ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラの違いは?ウメ・サクラとの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Prunus tomentosa

ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラはいずれもバラ科スモモ属に含まれ、低木でありながら春にウメやサクラのような綺麗な花を咲かせることから園芸で人気の樹木です。食用にもできることも知られています。しかし、見た目がかなり似ており、混同してしまう人がいるかもしれません。これら3種を区別するには葉を観察するのが最も分かりやすいです。花が付いている時期には若葉しかついていてないことも多いですが若葉でも問題はありません。更に花や果実にも違いがあります。ウメやサクラとは単にサイズが異なるだけと思う人もいるかもしれませんが、葉と果実には明らかな違いが見られます。本記事ではユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラの分類・形態について解説していきます。

スポンサーリンク

ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラの違いは?

ユスラウメ(桜桃) Prunus tomentosa は中国・チベット・ロシア(サハリン)に分布し、山の斜面の森林・林縁・雑木林・牧草地に生える落葉低木です(Wu et al., 2003; RBG Kew, 2024)。日本を含む世界中で観賞用に栽培されます。

ニワウメ(庭梅) Prunus japonica は中国東部・朝鮮に分布する落葉低木です。日本では観賞用に栽培されます。

ニワザクラ(庭桜) Prunus glandulosa ‘Albi-plena’ は中国東部・朝鮮に分布し、山の斜面・渓谷の側面・茂みに生える落葉低木です。日本では八重咲きの個体群が観賞用に栽培されます。

いずれもバラ科スモモ属に含まれ、かつてはニワウメ属 Microcerasus に含まれたことがある落葉低木です。ウメやサクラのように3~5月になると一斉に白色~ピンク色の花が咲き、スモモ属の中では大きさが低木に留まることから園芸では庭木として人気があります。

また、果実は真っ赤な核果で、見栄えが良いだけではなく、中果皮は果肉になっており、水分と糖分が多く含まれており、食べることができる点も人気の理由かもしれません。爽やかな酸味とほのかな甘みがあるとされますが、サクラ属の果実であるサクランボほどは食べやすくはありません。

ただ、これら3種の見た目はかなり似ており、混同してしまう人は多いかもしれません。

ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラの違いは?

3種を区別する場合、葉を確認するのが一番確実です(林,2019)。

ユスラウメでは葉に毛がありシワが多いのに対して、ニワウメとニワザクラでは葉は無毛でシワが少ないという違いがあります。

ニワウメとニワザクラに関しては、ニワウメでは葉の基部が丸く、鋸歯が尖るのに対して、ニワザクラでは葉の基部が三角形で、鋸歯が鈍いという違いがあります。

一番3種に注目する時期である花が咲いている時期にはユスラウメとニワウメの場合は葉がまだ展葉しかけで、若葉しかありませんが、この場合でも葉のシワを中心に上記の部分を観察すれば区別できます。ニワザクラは花と同時に成葉があります。

花や果実だけでも区別できる場合があります。

花に関しては、ユスラウメとニワウメでは花が一重咲きであるのに対して、ニワザクラでは花が日本国内では稀な場合を除き、八重咲きです。

また、ユスラウメでは花が白~薄紅色であるに対して、ニワウメでは普通ピンク色で稀に白色です。

果実に関しては、ユスラウメでは毛があり、ニワウメでは無毛で、ニワザクラでは花が八重咲きなので受粉できず普通は結実しません。

以上で区別できるでしょう。

ユスラウメの葉上面:シワが多く有毛
ユスラウメの葉下面
ユスラウメの若葉
ユスラウメの樹皮
ユスラウメの花:白色~薄紅色
ユスラウメの果実:有毛
ニワウメの花:ピンク色|『楽天市場 花と緑の専門店 土っ子倶楽部』 より引用・購入可能
ニワウメの葉と果実:葉はシワが少なく無毛で鋸歯は鋭い、果実は無毛|『ペットエコ&ザガーデン楽天市場店』より引用・購入可能
ニワザクラの葉:シワが少なく無毛で鋸歯は鈍い|By Dalgial – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9872833
ニワザクラの花:園芸個体群は普通八重咲き|By Photo by David J. Stang – source: David Stang. First published at ZipcodeZoo.com, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=61215717

ウメ(梅)やサクラ(桜)との違いは?

名前に「ウメ」や「サクラ」とついている点からウメやサクラとの違いが気になる人がいるかもしれません。サクラには「サクラ」という種類はありませんが、ここではソメイヨシノ Prunus x yedoensis ‘Somei-yoshino’ やサトザクラ Prunus serrulata などが含まれるサクラ亜属(Cerasus)の仲間だと考えてください。

確かに花だけ観察するとかなり区別が難しいです。

上述のように、ウメやサクラは高木になるのに対して、ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラでは低木に留まる点は大きな違いではありますが、幼木の場合は分かりにくいと感じるかもしれません。

ただ他にも多くの違いがあり、葉に関しては、ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラでは葉柄が非常に短く最大でも6mmしかありませんが、ウメとサクラでは葉柄が長く1cm以上あるのが普通です。

また、ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラでは葉柄に何も無いのに対して、ウメとサクラでは葉柄に花外蜜腺(蜜を分泌しアリを惹き寄せるコブのようなもの)があります。ただしウメの花外蜜腺は非常に小さく分かりにくいです。

果実はサクラ・ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラでは熟すと赤く特に凹みがありませんが、ウメでは熟しても緑色で縦に凹みがあります。

また、ユスラウメ・ニワウメ・ニワザクラでは普通果実は単生で果柄は短めですが、サクラでは果実はサクランボを想像すれば分かるように2個以上が束になっており果柄はかなり長いです。ただしソメイヨシノは雑種なので結実しません。

これだけ挙げれば全く別の種類であることが理解できると思います。

サトザクラ(フゲンゾウ)の葉上面:葉柄は長く1対の花外蜜腺あり
サトザクラ(フゲンゾウ)の花
ウメの葉:葉柄は見切れているが長い、花外蜜腺もこの写真では分かりにくい|By Eric Polk – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=134122481
ウメの花
ウメの果実:熟しても緑色で、縦の凹みあり

他に似ている種類はいる?

他のスモモ属については別記事を御覧ください。

引用文献

林将之. 2019. 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類. 山と溪谷社, 東京. 824pp. ISBN: 9784635070447

RBG Kew. 2024. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

Wu, Z. Y., Raven, P. H., & Hong, D. Y. 2003. Flora of China. Vol. 9 (Pittosporaceae through Connaraceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. ISBN: 9781930723146

error:
タイトルとURLをコピーしました