ムラサキケマン・ジロボウエンゴサク・ヤマエンゴサクの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Corydalis incisa f. pallescens

ムラサキケマン・ジロボウエンゴサク・ヤマエンゴサクはいずれもケシ科キケマン属に含まれ、林内で花期の春(4~6月)になると、紫色~青紫色の花が螺旋状に四方を向いて咲く点が面白いです。しかし花の形も生息地も似ており混同することがあるかもしれません。これら3種は様々な違いがありますが、まずは葉の形を確認すると正確に区別できるでしょう。葉を確認するのを忘れた場合は、花の色・花の下につく苞葉の形・果実の形を確認するのが良いと思います。本記事ではキケマン属の分類・形態について解説していきます。

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ムラサキケマン・ジロボウエンゴサク・ヤマエンゴサクとは?

ムラサキケマン(紫華鬘) Corydalis incisa は日本の北海道・本州・四国・九州・琉球;中国に分布し、林内・田畑の畦・道端などに生える多年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。

ジロボウエンゴサク(次郎坊延胡索) Corydalis decumbens は日本の本州(関東地方・中部地方以西)四国・九州;中国・台湾に分布し、草原・林縁・石垣の間などに生える多年草です。

ヤマエンゴサク(山延胡索) Corydalis lineariloba var. lineariloba は日本の本州・九州;朝鮮・中国・アムール・ウスリーに分布し、雑木林の中や林縁に生える多年草です。

いずれもケシ科キケマン属に含まれ、林内で花期の春(4~6月)になると、紫色~青紫色の花が螺旋状に四方を向いて咲く点が面白いです。ムラサキケマンの和名は花が斜め上や斜め下を向き、その様子が仏具の華鬘けまん(寺院で欄間などに吊り下げる装飾具)に由来したと言いますが、キケマン属の花自体は華鬘にあまり似ておらず、同じケシ科で近い仲間のケマンソウ Lamprocapnos spectabilis から派生した名前と考える方が良いかもしれません。こちらは実際に花が吊り下がっています。

花弁は4枚ですが、外側の2個と内側の2個は形が異なり、外側の花弁のうち上の花弁は後ろが袋状になって突き出るという独特の構造になっており、これは他のケシ科の花とはかなり異なる印象です(林ら,2013)。内側の花弁2個は先端が合着しています。この花の構造は3種で同じでかなり似ています。

葉が2回三出複葉になっているのも共通しています。

生息地も似ており、混生することがあります。

そのため、区別がつかないという人がいるかもしれません。

ムラサキケマン・ジロボウエンゴサク・ヤマエンゴサクの違いは?

これら3種の区別方法は色々提案されていますが、葉で見分けるのが良いと思います(神奈川県植物誌調査会,2018)。

3種はいずれも複葉となっていますが、ムラサキケマンでは葉縁に鋸歯があるのに対して、ジロボウエンゴサクとヤマエンゴサクでは葉縁に鋸歯がないという違いがあります。

ジロボウエンゴサクとヤマエンゴサクに関しては、ジロボウエンゴサクでは小葉が更に2~3個に深く裂けるのに対して、ヤマエンゴサクでは小葉が裂けず線形から広卵形であるという違いがあります。

一応、ムラサキケマンでは塊茎はなく、ジロボウエンゴサクとヤマエンゴサクでは塊茎があるという違いがあります。

これによって、ムラサキケマンでは冬以外ずっと葉を出しているのに対して、ジロボウエンゴサクやヤマエンゴサクでは夏には地上部が枯れて、塊茎を栄養を利用して翌春までの長い間を地下で過ごす「春植物」になっているという違いが生まれています。

この点は生態上は大きな違いとなりますが、春に野外で見分ける時には参考にならないでしょう。

その他、花の色は通常はムラサキケマンでは紫色、ジロボウエンゴサクでは淡紅紫色、ヤマエンゴサクでは淡紫色となりますが、後述のように例外が多いです。

果実はムラサキケマンでは狭長楕円形、ジロボウエンゴサクでは線形、ヤマエンゴサクでは広披針形または卵状長楕円形となっています。

花の基部には苞葉がありますが、ムラサキケマンとヤマエンゴサクではその苞葉歯状に切れ込むのに対して、ジロボウエンゴサクでは苞葉が全縁です。

ムラサキケマンの葉:鋸歯がある|By Σ64 – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2671736
ムラサキケマンの花
ジロボウエンゴサクの葉上面:鋸歯はなく、小葉は分裂
ジロボウエンゴサクの葉下面
ジロボウエンゴサクの花
ヤマエンゴサクの葉:鋸歯はなく、小葉は分裂しない|By Qwert1234 – Qwert1234’s file, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=89079707
ヤマエンゴサクの花:紫色になるが青色に近いものも多い|By Qwert1234 – Qwert1234’s file, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=92458065

他に似た種類はいる?変種や品種は?

ムラサキケマンには花はやや小ぶりで花弁の先だけが紅紫色をおび、全体は白色に近い品種のシロヤブケマン f. pallescens や、花弁の全ての部分が白い品種のユキヤブケマン f. candida が知られています。

ジロボウエンゴサクには花弁の全ての部分が白い品種のシロバナジロボウエンゴサク f. albescens が知られています。

ヤマエンゴサクにはヤマエンゴサクよりも全体が小型で花数が2~4個と少ない変種のヒメエンゴサク var. capillaris が知られています。

シロヤブケマンの葉
シロヤブケマンの花

引用文献

林弥栄・門田裕一・平野隆久. 2013. 山溪ハンディ図鑑 1 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社, 東京. 664pp. ISBN: 9784635070195

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

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