ヤマトアシナガアリの腐倒木営巣例(『Ecological Notes』掲載論文)

動物

本記事では以下雑誌にて公開した「ヤマトアシナガアリの腐倒木営巣例」の本文を掲載します。冊子版およびpdf版をお求めの方は以下のリンクよりご購入下さい。同定・情報の間違いなどは次号以降で修正しますのでご報告下さい。

スポンサーリンク

ヤマトアシナガアリとは?

ヤマトアシナガアリ Aphaenogaster japonica Forel, 1911 は北海道から屋久島まで見られ,林縁や林内の土中,岩のすき間などに営巣するとされる種である(日本産アリ類データベースグループ,2003;寺山ら,2014).

筆者が確認したヤマトアシナガアリの営巣状況

筆者は本種を含む奈良県内のアリ相を報告したが(池田ら,2020),その後写真を整理していた所,2014年5月22日15時頃に、奈良市中町近畿大学奈良キャンパス北西部の林にあった腐倒木を割った中に本種のコロニーと,同コロニーが作ったと思われる坑道が現れている写真を確認した(図 2).樹種は記録が古く記憶していないが,落葉広葉樹林内であり,白色腐朽菌が見られるので,コナラかクヌギのような落葉広葉樹である可能性は高い.

図 2 ヤマトアシナガアリのコロニー

ヤマトアシナガアリの営巣に関する文献記録

本種は,日本産アリ類データベースグループ(2003),寺山ら(2014)には記載がないが,岩手県遠野市でのツキノワグマの餌資源調査においては標高約400~1200mのアカマツ・カラマツ・スギを主とした針葉樹林及び,コナラ・ミズナラ・シラカンバの主とした落葉広葉樹林での枯死材(残材・倒木・枯死木の総称)への営巣が普通に確認されており(佐藤ら,2014;安江ら,2015),安江ら(2015)では地表・土の中よりも枯死材での出現率が高くなっていた.撮影された枯死材は低地で一般的なクヌギやコナラを主体とした里山林(桜谷,1999)にあったことから,本種の枯死材への営巣はより一般的であることが示唆される.他にも本種に関して同様の報告がされている可能性はあるが,あまり知られていない事例のようなのでここに報告する.

引用文献

池田健一・葛西弘・合田愛・村上教介・石原竜・仲村華人・澤畠拓夫.2020.近畿大学奈良キャンパス周辺におけるアリ相.近畿大学農学部紀要 53: 46-70. ISSN: 2189-6267

日本産アリ類データベースグループ.2003.日本産アリ類全種図鑑.196pp. 学習研究社,東京.ISBN: 9784054017924

桜谷保之.1999.近畿大学奈良キャンパスの生態系の概観.近畿大学農学部紀要,32: 69-78. ISSN: 0453-8889

佐藤愛子・青井俊樹・安江悠真.2014.岩手県遠野市におけるアリ類の生息状況:夏期のツキノワグマの餌資源としての視点から.岩手大学農学部演習林報告,45: 81-97. ISSN: 0286-4339

寺山守・久保田敏・江口克之.2014.日本産アリ類図鑑.viii, 278 pp., 図版 48 pp. 朝倉書店,東京.ISBN: 9784254171563

安江悠真・青井俊樹・國崎貴嗣・原科幸爾・高橋広和・佐藤愛子.2015.夏期のツキノワグマによる針葉樹林の利用とアリ類の営巣基質としての枯死材との関係.哺乳類科学,55(2): 133-144. ISSN: 0385-437X, https://doi.org/10.11238/mammalianscience.55.133

pdf版

error:
タイトルとURLをコピーしました