本記事では以下雑誌にて公開した「徳島県鳴門市におけるスジボソフトハナバチのクササンタンカへの訪花記録」の本文を掲載します。冊子版およびpdf版をお求めの方は以下のリンクよりご購入下さい。同定・情報の間違いなどは次号以降で修正しますのでご報告下さい。
スジボソフトハナバチとは?
スジボソフトハナバチ(旧和名:スジボソコシブトハナバチ)Amegilla florea (Smith,1879) は、日本(本州、四国、九州、大隅諸島)、極東ロシア、中国、朝鮮半島、台湾に分布する(多田内・村尾,2014)、大顎・頭楯・複眼内縁などの黄色と、触角・脚・腹部腹板は赤褐色が特徴的な種で(京都府自然環境保全課,2015)、京都府 RDBで絶滅危惧種に指定されている他(京都府自然環境保全課,2015),神戸市の注目すべき膜翅目にも挙げられている(吉田・八木,2016)。また環境省第4次レッドリストで情報不足にあたるナミルリモンハナバチ Thyreus decorus (Smith, 1852) に労働寄生されることでも知られている(多田内・村尾,2014)。営巣行動などはほとんど不明とされている(京都府自然環境保全課,2015)。徳島県での記録は筆者の調査では不明だが普通に分布しているものと思われる。淡路島では洲本市三熊山で記録があった(岡田,1982)。
筆者が確認したスジボソフトハナバチの訪花記録
筆者は2010年8月14日17時頃、徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦福池鳴門公園内大鳴門橋架橋記念館エディの植木鉢のクササンタンカ Pentas lanceolata subsp. cymosa (Klotzsch) ‘Carnea’ に本種が訪花している様子を撮影したのでここに報告する(図 1)。
スジボソフトハナバチへの訪花の文献記録
スジボソフトハナバチへの訪花先としてはヤマハッカ、ツシマママコナ(加藤,2006)、テンニンカ(Wei et al., 2009)、キキョウ(市川,2011)、ギボウシラン、ゲットウ、フクジンソウ、フジウツギ(多田内・村尾,2014)、ツリフネソウ(多田内・村尾,2014;京都府自然環境保全課,2015)、キツネノカミソリ(Yamaji & Ohsawa, 2015; 2016)、Impatiens platypetala Lindl.(Priawandiputra et al., 2017)、シラタマカズラ(Sugawara et al., 2016)、シソ科(片岡ら,2019)などが知られるが、クササンタンカへの訪花は文献では確認できなかった。長い中舌による吸蜜に適う円筒花と共進化してきているとされ(京都府自然環境保全課,2015)、その訪花先にはそのような植物が関連していると思われる。
引用文献
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