ(サツキツツジ)はいずれもツツジ科ツツジ属に含まれ、ツツジ属の中でも都市部でも極めて一般的に栽培される3種です。しかし、花の形は殆ど同じなので区別ができない人がいるかもしれません。3種は葉の形で区別するのが正確でしょう。一般的に大量に栽培されているのは以上3種であると考えてよいですが、園芸雑種や品種が大量に創出されている関係からオオムラサキツツジやキリシマツツジのような区別が難しい種類もいます。本記事では都市でよく栽培されるツツジ属の分類・形態について解説していきます。

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ヒラドツツジ・クルメツツジ・サツキとは?

ヒラドツツジ(平戸躑躅) Rhododendron x pulchrum は半常緑低木で、複数のツツジ属の交雑によって生じた園芸品種群(林,2019)。ケラマツツジ R. scabrum・タイワンヤマツツジ R. simsii・モチツツジ R. macrosepalum・キシツツジ R. ripense などの交雑によって生じたとされています。観賞用や緑化用に庭木・生垣・街路樹・公園樹に普通に栽培されています。

クルメツツジ(久留米躑躅) Rhododendron x obtusum ‘Sakamotoi’ は半常緑低木で、複数のツツジ属の交雑によって生じた園芸品種群。ミヤマキリシマ R. kiusianum とヤマツツジの雑種であるキリシマツツジ R. x obtusum や、鹿児島に自生するサタツツジ R. sataense などの交雑によって生じたとされています。雑種の園芸品種群です。

サツキ(皐月・杜鵑) Rhododendron indicum は別名サツキツツジ。日本の福島県南部・関東地方西南部~近畿地方・山口県・九州(佐賀県・熊本県・屋久島)の川岸岩上に生える半常緑低木です(神奈川県植物誌調査会,2018)。野生下では「平常時は流水の影響をまったく受けないが、洪水時には冠水するような所で、平常水位から0.5~4m程度上部の岩隙」という非常に限られた環境に生息することから一部の都道府県のレッドリストに掲載されていますが、栽培下では庭木・生垣・公園樹・街路樹・鉢植えに普通に見られます。

いずれもツツジ科ツツジ属に含まれ、ツツジ属の中でも都市部でも極めて一般的に栽培される3種です。特に大気汚染に強いことから街路樹として好まれ、歩道と車道の間にある「緑地帯」に長距離に渡って植えられているのをよく見かけます。小学生の頃、花の蜜を吸って遊んだ経験がある人は多いかもしれませんね。

ただツツジ属の仲間は殆ど花の形が同じで、花の色も多様であるため、花だけに注目していた場合区別がつかないという場合が多いでしょう。

ヒラドツツジ・クルメツツジ・サツキの違いは?

ツツジ属は極めて膨大なグループで日本に自生する種類だけでも62種で、亜種・変種・品種や園芸で生み出された雑種も含めるとその数はもっと多いです。

そのため、正確な同定は難しい場合がありますが、今回は都市部で一般的な3種に絞って考えています。

その違いは葉にあります(林,2019)。

まず、ヒラドツツジでは葉は長毛が目立ち若葉では粘り、葉身の長さが4~11cmと大きく、シワが多いのに対して、クルメツツジとサツキでは葉は黄色い短毛が目立ち若葉でも粘りはなく、葉身の長さが4cm以下と小さく、シワが少ないという違いがあります。

ヒラドツツジの葉が粘るのはおそらく、ヒラドツツジの母種にモチツツジ Rhododendron macrosepalum という粘液を出す種類が含まれていることが関係しているのでしょう。この点を考えれば比較的簡単に区別できそうです。粘りのためにゴミがよく付着しているのも特徴です。モチツツジ自体は成葉でも粘液が多いです。

クルメツツジとサツキに関しては、クルメツツジでは葉が楕円形で横幅が広いのに対して、サツキでは葉が長楕円形で横幅が細いという違いがあります。

また、花期はクルメツツジでは4~5月ですが、花期は5~6月と少し遅い点も参考にはなるでしょう。原種のサツキの花は明るいピンク色ですが別の色であることも多いです。

なお、ツツジ属は春葉と夏葉で形が変わるため、葉先の尖り具合といった特徴はあまり参考にならないでしょう。

ヒラドツツジ(紅紫色花型)の葉上面:長毛が目立つ
ヒラドツツジ(紅紫色花型)の葉下面
ヒラドツツジの樹皮
ヒラドツツジ(紅紫色花型)の花
ヒラドツツジ(白色花型)の花
クルメツツジの葉:短毛が目立ち、葉が太い
クルメツツジの花
サツキの葉上面:短毛が目立ち葉が細い
サツキの葉下面
サツキの若葉
サツキの花

他に似た種類はいる?

ツツジ属は上述のように沢山の種類を含んでいますが、他の種類は栽培されなかったり、葉が大型であったり三出複葉であったりするので、判別は簡単めです。

ただし、園芸雑種に関しては大量に創出されるため正確な区別方法が確立されていない場合もあります。

ヒラドツツジの最も一般的な品種はオオムラサキツツジ(別名オオムラサキ・オオムラサキリュウキュウ・オオサカズキ) Rhododendron x pulchrum ‘Oomurasaki’ ですが、ヒラドツツジとの違いは私は把握できてません。一般的に都市部で植栽されるのはオオムラサキツツジだとされています。

キリシマツツジ Rhododendron x obtusum はクルメツツジの母種ですが、その違いは私は把握できてません。花弁が二重になって咲くものをクルメツツジという考えもあるようですが、科学的な見解は分かりません。

その他にも園芸品種は多数ありますが、種レベルの違いではないので省略します。

以下で他のツツジ属を紹介しています。

クルメツツジとヤマツツジはやや似ますが、クルメツツジは植栽のみで黄色い短毛が多いのに対して、ヤマツツジは自生するものが普通で白い長毛があるという違いがあります。

引用文献

林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

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