ナズナ・マメグンバイナズナ・イヌナズナ・シロイヌナズナの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Capsella bursa-pastoris var. triangularis

ナズナ・マメグンバイナズナ・イヌナズナ・シロイヌナズナはいずれもアブラナ科に含まれ、その中でも「ナズナ」という名前がつく日本の代表的な雑草です。早春に開花し、早々に平べったい果実をつける点が特徴です。しかし、有名ではあるものの、これら4種の区別がつかない人がいるかもしれません。これら4種を区別するなら果実を確認するのが一番簡単でしょう。その形はかなり異なるので比較的簡単に違いが分かります。ただ、それぞれの種類に近縁種もいるのでその点も注意が必要です。本記事では「ナズナ」とつく植物の分類・形態について解説していきます。

スポンサーリンク

ナズナ・マメグンバイナズナ・イヌナズナ・シロイヌナズナとは?

ナズナ(薺・撫菜) Capsella bursa-pastoris var. triangularis は別名ペンペングサ(ぺんぺん草)、シャミセングサ。日本の北海道・本州・四国・九州・琉球;北半球に広く分布し、道ばたや畑などに生える越年草です。

マメグンバイナズナ(豆軍配薺) Lepidium virginicum は北アメリカ原産で、荒地・道端に生える越年草です。日本には明治時代に侵入し現在では各地に生えています。

イヌナズナ(犬薺) Draba nemorosa は日本の北海道・本州・四国・九州;北半球(北アメリカ・東南アジアと南アジアとアラビア半島を除くユーラシア大陸)に分布し、路傍・畑地に生える越年草です。都市部では生えません。

シロイヌナズナ(白犬薺) Arabidopsis thaliana は日本の北海道・本州・四国・九州;ユーラシア大陸・アフリカ大陸の広域に分布し、海岸・低地の草地や道端に生える越年草です。

いずれもアブラナ科に含まれ、その中でも「ナズナ」という名前がつく日本の代表的な雑草です。早春に開花し、早々に平べったい果実をつける点が特徴です。

ナズナでは果柄(果実につく細い部分)を下向きに引っ張って、果実を垂らしておいて、中軸(全ての果柄の大元)を指で回転させることで「ペンペンと」音を出す遊びは日本人なら誰もが一度はやったことがあるかもしれませんね。春の七草の一つで、七草粥にして、古くから茎が立たないロゼット状の若苗を食用にします。

シロイヌナズナについてはゲノムサイズが小さいこと、一世代が約2ヶ月と短いこと、室内で容易に栽培できること、多数の種子がとれること、自家不和合性を持たないこと、形質転換が容易であることなど、モデル生物としての特徴を多く持っており、集団遺伝学などの遺伝学、植物の進化や発生などに関する植物科学の研究に広く用いられており、高校以上の教科書では必ず出てきます。

しかし、有名ではあるものの、これら4種の区別がつかない人がいるかもしれません。特にナズナ・マメグンバイナズナ・シロイヌナズナは都市部でも生え判断に迷うことがあるかもしれません。

ナズナ・マメグンバイナズナ・イヌナズナ・シロイヌナズナの違いは?

これら4種の区別方法として一番わかり易いのは果実を確認することです(神奈川県植物誌調査会,2018)。

4種はいずれもアブラナ科なので「長角果ちょうかくか」という心皮が2枚あり2室からなる特殊な果実をつけます。熟すと縦に裂けて中から種子を出します。

その長角果の形が4種とも明らかに異なっています。

具体的にはナズナはハート形、マメグンバイナズナは円形、イヌナズナは細い長楕円形、シロイヌナズナは細い棒形という違いがあります。

この違いは見間違えることはないので迷うことはないでしょう。

他に参考になる点としてはナズナ・マメグンバイナズナ・シロイヌナズナでは花が白色であるのに対して、イヌナズナでは花が黄色であるという違いがあります。

またこの中では明らかにナズナが一番大きいです。イヌナズナは都市部では普通は発見できません。

分類上もそれぞれナズナ属、マメグンバイナズナ属、イヌナズナ属、シロイヌナズナ属に含まれるため名前が似ているものの、大きな違いがあることが分かるでしょう。

ナズナの葉
ナズナの終わりかけの花
ナズナの果序
ナズナの果実
マメグンバイナズナの葉
マメグンバイナズナの花
マメグンバイナズナの花2
マメグンバイナズナの果実
イヌナズナの花|By Joanna Boisse – https://atlas.roslin.pl/plant/6876, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=81832555
イヌナズナの果実|By USDA NRCS Montana – Plants_OB_394, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=68791860
シロイヌナズナの根出葉|By Charles Andrès – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22510218
シロイヌナズナの茎葉|By Stefan.lefnaer – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=103674364
シロイヌナズナの花|By Krzysztof Ziarnek, Kenraiz – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=102750200
シロイヌナズナの果実|By Krzysztof Ziarnek, Kenraiz – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=126549213

他に似ている種類はいる?

上記4種はナズナ属、マメグンバイナズナ属、イヌナズナ属、シロイヌナズナ属のそれぞれの代表的な種類ですが、それぞれに似ている種類がいるので注意が必要な場合があります。

ナズナ属では他に果実の長軸方向の長さは幅より明らかに長いホソミナズナ Capsella bursa-pastoris var. bursa-pastoris、花弁は長さ5mmを越え、萼片の2倍以上の長さになるオオバナナズナ Capsella grandiflora、花弁はわずかに萼片より長いかほぼ同長で、果実の外縁はやや内曲するルベラナズナ Capsella rubella などが知られています。

マメグンバイナズナ属は日本では9種が帰化しており、全てをここでは挙げられませんが、マメグンバイナズナよりも圧倒的に数が少ないです。基本的に果実が真円形に近く、葉が羽状に分裂していない場合はマメグンバイナズナそのものであると考えてよいです。

イヌナズナ属にはヒメナズナ Draba verna という花弁が2裂しない種類がいます。山野草として高山植物のナンブイヌナズナが栽培されることがあります。

シロイヌナズナ属は日本には3種のみで、他2種は高山植物であるため野外では間違うことはないでしょう。

ホソミナズナの葉
ホソミナズナの花序
ホソミナズナの花
ホソミナズナの果実

引用文献

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

error:
タイトルとURLをコピーしました