イチゴ(苺)とワイルドストロベリー(エゾヘビイチゴ)の違いは?ヘビイチゴとの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Fragaria x ananassa

イチゴとワイルドストロベリー(エゾヘビイチゴ)はいずれもバラ科オランダイチゴ属に含まれ、集合果の花床が赤く肥大し、食用になることから大人気の多年草です。日本でも盛んに栽培され、特にオランダイチゴは本来の果期である6~7月の他、商業的には冬にもビニールハウス栽培が行われ、冬の重要な果物(または野菜)として知られています。しかし、葉や花がかなりよく似ているため時期によっては違いが分からない人がいるかもしれません。基本的には集合果の形や大きさに違いがあり、「ワイルド」と付くだけあって「ワイルドストロベリー」の方が小さく球形です。他の明確な違いとしては小花柄の毛の状態も挙げられます。和名のせいでヘビイチゴ類とも混同されますが、花の色や集合果の構造で区別できるでしょう。味としてはやはりワイルドストロベリーの方が甘さは少ないです。本記事ではオランダイチゴ属の分類・形態・利用方法について解説していきます。

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オランダイチゴ・ワイルドストロベリーとは?

オランダイチゴ(和蘭陀苺) Fragaria x ananassa とは現在では一般名がいちご、英名ストロベリー。1750年代のフランス(ブルボン朝)のブルターニュ地方で、北アメリカ原産のバージニアイチゴ Fragaria virginiana と北アメリカ~南アメリカ原産のチリイチゴ Fragaria chiloensis が交雑させられて生まれた園芸雑種の多年草です(Darrow & Wallace, 1966)。「オランダ」と言いますが、オランダで作られたものではありません。『日本語版Wikipedia』の記述は間違っています。この名前は日本では江戸時代にオランダ人によってもたらされたためです。日本を含む世界中で集合果をデザートとして食用にするために栽培されます。園芸では定義によって果樹とも野菜ともされますが、植物学的には草本なので、樹木になることはありません。あまおう ‘Amaou’ は代表的な園芸品種です。

エゾヘビイチゴ(蝦夷蛇苺) Fragaria vesca は一般名ワイルドストロベリー。北アメリカ・ヨーロッパ・北アフリカ・西アジア・シベリア原産で、森林・山の斜面・牧草地に生える多年草です。日本国内では観賞用または食用に園芸で栽培され、北海道では逸出したものが帰化しています。

いずれもバラ科オランダイチゴ属に含まれ、集合果の花床が赤く肥大し、食用になることから大人気の多年草です。

よく誤解されますが、「イチゴの実」とは本来は集合果のことであり、「ツブツブ」の「種」のようなものは実際は「果実」であることには注意しましょう。

これら2種は日本でも盛んに栽培され、特にオランダイチゴは本来の果期である6~7月の他、商業的には冬にもビニールハウス栽培が行われ、冬の重要な果物(または野菜)として知られています。デザートの、特にショートケーキとの相性は抜群です。いちごジャムやいちごミルク、いちご大福もグルメでは欠かせない存在でしょう。

形態的には葉が三出複葉で、花弁は白色で、花床(花托)が花後に膨大し赤くなり、表面に痩果をつける「イチゴ状果」と呼ばれる集合果を作る点など多くの点が共通しています。

そのため、何が違うのかよく分からないということがあるかもしれません。また、名前のせいで「エゾヘビイチゴ」という和名のせいで、ワイルドストロベリーはヘビイチゴと混同されることもあります。

オランダイチゴとワイルドストロベリーの違いは?

オランダイチゴとワイルドストロベリーの違いはまず大前提として上述のように原産地、あるいは起源が異なります。

オランダイチゴはアメリカ大陸で見つかったイチゴの2種をフランス人が人工交雑させて、より美味しい集合果を作り出すことを探求した結果生まれた雑種です(Darrow & Wallace, 1966)。そのため野生で存在することはありません。

一方、ワイルドストロベリーは元々北アメリカ大陸とユーラシア大陸の広域で自生していた種類です。元々集合果がかなり大きく、食用にされることがあったことから「ワイルド」という名前が付くようになったのでしょう。

このような経緯からもわかるようにオランダイチゴの集合果は明らかに大きく、標準的には円錐形に近い形をしているのに対して、ワイルドストロベリーは比較的小さく、球形に近い形をしています。

ただ、集合果がない場合は花や葉の形もそっくりであるため、区別が難しいように感じるかもしれません。区別方法はあるのでしょうか?

実際は、集合果がなくても花があれば区別することが出来ます(Wu et al., 2003)。

具体的には小花柄(花と茎を繋ぐ細い部分)の毛に違いが見られ、オランダイチゴでは直毛(直立した毛)が生えているのに対して、ワイルドストロベリーでは小花柄に伏毛(伏せた毛)が生えているという違いがあります。

これは外から見ても明らかで、小花柄がごわごわした毛に覆われていればオランダイチゴで、そのようなものがなければワイルドストロベリーと簡単に判断することが出来ます。

花も果実もないと区別は困難ですが、普通はオランダイチゴの方がワイルドストロベリーより葉が大きいです。

オランダイチゴの葉
オランダイチゴの花:小花柄にピントは合っていないが立毛があるため明らかに「ごわごわ」しているのが見て取れる
オランダイチゴ(あまおう)の集合果:通常円錐形だがあまおうは肥大化しすぎて形が崩れることも多い
オランダイチゴの果実:痩果であり「種」ではない
ワイルドストロベリー(エゾヘビイチゴ)の葉
ワイルドストロベリー(エゾヘビイチゴ)の花
ワイルドストロベリー(エゾヘビイチゴ)の小花柄:伏毛で、「ごわごわ」していない
ワイルドストロベリー(エゾヘビイチゴ)の集合果:球形、果柄の毛が伏毛であることにも注目|By Ivar Leidus – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107293813

オランダイチゴとワイルドストロベリーの用途や味の違いは?

オランダイチゴとワイルドストロベリーの用途の違いはあるのでしょうか?

オランダイチゴは生食がよく行われており、ショートケーキ・タルト・パイなどの洋菓子に装飾・トッピングされます。他には、いちご大福などの和菓子の材料としても用いられます。加工したものはいちごジャム・いちごジュースなどの材料として利用され、アイスクリームや菓子に練り込まれることも多いです。

オランダイチゴの味は甘酸っぱい~とても甘いものが一般的でしょう。甘みを追加するために練乳をかけることもあります。

一方、ワイルドストロベリーは生食はできますが、普通は加工してソースジャム・ジュース、シロップ・乳製品・リキュール・化粧品の調製などに利用されます(Dias et al., 2016)。オランダイチゴに比べると商業栽培というよりは自家栽培が行われることが多いです。ただしトルコではかなり人気があるようです(Güney & Cömert, 2022)。

ワイルドストロベリーの味は個体差が大きく、薄い味のものから、酸味が強く非常に甘酸っぱいもの、大きく育ったものは甘みのあることがあります。

ワイルドストロベリーとヘビイチゴの違いは?

ワイルドストロベリーの和名はエゾヘビイチゴであり、匍匐茎を形成する場合があり、グランドカバーに利用されるなど、ヘビイチゴ属 Potentilla の仲間とよく似た特徴があります。

しかし、上述のようにワイルドストロベリーはオランダイチゴ属 Fragaria であることから分類が異なります。

具体的な違いについては別記事でも紹介しているように果実の構造に違いがあり、ヘビイチゴ属は集合果の花床が肥大するものの、ワイルドストロベリーのように液が多くなく、甘さは少ないです。そのためヒトが食べるとあまり美味しくありません。

また、ワイルドストロベリーでは花の花弁が白いですが、ヘビイチゴ類では黄色いという違いもあります。

更に、ヘビイチゴは集合果を匍匐茎からつけるため、地面すれすれに確認するのみで、ワイルドストロベリーのように直立した花茎にぶら下がる集合果を見ることはないでしょう。

ヤブヘビイチゴの花
ヤブヘビイチゴの花
ヤブヘビイチゴの集合果

引用文献

Darrow, G. M., & Wallace, H. A. 1966. The Strawberry: History, Breeding, and Physiology. Holt, Rinehart and Winston, New York. 447pp. ISBN: 9780817340117

Dias, M. I., Barros, L., Morales, P., Cámara, M., Alves, M. J., Oliveira, M. B. P., … & Ferreira, I. C. 2016. Wild Fragaria vesca L. fruits: A rich source of bioactive phytochemicals. Food & Function 7(11): 4523-4532. https://doi.org/10.1039/C6FO01042C

Güney, S. K., & Cömert, M. 2022. Research of the Use of Wild Strawberry (Fragaria Vesca) in Gastronomy: The Case of Amasra. Journal of Tourism & Gastronomy Studies 10(3): 1979-1991. https://doi.org/10.21325/jotags.2022.1077

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

Wu, Z. Y., Raven, P. H., & Hong, D. Y. 2003. Flora of China. Vol. 9 (Pittosporaceae through Connaraceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. ISBN: 9781930723146

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