ロベリア(ルリミゾカクシ)・ミゾカクシ・サワギキョウはキキョウ科らしい青系統の花の咲かせる点に加え、花は左右相称である点が特徴で、園芸では特にガーデニングで栽培されているのを見かけます。しかし、画像検索ではこれらの種類は混同されているようです。本来はこれらは全くの別種で花の形も異なりますし、生長の仕方や葉の特徴についても違いが確認できます。本記事ではミゾカクシ属の分類・形態について解説していきます。
ロベリア(ルリミゾカクシ)・ミゾカクシ・サワギキョウとは?
ルリミゾカクシ(瑠璃溝隠し) Lobelia erinus は別名ロベリア。アフリカ大陸中部と南部原産で、日本を含む世界中で観賞用に栽培されています(RBG Kew, 2024)。
ミゾカクシ(溝隠し) Lobelia chinensis は別名アゼムシロ(畦筵)。日本の北海道・本州・四国・九州・琉球;朝鮮・中国(中部以南)・台湾・インド・マレーシアに分布し、田のあぜや溝などの湿ったところに生える多年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。和名は溝を隠すように生えることに由来します。
サワギキョウ(沢桔梗) Lobelia sessilifolia は日本の北海道・本州・四国・九州;朝鮮・中国・サハリン・千島・シベリア東部・カムチャツカに分布し、丘陵地~山地の湿原に生える多年草です。
いずれもキキョウ科ミゾカクシ属に含まれ、キキョウ科らしい青系統の花の咲かせる点に加え、花は左右相称で、葯は筒状に合着する点がミゾカクシ属の共通の特徴です。
園芸ではルリミゾカクシとサワギキョウが栽培されることが多く、サワギキョウはベニバナサワギキョウ Lobelia cardinalis と交配され、「宿根ロベリア」などの名で流通しています。
しかし、『Google画像検索』で「宿根ロベリア」を検索すると明らかにルリミゾカクシが混じっており、混同が見られるようです。
また本来は「ロベリア」はミゾカクシ属に含まれる種類の総称ですが、ルリミゾカクシが「ロベリア」と呼ばれてしまうこともあり、混同されることはあるかもしれません。
ルリミゾカクシ・ミゾカクシ・サワギキョウの違いは?
これら3種の明確な違いは花にあります。ミゾカクシ属は全てキキョウ科に含まれるので「合弁花」になっており、花弁のように見えるものは「花冠裂片」です。
ミゾカクシでは花冠が淡紅紫色で5裂した花冠裂片のうち上部1対は斜め下を向くのに対して、ルリミゾカクシとサワギキョウは例外はあるものの普通は花冠が青紫色で5裂した花冠裂片のうち上部1対は上~斜め上を向いているという違いがあります。
ルリミゾカクシとサワギキョウに関しては、ミゾカクシでは5裂した花冠裂片のうち下部3枚は倒卵形で、上部1対は上部に突き出すのに対して、サワギキョウでは5裂した花冠裂片のうち下部3枚は披針形で、上部1対は斜め上に突き出すという違いがあります。
少し専門用語が多いですが、要するにサワギキョウの方がルリミゾカクシより花冠裂片が細長くなっています。
また、生長の仕方も違い、ミゾカクシとルリミゾカクシでは茎が這うように伸びますが、サワギキョウでは茎が直立します(神奈川県植物誌調査会,2018)。
葉はルリミゾカクシのみが毛に覆われており、サワギキョウのみが葉脈の側脈まではっきり見えています。
以上で区別することができます。ただ、サワギキョウと、ベニバナサワギキョウとの交雑種である宿根ロベリアとの違いは私は把握していません。ベニバナサワギキョウ自体は名前の通り花冠が赤いです。
ルリミゾカクシとサワギキョウの品種は?
ルリミゾカクシは品種改良が盛んで無数の園芸品種が存在します。全ては紹介できませんが、花の色としては花冠の全てが白色のもの、中央部のみが白色のものあります。
サワギキョウにはシロバナサワギキョウ f. leucantha という品種が存在します。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726
RBG Kew. 2024. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/