ホオズキ・ショクヨウホオズキ(ストロベリートマト)・トマトの違いは?似た種類の見分け方を解説!「食用ホオズキ」は3種類が混同されている!?

植物
Alkekengi officinarum var. franchetii

ホオズキ・ショクヨウホオズキ(ストロベリートマト)・トマトはいずれもナス科に含まれ、赤系統の果実をつける点が特徴の仲間です。ショクヨウホオズキは「食用ホオズキ」や「ストロベリートマト」という名前で流通し、ホオズキやトマトとの関連性があるかのような紹介がなされますが全くの別種です。そもそも分布地も分類も異なる上に形態的にも様々な違いがあります。「食用ホオズキ」はショクヨウホオズキだけではなくブドウホオズキ(ゴールデンベリー)やオオブドウホオズキ(トマティーヨ)という別種も指し非常に混同されている点も見逃せません。本記事ではホオズキ類の分類・形態について解説していきます。

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ホオズキ・ショクヨウホオズキ・トマトとは?

ホオズキ(鬼灯・鬼燈・酸漿) Alkekengi officinarum var. franchetii は中国中央部~朝鮮半島に分布し、日本を含む原産地周辺国に観賞用に導入された多年草です(RBG Kew, 2025)。日本では栽培されたものが逸出することがあります。『神奈川県植物誌2018』や多くのウェブサイトでは学名を Physalis alkekengi var. franchetii としていますが、現在ではこれはシノニム(旧学名)とされます(Whitson, 2011)。

ショクヨウホオズキ(食用鬼灯) Physalis grisea は別名ストロベリートマト、チェリートマト、オレンジチェリー、サマーチェリー、ケセンナリ、ネバリホオズキ。アメリカ合衆国東部に分布し、北アメリカとヨーロッパに食用に導入された多年草です。Physalis pruinosa という学名でウェブサイトで紹介されることもありますがシノニム(旧学名)です。ヨーロッパ原産と紹介されることもありますが嘘です。

トマト Solanum lycopersicum は別名アカナス(赤茄子)。ペルー(アンデス山脈高原)に分布し、世界中で食用に栽培される多年草(日本では越冬できないため一年草)です。

いずれもナス科に含まれ、赤系統の果実をつける点が特徴の仲間です。

ショクヨウホオズキは「食用ホオズキ」や「ストロベリートマト」という名前で流通し、ホオズキやトマトとの関連性があるかのように感じます。実際、葉の形はホオズキと似ていますし、果実の形はトマトと似ています。

そのため、ホオズキの品種改良したものがショクヨウホオズキだと思ったり、プチトマト Solanum lycopersicum var. cerasiforme の品種改良したものがショクヨウホオズキであると誤解している人も居るかもしれません。

インターネットの記事を見るとまるで品種の違いであるかのような書きぶりが目立ちます。

ホオズキ・ショクヨウホオズキ・トマトの違いは?

しかし、これは全くの間違いで基本的に野生下での分布すら元々違います(神奈川県植物誌調査会,2018;Flora of North America Editorial Committee, 2023)。

上述のようにホオズキは東アジア、ショクヨウホオズキは北アメリカ、トマトは南アメリカという分布になっています。これが同種であるということはないでしょう。

更に分類的にも諸説ありますが、ホオズキはホオズキ属、ショクヨウホオズキはフィサリス属、トマトはナス属とされこの点も異なります。

形態的にも以下のような違いがあります。

葉に関しては、ホオズキでは単葉で葉上面のシワがほとんど無く、ショクヨウホオズキでは単葉で葉上面のシワが多く、トマトでは奇数羽状複葉であるという違いがあります。

花に関しては、ホオズキとショクヨウホオズキでは雄しべにコーヒー豆状の葯があり、縦に裂けて花粉を出すのに対して、トマトでは雄しべにバナナ状の大きく黄色い葯があり、上部に孔が開いて花粉を出すという違いがあります。トマトの特殊な葯は「孔開葯」と呼ばれ、マルハナバチなどの振動を起こす蜂のために特殊に進化したものです。

ホオズキとショクヨウホオズキを比較すると、ホオズキでは花冠が基本的に白く中央部が緑色になるのに対して、ショクヨウホオズキでは花冠が基本的にクリーム色で中央部が黒色になるという違いがあります。

果実の違いが一番に気になるかもしれませんが、ホオズキとショクヨウホオズキでは「宿存萼」と呼ばれる花にあった萼が果実を完全に包み込むようになるのに対して、トマトにはそのようになっておらず緑色の萼が果実の上についています。

ホオズキとショクヨウホオズキを比較すると、ホオズキでは宿存萼が熟すと赤くなり、果実本体も赤く大型であるのに対して、ショクヨウホオズキでは宿存萼が熟すと黄色くなり、果実本体も黄色く小型であるという違いがあります。更にホオズキの宿存萼には毛がないですが、ショクヨウホオズキではあります。

なお、トマトの果実が小型のものをマメトマトSolanum lycopersicum var. cerasiforme と言い、別名はマメアカナス、ヒメトマトともされますが、タキイ種苗が小さなトマトの品種につけた商品名である「ミニトマト」が完全に定着しています。

こう聞くとまるで果実が大型のトマト Solanum lycopersicum var. lycopersicum の方が本来の形(原種)であるかのように勘違いしますが、実際はミニトマトのような果実が小さい方が原種であり、トマトは品種改良が加えられた結果、果実が大きくなったのです。よくよく考えてみるとあんなに大きなものが野生下であったら食べられ放題でしょう。

ホオズキの葉:シワはほとんどない。
ホオズキの花|By Photo: Bff / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=39350270
ホオズキの果実を包む宿存萼:これはまだ未熟なもので本来は真っ赤になる。
ショクヨウホオズキの葉:シワが多い。|By Anastasiia Merkulova – https://www.inaturalist.org/photos/305581641, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=153091122
ショクヨウホオズキの花:ベーズ色で中央部は黒い。|By Michael K. Oliver – https://www.inaturalist.org/photos/95221724, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=153091151
ショクヨウホオズキの果実を包む宿存萼:熟しても黄色。|By Navin Sasikumar – https://www.inaturalist.org/photos/314484795, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=153091177
トマトの葉:奇数羽状複葉。
トマトの花
トマトの未熟果
トマトの果実
マメトマト(ミニトマト)の全形
マメトマト(ミニトマト)の葉
マメトマト(ミニトマト)の花
マメトマト(ミニトマト)の未熟果

ホオズキ・ショクヨウホオズキ・トマトの味の違いは?

味に関しては気になる人が多いかもしれません。

ホオズキはソラニンなどが多く有毒で苦く食用不可です。

ショクヨウホオズキは『富士見スカイファーム』では「一見するとオレンジ色のプチトマトを思わせるほおずきですが、ひと口食べてまず驚くのは、その芳醇な味わいです。マンゴーやライチを思わせる高貴な香りと、メロンやブドウのようなジューシーでフルーティな甘み、それにフレッシュな酸味などが加わって、今まで味わったことのない新感覚のおいしさを感じさせてくれます。」と紹介されています。

トマトは多くの人が知っているように甘酸っぱい味です。

他に似た種類はいる?「食用ホオズキ」は3種類が混同されている!?

「食用ホオズキ」と紹介される場合、多くの場合ブドウホオズキ Physalis peruviana とも極めて混同されています。 しかし、ショクヨウホオズキはアメリカ合衆国原産で、匍匐性で広がりながら生長し、果実はパイナップルやメロンのような複雑な甘い風味があるのに対して、ブドウホオズキは南アメリカ北部原産で、非常に大きく直立し、果実は柑橘系の風味があります(University of Maryland, 2025)。葉のシワはブドウホオズキの方が少なめです。ブドウホオズキの別名はシマホオズキ、ケホオズキ、ゴールデンベリー、インカベリーです。ブドウホオズキがヨーロッパ原産と紹介されることもありますが嘘です。

左がショクヨウホオズキの果実、右がブドウホオズキの果実。|『University of Maryland Extention』より引用

食用ホオズキを検索するとトマティーヨの名を目にすることがありますが、これもショクヨウホオズキとは全くの別種でオオブドウホオズキ Physalis philadelphica とのことです。トマティーヨは花が黄色く、宿存萼は大型の果実に張り付きます。ラテンアメリカ料理に利用されます。

センナリホオズキ Physalis angulata もショクヨウホオズキと類似しますが、宿存萼が熟しても緑色のままです。花の中央部は色がないか紫色があることがありますが黒くはなりません。食用不可です。

引用文献

Flora of North America Editorial Committee. 2023. Flora of North America: Volume 14, Magnoliophyta: Gentianaceae to Hydroleaceae. Oxford University Press, Oxford. 536pp. ISBN: 9780197691465

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

RBG Kew. 2025. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

University of Maryland. 2025. University of Maryland Extension: Goldenberry. https://extension.umd.edu/programs/agriculture-food-systems/program-areas/fruit-vegetable-production/alternative-crops/goldenberry/

Whitson, M. 2011. (2016) Proposal to conserve the name Physalis (Solanaceae) with a conserved type. Taxon 60(2): 608-609. https://doi.org/10.1002/tax.602047

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