ドウダンツツジ・サラサドウダン・アブラツツジの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Enkianthus perulatus

ドウダンツツジ・サラサドウダン・アブラツツジはいずれもツツジ科ドウダンツツジ属に含まれ、特にドウダンツツジとサラサドウダンはあちこちの庭木や公園樹として栽培されるのを見かけるでしょう。下向きの壺型の花を咲かせるが可愛いです。しかし、葉の形がよく似ており、区別に迷う場合があるかもしれません。これらを区別する場合、葉の大きさが毛の生え具合を詳しく観察する必要があります。花が咲いている場合は比較的簡単に区別できます。本記事ではドウダンツツジ属の分類・形態について解説していきます。

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ドウダンツツジ・サラサドウダン・アブラツツジとは?

ドウダンツツジ(灯台躑躅・満天星躑躅) Enkianthus perulatus は日本の関東南部~九州;中国東部・台湾に分布し、丘陵~低山の岩場に稀に生える落葉低木です。日本では庭木・生垣・公園樹として普通に栽培されます。和名の「ドウダン」は「トウダイ(灯台)」が訛ったものとされ、枝が3分岐する様子を、昔の日本の宮中で使用された3脚で立つ「結び灯台」に例えたことに由来するとされています。

サラサドウダン(更紗灯台・更紗満天星) Enkianthus campanulatus は別名サラサドウダンツツジ、フウリンツツジ(風鈴躑躅)。日本の北海道西部~九州に分布し、標高の高い山地の尾根や岩場にやや普通に生える落葉低木~小高木です。日本では寒地で庭木・公園樹として普通に栽培されます。

アブラツツジ(油躑躅) Enkianthus subsessilis は別名アブラドウダンツツジ、アブラドウダン。日本の東北~中部地方東部に分布し、山地の岩場にやや稀に生える落葉低木です。

いずれもツツジ科ドウダンツツジ属に含まれ、特にドウダンツツジとサラサドウダンはあちこちの庭木や公園樹として栽培されるのを見かけるでしょう。

ツツジ科の中でもアセビ属やネジキ属と同じく木本で下向きの壺型の花を咲かせるのが特徴で、花期の春(4~5月)になると下向きにぶら下がった沢山の「壺」が観察できます。紅葉も鮮やかなので2度楽しむことができます。

葉が束生し、倒卵形で鋸歯があることも共通しています。

そのため、区別に迷う場合があるかもしれません。サラサドウダンは「ドウダンツツジ」として園芸で販売されている場合があります。

ドウダンツツジ・サラサドウダン・アブラツツジの違いは?

しかし、3種は同属ではあるものの、葉にも花にも違いが確認できます(林,2019)。

まず葉に関しては、ドウダンツツジとアブラツツジでは葉身の長さが2~4cmと小さく、葉脈の側脈が目立たず、葉下面の主脈と側脈の分岐点に茶色い縮れ毛が殆ど無いのに対して、サラサドウダンでは葉身の長さが3~7cmと大きく、葉脈の側脈が目立ち、葉下面にある茶色い縮れ毛があるという違いがあります。

サラサドウダンはドウダンツツジ属の中でもかなり大型で例外的な大きさです。生長の仕方もサラサドウダンは小高木になるほど大きくなり、太い幹になっていることがあります。

更にサラサドウダンの花のみが花冠の先端が赤くなっています。「サラサドウダン」という和名は花の模様が更紗染めの模様に似ていることに由来しています。

ドウダンツツジとアブラツツジについては葉がかなり似ているため、少し区別が難しい場合があるかもしれません。

ただ、ドウダンツツジでは葉柄が無毛で、葉下面にも全体的に毛が少なく、主脈沿いの基部に軟毛が生える程度であるのに対して、アブラツツジでは葉柄が有毛で褐色の縮れ毛があり、葉下面にも全体的に毛が多く、特に主脈沿いに褐色の縮れ毛があるという違いがあります。

花に関しても、ドウダンツツジでは花冠が細長いのに対して、アブラツツジでは花冠が短めで丸くまさに「壺」という形をしています。

ドウダンツツジの葉上面
ドウダンツツジの葉下面:無毛に近い
ドウダンツツジの花
サラサドウダンの葉上面
サラサドウダンの葉下面
サラサドウダンの樹皮
サラサドウダンの未熟果
サラサドウダンの花|By Alpsdake – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36752461
アブラツツジの葉上面
アブラツツジの葉下面:明らかに有毛
アブラツツジの花|By Qwert1234 – Qwert1234’s file, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19756078
アブラツツジの未熟果|By Krzysztof Ziarnek, Kenraiz – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=99756783

他に似た種類はいる?

ドウダンツツジには葉が幅広いヒロハドウダンツツジ f. japonicus が知られています。

サラサドウダンにもいくつか変種と品種が知られ、ベニサラサドウダン var. palibinii は本州北部の高地に分布し、花全体が濃い紅色の変種、ツクシドウダン var. longilobus は花色が濃く花冠の切れ込みが深い変種、キバナフウリンツツジ f. lutescens は花が黄色い品種です。

他にもドウダンツツジ属には日本に16種も分布しているため、更に区別が難しい別種が存在します。ここでは簡単に似た種類を紹介します。

ベニドウダン Enkianthus cernuus f. rubens はドウダンツツジにかなり似ますが、葉柄が短めで鋸歯が顕著で、花冠の先がすぼまらず鐘形です。名前の通り花冠が赤いですが、白いシロドウダン f. cernuus もあります。

コアブラツツジ Enkianthus nudipes はアブラツツジに酷似しますが、葉が小さめで、葉裏・葉柄・若枝・花序が普通無毛で、中部地方~近畿・四国の岩場に生えます。

ベニサラサドウダンの花|By Qwert1234 – Qwert1234’s file, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=92457914

引用文献

林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

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