アワブキ科 Sabiaceae は高木、低木ときにつる性木本。葉は互生、単葉あるいは羽状複葉、托葉はない。集散花序または総状ときに円錐花序をつくります。花はふつう両性ときに単性、左右相称。萼片2~5ときに基部合着し、瓦重ね状に配列。花弁は4~5、基部合着。雄しべは(3~)5本、花弁に対生し、あし。子房は上位、心皮は2~3。果実は漿果または乾果。種子は1室に1個、胚乳はありません。APGⅣ体系ではハス科、スズカケノキ科、ヤマモガシ科とともにヤマモガシ目に所属。世界に3属約50種があります。日本には2属(アワブキ属、アオカズラ属)8種があります。
本記事ではアワブキ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
No.1315 ヤマビワ Meliosma rigida
常緑小高木(佐竹,1999)。和名は山枇杷の意で、葉の形がビワに似ることによります。高さ7mに達します。樹皮は赤褐色でなめらか。若枝、花序、葉柄と葉裏には赤褐色の綿毛を密布します。葉は互生でやや束生し、葉柄は長さ2~4cm、葉身は狭倒披針形ないし倒披針形、時に倒披針状楕円形で先端は急に尖り、基部側は次第に葉柄に流れ、長さ12~22cm、大きい場合は30cm、葉幅は3~7cmになります。葉質は革質、縁は荒い鋸歯があり、鋸歯先端は芒状に突き出しますが、時には目立たないこともあります。10~16対の側脈があり、表面は無毛でつやがありますが、裏面では細脈まではっきりと隆起します。花期は6月。茎の先端に大きな円錐花序を出します。花序の長さは10~20cmで、花は白で径4~6mm、花柄は長さ2mm、花柄から萼片までは褐色の毛が生えます。萼片は5、大きい花弁よりは小さい。花弁は5、外側の3つは大きく、広卵形で長さ2~3mm、開花時には大きく開きます。内側の2つは小さくて痕跡的。雄蘂は2、仮雄蘂は3、長楕円形で長さ2mm。核果は球形で径6~7mm、始めは赤く、後に熟して黒紫になります。本州の紀伊半島以西、四国、九州、琉球列島;台湾、中国に分布し、山地、常緑広葉樹林に生えます。
引用文献
佐竹義輔. 1999. 日本の野生植物 木本1 新装版. 平凡社, 東京. 321pp. ISBN: 9784582535044