ヒコサンエグリゴミムシダマシ類似個体の大阪府における記録(『Ecological Notes』掲載論文)

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本記事では以下雑誌にて公開した「大阪府におけるヒコサンエグリゴミムシダマシ類似個体の記録」の本文を掲載します。冊子版およびpdf版をお求めの方は以下のリンクよりご購入下さい。同定・情報の間違いなどは次号以降で修正しますのでご報告下さい。

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ヒコサンエグリゴミムシダマシとは?

ヒコサンエグリゴミムシダマシ Uloma hikosana Nakane, 1956 は本州・四国・九州に分布するコウチュウ目ゴミムシダマシ科の一種である(Masumoto & Nishikawa, 1986;秋田・益本,2016)。本種は関西では三重県(Masumoto & Nishikawa, 1986;秋田・益本,2016)、奈良県(Masumoto & Nishikawa, 1986:この記録は奈良県レッドデータブック改訂委員会(2017) の分布記録整理に含まれていない)、京都府(中濵ら,2019)で記録があるものの、大阪府内ではMasumoto & Nishikawa(1986)、大阪府(2000)、高橋(2011)、秋田・益本(2016)、初宿ら(2020)、国土交通省(2020年9月16日閲覧)を参照したものの、記録は確認できなかった。

図 8 大阪府のヒコサンエグリゴミムシダマシ類似個体

筆者のヒコサンエグリゴミムシダマシ類似個体の記録

筆者は2016年8月27日11時半頃、大阪府河内長野市滝畑南葛城山にて本種♂に類似した個体を撮影したのでここに報告する(図 8)。同属には多数種みられ、マルセルエグリゴミムシダマシ U. marseuli marseuli Nakane, 1956 などの類似種もいるが、ヒコサンエグリゴミムシダマシでは体色が赤褐色で、上翅間室が強く点刻され(Masumoto & Nishikawa, 1986;秋田・益本,2016)、雄では前頭の正中に沿う窪みは深くその両側が瘤状に盛り上がり、触角第5-7節内縁先端の小突起を欠き、前胸背板前縁の陥没部に接する部分は切り取られず(秋田・益本,2016)、前胸背板押圧部は深く2対の小瘤状隆起は明確(中條,1985)という特徴が見られ、本個体でもこれらが確認できる。ただ、検索に使われる腹面の形質(Masumoto & Nishikawa, 1986)が確認できないため、類似種とした。登山道脇で朽ちて露出した木材内部の上で静止しているところを撮影した。本記録は日本蟻類研究会大会エクスカーション内で撮影されたものであり、複数参加者がいたため、木材内部が自然に露出したものか、人為的に破壊されたものか、筆者には特定できなかった。追加報告を期待したい。マルセルエグリゴミムシダマシであったとしても、ヒコサンエグリゴミムシダマシの形態に類似した雄個体の報告はないと思われるのでここに報告する。

引用文献

秋田勝己・益本仁雄(2016)日本産ゴミムシダマシ大図鑑.むし社,東京.302pp.ISBN: 9784943955092, https://www.mushi-sha.co.jp/shopdetail/000000000494/

中條道崇(1985)ゴミムシダマシ科.黒沢良彦・久松定成・佐々治寛之(編)原色日本甲虫図鑑 3.pp.295-341.保育社,大阪.ISBN: 9784586300709

国土交通省(2020年9月16日閲覧)河川水辺の国勢調査 河川環境データベースシステム 近畿地方.http://www.nilim.go.jp/lab/fbg/ksnkankyo/dl_86_index.html

Masumoto, K. & Nishikawa, N. (1986) A revisional study of the species of the genus Uloma from Japan, Korea and Taiwan (Tenebrionidae, Coleoptera). Insecta matsumurana. New series: journal of the Faculty of Agriculture Hokkaido University, series entomology 35: 17-43. ISSN: 0020-1804

中濵直之・瀬口翔太・藤本将徳・有本久之・伊藤建夫・藤江隼平・高柳敦(2019)京都大学芦生研究林で2008年から2016年まで採集された甲虫類.大阪市立自然史博物館研究報告 73: 91-105.ISSN: 0078-6675

奈良県レッドデータブック改訂委員会 (2017) 奈良県野生生物目録.くらし創造部景観・環境局景観・自然環境課,奈良.422pp. https://www.pref.nara.jp/46825.htm

大阪府 (2000) 大阪府野生生物目録.環境農林水産部緑の環境整備室,大阪.351pp.

初宿成彦・安井通宏・市川顕彦・桂孝次郎・河合正人・中谷憲一・山崎一夫 (2020) 大阪市の甲虫相とその変遷.自然史研究 4(3): 41-104. ISSN: 0078-6683

高橋敞(2011)大阪市立自然史博物館所蔵甲虫類目録(1) ゴミムシダマシ科.大阪市立自然史博物館収蔵資料目録 43: 29-123. ISSN: 0389-9047, https://omnh-shop.ocnk.net/product/1342

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