キンポウゲ科 Ranunculaceae は多年草が多いですが1年草や越年草のこともあり、稀には低木もあります。葉は互生のものも対生のものもあり、葉形の変化も著しい。花は放射相称か左右相称で、萼片が花弁状になっているものが多い。花弁が欠けているか、あっても小さな蜜腺状になっているものもあります。雄しべは多数で離生、雌しべは多数のものから1個のものまであって子房は上位。花の各部がらせん状に配列し、雄しべが多数で不定であることや、各部がすべて離生しており、子房が上位であることなどいずれも被子植物として原始的な特徴とされています。美花を開くものも多いので観賞用に栽培される園芸品も多い。アルカロイドを含むものが多いことから有毒植物も多いですが、薬用として利用されるものも少なくありません。世界に58属約3,000種が知られています。特に東アジアの温帯に多くの属や種があります。日本には22属約145種を産します。
本記事ではキンポウゲ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は塚本(1994)、神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
- No.1188 バイカオウレン Coptis quinquefolia
- No.1189 キクバオウレン Coptis japonica var. anemonifolia
- No.1192 エンコウソウ Caltha palustris var. enkoso
- No.1193 リュウキンカ Caltha palustris var. nipponica
- No.1193.a ヒメリュウキンカ Ficaria verna
- No.1200 クロタネソウ Nigella damascena
- No.1207 レンゲショウマ Anemonopsis macrophylla
- No.1208 ヒメウズ Semiaquilegia adoxoides
- No.1209 オダマキ Aquilegia flabellata var. flabellata
- No.1210 ミヤマオダマキ Aquilegia flabellata var. pumila
- No.1212 セイヨウオダマキ Aquilegia vulgaris
- No.1212.1 ヤエセイヨウオダマキ Aquilegia vulgaris var. flore-pleno
- No.1213.a セリバヒエンソウ Delphinium anthriscifolium
- No.1213.b エラツムヒエンソウ Delphinium elatum
- No.1215 レイジンソウ Aconitum loczyanum
- No.1225 ヤマトリカブト Aconitum japonicum subsp. japonicum
- No.1227.a ツクバトリカブト Aconitum japonicum subsp. maritimum var. maritimum
- No.1238 イヌショウマ Cimicifuga biternata
- No.1240 サラシナショウマ Cimicifuga simplex
- No.1242 ヒメカラマツ Thalictrum alpinum var. stipitatum
- No.1244 アキカラマツ Thalictrum minus var. hypoleucum
- No.1246 シキンカラマツ Thalictrum rochebrunianum
- No.1248.1 ヤクシマカラマツ Thalictrum tuberiferum var. yakusimense
- No.1257 イチリンソウ Anemone nikoensis
- No.1258 キクザキイチゲ Anemone pseudoaltaica
- No.1263 ニリンソウ Anemone flaccida
- No.1265 ハクサンイチゲ Anemone narcissiflora subsp. nipponica
- No.1267 ハナイチゲ Anemone coronaria
- No.1268 シュウメイギク Anemone hupehensis var. japonica
- No.1268.a ボタンキブネギク Anemone x hybrida
- No.1269 スハマソウ Hepatica nobilis var. japonica f. variegata
- No.1271 フユボタン Helleborus niger
- No.1271.a ヒメフユボタン Helleborus orientalis
- No.1273 イトキンポウゲ Ranunculus reptans
- No.1279 タガラシ Ranunculus sceleratus
- No.1282 ウマノアシガタ Ranunculus japonicus
- No.1282.a ヒメウマノアシガタ Ranunculus yakushimensis
- No.1287 キツネノボタン Ranunculus silerifolius var. glaber
- No.1288 ケキツネノボタン Ranunculus cantoniensis
- No.1295 センニンソウ Clematis terniflora
- No.1295.1 タチセンニンソウ Clematis terniflora var. mandshurica
- No.1298 コボタンヅル Clematis apiifolia var. biternata
- No.1302 ハンショウヅル Clematis japonica
- No.1308 クサボタン Clematis stans
- No.1309 テッセン Clematis florida
- No.1310 カザグルマ Clematis patens
- No.1310.a テキセンシスクレマチス Clematis texensis
- 引用文献
No.1188 バイカオウレン Coptis quinquefolia
多年草。別名ゴカヨウオウレン。根茎は細長くて横にはい走出枝を出し、根生葉はやや厚くて光沢のある鳥足状複葉。小葉は3浅裂し、鋭い鋸歯があります。花茎は高さ4~15cm、上部に小型の苞があります。花は上向きに咲き、萼片は白色。本州(福島県以南)、四国に分布。ブナ帯~シラビソ帯にかけて見られ、針葉樹林の林床や林縁に生えます。
No.1189 キクバオウレン Coptis japonica var. anemonifolia
常緑多年草。根茎はやや太く、中は黄色で多くのひげ根を出します。根生葉は束生し、質厚く、1回3出複葉。小葉は3出羽状に中裂し裂片には欠刻状鋸歯があります。花茎は15~40cm。分岐して普通3個の花をつけます。北海道(南部、逸出の疑いがあります)、本州(山形県~兵庫県までの日本海側)に分布。ブナ帯~シラビソ帯にかけて見られ、針葉樹林の林床に生え、薬用に栽培されることが多いです。
No.1192 エンコウソウ Caltha palustris var. enkoso
茎が開出して地につき、上部が斜上して花をつけるリュウキンカの変種。
No.1193 リュウキンカ Caltha palustris var. nipponica
多年草。茎の高さ15~50cm。根生葉は長さ、幅ともに3~10cm。茎葉は同形で小さい。初夏に黄色の花を開きます。本州、九州;朝鮮に分布。沼や池などの水中や湿地に生えます。インターネットではヒメリュウキンカと混同されていますが、花被はふつう5枚で紡錘形の塊根はないことから区別できます。
No.1193.a ヒメリュウキンカ Ficaria verna
多年草。高さ10~20cmの湿り気のある場所を好む。葉はロゼット状に根生するか、茎の低い位置から分岐し、4~12cm程度の柄をもち3~6cmの長楕円で基部心形~ほこ型の柔らかい革質。花は直径2~5cmの黄色で、8~10枚程度の花被をつけます。地下に紡錘形の塊根をもちます。ヨーロッパ原産で栽培品が人家周辺や公園など、各地で逸出しています。近年の形態に基づく分類学的再検討(Veldkamp, 2015)によれば、葉腋の珠芽の有無、花のサイズ、痩果表面の毛の有無、花時期の形状によって、7亜種に区別されます。葉腋の珠芽が見られないものは subsp. fertilis に当たるとされます。葉腋に珠芽をつける型は田村(1958)で Caltha hiranoi として新称され、Veldkamp(2015)のsubsp. verna もしくは subsp. ficariiformis に当たる型と考えられています。キクザキリュウキンカはより大きくなる型で、植村ら(2015)や植村(1993)で F. ficarioides もしくは Ranunculus ficarioides に当たるとしての和名を提唱されていますが、Veldkamp(2015)の subsp. ficarioides とは花サイズやその他の形質が一致しないとされ、研究が不足しています。花の光沢は紫外線を反射し、気温が低いときでも、花の中心は周囲の空気よりも数度暖かく、種子と花粉の成熟が促進され、花粉媒介者に好まれることが分かっています(van der Kooi et al., 2017)。
No.1200 クロタネソウ Nigella damascena
一年草(Flora of North America)。別名ニゲラ。茎は直立し、細長く、10〜75cmで、つやがあります。葉は2~16cmで、茎生葉は葉柄があり、葉柄は±無柄の葉より幅広い。花序:総苞片は渦巻き状で、茎生葉に似ており、花を取り囲むように湾曲します。花は直径10〜50(~60)mmで。萼片は青色、ときにピンクまたは白色。短い爪状。8〜25×3〜15mm。頂部は全体から不規則に深裂、ときに浅裂。花弁は爪状。外側の唇は遠位に2裂し、2〜3の蜜腺があるか頂部が広がり、外側の唇にはうろこがついています。蒴果は滑らかで8~35mm。室は5~10個。嘴は細長く伸びます。花期は晩春~初秋。ユーラシア大陸原産で、観賞用やドライフラワーアレンジメント用としてよく栽培されています。時折栽培を逃れ、定着することがあります。
No.1207 レンゲショウマ Anemonopsis macrophylla
多年草。茎は高さ40~80cm。根生葉や下部の茎葉は大型で2~4回3出複葉。葉はサラシナショウマやルイヨウショウマに似ますが葉の表裏とも無毛で鋸歯はもっと粗い。花は径3~3.5cm。萼片は長楕円形で先は円く、長さ1.5~2cm。花弁は直立して開出せず先の方は濃色となります。花は淡紫色で優雅です。本州(福島県~奈良県)の主として太平洋側に分布。ブナ帯の林床に生えます。
No.1208 ヒメウズ Semiaquilegia adoxoides
多年草。繊細な草本で、根茎は塊状。茎は高さ20~40cm。花茎は少し分岐。葉は3出複葉。花は白色~淡紅色。径約5mmで下垂します。萼片は長さ5~6mm。花弁は2.5~3mmで基部は短い距になります。本州(関東地方以西)、四国。九州;朝鮮。中国に分布。浅山や畑の土手などに生えます。
No.1209 オダマキ Aquilegia flabellata var. flabellata
多年草。オダマキ和名の「オダマキ」は、花の形が紡いだ麻糸を中が空洞になるように巻いた苧環(おだまき)に似ていることに因んでいます。ほとんど無毛。ミヤマオダマキより全体的に大柄で高さ30~50cmになり、花茎も丈夫で花も大きく、花数も多い。また、葉肉も厚くいっそう粉白色を帯びています。根出葉は2回3出複葉。開期は5月頃で紫花のほか白色もあります。子房や袋果は無毛。繁殖は実生が簡単で、春撒きをして秋に定植すると翌年開花します。秋播きの場合は開花は翌々年となります。日本で古くから栽培されています。日本に自生するミヤマオダマキを園芸化したものだとと考えられています。
No.1210 ミヤマオダマキ Aquilegia flabellata var. pumila
多年草(日本の高山植物)。根は太くてまっすぐに下に伸びます。葉は根出状に数枚出ます。それぞれ2回3出複葉で、1回目の葉柄ははっきり出ますが、2回目はごく短く、小葉は互いに集まります。小葉は扇形、薄くて淡緑色、表面は粉を吹いたようになります。茎は高さ10~25cmほど、花期は6~8月で先端に数輪の花をうつむき加減につけます。花は青紫色、萼片は広卵形で傘状に開き、花弁は円筒形にまとまって付き、先端はやや白っぽく、基部からは萼の間を抜けて距がのびます。果実は袋果で、5本の先のとがった筒を束ねたような姿で上を向きます。北海道~中部地方以北、南千島から朝鮮北部、樺太に分布する高山植物で、秋田県・宮城県・群馬県・石川県でレッドリストの絶滅危惧種(絶滅危惧I類)と岩手県で絶滅危惧II類に指定されています。
No.1212 セイヨウオダマキ Aquilegia vulgaris
多年草(Flora of North America)。茎は高さ30~72cm。根生葉は2回3出複葉、長さ10~30cm、茎よりかなり短い。小葉は上面が緑色、長さ15~47mm以下、粘らず、1次の小葉柄は長さ22~60mm(小葉は密集しない)、無毛またはまれに軟毛があります。花期は春~夏(5~7月)。花は下向き、萼片は花軸から散開または花軸に垂直に直立し、ほとんどが青色または紫色、槍状卵形、長さ(10~)15~25mm×幅8~12mm、先は広鋭形~鈍形。花弁は距がほとんどが青色または紫色、鉤状、長さ14~22mm、丈夫、均等に基部から細くなり、拡大部はほとんどが青色または紫色、長円形、長さ10~13mm×幅6~10mm。雄しべは長さ9~13。袋果は長さ15~25mm、嘴は長さ7~15mm。ヨーロッパ、北アフリカ原産で撹乱地に生えます。日本を含む各国で観賞用に栽培されます。
No.1212.1 ヤエセイヨウオダマキ Aquilegia vulgaris var. flore-pleno
八重咲きのセイヨウオダマキの変種。
No.1213.a セリバヒエンソウ Delphinium anthriscifolium
1年草。茎の高さ15~40cm。葉は長柄があって互生。葉身は3角状卵形。3全裂し、各裂片はさらに羽状深裂します。花は長柄があり、萼片は5個。花弁は淡紫色。背部の3個は合着して筒状の距となります。中国原産で明治年間に渡来し、東京周辺に多く見られます。
No.1213.b エラツムヒエンソウ Delphinium elatum
エラツムヒエンソウは筆者仮称。多年草ですが、暖地では1年草として栽培されます。丈は40~200cm。茎は軟毛に覆われるか無毛で緑色。分枝せず直立します。茎葉は対生、開花時には7~26枚付き、葉柄は長さ1~18cmで、葉身は長さ3~15cm、幅6~22cmの短い軟毛に覆われた5角形で、先は3~9裂し、裂片は幅8~30mm。茎頂に長さ25~100cmの穂状花序を出します。花は、径3-6cm、着色した花弁状の萼が目立ちます。園芸種の花色は青色を中心に、空色・淡青色・紫色・紫紅色・赤色・桃色・白色のほか、黄色系の品種も作出されています。花型は一重から半八重き・八重咲きまであります。花期は5~8月。果実は3裂した袋果で、長さ13~20mm。ヨーロッパのピレネー山脈からアルプス山脈・シベリア・中央アジアから中国西南部における標高1300~2300mの山岳地帯の原産で、観賞用に栽培され、他種との交配などで多くの園芸品種が作出されています。
No.1215 レイジンソウ Aconitum loczyanum
多年草(日本の野草)。和名の伶人草は花の形が伶人(舞楽の奏者)が被る冠に似ていることからつけられました。高さ40~80cmになり、上部には密に短毛が生えます。根生葉には長い柄があり、掌状に5~7裂します。茎葉は小さい。花は8~10月に茎の先や葉の腋につき、淡紅紫色で長さ約2.5cm、外側に開出毛が生えます。花柄は長さ1~1.5cmで、開出した毛が密に生えます。近畿地方以西の本州や、四国、九州に分布します。明るい林の中や山地の草原に生えます。
No.1225 ヤマトリカブト Aconitum japonicum subsp. japonicum
疑似一年草。茎は直立または斜上します。葉身は輪郭が円形~5角形、3中裂~3深裂し、裂片の切れ込みは浅いものから深いものまで幅の広い変異が観察されます。葉形の変異の幅は広い。花柄には全面に粗面屈毛が生えます。花冠のかぶとは僧帽状~円錐形でしばしば頂部が前方に屈曲し、嘴が長い。雌しべは無毛。稀に粗面屈毛あるいは粗面斜上毛が背軸側にまばらに生えます。雄しべは普通粗面開出毛が密生するがときに無毛となります。本州(関東地方~東海地方)に分布。ハコネトリカブト var. hakonense は箱根の草原に生え、全体が小型で、茎が直立し、葉の裂片の切れ込みが深く、花序が散房状で、花が密集してつく型でヤマトリカブトが草原に生えた直立型とされます。
No.1227.a ツクバトリカブト Aconitum japonicum subsp. maritimum var. maritimum
疑似一年草。茎は直立または斜上します。葉は輪郭が5角形。3全裂~3深裂し、左右裂片の欠刻が深いため葉身が5裂したかのように見えるものもあります。葉形の変異の幅は広いが、ヤマトリカブトと比較すると、鋸歯は粗く、鋸歯先端の突出が顕著な傾向にあります。花柄には全面に粗面屈毛が生えます。花冠のかぶとは僧帽形、嘴が長い。雌しべは無毛。稀に粗面屈毛が背軸側にまばらに生えます。雄しべはふつう粗面開出毛が密生するが、ときに無毛となります。本州(関東地方~中部地方)に分布。海寄りの丘陵地に分布します。
No.1238 イヌショウマ Cimicifuga biternata
多年草。茎の高さ40~90cm。根生葉は2回3出、ときに1回3出複葉。小葉は長さ6~10cm、幅5~10cm。花序には短毛が密生し、多数の小白花をつけます。本州(関東地方~近畿地方)に特産する。林縁に生えます。
No.1240 サラシナショウマ Cimicifuga simplex
多年草。茎の高さ40~150cm。茎の上部は花序とともに白細毛を密布します。葉は2~3回3出複葉。小葉は長さ3~8cm、幅1.5~5cm。花序は伸長して長さ20~30cm。密に小白花をつけます。雄花と両性花があります。萼片は楕円状船形。花弁は先が浅裂しいずれも早落します。雄しべの数は変化が多い。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国、シベリアに分布。シイ・カシ帯の丘陵からシラビソ帯上部に至るまでの林縁に生えます。
No.1242 ヒメカラマツ Thalictrum alpinum var. stipitatum
多年草(2018山梨県レッドデータブック)。草丈は花茎を含め8~20cm。根生葉は多数束生し有柄、長さ1~8cm分布の2~3回3出複葉。茎葉は1~2枚つけます。花期は7~8月。花は黄緑色で総状につき、花弁はなく、萼片は早落性。雄しべの花糸は糸状。果実はやや扁平な紡錘形で4〜6個つきます。本州中部の高山帯の草地に分布します。
No.1244 アキカラマツ Thalictrum minus var. hypoleucum
多年草。茎は高さ40~150cm。上部はよく分枝します。葉は2~4回3出複生し、小葉は長さ1~3cm。花序は大型で円錐条に広がり、多数の花をつけます。花は径1cm。痩果は2~4個ずつ集まり、柄はありません。北海道、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、モンゴルに分布。林縁や草原に生えます。
No.1246 シキンカラマツ Thalictrum rochebrunianum
多年草。茎は0.7〜1.5mで紫色を帯び、無毛。葉は互生し3~4回3出複葉、小葉は長さ1~3cmで先が浅く3裂します。花には花弁がなく、花弁に見える紅紫色の部分は萼片。萼片は薄い紅紫色で4〜5個あり楕円形。萼片は花の頃にも落ちずに残ります。雄しべと雌しべは黄色く、多数。葯は長楕円形で、花柄は無毛。日本の本州(長野県、群馬県、福島県の3県のみ)に分布し、山地の落葉広葉樹林の縁や林の中の湿った場所に生えます。
No.1248.1 ヤクシマカラマツ Thalictrum tuberiferum var. yakusimense
多年草。草丈10~15cm。ミヤマカラマツの変種で、全体に小型で、葉は3小葉からなり基部は円形。花期は7~9月。花は小数つき、淡紅色を帯び、径5~8mm。屋久島に分布する固有種。林縁に生えます。
No.1257 イチリンソウ Anemone nikoensis
多年草。根茎は横にはい、所々少し肥厚します。根生葉は長柄があり、1~2回3出複葉。小葉は長さ2~5cm。根生葉を出さない根茎の先に花茎を立てます。総苞葉は有柄で1回3出します。花茎は20~30cm。花は1個、萼片は5個。早春に現われ、初夏には枯れる早春季植物。本州、四国、九州に分布。林縁や林床に生えます。
No.1258 キクザキイチゲ Anemone pseudoaltaica
多年草。別名キクザキイチリンソウ。根茎は細く2~10cm横にはいます。根生葉は長柄があり、2~3回3出複葉。小葉は羽状に深裂します。根生葉とは離れて花茎が立ちます。花茎は10~30cm。総苞葉は3枚輪生し、3出複生します。花は1個頂生、白色花と青紫色花があります。萼片は8~13枚。早春に現われ、初夏には枯れる早春季植物。北海道、本州(近畿地方以北)に分布。主としてブナ帯の林縁、林床に生えます。
No.1263 ニリンソウ Anemone flaccida
多年草。根生葉は長柄があり、3全裂。頂小葉は長さ2~4cmであります。総苞葉は無柄で深く欠刻します。花は1~3個。萼片は5個。早春に現われ、初夏には枯れる早春季植物。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国、ウスリーに分布。林縁や山ぎわの畑の土手などに生えます。
No.1265 ハクサンイチゲ Anemone narcissiflora subsp. nipponica
多年草。根生葉は1回3出複葉、細かく深裂して円形に見え、長柄があります。茎葉は無柄。花期は6~8月。茎頂の長い花柄の先に2~6個の花がつきます。花は直径2~3.5cm、白い花弁のように見える萼片が5~7個つきます。花柄は長さ2~12cm、果時には伸び、8~15cmになります。痩果は長さ6~8mmの扁平な広惰円形、縁に翼があり、熟すと黒色になります。高山植物の代表種で、中部地方以北から東北地方の亜高山帯から高山帯の湿った草原に生育します。しばしば、雪渓が解けた跡に群生が見られます。白色の花弁に見えるのは萼片で5-7枚あります。萼片が緑色に変わった個体はミドリハクサンイチゲ f. viridis と呼ばれます。
No.1267 ハナイチゲ Anemone coronaria
和名は『Ylist』に従います。別名ボタンイチゲで通常「アネモネ」と呼ばれます。多年草。地下に分岐性の褐色の塊茎があり、高さ25~40cm。根出葉は3裂または掌状深裂もしくは中裂し、各裂片は細裂して最終裂片は線形をなして微突頭となります。花期は4~5月。花茎は塊茎から伸び上がり、1花を頂生します。花部より離れて総苞葉を輪生状につけます。萼片は6~8個あり、赤、桃、紫、藍、白など各色があります。雄しべは多数で、柱頭は黒紫色を呈します。痩果は多数が集まって球形をなし、それぞれに1種子を生じます。地中海沿岸原産で、秋植え球根として切り花、花壇、鉢物に広く栽培されています。イギリスへは1596年に紹介され、日本へは1930年(昭和5年)に渡来しました。
No.1268 シュウメイギク Anemone hupehensis var. japonica
別名キブネギク。茎は高さ50~80cm。根生葉は3出複葉。小葉は3~5浅中裂し、長さ5~7cm。萼片は約30枚。外側のものは緑色で厚く、内側のものは紅紫色で花弁状。中国原産。庭に植えられますが、逸出して林縁にも生えます。
No.1268.a ボタンキブネギク Anemone x hybrida
No.1269 スハマソウ Hepatica nobilis var. japonica f. variegata
多年草。ミスミソウにくらべ根生葉の裂片の先が鈍く、萼片も卵形~狭卵形で円みがあり、白色。普通6~8個で少ない。本州(東北地方の太平洋側から関東地方南部)に分布。樹林内に生えます。
No.1271 フユボタン Helleborus niger
別名クリスマスローズ。常緑多年草。木質の暗色の根茎があります。高さ23~30cm。葉は掌状複葉、小葉は7~9個、革質、ややワックス状、濃緑色、ほとんど歯がありません。花茎は高さ7.5~23cm、肉質、淡緑色または紫色の斑点があり、花を普通1個、まれに2~3個、上向きにつけます。花は直径4~7.5cm。萼片は5個、長さ2~4cm、幅1.2~4cm、杯形~平開し、星形になります。花色は白色、緑色の目がありますが、蕾や萼片の裏はピンク色であり、古くなるとピンク色になり、すぐに濃いピンク色やほとんど赤色になるものもあります。雄しべは多数、黄色。花粉は平滑。心皮は5~8個。種子に目立つエライオソームがあります。花期は1~3月(高山地では6月)。古くからの栽培種であり、多数の園芸品種がある。ヨーロッパ南部~中央部の高山地帯(オーストリア、ドイツ、スイス、イタリア、ボスニアヘルツェゴビナ、クロアチア、スロベニア)原産。Helleborus niger subsp. niger:葉が濃緑色、ときに葉先の縁に数個の歯があり、花は直径約7cm。Helleborus niger subsp. macranthus:北イタリア、ユーゴスラビアの狭い地域だけに分布します。葉がわずかに葉縁が青色~灰色を帯び、縁に小さな歯があります。花は比較的に大きく、直径7~9cm。1957年の原記載では花は純白色、直径8.5cm。花茎は高さ30cm、深紅色の斑点があります。
No.1271.a ヒメフユボタン Helleborus orientalis
別名ハルザキクリスマスローズ、レンテンローズ。常緑多年草。高さ45cm以下。葉は幅45cm以下、小葉が7~11個、中央の小葉は分裂せず、ほぼ楕円形、長さ約17.5cm、最大幅約7.5cm、粗い鋸歯があります。葉質は強く、革質、普通、無毛。花茎は緑色または斑点があり、斑点は特に基部で多く、花を7個以下。花は香が無く、葉などは苦味と吐き気を催す味があります。野生種は花が直径4.5~7cm、栽培種の大きいものは10cmになり、花が普通、下向きにつきます。花色は白色、帯緑色、クリーム色、赤色のぼかし、赤色の斑点、赤色の縞模様など。蜜腺は緑色または赤色を帯びます。心皮は基部で結合しません。花期は3月。ギリシャ北西部、トルコ北西部、ロシアのコーカサス地方原産。ハルザキクリスマスローズを親としたハイブリッドはオリエンタレス・ハイブリッド Orientalis Hybrids といわれ、ヘレボルスの中でもっとも品種が多い。
No.1273 イトキンポウゲ Ranunculus reptans
多年草(Flora of China)。根はひげ根、太さはほぼ等しい。茎は糸状。匍匐茎を伸ばし、長さ25cm以下。無毛またはまばらに伏毛があり、節から根を出します。根生葉は約6個、ほぼ無柄。葉身は狭線形~線状倒披針形~狭へら形、長さ3.5~5.5cm×幅0.1~0.2cm。無毛またはまばらに微軟毛があり、基部はわずかに広がり、全縁、先は鈍形。茎葉は各節に数個つき、根生葉に似るが、小さい。花期は7~9月。花は単生、頂生または腋生、直径0.6~0.9cm。花柄は長さ3~8cm、微軟毛があります。花托は無毛。萼片は5個、卵状円形、長さ2~3mm、外側に微軟毛があります。花弁は5~7個、倒卵形~狭倒卵形、長さ3~4.5mm×幅2~2.5mm。蜜腺の穴は鱗片が無く、先は円形または切形雄しべは多数。葯は卵状円形。集合果は球形、直径2.5~5mm、心皮は多数。痩果は斜めの倒卵形、長さ1~1.5mm×幅0.8~1mm、無毛。花柱は宿存し、長さ約0.2mm。日本(北海道~本州)、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、ヨーロッパ、北アメリカ原産。池や沼の縁に生えます。
No.1279 タガラシ Ranunculus sceleratus
越年草。根茎は短い。茎の高さ25~60cm、上部は分枝することが多い。根生葉は3~5中裂します。花期は4〜5月。花は約径1cm。萼片の外側に白色軟毛があります。北海道。本州、四国、九州、琉球;北半球の亜熱帯~温帯に広く分布します。休耕田や溝の縁に生えます。
No.1282 ウマノアシガタ Ranunculus japonicus
別名キンポウゲ。多年草。根茎は短い。茎の高さ30~60cm。根生葉は長さ10~20cm。3~5中裂し、裂片はさらに2~3裂します。茎上部の葉は披針形で苞状です。花は黄色、径約2cm。花弁の表面は光沢があります。北海道(西南部)、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国に分布。山野に生えます。ヤエキンポウゲ f. pleniflorus は重弁のものをいい、稀に見られます。これを本来はキンポウゲと呼びましたが今は母種の別名としています。花弁表面側は最表面薄膜とカロテノイド層に続くデンプン顆粒層から構成されており、強い光沢は花弁の最表面にある薄膜にデンプンを含むデンプン顆粒層が紫外線を反射しています(針山ら,2013)。このような形質はキンポウゲ属 Ranunculus 全般で広く見られ、その適応的意義は日本の研究では言及されませんが、反射により気温が低いときでも、花の中心は周囲の空気よりも数度暖かく、種子と花粉の成熟が促進され、花粉媒介者に好まれることが分かっています(van der Kooi et al., 2017)。
No.1282.a ヒメウマノアシガタ Ranunculus yakushimensis
多年草。草丈6~10cm。茎は中実で、下部は倒れ花後節から根を出して増えます。根出葉は3中裂し、裂片はさらに3浅裂し、長さ0.5~1.5cm。両面に淡褐色の伏毛があります。茎葉は下のものは3裂し、上部は線形。花期は7~8月。花は単生し、花弁は黄色で長さ1.2~1.5cm。日本の屋久島固有種で、高山帯の湿地に生えます。
No.1287 キツネノボタン Ranunculus silerifolius var. glaber
多年草。茎は高さ30~80cm。直立して上部はよく分枝します。茎の毛は少なく。斜上します。根生葉は幅5~10cm。3出複生し、頂小葉は3中裂。側小葉は2深裂し、裂片はさらに2浅裂します。花は径約1cm。集合果は球形。痩果の縁に稜がない点がケキツネノボタンとの識別に重視されます。北海道、本州、四国、九州、琉球に分布。陰湿な環境に生えます。ヤエザキキツネノボタン R. guerpaertensis f. pleniflorus は稀に生える八重咲きのもの。
No.1288 ケキツネノボタン Ranunculus cantoniensis
多年草。キツネノボタンに似ますが葉形、残存花柱の形、茎や枝の開出毛など明らかに異なるほか、果実の縁に稜がある点を特徴とします。本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国に分布。キツネノボタンが日陰を好むのに対し、本種は日当たりのよい環境を好み、キツネノボタンより南方に多い。
No.1295 センニンソウ Clematis terniflora
草本状の木本性つる植物。葉は羽状複葉。小葉は3~7枚。小葉の葉形は卵形~狭披針形まで著しく変化があります。枝の先端および葉腋より円錐状集散花序を出します。白色の萼片4枚が十字形に平開します。明るい林縁や草地縁にふつう。北海道、本州、四国、九州、琉球、小笠原;朝鮮、中国に分布。
No.1295.1 タチセンニンソウ Clematis terniflora var. mandshurica
葯の先端が細かく尖るセンニンソウの変種(Flora of China)。中国、北朝鮮、モンゴル、ロシア(シベリア)に分布し、傾斜地の雑木林に生息します。日本では稀に栽培されます。
No.1298 コボタンヅル Clematis apiifolia var. biternata
ボタンヅルの変種で、葉が2回3出複葉である点が異なります。痩果は普通無毛であると記す文献もありますが、頂部には毛があるのが普通です。本州(関東地方~中部地方)に分布します。
No.1302 ハンショウヅル Clematis japonica
草本状の木本性つる植物。葉は1回3出複葉。花柄は葉腋より伸び、葉柄より長い。花柄に1対の披針形の小苞がつきます。花は鍾形。4枚の萼片は紫褐色で基部や反曲部にはやや毛があります。林縁に生えます。本州、九州に分布。萼片が黄白色のものをシロハンショウヅル f. cremea といい、分布域にごくまれに見られます。
No.1308 クサボタン Clematis stans
茎の基部がやや木化する多年草。茎は直立します。葉は1回3出複葉。小葉は長さ4~13cm。茎の先端や葉腋に集散状に花序をつけます。花は下向きの狭い鍾状で基部は筒状、白色~淡紫色。先は各萼片とも反り返ります。本州に分布。林縁や草原に生えます。
No.1309 テッセン Clematis florida
つる性で多年生草本(Flora of China)。茎は1mほどで、浅く4~6溝があり、綿毛が生え、節は膨らみます。葉は1〜2対で、葉柄は2〜4cm、葉身は狭卵形から披針形、1〜6×0.4〜2cm、紙質、両面にごくまばらな鱗片状〜亜麻状、基部は丸いか広く楔状、縁は全体、頂部は鋭く、基部の葉脈はほぼ平ら。花期は4~6月。花は直径3.6~5cm。花柄は3.7~8.5cmで、綿毛が密生します。萼片は6枚、白色で楕円形からひし形、2〜3×1〜1.5cm、外側に中脈に沿って密な鱗片があり、外側に光沢があり、縁は滑らかで先端は鋭く尖っています。葯は長楕円形から線形で2.5〜3.5mm、先端は鈍角。雄しべは1〜1.2cm、光沢があり、先端が尖ります。子房は綿毛で覆われます。花柱は3.5mm、基部から中央部にかけて密な光沢があり、中央部から先端にかけては光沢があります。雄しべは拡張し、広楕円形からひし形、約3.5×3mm、無毛。8mm、基部は綿毛で広がり、先端は綿毛で覆われます。蒴果は無柄、広卵形から卵状三角形、1.4~3cm。カザグルマによく似た植物で、ネットでは混同された記事が多いですが、花柄に苞がある点でカザグルマと区別できます。『Flora of China』では違いとして花は腋生で、1(~4)輪、2苞の花序、葉腋またはその年の枝の先端から1〜2個つくことも書かれています。中国(広東省、広西チワン族自治区、湖北省、湖南省、江西省、雲南省、浙江省)原産で、約1700mの低木、雑木林、川沿いに生えます。
No.1310 カザグルマ Clematis patens
多年生草本状の木本性つる植物(Flora of China)。茎は1mほどで、縦に5〜6条の浅い溝があり、まばらに綿毛が生えます。葉は通常3出複葉で、時に羽状複葉または単葉、小葉は3~5枚。葉柄は4〜8cm、葉身は卵形、狭卵形または広披針形、3〜7×1.5〜5cm、紙質、両表面は葉脈にまばらな光沢があるか軸方向に滑らか、基部は円形、切頭、広楔形また似心形、縁全体、頂点は尖頭か鋭頭、基部の葉脈はやや突出します。花期は5~6月、花は新梢の先端に単生します。直径7〜12cm。花柄は丈夫で3.5〜10cm、光沢があります。萼片は5、6、8枚で、白色(神奈川県植物誌調査会(2018)では萼片は6~8枚で淡紫色または白色としています)、楕円形、3.5〜6×1.5〜3.5cm、基部中央脈に沿って外側に凸状から凹状、基部側脈に沿って粘液質、外側に光沢、縁は滑らか。葯は線形で6〜8mm、先端は鈍角か尖頭。子房は光沢があります。雄しべは約9mm。基部から中央部にかけて密に絨毛があります。雄しべは広卵形、3.5〜5×3〜4.5mm、圧縮された綿毛があり、花柱は粘性で3〜3.8cm、黄色の綿毛があります。果期は6月~7月。テッセンと似ていますが、花柄に苞がないことで区別できます。中国(遼寧省、山東省、浙江省)、日本(本州、四国、九州)、韓国に分布し、200〜1000mの森林、斜面、低木林の林縁に生えます。花が美しいので人の目につきやすく、自生品は姿を消しつつあります。
No.1310.a テキセンシスクレマチス Clematis texensis
草本状の木本性つる植物(Flora of North America)。茎は光沢があり、3mほどになり、節付近は光沢があるか、ときに±粗毛に覆われる。葉身は1羽状で、葉身は6〜10個、それに加えて尾状節があり、卵形からほぼ円形、非裂片、2〜3裂片、あるいは最も近いものは3裂片、1〜9×1〜6cm、革質、軸方向に顕著な網目状、軸方向の表面は通常光沢、ときに粗い光沢があります。花期は春から夏(3〜6月)。花序は腋窩につき、1〜7輪。花は卵形から壺形、萼片は外方と先端が赤から緋色、卵状披針形、1.5~3cm、縁は広がらず、厚く、しわがなく、光沢があり、先端は尖端から反り返り、外方に光沢があります。嘴は4〜7cmで羽状。北アメリカ(テキサス州エドワーズ高原の南東部のみ)原産。標高80~700mの森林地帯、石灰質の崖、川岸に生えます。赤い花を咲かせる唯一のクレマチスとして観賞用に広く栽培されています。日本でも「テキセンシス系」の名称で流通しますが、雑種である可能性も高いです。
引用文献
針山孝彦・下村政嗣・山濱由美・高久康春・下澤楯夫. 2013. ウマノアシガタの高輝度反射と紫外線反射の起源. 高分子論文集 70(5): 221-226. https://doi.org/10.1295/koron.70.221
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726
塚本洋太郎. 1994. 園芸植物大事典 コンパクト版. 小学館, 東京. 3710pp. ISBN: 9784093051118
van der Kooi, C. J., Elzenga, J. T. M., Dijksterhuis, J., & Stavenga, D. G. 2017. Functional optics of glossy buttercup flowers. Journal of the Royal Society Interface 14(127): 20160933. https://doi.org/10.1098/rsif.2016.0933