ヒノキ科 Cupressaceae は常緑まれに落葉高木または低木。葉は鱗片状、針状、または線形で、互生、対生または輪生します。花は単性で雌雄同株、まれに異株。雄花は枝先につけます。雌花も枝先につけることが多く、対生または輪生する鱗片があります。鱗片は苞鱗が発達せず、種鱗のみのものと、苞鱗が発達するものがあります。球果は木質で裂開するものと、肉質で裂開しないものとがあります。世界に約32属162種が知られています。日本には5属9種が自生します。資材用や緑化用として品種改良が進み広く植栽され、本来の自生かどうか見極めるのが困難なものが多いです。また、外来種の植栽も多いです。コノデガシワ、コウヨウザン、メタセコイアが公園などに広く植栽されています。
本記事ではヒノキ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
- No.0036 コノテガシワ Platycladus orientalis
- No.0036.a ショウナンボク Calocedrus macrolepis var. formosana
- No.0039 アスナロ Thujopsis dolabrata
- No.0040 ヒノキ Chamaecyparis obtusa
- No.0044 サワラ Chamaecyparis pisifera
- No.0045.a オウゴンヒヨクヒバ Chamaecyparis pisifera ‘Filifera Aurea’
- No.0046 ヒヨクヒバ Chamaecyparis pisifera ‘Filifera’
- No.0047.a オウゴンシノブヒバ Chamaecyparis pisifera ‘Plumosa Aurea’
- No.0049 ネズミサシ Juniperus rigida
- No.0050 ハイネズ(ブルーパシフィック) Juniperus conferta ‘Blue Pacific’
- No.0051 オキナワハイネズ Juniperus taxifolia var. lutchuensis
- No.0051.1 シマムロ Juniperus taxifolia
- No.0053 イブキ Juniperus chinensis var. chinensis
- No.0053.a カイヅカイブキ Juniperus chinensis var. kaizuka
- No.0053.b タマイブキ Juniperus chinensis ‘Globosa’
- No.0055 ミヤマビャクシン Juniperus chinensis var. sargentii
- No.0055.a コロラドビャクシン(ブルーエンジェル) Juniperus scopulorum ‘Blue Angel’
- 07.0055.b ウスカワアリゾナイトスギ(ブルーアイス) Hesperocyparis glabra ‘Blue Ice’
- No.0055.c モントレーイトスギ(ゴールドクレスト) Hesperocyparis macrocarpa ‘Goldcrest’
- No.0055.d ホソイトスギ Cupressus sempervirens
- No.0056 スギ Cryptomeria japonica
- No.0057.a ヌマスギ Taxodium distichum var. distichum
- No.0058.a アケボノスギ Metasequoia glyptostroboides
- No.0058.b アメリカスギ Sequoia sempervirens
- 引用文献
No.0036 コノテガシワ Platycladus orientalis
常緑小高木~低木。鱗状葉。長さ2mm前後。ヒノキ類は枝葉を横向き(水平面)に広げるのに対し、本種は縦向き(垂直面)に広げ、表裏の違いがほとんどないので見分けやすい。凹凸のある実や、水滴形の樹形も特徴的です。中国原産。庭木、公園樹にやや篭普通。植栽されるものは倭性の栽培品種が多いです。
No.0036.a ショウナンボク Calocedrus macrolepis var. formosana
常緑高木。大木になり、幹は曲がっていることが多いです。樹皮は滑らかで、紫がかった赤褐色をしています。枝は二股に分かれ、互生します。葉は鱗片状で鈍く、幅約1.5〜2.5mm、外側は暗緑色、内側は淡緑色。雌錐は長楕円形で、長さ10~15mm、わずかに湾曲し、4個の鱗片があり、側面の2個は受精します。1~2個の種子がそれぞれの鱗片の中にできます。種子は1~2個で、長さ8~12mm、片方に翼があります。台湾北部および中部に自生し、海抜33~1,900mに生息します。
No.0039 アスナロ Thujopsis dolabrata
常緑高木。樹皮は黒褐色で縦に裂け、薄くはがれます。葉は大き目の鱗片状で十字対生につき鈍頭で、側葉の先端がやや内側に屈曲します。葉下面は3角形~船形の白色気孔群が目立ちます。球果の種鱗は肥厚して少し外側へ反り、背面の先端に角状の突起があります。本州、四国、九州に分布。植栽されたものも多いです。
No.0040 ヒノキ Chamaecyparis obtusa
常緑高木。樹皮は赤褐色、繊維質で幅広に縦裂して薄くはがれます。側葉は中央の葉より大きく先端が鈍く内曲し、触っても痛くありません。球果は径8~12mmの球形で褐色に熟します。本州(福島県以南)、四国、九州(屋久島まで)に分布し、各地に広く植林されています。カマクラヒバ、スイリュウヒバ、クジャクヒバなど園芸品種も多く公園や個人庭に広く植栽されています。
No.0044 サワラ Chamaecyparis pisifera
常緑高木。樹皮は褐色、繊維質で幅広に縦裂して薄くはがれますが、ヒノキよりやや幅は狭いです。側葉は中央の葉とほぼ同大、先端が鋭頭で外に開き、触ると痛いです。球果は凸凹した球形で径5~7mm、褐色に熟します。本州(岩手県以南)、四国、九州(屋久島まで)に分布。各地に広く植林され、自生のものかどうかの判断は難しいです。
No.0045.a オウゴンヒヨクヒバ Chamaecyparis pisifera ‘Filifera Aurea’
常緑小高木(林,2014)。サワラの栽培品種。枝先が糸状に長く垂れ、表は黄色く色づき、裏にサワラ同様の白い気孔帯が少しあります。樹高3~5m。庭木に普通。
No.0046 ヒヨクヒバ Chamaecyparis pisifera ‘Filifera’
サワラの栽培品種。オウゴンヒヨクヒバに似ますが、黄色くなりません(林,2014)。
No.0047.a オウゴンシノブヒバ Chamaecyparis pisifera ‘Plumosa Aurea’
常緑小高木~高木(林,2014)。サワラの栽培品種で庭木や生垣にやや普通。葉は先が短い針状になり、枝先の葉は黄緑色を帯びます。樹高10m前後になります。
No.0049 ネズミサシ Juniperus rigida
別名ネズ、ムロ。常緑小高木または低木。樹皮は灰褐色で縦裂して薄く繊維状にはがれます。葉は横断面が3角形の針形、長さ10~20mm、幅約1mm、先は鋭く尖って触れると痛いです。雌雄異株。花期は4月。球果は翌年の秋に熟し、黒紫色の肉質液果状で粉白色を帯びます。本州(岩手県以南)、四国、九州;朝鮮、中国に分布。丘陵~山地の岩の多い斜面に生えます。
No.0050 ハイネズ(ブルーパシフィック) Juniperus conferta ‘Blue Pacific’
常緑の匍匐性低木。葉の形態はネズミサシと同様。花期は5月。球果はネズミサシよりやや大きいです。北海道、本州(青森県~島根県の日本海沿岸、岩手県~和歌山県までの伊豆半島と伊豆諸島を除く太平洋沿岸)、四国、九州;サハリンに分布。海岸の砂地に生えます。ネズミサシが海岸に適応したものと考えられます。
No.0051 オキナワハイネズ Juniperus taxifolia var. lutchuensis
別名オオシマハイネズ。常緑の匍匐性低木。樹形はハイネズに似ますが、葉は先がやや鈍く、上面の溝は浅く、溝中の白色気孔帯は幅広く、中央に隆起部があり2条になります。本州(伊豆諸島、房総半島、三浦半島、伊豆半島、御前崎、渥美半島、紀伊半島)、九州(種子島)、琉球に分布。海岸の岩場に生えます。琉球以外に分布するものは葉の先の尖り方がオキナワハイネズとハイネズの中間的なもので、オオシマハイネズ J. conferta var. maritima として区別することがあります。
No.0051.1 シマムロ Juniperus taxifolia
常緑低木。樹高は20cm~3mほど。兄島の風の強い岩石地では地面に這うようにしてグランドカバーのようになり、風の当たらない乾性低木林内では直立して3m程の小高木になります。花期は1~4月頃。雌雄異株。果期は12月~4月頃。受粉してから1年かけてあずき色に熟します。小笠原諸島の聟島と父島列島と母島列島に分布する。
No.0053 イブキ Juniperus chinensis var. chinensis
別名ビャクシン、イブキビャクシン。常緑高木または小高木で、主幹はねじれることが多いです。樹皮は赤褐色で縦裂して薄くはがれます。葉の多くは鱗片状で十字対生しますが、ときに針状で3輪生するものを混生します。鱗片葉は卵状菱形で先は鈍く長さ約1.5mm。針状葉は長さ5~10mm、上面は凹み、2条の気孔帯があります。雌雄異株まれに同株。花期は4~5月。球果は翌年の秋に熟し、径6~8mmの球形、粉白を帯びた紫黒色。本州(岩手県以南)、四国、九州;朝鮮、中国、モンゴルに分布。多くは神社などに植栽されています。海岸の岩場に自生状態と思われるものが稀に見られます。
No.0053.a カイヅカイブキ Juniperus chinensis var. kaizuka
イブキの園芸品種。イブキのように樹姿が乱れず、側枝が旋回しながら円錐形の整った樹姿になるので、公園、庭園、生垣などに広く植栽されています。
No.0053.b タマイブキ Juniperus chinensis ‘Globosa’
イブキの栽培品種。樹高1m前後の低木で、玉状樹形で庭木にやや普通。
No.0055 ミヤマビャクシン Juniperus chinensis var. sargentii
幹が這い、高さ2m以下にしかならないイブキの変種。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、台湾、サハリン、千島に分布。シラビソ帯~ハイマツ帯の岩場に生えます。
No.0055.a コロラドビャクシン(ブルーエンジェル) Juniperus scopulorum ‘Blue Angel’
常緑小高木~高木(林,2014)。鱗状葉。長さ1~2mm。葉は青緑~青灰色で、木全体が青白く見えます。コニファーとして栽培品種が多く出回っており、’ウィチタ・ブルー’、’ブルー・ヘブン’、’ブルー・エンジェル’、’スカイロケット’、などが代表的。概ね後者ほど狭長な樹形。北米原産。庭木、公園樹にやや普通で、近年増えています。
07.0055.b ウスカワアリゾナイトスギ(ブルーアイス) Hesperocyparis glabra ‘Blue Ice’
学名はAdams et al.(2009)によります。北米原産のウスカワアリゾナイトスギの栽培品種。常緑小高木(林,2014)。鱗状葉は長さ1~2mm。葉は白粉をかぶった青灰色で、枝が雪の結晶のように分岐する様子が特徴的。ホソイトスギ同様に表裏の区別はありません。樹形は狭い三角形。類似する栽培品種がいくつかあります。庭木、公園樹にやや稀ですが、近年増えています。
No.0055.c モントレーイトスギ(ゴールドクレスト) Hesperocyparis macrocarpa ‘Goldcrest’
学名はAdams et al.(2009)によります。北米原産のモントレーイトスギの栽培品種。常緑小高木~低木(林,2014)。鱗状葉~針状葉。長さ2~5mm。葉は蛍光を帯びた黄緑~黄金色で、若葉や冬の葉ほど黄色みが強いです。細い水滴形の樹形が特徴で見分けやすいです。最も普及したコニファーで、樹高5m前後になります。庭木、鉢植えに普通。
No.0055.d ホソイトスギ Cupressus sempervirens
常緑高木(林,2014)。普通は鱗状葉。長さ1mm前後。円柱状の狭長な樹形で、葉がやや青白いので、遠目に本種と推測できます。葉はイブキに似て表裏の区別がなく、より細いです。果実は径約3cm。多くの栽培品種があります。欧州~西アジア原産。庭木、公園樹に稀。
No.0056 スギ Cryptomeria japonica
常緑高木。樹皮は褐色系で縦に細長く薄くはがれます。花期は3~4月。雄花は楕円形で長さ5~6mm、小枝の先に穂状にまとまってつきます。雌花は球形で小枝の先に1個つき、刺状突起のある鱗片がらせん状に多数並びます。球果は径20~25mmの球形で熟すと褐色になり、球形のまま裂開します。県内では冬季に葉が褐色になります。本州、四国、九州(屋久島まで)に分布。中国には変種シナスギ var. sinensis があります。用材や園芸用としての品種改良が進み、形質も多様化しており、標本も多様な形状を示しています。林業上の重要樹種として山地から丘陵地に広く植林されており、天然のものか判断できないことが多いです。巨木や古木が多いです。
No.0057.a ヌマスギ Taxodium distichum var. distichum
別名ラクウショウ。落葉高木。全体メタセコイアに似ますが、葉も枝も互生し、時に呼吸根が出て、球果は径約3cmの球形であることが違います。やや円柱状の樹形で、樹高15~30m。普通に植栽される変種ヌマスギ var. distichum の葉は長さ0.7~2cm。北米原産で湿地性。日本では時に公園樹。
No.0058.a アケボノスギ Metasequoia glyptostroboides
別名メタセコイア。落葉高木。他の樹木よりも高く突き出た円錐形の樹姿は特徴的であります。葉は線形で軟らかく、対生し、秋に小枝とともに落ちます。球果は約15mmの球に近い楕円体で、熟すと十字に裂開します。絶滅したとされていたものが中国揚子江の奥地で再発見され、生きた化石として話題になりました。公園や学校などに広く植栽されています。
No.0058.b アメリカスギ Sequoia sempervirens
別名セコイア、イチイモドキ、セコイアメスギ、セコイアスギ。常緑高木。世界最大の樹高を誇り、高さ115.5m、幹の直径9mに達することが知られ、円錐形の樹冠を持ち、水平からわずかに垂れ下がった枝があります。幹はまっすぐ。樹皮は30cmと非常に厚く、かなり柔らかく繊維質で、露出したばかりの時は明るい赤褐色、風化して黒っぽくなります。葉の形は様々で、若木では長さ15~25mmで平たい。葉は鱗片状で、老木の樹冠上部の日当たりのよい新梢では長さ5~10mm。葉は、上部が濃い緑色で、下部に青白い2本の気孔帯があります。葉の配列は螺旋状ですが、大きな日陰の葉は基部がねじれ、光を最大限に取り込むために平らな面に横たわっています。単子葉で、花粉と種子は同じ個体につきます。果実は卵形で、長さ15~32mm、15~25個の鱗片が螺旋状に並びます。受粉は晩冬で、約8~9か月後に成熟します。それぞれの鱗片には3~7個の種子があり、長さ3~4mm、幅0.5mmで、幅1mmの翼が2枚ついています。種子は円錐の鱗片が乾燥し、成熟して開いたときに放出されます。花粉は卵形で、長さ4~6mm。
引用文献
Adams, R. P., Bartel, J. A., & Price, R. A. 2009. A new genus, Hesperocyparis, for the cypresses of the Western Hemisphere (Cupressaceae). Phytologia 91(1): 160-185.
林将之. 2014. 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類. 山と溪谷社, 東京. 759pp. ISBN: 9784635070324
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726