コスモス・キバナコスモス・チョコレートコスモス・マリーゴールドの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Cosmos sulphureus

コスモス・キバナコスモス・チョコレートコスモスはいずれもキク科コスモス属で日本では外来種ではあるものの、「秋桜」という別名があるように今では秋を代表する景観植物となっており、盛んに栽培されています。大きく美しい舌状花の花冠を持つことと、痩果の長い嘴があることはコスモス属の大きな特徴です。3種の区別は花の色による区別が一般的ですがそれだけで正確に区別できるというわけではありません。これらを区別するには葉の形をしっかり観察することが重要になってきます。マリーゴールドとも葉の形を見れば簡単に区別できます。本記事ではコスモス属の分類について解説していきます。

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コスモス・キバナコスモス・チョコレートコスモスとは?

コスモス Cosmos bipinnatus は別名オオハルシャギク(大春車菊、大波斯菊)、アキザクラ(秋桜)。メキシコ原産で、園芸で観賞用に栽培され、河原などの乾いたところに逸出帰化する一年草です(神奈川県植物誌調査会,2018;RBG Kew, 2023)。

キバナコスモス(黄花コスモス) Cosmos sulphureus は中央アメリカ~南アメリカ原産で、園芸で観賞用に栽培されときおり逸出する一年草です。

ベニコスモス(紅コスモス) Cosmos atrosanguineus は一般名チョコレートコスモス。メキシコ北部原産で、日本では園芸で観賞用に稀に栽培される一年草です。

いずれもキク科コスモス属で日本では外来種ではあるものの、「秋桜」という別名があるように今では秋を代表する景観植物となっており、盛んに栽培されています。

キク科らしく一見「花」に見えるものは、花の集まり(花序)である「頭花」です。中央にある「筒状花」とそれを囲む「舌状花」から構成され、舌状花の花冠が美しさを生み出している部分に当たります。

コスモス属はキク科の中でも葉が対生、花床に鱗片があり円盤状、総苞片は1~2列で草質~膜質、痩果には長い嘴があるなどの点から区別されています。痩果の長い嘴はキバナコスモスでは「引っ付き虫」として動物に付くために働いています。

しかし、そのコスモス属の仲間の違いについて迷うことがあるかもしれません。特にインターネットでは花の違いを指摘するサイトが多いですが、コスモスも稀に黄色になることがあり、花の色だけでは確実な区別が難しい場合があります。

コスモス・キバナコスモス・チョコレートコスモスの違いは?

大前提として、多くのサイトでも指摘されていますが、名前の通り花の色、厳密には舌状花の花冠の色には違いが一般的にはあることは抑えておきましょう(神奈川県植物誌調査会,2018)。

具体的には、コスモスでは白・ピンク・紅紫色など、キバナコスモスでは濃い黄色、チョコレートコスモスではチョコレートのような黒い赤色であるという違いがあります。

ただ、上述のようにコスモスの場合園芸種として長く栽培されてきたためか、色には変異が大きいため必ずしも決め手になるというわけではありません。コスモスではピコティ ‘Picotee’ という花弁の色がピンク色と白色から構成される園芸品種も知られている他、キバナコスモスでもサンライズ ‘Sunrise’ などの花弁が薄い黄色の園芸品種が知られています。

そのような場合は葉の形が決め手になります。葉の形はかなり強く保存されるので花の色だけを変える品種改良されても簡単に形は変わることはありません。

まず、コスモスでは葉は細かく糸状に切れこみが入るのに対して、キバナコスモス・チョコレートコスモスでは切れ込みは入るものの糸状にならないという違いがあります。

要するにコスモスでは葉が一見、糸状に見えるということです。これは一目瞭然です。

また、キバナコスモスとチョコレートコスモスはどちらも羽状複葉ではありますが、キバナコスモスでは2~3回分裂するのに対して、チョコレートコスモスでは1回分裂のみであるという違いがあります。

これも少し専門的な言い回しですが、キバナコスモスでは一度分かれた葉が更に分かれていますが、チョコレートコスモスではそうなっていないということです。そのため、外観としてはチョコレートコスモスの方が小葉の表面積が多く、葉縁は丸く見えるでしょう。これも見てみる方が早いかもしれません。

コスモスの葉:細かく分かれ糸状になっている
コスモスの花
コスモス(ピコティ)の葉
コスモス(ピコティ)の花
キバナコスモスの葉:2~3回羽状複葉、糸状ではない
キバナコスモスの葉下面
キバナコスモスの花序
キバナコスモスの花
キバナコスモス(サンライズ)の葉
キバナコスモス(サンライズ)の花
キバナコスモス(サンライズ)の果実
チョコレートコスモスの葉:1回羽状複葉、糸状ではない|By Rudolphous – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=108042544
チョコレートコスモスの花|By Sten – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20138047

キバナコスモスとマリーゴールドの違いは?

キバナコスモスとマリーゴールドの違いもインターネットではよく検索されているようです。

確かにマリーゴールド(コウオウソウ) Tagetes patula は同じくキク科で奇数羽状複葉を持っており、花の色も同じである場合があるので似ていないこともないかもしれません。

しかし、マリーゴールドの葉は一回奇数羽状複葉で鋸歯がはっきりしている上に、花は園芸個体群では一般的に八重咲きです。八重咲きでなかったとしても舌状花の花冠(一番目立っている花びらのようなもの)の先端は丸く、コバナコスモスのようにフォーク状に裂けていません。

これも葉をしっかり観察すれば違いがわかるでしょう。草丈もマリーゴールドはコスモス類ほど高くありません。

その他、キバナコスモスとオオキンケイギクの違いを知りたい人は別記事を御覧ください。

マリーゴールドの葉と花:葉の鋸歯に注目
マリーゴールド(ミスターマジェック) ‘Mr. Majestic’ の花と葉:花の見た目は大きく異なるが葉の形は共通

引用文献

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

RBG Kew. 2023. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

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