ヒエガエリとハマヒエガエリはいずれもイネ科ヒエガエリ属に含まれる雑草です。地味な雑草で基本的には水辺を好みますが、路肩などでも見かけることがあります。円錐花序と小穂にある「芒」が特徴ですが、2種の区別がつかないという人もいるかもしれません。2種の区別は簡単で、基本的には芒の長さを調べればわかります。本記事ではヒエガエリ属の分類・形態について解説していきます。
ヒエガエリ・ハマヒエガエリとは?
ヒエガエリ(稗返り) Polypogon fugax は日本の本州・四国・九州・琉球;シベリア・朝鮮・中国・台湾・インド・ネパール・アフリカなどに分布し、湿地・野原・川原・土手・埋立地・荒れ地・庭・空き地・水田・休耕田・畑地に生える一年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。
ハマヒエガエリ(浜稗返り) Polypogon monspeliensis は日本の北海道・本州・四国・九州・琉球;アジア・ヨーロッパ・北アフリカの温帯~暖帯に分布し、海辺・湿地・川原・路傍に生える一年草です。
いずれもイネ科ヒエガエリ属に含まれる雑草です。地味な雑草で基本的には水辺を好みますが、路肩などでも見かけることがあります。
イネ科のなかでも円錐花序を作り、その円錐花序は枝が長く円柱形で散開し、小穂(イネ科特有の小さな花序)にある小花は1個で、包穎の先端は芒になるというのが特徴と言えるでしょう。
しかし、ヒエガエリとハマヒエガエリの区別がつかないという人はいるかもしれません。
ヒエガエリとハマヒエガエリの違いは?
2種の区別は比較的簡単です(神奈川県植物誌調査会,2018)。
具体的にはヒエガエリでは包穎の芒が包穎とおおよそ同長であるのに対して、ハマヒエガエリでは包穎の芒が包穎の2~3 倍の長さもあるという違いがあります。
「包穎の芒」という専門用語がわかりにくいと感じるかもしれませんが、包穎というのは小穂(イネ科特有の小さな花序、ここに花や果実ができる)の一番外側の部分を指し、要するに小穂の先端に細長い尖ったもののことを指しています。
そのためハマヒエガエリでは小穂が剛毛に覆われた哺乳類の毛のような印象を持つかもしれません。これはエノコロ類(ネコジャラシ)にも似ています。
日本では多くの地域でヒエガエリの方が遥かに一般的に見ることができます。ハマヒエガエリの方が海岸を好みます。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726