ウメバチソウ・コウメバチソウ・ヒメウメバチソウの違いは?似た種類の見分け方を解説!花や果実の構造は?

植物
Parnassia palustris var. palustris

ウメバチソウ・コウメバチソウ・ヒメウメバチソウはいずれもニシキギ科ウメバチソウ属に含まれる多年草です。名前が類似しており、形態的にも葉や花が類似しており判断に迷うことがあるかもしれません。これら3種類は主に花にある仮雄しべの裂片の数で見分けることができます。仮雄しべはウメバチソウ属にある特殊な構造です。花は白色で5花弁で茎の先端に単生します。果実は蒴果です。本記事ではウメバチソウ・コウメバチソウ・ヒメウメバチソウの分類・形態について解説していきます。

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ウメバチソウ・コウメバチソウ・ヒメウメバチソウとは?

ウメバチソウ(梅鉢草) Parnassia palustris var. palustris は日本の北海道、本州、四国、九州;台湾、東北アジア、サハリン、千島列島に分布し、山野の日当たりのよい湿地に生える多年草です(大橋ら,2016)。var. multiseta はシノニム(旧学名)です。

コウメバチソウ(小梅鉢草) Parnassia palustris var. tenuis は日本の北海道、本州(北部);シベリア、中央アジア、コーカサス、中東、ヨーロッパ、北アメリカに分布し、高山帯に生える多年草です(RBG Kew, 2023)。

ヒメウメバチソウ(姫梅鉢草) Parnassia alpicola は日本の本州(東北~中部)に分布し、高山の湿った草地や雪田跡に生える多年草です。

いずれもニシキギ科ウメバチソウ属に含まれる多年草です。名前が類似しており、形態的にも、根生葉は心形で全縁で長い柄がある点や、花が茎の先端に単生し花弁は白色で5枚で全縁である点などかなり共通点が多く判別に迷うことがあるかもしれません。

ウメバチソウ・コウメバチソウ・ヒメウメバチソウの違いは?

これら3種類は主に花にある仮雄しべの裂片の数で見分けることができます。

仮雄しべとは雄しべとは別に花弁の上に見られる先端が糸状になっている部分のことです。普通5個存在し、先端は糸状の裂片となり、黄色い丸い粒(腺体)があることもあります。

まず3種類は、ウメバチソウとコウメバチソウでは仮雄しべの裂片の数が7本以上あり、先に黄色い腺体(丸い粒)があるのに対して、ヒメウメバチソウでは仮雄しべの裂片の数が3~5(稀に6~8)本と少なく、先に黄色い腺体がないという違いから大別されます。

コウメバチソウはウメバチソウの高山型であるためよく似ています。

ウメバチソウとコウメバチソウに関しては、ウメバチソウでは仮雄しべの裂片の数およびその先についている黄色い腺体が12~22個であるのに対して、コウメバチソウでは7~11個であるという違いがあります。

以上で花があれば簡単に見分けることができます。

なお、かつてはエゾウメバチソウという分類も存在していましたが、現在ではウメバチソウのシノニム(旧学名)とされ、特別に区別されることはありません。

さらにウメバチソウとコウメバチソウについても、コウメバチソウはウメバチソウのシノニムと考え、特別に区別しない考えが国外ではあります(RBG Kew, 2023)。

ヤクシマウメバチソウ Parnassia palustris var. yakusimensis は屋久島に分布するウメバチソウの矮小型で、全体に繊細で花も小さいです。葉は卵形~広卵形で長さ、幅とも1cm程度(ウメバチソウは長さ幅とも1.5~4cm)。

イズノシマウメバチソウ Parnassia palustris var. izuinsularis は伊豆諸島に分布し「神津島ウメバチソウ」として知られます。

ウメバチソウの葉
ウメバチソウの花:仮雄しべの裂片および黄色い腺体の数が12個以上、この個体では腺体は白い
コウメバチソウの花:仮雄しべの裂片および黄色い腺体の数が11個以下|By Alpsdake – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57802194

花の構造は?

ウメバチソウは花期が8~10月。花は茎頂に1個上向きにつき、白色で直径2~2.5cm、花弁は5個、広卵形~楕円形で緑色の平行脈が目立ちます。仮雄しべは5個で先が12~22裂し、先端に黄色い腺体がつきます。

コウメバチソウは花期が7~9月。ウメバチソウとよく似ていますが全体に小型で花は径約1cmと小さいです。仮雄しべが7~11裂します。

ヒメウメバチソウは花期が8~9月。花は花茎の先に1個つき、白色で、直径8~10mm。花弁は5個、広卵形で鈍頭、長さ4~6mm、基部には明らかな爪があり、花時には平開します。萼筒は短く、萼裂片は5個、披針状卵形で鈍頭、長さ約2.5mm、雄しべは10個、長さ約3mm、葯は円形、裂開前は灰褐色。仮雄しべは3~5(稀に6~8)裂し、裂片の先には腺体がありません。

果実の構造は?

果実はウメバチソウ属共通で蒴果です。

ウメバチソウの蒴果は長さ1~1.2cm。

ヒメウメバチソウの蒴果は長さ5~6mm。種子は多数あり、楕円形で、長さ約1mm。

引用文献

大橋広好・門田裕一・邑田仁・米倉浩司・木原浩. 2016. 改訂新版 日本の野生植物 3 バラ科~センダン科. 平凡社, 東京. 604pp. ISBN: 9784582535334

RBG Kew. 2023. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

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