ラミウム・ツルオドリコソウ・キバナオドリコソウの違いは?似た種類の見分け方を解説!

植物
Lamium maculatum 'Beacon Silver'

ツルオドリコソウとキバナオドリコソウはいずれもシソ科オドリコソウ属に含まれる草本で、園芸では「ラミウム」と呼称され、キバナオドリコソウの別名が「ツルオドリコソウ」であることも手伝い検索すると混同されて表示されています。しかし、生物学的には全くの別種で花冠の色が異なる点は勿論ですが、葉や花の形にもその違いがあります。オドリコソウともやや似ますがやはり葉や萼の形が異なります。本記事では園芸で栽培されるオドリコソウ属の分類・形態について解説していきます。

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ラミウム・ツルオドリコソウ・キバナオドリコソウとは?

ツルオドリコソウ(蔓踊子草) Lamium maculatum は別名ラミウム・マクラツム。北欧を除くヨーロッパ・ロシア西部・コーカサス・トルコ・中国に分布し、イギリス・アメリカ合衆国に導入され、日本では観賞用に園芸で栽培される多年草です(RBG Kew, 2025)。

キバナオドリコソウ(黄花踊子草) Lamium galeobdolon は別名ツルオドリコソウ、ラミウム・ガレオブドロン。ヨーロッパ・ロシア西部・コーカサス・トルコ・イランに分布し、アメリカ合衆国に導入され、日本では観賞用やグランドカバー用で栽培されており、一部が逸出し野生化している多年草です(清水,2001)。

いずれもシソ科オドリコソウ属に含まれる草本です。

形態的には花冠の上唇がかぶと状で先端は前方側に曲がり、下唇は3裂して反曲して開き、喉部の全面は膨れ、花冠筒は萼筒から飛び出し外からでも見えるという共通点があります。

更にオドリコソウ属の中でも匍匐茎を出し、花冠が大型で可愛らしい花を春先に咲かせるためか、時々町中で観賞用に栽培されているのを見かけます。

ラミウムは本来「オドリコソウ属 Lamium」のことで自生するオドリコソウやヒメオドリコソウやホトケノザなどを含む呼称ですが、園芸ではツルオドリコソウとキバナオドリコソウに限定されるのが普通です。

園芸ではツルオドリコソウとキバナオドリコソウをまるで品種の違いかのように紹介するサイトが目立ちます。

さらにキバナオドリコソウはツルオドリコソウと同様に匍匐茎を出すことから、別名が「ツルオドリコソウ」とされ、「ツルオドリコソウ」とGoogle検索すると本来のツルオドリコソウとキバナオドリコソウが混ざって表示されています。その他品種名を誤って表示しているものも見受けられます。

これらから詳しくない人は混同してしまうかもしれません。

ツルオドリコソウとキバナオドリコソウの違いは?

しかし、ツルオドリコソウとキバナオドリコソウは明確な別種です(Spencer, 2002; Reznicek et al., 2011)。

まず第一に花の花冠の色が明確に異なっており、ツルオドリコソウでは花冠が紫色であるのに対して、キバナオドリコソウでは花冠が黄色であるという違いがあります。

それだけではなく、ツルオドリコソウでは花冠上部(上唇)に生える毛は短いですが、キバナオドリコソウでは明らかに長いです。これは写真でもはっきり確認できます。

葉に関しても違いがあります。

ツルオドリコソウではシワが多く葉先がやや尾状に伸びるのに対して、キバナオドリコソウではシワが少なく葉先があまり伸びないという違いがあります。

他にもツルオドリコソウでは葯が毛深い房状であるのに対して、キバナオドリコソウでは葯が無毛という違いもありますが、ここまで確認する人は少ないでしょう。

なお、ツルオドリコソウの園芸品種として葉の葉縁以外が白くなるビーコンシルバー ‘Beacon Silver’ 、葉縁を含む葉全体が白くなるスターリングシルバー ‘Sterling Silver’ が知られています。

キバナオドリコソウの園芸品種としては銀白色の斑が多いハーマンズ・プライド ‘Harmann’s Pride’ が知られています。

ツルオドリコソウ(ビーコンシルバー)の葉上面:葉先がやや尾状に伸びる。
ツルオドリコソウ(ビーコンシルバー)の花:紫色、上唇の毛は短い。
キバナオドリコソウの葉上面:葉先は尖らない。
キバナオドリコソウの葉下面
キバナオドリコソウの花:黄色、上唇の毛は長い。

他に似た種類はいる?

日本のオドリコソウ属には自生する種類が多数知られていますが、多くは花冠が小型であまり似ていません。

オドリコソウ Lamium album var. barbatum は花冠が大型でキバナオドリコソウやツルオドリコソウとやや似ますが匍匐茎がなく、葉先はツルオドリコソウよりも明らかに尾状に伸び、萼は鋭いという違いがあります。

引用文献

Spencer, R. 2002. Lamiaceae. In: Spencer, R. Horticultural Flora of South-eastern Australia. Volume 4. Flowering plants. Dicotyledons. Part 3. The identification of garden and cultivated plants. University of New South Wales Press, 576pp. ISBN: 9780868406848, https://hortflora.rbg.vic.gov.au/taxon/ada11ab0-5340-11e7-b82b-005056b0018f

RBG Kew. 2025. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

Reznicek, A. A., Voss, E. G. & Walters, B. S. 2011. Michigan Flora Online. University of Michigan. https://mifloradev.lsa.umich.edu/flora-demo/#/genus/Lamium

清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. 日本帰化植物写真図鑑 plant invader 600種 改訂. 全国農村教育協会, 東京. 553pp. ISBN: 9784881370858

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