クロウメモドキ・クロツバラ・ウメモドキの違いは?似た種類の見分け方を解説!花・果実の構造は?

植物
Rhamnus japonica var. decipiens

クロウメモドキは日本ではやや稀に生える落葉低木ですが、よく似ているとされる種類としてクロツバラとウメモドキが挙げられます。ウメモドキは名前が類似しており、形態としては果実が核果で、花や果実が葉腋に束生する点などが共通しており、見たことがない人は混同するかもしれません。また、クロツバラとは共にクロウメモドキ科クロウメモドキ属に含まれ分類学的に似ており、共通点はかなりたくさんあります。しかし、ウメモドキとは分類的な隔たりがあり、クロツバラも葉をよく観察することで区別することができます。本記事ではクロウメモドキ・クロツバラ・ウメモドキの分類・形態について解説していきます。

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クロウメモドキ・クロツバラ・ウメモドキとは?

クロウメモドキ(黒梅擬) Rhamnus japonica var. decipiens は日本の北海道、本州、四国、九州の冷温帯に分布し、山地~丘陵の林内や岩場にやや稀に生える落葉低木です(神奈川県植物誌調査会,2018)。

クロツバラ(黒つ薔薇) Rhamnus davurica var. nipponica は日本の本州(中部以北)に分布し、低地から山地の斜面や水辺などに稀に生える落葉低木です。

ウメモドキ(梅擬) Ilex serrata は日本の本州、四国、九州;中国に分布し、湿地または湿った落葉広葉樹林内に生える落葉低木です(茂木ら,2000)。

クロウメモドキとウメモドキは名前が類似しており、見たことがない人は混同するかもしれません。「クロウメモドキ」の和名は果実や枝振りがウメモドキに似ており、果実が黒いことに由来するとする説もあります。落葉低木、雌雄異株で、果実が核果で、花や果実が葉腋に束生する(またはそのように見える)点は同じです。

クロウメモドキとクロツバラはどちらもクロウメモドキ科クロウメモドキ属に含まれ、葉・花・果実いずれもよく似ています。子房は2~4室で、果実は球形で2~4個の核があります。

更にクロウメモドキ属の中でもよく似ている2種で、葉の側脈は3~5対で数が少なく、枝の先端はときに刺となる点も同じです。そのため混同されやすいでしょう。

クロウメモドキとウメモドキの違いは?

しかしまず、クロウメモドキ・クロツバラとウメモドキは全く異なるグループです。

クロウメモドキとクロツバラはクロウメモドキ科クロウメモドキ属に含まれるのに対して、ウメモドキはモチノキ科モチノキ属に含まれるという大きな違いがあります。そのため、形態にも大きな違いがあることが考えられるでしょう。

具体的な違いは多すぎますが葉だけなら、クロウメモドキでは葉身が小さく、葉下面にも光沢があり、葉脈の側脈が主脈に並行になるほど曲がりますが、ウメモドキでは葉身が大きく、葉下面には光沢はなく、葉脈の側脈は主脈に直角よりに生えて伸びて曲がっていきます。

花は全く異なり、クロウメモドキでは花が黄緑色で花弁が4枚で先が尾状に伸びるのに対して、ウメモドキでは花は淡紫色で花弁は4〜5個で先は丸いという違いがあります。

昔の人が果実が付いている時期のイメージから名付けたのかもしれませんが、よく観察すると全く異なるグループであることが実感できるでしょう。

勿論、果実はクロウメモドキでは熟すと普通黒いですが、ウメモドキでは熟すと赤いです。

ウメモドキの葉上面
ウメモドキの葉下面
ウメモドキの樹皮
ウメモドキの果実

クロウメモドキとクロツバラの違いは?

クロウメモドキとクロツバラについては全く同じ分類であることからとてもよく似ています。

ただ、葉の形で見分けることができます(神奈川県植物誌調査会,2018;林,2019)。

具体的には、クロウメモドキでは葉が小さく倒卵形で基部はくさび形となり短枝が発達するのに対して、クロツバラでは葉が大きく楕円形~長楕円形という違いがあります。

クロウメモドキの中には葉が大きめの個体もありますが、クロツバラでは長い楕円形の葉が混じる点が重要です。

クロウメモドキの葉上面
クロウメモドキの葉下面
クロウメモドキの樹皮
クロウメモドキの花
クロツバラの葉|By Krzysztof Ziarnek, Kenraiz – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=75550702
クロツバラの果実|By Salicyna – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=53804423

クロウメモドキ・クロツバラの変種・品種は?

クロウメモドキとクロツバラにはそれぞれ多くの変種が確認されています。

クロウメモドキ(狭義) var. decipiens は葉身長3~6cmの変種です。

エゾノクロウメモドキ var. japonica は北海道、本州の日本海側に分布し、葉身長5~12cmと大型な変種です。

コバノクロウメモドキ var. microphylla は西日本に分布し石灰岩地や蛇紋岩地に生え、葉身長1~3cmと小型な変種です。

シナノクロウメモドキ var. decipiens f. senanensis は葉の下面全体に細毛がある品種です。

アオミノクロウメモドキ var. decipiens f. chlorocarpa は果実が青緑色の変種です(Honda, 1933)。

チョウセンクロツバラ var. davurica は朝鮮、中国北部、ダフリヤに分布します。

ケクロツバラ var. nipponica f. pubescens は裏全体に毛がある品種です。

花の構造は?

クロウメモドキは花期が4~5月。雌雄異株。花は葉腋に束生し、黄緑色、4数性。

クロツバラは花期が5~6月。雌雄異株。花は若枝の基部近くの葉腋や短枝に束生し、4数性、黄緑色で径4~5mm。雄花は多数つき、雌花は少ないです。花柄は長さ7~10mm。萼裂片は狭三角形で先は尖り、萼筒は鐘形。雌花の花柱は長く飛び出て、先は2分し、分枝は下に曲がります。

ウメモドキは花期は6月。雌雄異株。本年枝の葉腋に淡紫色の花をつけます。花序の軸がきわめて短いので、花は束生しているように見えます。雄花序には5〜20個、雌花序には2〜4個の花がつきます。花は直径3〜4mm。花弁は4〜5個、楕円形で長さ約4mm。萼片は4〜5個。雄花には雄しべが4〜5個と退化した雌しべがあります。雌花には退化した雄しべがあります。子房は球形で花柱はごく短いです。

果実の構造は?

クロウメモドキ属の果実は共通で核果です。核果は種子を包む内果皮が硬化して核となり、核を囲む中果皮がふつう多肉質となる果実です。

クロウメモドキの果実は核果。黒く熟し、2個の核があります。

クロツバラの果実は核果。倒卵状球形、直径6~8mm、黒熟します。

ウメモドキの果実は核果。直径約5mmの球形で、9〜10月に赤色に熟し、落葉後も落ちずに残ります。なかには核が4〜5個入っています。核は三角状楕円形で長さ約2mm、表面はなめらかです。

引用文献

林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447

Honda, M. 1933. Nuntia ad Floram Japoniae XX. The Botanical Magazine 47(556): 296-299. https://doi.org/10.15281/jplantres1887.47.296

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

茂木透・太田和夫・勝山輝男・高橋秀男・城川四郎・吉山寛・石井英美・崎尾均 ・中川重年. 2000. 樹に咲く花 離弁花2 第2版. 山と溪谷社, 東京. 719pp. ISBN: 9784635070041

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