オキザリス・ムラサキカタバミ・イモカタバミ・ベニカタバミ・ハナカタバミの違いは?似た種類の見分け方を解説!

植物
Oxalis corymbosa

ムラサキカタバミ・イモカタバミ・ベニカタバミ・ハナカタバミはいずれもカタバミ科カタバミ属(オキザリス)に含まれ、膨大なカタバミ属の中でも小葉が倒卵形で角は円くて、花が赤色~ピンク色系統の仲間で、園芸で観賞用に栽培されていたものが帰化した外来種である点も共通しており、今では身近な種類ですが、区別に迷うことがあるかもしれません。慣れる必要がありますが4種は主に花や葉を観察することで区別する事ができます。赤色系統の花を持つカタバミ属としては他にサンカクカタバミやフヨウカタバミも知られています。本記事では花が赤色系統のカタバミ属の分類・形態について解説していきます。

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ムラサキカタバミ・イモカタバミ・ベニカタバミ・ハナカタバミとは?

ムラサキカタバミ(紫片喰み・紫酢漿草) Oxalis debilis subsp. corymbosa は別名キキョウカタバミ。 Oxalis corymbosa はシノニム(旧学名)です。南アメリカ北部原産で(RBG Kew, 2025)、世界中で帰化し、日本では江戸時代の文久年間(1861~1863年)から観賞用に栽培されましたが国内各地に逸出し、路傍・空地・一部農耕地などに生える多年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。

イモカタバミ(芋片喰み・芋酢漿草) Oxalis articulata は別名フシネハナカタバミ。南アメリカ(アルゼンチン・ウルグアイ・ブラジル)原産で、世界中で帰化し、日本では第二次世界大戦後に渡来し、国内の各地(関東地方以西?)に帰化し、人家近くの路傍・空地などに生える多年草です。

ベニカタバミ(紅片喰み・紅酢漿草) Oxalis brasiliensis は別名ブラジルカタバミ。南アメリカ原産(アルゼンチン・ウルグアイ・ブラジル)原産で、世界中で帰化し、日本へは大正時代(1924年)に観賞用に渡来し、第二次世界大戦後に国内各地で逸出帰化し、人家近くの空地・路傍などに生える多年草です。

ハナカタバミ(花片喰み・花酢漿草) Oxalis bowiei は南アフリカ(南アフリカ共和国ケープ州)原産で、世界中に帰化し、日本では江戸時代の天保年間の渡来し、国内の温暖な地に逸出し、人家近くに生える多年草です。

いずれもカタバミ科カタバミ属に含まれ、園芸では「オキザリス」と区別されることなく雑に総称されています。膨大なカタバミ属の中でも小葉が倒卵形で角は円くて、花が赤色~ピンク色系統の仲間で、観賞用に栽培されていたものが帰化した外来種である点も共通しています。

都市部でも野生化した個体が生えているのを頻繁に見かけますが、よく似ているので区別がつかないという人もいるかもしれません。

ムラサキカタバミ・イモカタバミ・ベニカタバミ・ハナカタバミの違いは?

4種は主に花を見ることでかなり明確に区別することができますが慣れる必要があります(神奈川県植物誌調査会,2018)。

まず、ムラサキカタバミ・イモカタバミ・ベニカタバミでは花が径1.5~3cm、花茎に腺毛はないのに対して、ハナカタバミでは花が径3~5cm、花茎に腺毛があるという違いがあります。

ハナカタバミは他3種が南アメリカ原産であるのに対して、南アフリカ原産であるためか、他にもかなり形が異なっていて、花では1つ花冠裂片も太く大きく、葉もやや厚く、上面はやや光沢があり、葉脈が目立つという点は唯一無二でこの点も区別点となります。おそらく花が目立つという意味で「ハナカタバミ」という名前がついたのでしょう。

残り3種に関しては、ムラサキカタバミとイモカタバミでは花は桃色で径1.5~1.8cm、地下茎は出さないのに対して、ベニカタバミでは花が濃紅紫色で径2~3cm、細い地下茎を伸ばし先に小鱗茎をつけるという違いがあります。

この区別点だと花の色の発色が微妙だった場合、植物を掘り出す必要が出てきますが、ベニカタバミのみ小葉のハート型の切れ込みが浅いのでこの点からでも十分区別できます。

ムラサキカタバミとイモカタバミに関しては、ムラサキカタバミでは地下に鱗茎があり、花の中央は淡色、萼片はほとんど無毛であるのに対して、イモカタバミでは地下に塊茎があり、花の中央は濃紅紫色、萼片は有毛であるという違いがあります。

またもや植物を掘り出すことを前提とするような区別点が植物図鑑では挙げられていますが、花の色だけで十分区別できます。

ただし、地下の茎や根の状態は生態的には重要な違いを生み出しているかもしれません(Oberlander et al., 2009)。

ムラサキカタバミの葉上面
ムラサキカタバミの葉下面
ムラサキカタバミの花:中心部の色は薄い。
イモカタバミの葉上面
イモカタバミの葉下面
イモカタバミの花:中心部の色が濃い。
ベニカタバミの葉と花:葉の切れ込みは浅い、花は濃紅紫色。|By Annie’s Annuals&Perennials – https://www.anniesannuals.com/plants/view/?id=4942, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=113574415
ハナカタバミの葉上面:大きく、光沢があり、葉脈が目立つ。
ハナカタバミの花:全体は大きく、花冠裂片も太い。

イモカタバミの品種は?

イモカタバミにはシロバナイモカタバミ Oxzlis articulata ‘Alba’ という品種が知られています。単に花が白いだけです。

シロバナイモカタバミの葉上面
シロバナイモカタバミの葉下面
シロバナイモカタバミの花

他に似た種類はある?

花が赤系統のカタバミ属の仲間としては日本では以下の2種があるでしょう。

サンカクカタバミ(三角片喰) Oxalis triangularis は別名インカノカタバミ・サンカクバオキザリス・カラスバオキザリス。やはり南アメリカ原産で観賞用に栽培されていたものが稀に逸出しますが、小葉の形が明らかにハート型ではなく、三角形です。

フヨウカタバミ(芙蓉片喰) Oxalis purpurea は南アフリカ原産で観賞用に栽培され、本州・四国・九州に稀に帰化しますが、花は1茎に1個しかないというのがここで紹介した種類との決定的な違いです。花色はピンク色だけではなく様々で、小葉の先は凹まず、地下に鱗茎があります。

サンカクカタバミの葉
サンカクカタバミの花
フヨウカタバミ(桃色花型)の葉
フヨウカタバミ(桃色花型)の花
フヨウカタバミ(赤色花型)の葉
フヨウカタバミ(赤色花型)の花
フヨウカタバミ(パープルドレス) ‘Purple Dress’ の葉と花

引用文献

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

Oberlander, K. C., Emshwiller, E., Bellstedt, D. U., & Dreyer, L. L. 2009. A model of bulb evolution in the eudicot genus Oxalis (Oxalidaceae). Molecular Phylogenetics and Evolution 51(1): 54-63. https://doi.org/10.1016/j.ympev.2008.11.022

RBG Kew. 2025. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

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