ケヤキ・アキニレ・ハルニレの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Zelkova serrata (Thunberg, 1794) Makino, 1903

ケヤキ・アキニレ・ハルニレはいずれもニレ科に含まれ、日本では林内で自生しているのをよく見かける他、街路樹としては極めて一般的に栽培されている落葉高木です。いずれも紅葉が美しく、混同されることがあるかもしれません。3種のうちケヤキがケヤキ属、アキニレとハルニレがニレ属に含まれ、果実の形に大きな違いがあり、生態にも違いがあることが知られていますが、実用的には葉の形によって区別するのが確実でしょう。本記事ではケヤキ属とニレ属の分類・形態について解説していきます。

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ケヤキ・アキニレ・ハルニレとは?

ケヤキ(欅) Zelkova serrata は別名ツキ(槻)。日本の本州・四国・九州;中国東部のシイ・カシ帯~ブナ帯下部の谷沿いに生える落葉高木です。日本では街路樹や公園樹として一般的に栽培されます。メゲヤキ f. stipulacea は葉の両面と葉柄に密に毛がある品種です。

アキニレ(秋楡) Ulmus parvifolia は別名ニレケヤキ(楡欅)。日本の本州(中部以西)・四国・九州・琉球;朝鮮・中国・台湾のシイ・カシ帯から亜熱帯に分布し、山野の荒れ地、川岸や河原に生える落葉高木です。日本では公園樹や街路樹として一般的に栽培されます。

ハルニレ(春楡) Ulmus davidiana var. japonica は日本の北海道・本州・四国・九州;朝鮮・中国(東北・北部)に分布し、湿潤で肥沃な平原や氾濫源などに生える落葉高木です。北日本では公園樹として栽培されます。

いずれもニレ科に含まれ、日本では林内で自生しているのをよく見かける他、街路樹としては極めて一般的に栽培されている落葉高木です。東京都港区六本木の「けやき坂通り」も有名です。育てやすいことに加え、秋になるとオレンジ色~黄色に美しく紅葉することもその理由でしょう。

ケヤキの花もハルニレとアキニレの花も風媒花であるため地味である点も共通しています(索・橋詰,1995;Caudullo & De Rigo, 2016)。

しかし、これらの特徴から3種を混同してしまう人は多いかもしれません。

ケヤキ・アキニレ・ハルニレの違いは?

これら3種はまず分類学上は2グループに別れ、ケヤキがケヤキ属に含まれるのに対して、アキニレとハルニレがニレ属に含まれています(神奈川県植物誌調査会,2018;林,2019)。

具体的には、ケヤキでは果実が痩果であるのに対して、アキニレとハルニレでは果実が翼果(平べったく風を受ける部分がある果実)であるという違いがあります。

これは種子散布方法の違いに関係しています。

アキニレとハルニレは翼果の「翼」によって風を受け、遠くに飛んで生息地を広げます。これは風散布と呼ばれます。

一方、ケヤキは果実自体は痩果で果実自体の種子散布能力は非常に少ないです。しかし、葉と果実が付着したままの枝が落下することで、同じく風散布されることがわかっています(星野,1990)。

これはケヤキの種子が腐植が少ない土壌の露出した場所を好み、発芽した種子から育った幼木は日陰に弱いことから発達したと考えられています。

このように非常に興味深い生態上の違いがありますが、果期以外は果実を確認できないので区別には利用しにくいかもしれません。それにこれではアキニレとハルニレの区別は難しいです。

実用的には葉の鋸歯の形で判断するのが良いでしょう。

具体的には、ケヤキでは単鋸歯の鋭鋸歯、アキニレでは単鋸歯の鈍鋸歯、ハルニレでは重鋸歯という違いがあります。

用語にすると少し分かりにくいかもしれませんが、要するにケヤキの葉縁は尖り、アキニレは丸く、ハルニレは鋸歯の中に鋸歯があるという複雑な状態になっています。写真で見ればすぐに分かると思います。

アキニレとハルニレに関しては名前の通り、アキニレでは花期が8~9月であるのに対して、ハルニレでは花期が3~5月であるという違いもあります。

細かいですが、花被片はアキニレでは4枚ですが、ハルニレでは4裂するものの繋がって1枚という違いもあります。

ケヤキの葉上面:葉縁は単鋸歯で鋭鋸歯
ケヤキの葉下面
ケヤキの若葉:若葉の時は成葉よりも細いものが多くかなり印象が異なる
ケヤキの樹皮:樹皮が茶色くかさぶたのように部分的に剥げる点がかなり特徴的で葉がなくてもこれだけで区別できる場合がある
ケヤキの花
アキニレの葉上面:葉縁は単鋸歯で鈍鋸歯
アキニレの葉下面
アキニレの樹皮
アキニレの未熟果
アキニレの果実
ハルニレの葉:葉縁は重鋸歯|By No machine-readable author provided. Ptelea assumed (based on copyright claims). – No machine-readable source provided. Own work assumed (based on copyright claims)., Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1004792
ハルニレの葉下面
ハルニレの若葉
ハルニレの樹皮
ハルニレの果実|By Izigabo – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=105050223

引用文献

Caudullo, G., & De Rigo, D. 2016. Ulmus-elms in Europe: distribution, habitat, usage and threats. In: European Atlas of Forest Tree Species. pp.186-188. Publications Office of the European Union, Luxembourg. ISBN: 9789279367403, https://doi.org/10.2788/4251

林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447

星野義延. 1990. ケヤキの果実散布における風散布体としての結果枝. 日本生態学会誌 40(1): 35-41. ISSN : 0021-5007, https://doi.org/10.18960/seitai.40.1_35

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

索志立・橋詰隼人. 1995. ケヤキの着花習性、開花、受粉、花粉の生産および花粉の飛散について. 日本林學會誌 77(4): 332-339. ISSN : 0021-485X, https://doi.org/10.11519/jjfs1953.77.4_332

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