カキドオシとグレコマ(セイヨウカキドオシ)の違いは?ツボクサ・ホトケノザ・ムラサキサギゴケとの違いは?似た種類の見分け方を解説!

植物
Glechoma hederacea subsp. grandis

カキドオシとグレコマ(セイヨウカキドオシ)はいずれもシソ科カキドオシ属に含まれ、茎が地面を這って垣根をくぐり抜ける様子から「垣通し」という名前がつき、腎円形の葉と中央が大きく空いた唇形花で特徴づけられますが、最近園芸で栽培されるグレコマがカキドオシと混同されています。しかし、原産地が異なり、形態的にも花冠や萼の大きさに差があります。その他、ツボクサ・ホトケノザ・ムラサキサギゴケとも混同されるようですが、その区別は比較的容易です。本記事ではカキドオシ属の分類・形態について解説していきます。

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カキドオシとグレコマ(セイヨウカキドオシ)とは?

カキドオシ(垣通し) Glechoma hederacea subsp. grandis は別名レンセンソウ(連銭草)、カントリソウ(癇取草)。日本の北海道〜九州;中国東南部・台湾に分布し、野原や道ばたに生える多年草です(林ら,2013;RBG Kew, 2025)。中国・イギリスでは学名は Glechoma grandis とされます。

セイヨウカキドオシ(西洋垣通し) Glechoma hederacea subsp. hederacea は流通名グレコマ。ヨーロッパ・ロシア・中国新疆に分布し、世界中に導入され、谷の草原に生える多年草です。日本では観賞用に園芸で栽培されます。中国・イギリスでは学名は Glechoma hederacea とされます。

いずれもシソ科カキドオシ属に含まれ、茎が地面を這って垣根をくぐり抜ける様子から「垣通し」という名前がつきました。

この特徴の他、腎円形で鈍い鋸歯をつけ、シソ科特有の唇形花はぽっかり中央部が空き、下唇が大きく伸び出て、中央側では白い毛を生やしている点も唯一無二です。

多くの人は本来のカキドオシと園芸でグレコマという属名で流通し、栽培されている「カキドオシ」が別亜種、または別種であることは知られていません。日本で現在栽培されてる「カキドオシ」は在来個体ではありません。

しかし、その区別方法についてはきちんと書かれている日本語サイトはないようです。

カキドオシとグレコマ(セイヨウカキドオシ)の違いは?

カキドオシとセイヨウカキドオシは海外では別種とされるなど異なる特徴を持っています(Wu & Raven, 1994)。

大前提として、カキドオシは日本で自生しますが、グレコマは自生せず野生化は確認されておらず栽培されるのみです。

形態的にはまず葉に関しては、カキドオシでは有毛であるのに対して、セイヨウカキドオシでは無毛であるという違いがあるとされています。

しかし、実際に著者が画像を確認してみるとセイヨウカキドオシにも毛がありました。ただ、カキドオシよりもセイヨウカキドオシの方が光沢のある印象で目立つ白毛がないという程度のニュアンスなのかもしれませんがよく分かりません。

また花の萼に関しては、カキドオシでは萼片が約7~10mmであるのに対して、セイヨウカキドオシでは萼片が5~7mmであるという違いがあります。

花の花冠に関しては、カキドオシでは長さが3cm程度もあり大型であるのに対して、セイヨウカキドオシでは長さが約1cm程度と小型であるという違いがあります。

このため、カキドオシの方がセイヨウカキドオシの花より明らかに大きく目立つという印象を持つでしょう。こちらの方が明確な違いです。

園芸で販売されている斑入りの苗はほとんどがセイヨウカキドオシのようです。ただし、日本のカキドオシにも斑入りのものがあり、フイリカキドオシ Glechoma hederacea subsp. grandis f. albovariegata と呼ばれます。花が白いものはシロバナカキドオシ f. alboflorens です。

カキドオシの葉
カキドオシの花:萼片も花冠も大型。
セイヨウカキドオシの葉:毛はないとされるが明らかにある。|By Mike Dickison – https://www.inaturalist.org/photos/55075671, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=83424337
セイヨウカキドオシの花:萼片も花冠も小型。|By Robert Flogaus-Faust – Own work, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=148121149

カキドオシとツボクサ・ホトケノザ・ムラサキサギゴケとの違いは?

カキドオシはシソ科のホトケノザ Lamium amplexicaule ・サギゴケ科のムラサキサギゴケ Mazus miquelii ・セリ科のツボクサ Centella asiatica との違いがよく検索されているようです。

ホトケノザやツボクサはカキドオシと同じような腎形の葉を持っている点で類似しているため、ムラサキサギゴケはカキドオシと花がやや類似しているためでしょう。

しかし、分類上はかなり隔たりが異なっています。

ホトケノザはカキドオシと異なり上部の葉では葉柄が短く、花は小型で筒状です。

ムラサキサギゴケはカキドオシと異なり唇形花の下唇(花の下側の部分)が2つに別れず1つです。葉は倒卵形または円形です。

ツボクサはカキドオシではある4稜形の茎・稜上にのみある粗い短毛・葉身下面の腺点がありません。花は非常に小さく地味です。

引用文献

林弥栄・門田裕一・平野隆久. 2013. 山溪ハンディ図鑑 1 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社, 東京. 664pp. ISBN: 9784635070195

RBG Kew. 2025. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

Wu, Z. Y., & Raven, P. H. eds. 1994. Flora of China. Vol. 17 (Verbenaceae through Solanaceae). Science Press, Beijing, and Missouri Botanical Garden Press, St. Louis. 342pp. ISBN: 9780915279241

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