シュウメイギク(キブネギク)・タイワンシュウメイギク・ボタンキブネギクの違いは?似た種類を解説 シュウメイギクの同定はほどんど間違っていた?

キンポウゲ科
Anemone x hybrida

シュウメイギク(キブネギク)・タイワンシュウメイギク・ボタンキブネギクはいずれもキンポウゲ科イチリンソウ属に含まれ、特にシュウメイギクとボタンキブネギクは園芸では盛んに栽培される秋を代表する多年草です。しかし、これらの種類は極めて混同されています。まず生物学的には「シュウメイギク=キブネギク」です。また「シュウメイギク」と紹介されるもののほとんどがボタンキブネギクです。シュウメイギクとタイワンシュウメイギクは葉の形と花の萼(花弁ではない)の枚数で区別されます。ボタンキブネギクは雑種なので、シュウメイギクとヒマラヤシュウメイギクの中間的な特徴を持っています。日本で現在栽培されているのはほとんどボタンキブネギクであると思われます。本記事ではシュウメイギク類の分類について解説していきます。

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シュウメイギク・タイワンシュウメイギク・ヒマラヤシュウメイギク・ボタンキブネギクとは?

シュウメイギク(秋明菊) Anemone hupehensis var. japonica (海外では Eriocapitella japonica)は中国南東部、台湾、ベトナム原産で丘陵地帯の低木、草が茂った斜面、川沿いに生える多年草です(Wu et al., 2001; RBG Kew, 2023)。日本、韓国、ハワイで観賞用に栽培されたものが帰化しています。特に日本では古くから栽培されてきました。京都の貴船地区で見られるものをキブネギク(貴船菊)ということもありますが、別名に過ぎず、生物学的に違いはありません。

タイワンシュウメイギク(台湾秋明菊) Anemone matsudae (海外では Eriocapitella hupehensis)は中国南部、台湾、ミャンマー、ネパールに分布する多年草です。

ヒマラヤシュウメイギク(ヒマラヤ秋明菊) Anemone vitifolia (海外では Eriocapitella vitifolia)は中国南部(ヒマラヤ含む)、ネパール、パキスタンに分布し、疎林、草の茂った斜面、川辺に生える多年草です。かつてはタイワンシュウメイギクと混同されていました。

ボタンキブネギク(牡丹貴船菊) Anemone x hybrida (海外では Eriocapitella x hybrida)はシュウメイギクとヒマラヤシュウメイギクを掛けわせてることで生まれた園芸雑種です(Herman, 2004)。1843年に植物学者のロバート・フォーチュン(Robert Fortune)が上海でシュウメイギクを発見した後イギリスに送り、ヨーロッパ人によって交雑されました。現在では日本でもシュウメイギクより栽培されます。

いずれもキンポウゲ科イチリンソウ属に含まれ、特にシュウメイギクとボタンキブネギクは園芸では盛んに栽培される秋を代表する多年草です。

花の最も目立つ花弁に見えるものが萼である点はキンポウゲ科の特徴を反映しており、地上茎につく葉は対生か輪生する点や、果実は痩果である点はイチリンソウ属の特徴を反映しています(神奈川県植物誌調査会,2018)。

またイチリンソウ属の中でも痩果に果柄があり、茎が分岐する点はシュウメイギク類の特徴です。そのため、海外ではシュウメイギク属 Eriocapitella に分けることもあります。

しかし、このシュウメイギク類は極めて混同されており、一般的にインターネットで「シュウメイギク」と紹介されるものはほとんど全てボタンキブネギクです。

シュウメイギク・タイワンシュウメイギク・ヒマラヤシュウメイギクの違いは?

まず、生物学的には「シュウメイギク=キブネギク」と全く同じものであることは抑えておきましょう。

シュウメイギク・ヒマラヤシュウメイギク・タイワンシュウメイギクに関しては全くの別種(または変種)であるので、明らかな違いがあります。

具体的には、シュウメイギクとタイワンシュウメイギクでは葉が三出複葉(元々1枚の葉が3枚に完全に別れている状態)であるのに対して、ヒマラヤシュウメイギクでは葉が単葉(葉が別れていない状態)で3浅裂(浅い切れ込みがある状態)であるという違いがあります。

また日本で栽培されてきたシュウメイギクでは花弁のように見える萼が半二重咲き~八重咲き(数は10~20枚程度)であるのに対して、タイワンシュウメイギクとヒマラヤシュウメイギクでは萼が一重咲き(数は5枚で多くても8枚)という違いもあります。

シュウメイギクの葉:三出複葉
By Wilhelm Zimmerling PAR – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=90215105
シュウメイギクの花:八重咲き
By KENPEI – KENPEI’s photo, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=354702
ヒマラヤシュウメイギクの葉:単葉で分裂葉のみ、3つに切れ込み
By Sherpaworld – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=33060939
ヒマラヤシュウメイギクの花:一重咲きで萼は5枚
By Daderot – Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22215688

ボタンキブネギクと他種の違いは?

問題はボタンキブネギクです。ボタンキブネギクはシュウメイギクとヒマラヤシュウメイギクの雑種なので中間的な状態にある個体がこの種類に該当すると言えるでしょう。なお、一部でタイワンシュウメイギクとの雑種とする記事がありますが、そうではありません。花の色は白色~紫色、萼は一重咲き~八重咲きまであります。葉も複葉~単葉まであります。

具体的には花が半二重咲き~八重咲きなのに葉が単葉で3浅裂であるものを見かけた場合はボタンキブネギクと判断して構いません。

また、一般的に日本の本物のシュウメイギクの花は紫色であるのに対して、ボタンキブネギクは白色~紫色なので、白色の場合はボタンキブネギクと言えそうです。

実際のところ、現在日本で栽培されている多くの個体がボタンキブネギクに該当するようです。これはかつて日本で栽培されていた本物のシュウメイギクが、ヨーロッパで交配されたボタンキブネギクに入れ替わってしまっているということでしょう。考え方次第ですが、本物のシュウメイギクが忘れさられているというのは悲しいことかもしれません。しかもこの事実すら多くの人には共有されていないということになります。

タイワンシュウメイギクとヒマラヤシュウメイギクは極稀に日本で栽培されることがあるかもしれませんが、どれほど見られるか実態は不明です。

ボタンキブネギクの根出葉
ボタンキブネギクの茎葉上面:単葉だが複葉に近いものもある
ボタンキブネギクの茎葉下面
ボタンキブネギクの花:萼の数は多い

引用文献

Herman, R. 2004. Fall-blooming anemones. Fine Gardening 99: 48-52. ISSN: 0896-6281, https://www.finegardening.com/article/fall-blooming-anemones

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

RBG Kew. 2023. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

Wu, Z. Y., Raven, P. H. & Hong, D. Y., eds. 2001. Flora of China. Vol. 6 (Caryophyllaceae through Lardizabalaceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. 512pp. ISBN: 9781930723054

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