ルコウソウ・マルバルコウ(マルバルコウソウ)・モミジルコウ(モミジバルコウソウ)・ツタノハルコウ(ルタノハルコウソウ)はいずれもヒルガオ科サツマイモ属で、熱帯アメリカ原産のつる性1年草で日本では観賞用されていたものが帰化していることがあります。その判別は簡単な部類ではあるものの、4種を認識していないと難しいかもしれません。これら4種の違いを知るためには基本的に葉を確認することが重要になってきます。そのため葉を必ず記録しておきましょう。花はヒルガオ科らしくアサガオのような漏斗形の合弁花です。果実はサツマイモ属共通で蒴果です。本記事ではルコウソウ・マルバルコウ・モミジルコウ・ツタノハルコウの分類・形態について解説していきます。
ルコウソウ・モミジルコウ・マルバルコウ・ツタノハルコウとは?
ルコウソウ(縷紅草) Ipomoea quamoclit は熱帯アメリカ原産のつる性1年草です。日本では古くから観賞用に栽培され、野生化したものも見られます(神奈川県植物誌調査会,2018)。マルバルコウに比べると野外で見ることはずっと少なく、逸出記録は稀です。
モミジルコウ(紅葉縷紅) Ipomoea x multifida はマルバルコウとルコウソウを交配して得られた園芸植物で、ルコウソウと同様に園芸植物として普及しています。
マルバルコウ(丸葉縷紅) Ipomoea coccinea は熱帯アメリカ原産のつる性1年草です。日本では江戸時代に渡来した記録があり、特に暖地に多い帰化植物であり、畑の強壮雑草としても知られます。
ツタノハルコウ(蔦葉縷紅) Ipomoea hederifolia は熱帯アメリカ原産のつる性1年草です。世界の熱帯~暖帯に帰化しており、日本では1998年に神奈川県小池東原で採集されたのが最初の記録です。
いずれもヒルガオ科サツマイモ属で、熱帯アメリカ原産のつる性1年草で、日本では観賞用に栽培され、逸脱して野生化している場合があります。花冠は小型で直径2cm以内で、朱赤色という特徴が共通しており、観賞用で人気があるのもそのような明るい色であることが多いでしょう。花柱が1個、柱頭が分枝せず球状というサツマイモ属共通の特徴も持っています。
その判別は簡単な部類ではあるものの、4種を認識していないと難しいかもしれません。
特にモミジルコウは園芸で「ルコウソウ」として販売されることも多く、混同されている可能性が高いでしょう。
更にツタノハルコウもマルバルコウとよく似ているため混同されている可能性が高いです。
ルコウソウ・モミジルコウ・マルバルコウ・ツタノハルコウの違いは?
これら4種の違いを知るためには基本的に葉を確認することが重要になってきます。
まず、ルコウソウとモミジルコウでは葉が深裂するのに対して、マルバルコウとツタノハルコウでは葉は全縁または3浅裂するという違いから大別されます。
ルコウソウとモミジルコウではかなり細かく葉に切れ込みが入るため、きちんと葉も確認すれば他2種と見間違えることは少ないでしょう。
ルコウソウとモミジルコウの違いとしては、ルコウソウでは葉が羽状深裂であるのに対して、モミジルコウでは葉は掌状深裂である点が挙げられます。
つまりルコウソウでは羽のように中央の細い葉に沿って左右に細かい分裂した葉が伸びるのに対して、モミジバルコウではてのひら(掌)のように葉柄から放射状に分裂した葉が伸びるということです。しっかり観察すれば分かると思います。
マルバルコウとツタノハルコウの違いとしては、マルバルコウでは葉がすべて全縁あるいは左右1対の角があり、種子は黒色でごく短い毛が散生するのに対して、ツタノハルコウでは茎の下部の葉は全縁ですが上部の葉は3浅裂し、種子は黒褐色と褐色のまだら模様で銀白色の綿毛が密生するという点が挙げられます。
この2種は少し分かりにくいですが特に葉の上部をしっかり記録することが大事です。また、花にも違いがあります。マルバルコウでは花冠の外側の中心部~筒部の内側が黄色であるのに対して、ツタノハルコウでは筒部の内側は黄色ですが花冠の外側の中心部は赤色という違いもあるので、花が咲いている時は確認しましょう。
花の構造は?
花はヒルガオ科サツマイモ属らしくアサガオのような漏斗形の合弁花です。この4種ではいずれも赤色であることがなによりの特徴でしょう。
ルコウソウは花期は8〜10月。花は葉腋に1~2個つき、直径約2cm、長さ3~4cmの筒部の長い漏斗形、長い花柄があります。花色は普通は深紅色。花冠を上から見ると星形に見えます。
マルバルコウは花期は8〜10月。集散花序に花が2~8個つきます。花柄は長さ5~15mm、直立して花は上向きに咲きます。花冠は朱赤色、長さ約3.5cmの筒部が長い漏斗形(トランペット形)、先は直径約2cmの五角形に広がります。雄しべと雌しべがともに花冠から突き出ます。萼は先が5裂して細く尖り、長さ3~3.5mm。
ツタノハルコウは日本での花期は不明。花が数個の集合花序か単頂花序をつくります。萼片は長楕円形~楕円形で長さ1.5~3mm、先端は鈍角~尖角、外側には長さ1.6~6mmの亜末端に肉厚の芒があり、光沢があります。花冠は赤~赤黄色、長さ2.5~4.5cmです。
果実の構造は?
果実はサツマイモ属共通で蒴果です。蒴果は複数の心皮からなり、果皮はふつう乾燥しており、裂開して種子を放出する果実のことです。
ルコウソウの蒴果は長さ約8mmの卵形、種子が4個入ります。種子は長さ約5mm。
マルバルコウは蒴果は幅6~8mm、種子が4個入り、果柄は下向きに曲がります。種子は長さ3~4mm、黒色~暗褐色、微細な毛があります。果実は長さ約8mmの卵形、種子が4個入ります。種子は長さ約5mm。
ツタノハルコウの蒴果は亜球形、長さ6~8mm。種子は暗褐色か黒色で、球形。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726