本記事では以下の雑誌にて公表した「東京都本土部におけるコモンツチバチとオオモンツチバチの記録」の報文の下書きを掲載します。
引用方法:池田健一. 2019. 東京都本土部におけるコモンツチバチとオオモンツチバチの記録. 月刊むし 585: 59-60. ISSN: 0388-418X [Ikeda, K. 2019. Records of Scolia decorata ventralis and Scolia histrionica japonica in the mainland of Tokyo. Gekkan-Mushi 585: 59-60.]
東京都本土部におけるコモンツチバチ2例目とオオモンツチバチの初記録を想定して執筆したものです。
微細な表現などに変更が加わっている可能性はありますが、引用文献などは同様です。より正確なものをお求めな場合は雑誌よりご参照ください。
本記事の補足を以下の記事で行っています。
コモンツチバチとオオモンツチバチの世界および東京での分布・生態
コモンツチバチScolia decorata ventralis Smith, 1873 は日本では北海道,本州,四国,九州,対馬,大隅諸島,口永良部島,伊豆諸島,小笠原諸島に分布し,ヒメコガネ等に寄生することが知られている種である。東京都本土部においては近年,世田谷区内で記録が1例ある(藤森,2016)。
また,オオモンツチバチScolia histrionica japonica Smith, 1873 は日本では北海道,本州,四国,九州,対馬,大隅諸島,伊豆諸島に分布し,砂地を好み,海岸や河川敷に多く生息し,夏から秋にみられる種である(寺山・須田,2016)。東京都本土部においては東京都本土部昆虫目録(東京都本土部昆虫目録作成プロジェクト,2016最終更新)によると記録がない。
筆者によるコモンツチバチとオオモンツチバチの記録
筆者は2018年に東京都狛江市内にてコモンツチバチとオオモンツチバチを撮影したのでここに報告する。
コモンツチバチは2018年7月14日16時半頃,和泉本町3丁目で,民家に植えられたオミナエシに訪花しているのを確認した。中胸背板の毛は白く薄く,頭部と胸部が黒く,腹部の第1背板から第4背板に黄帯を持つことから本種であると考えられる。撮影地は住宅地で,本種の行動圏は不明であるものの,付近の緑地は計画緑地が見られる程度である。寄主であるヒメコガネ類は筆者は現在のところ確認していない。本種の訪花植物としてはハッカ属,オカトラノオ,オミナエシが知られているが(雛倉,2011),本報告も同様のものとなる。本報告は東京都本土部における2例目の記録であると考えられる。
オオモンツチバチは2018年9月9日14時頃,和泉本町2丁目で,小学校グラウンドのフェンスに巻き付いたヒルガオの葉上に飛来し一時的に静止していた。複眼の後縁に黄色帯があることから本種であることを識別できる(寺山・須田,2016)。また,雌は後胸背板にのみ黄紋が見られることから(寺山・須田,2016),本個体は雌である。こちらの撮影地も同じく住宅地で,付近の緑地としては野川緑地公園がある。本報告は東京都本土部においては初記録とみられる。また海岸や河川敷に多く生息とする寺山・須田(2016)とは異なる例だが,浅野ら(2012)は「時に内陸部でも生息することがある。」としており,今回の例も同様のものと思われる。
引用文献
浅野真,川島逸郎,尾野広樹,2012.三浦半島の海浜における昆虫類の記録,第1報.神奈川自然誌資料 (33): 65-74. https://nh.kanagawa-museum.jp/www/contents/1600233778218/simple/nhr33_065-074_asano_s.pdf
雛倉正人,2011.川崎市における注目すべきハチ類の記録.第7次川崎市自然環境調査報告書.pp. 205-211,川崎市教育委員会,川崎.https://konrac2.sakura.ne.jp/book/RVII-p205.pdf
藤森健史,2016.コモンツチバチの東京都世田谷区における記録.神奈川虫報 (188): 60.
寺山守・須田博久,2016.日本産有剣ハチ類図鑑 東海大学出版部,平塚.
東京都本土部昆虫目録作成プロジェクト,2016最終更新.東京都本土部昆虫目録.http://tkm.na.coocan.jp/