【種子植物図鑑 #111】カヤツリグサ科にはどんな種類がいる?写真一覧

種子植物図鑑
Cyperus papyrus

カヤツリグサ科 Cyperaceae は1年草または多年草。多くは茎の断面が3角形で中実。葉は線形で、基部は筒状にあわさって葉鞘になります。ハリイ属、ホソガタホタルイ属、フトイ属、カヤツリグサ属などには葉身が退化して葉鞘だけになっているものがあります。花は鱗片と呼ばれる苞葉の腋に単生し、鱗片は左右2列または螺旋状に並んで小穂をつくります。この小穂の性質が分類の鍵になるので、果実が落ちない程度に熟したものが同定しやすいです。花被は退化してないか、あっても刺針状で、花後、糸状に長くなるものがあります。雄しべは1~3個。果実は堅果で柱頭が2岐のものは横断面がレンズ形、3岐のものは3稜形。世界に約5,000種があるといわれます。亜科の範囲、属の大きさなどの解釈については様々な見解がありますが、Bruhl(1995)は2亜科12連122属に分類し、このうち日本には9連29属があります。スゲ属など日本で分化の激しい分類群を含み、種の範囲の取り扱い方により種数は大きく異なりますが、日本には少なくとも400種があります。一般的に風媒花ですが(田中,1976)、例外もあります(シラサギカヤツリ参照)。

本記事ではカヤツリグサ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.0700 カヤツリグサ Cyperus microiria

別名キガヤツリ。1年草。茎は単生または数本叢生し、高さ10~60cm。葉は基部に数枚つき、長さは茎より短く、幅は2~4mm。花序はしばしば複生し、花序枝は5~10本、長さ10cmくらいまでのものが散形状につきます。苞葉は集まってつき、花序より長いものは3~4枚、最下の苞葉は50cmを超えることがあります。小穂は線形、長さ5~12mm、幅1.5~2mmで黄褐色。鱗片は広倒卵形で長さ1.5mm、中肋は緑色で先端がやや伸びて尖ります。果実は倒披針形、長さ約1.2mm、幅約0.5mm。花柱は長さ0.1mmくらいで目立たず、柱頭は長さ約0.5mm。雄しべは3個。花(果)期は8~10月。本州、四国、九州;東南アジアの暖温帯に分布します。畑地や草原、路傍に生育。

カヤツリグサの葉
カヤツリグサの葉
カヤツリグサの小穂
カヤツリグサの小穂

No.0701.1 コチャガヤツリ Cyperus amuricus var. japonica

1年草。花序枝は5~10本で、ごく短いものから10数cmの長さのものが散形状につき、ときに複生します。小穂は線形、長さ5~15mm、幅1.5mmで赤褐色、10~30個の小花があります。鱗片は卵形で先端は芒となり尖って反り返り、長さ1.5~1.8mm、幅約1mm、そのうち芒の部分の長さは0.3mm、中肋は緑色。果実は倒披針形で長さ0.8~1mm、幅0.4~0.5mm、熟すと黒褐色になります。本州、四国、九州、琉球;東アジアに分布。チャガヤツリ(狭義)Cyperus amuricus var. amuricus に比べて、畑や路傍など人為的な環境に多く、全体小型で、小穂、鱗片、果実の長さが短く、幅も狭いです。

コチャガヤツリの小穂
コチャガヤツリの小穂

No.0704 アゼガヤツリ Cyperus flavidus

一年草。高さ20~40cm、細くて硬く、基部は褐色を帯びます。葉は有花茎より短く、幅1~1.5mm。苞葉は4~6枚で、下方のものは花序の2~6倍の長さになります。花序は散房状で幅約5cm。花序枝は6~7本が伸び、長いものは長さ約10cm。小穂は偏平な線状披針形、長さ1~2.5cm、幅1.5~2.5mmで赤褐色、20~50個の小花がつきます。鱗片は長楕円形で鈍頭、長さ約2mm、幅約1mm、中肋は緑色。果実は倒卵形、長さ約0.8mm、幅約0.5mmで熟すと淡黄褐色になります。花柱は長さ0.2~0.3mm、柱頭は長さ0.7~1mm。雄しべは2個。花(果)期は8~10月。本州、四国、九州、琉球;アジア、アフリカ、オーストラリアの暖温帯~熱帯に分布。水田、休耕田、埋立地、造成地などの湿地に生育します。

アゼガヤツリの小穂
アゼガヤツリの小穂

No.0707 タマガヤツリ Cyperus difformis

1年草。叢生し、高さ10~50cm。茎は高さのわりに太めでやわらかく、断面は3稜形、押し葉にした場合の幅は3mmくらいになります。葉は基部から出て花序より低く、幅3~5mm。苞葉は集まってつき、花序より長いものは2~3枚。花序はしばしば複生し、枝先に小穂が密生、径5~10mmの頭状の分花序をつけます。5本前後の花序枝には長短があり、0~5cmのものが散形状につきます。小穂は楕円形で、長さ3~10mm、幅約1mm、熟すと黒色を帯び、10~20個の小花がつきます。鱗片は円形に近い倒卵形で、長さ幅ともに0.5~0.7mm、上端が少し凹み、中肋の先端がわずかに尖りますが目立ちません。果実は長さ約0.5mm、幅約0.3mm。花柱と柱頭はともに長さ約0.1mm。雄しべは2個。花(果)期は8~10月。北海道、本州、四国、九州、琉球;熱帯から温帯まで世界に広く分布します。水田や休耕田、湿地に生育。

タマガヤツリの小穂
タマガヤツリの小穂

No.0717 ハマスゲ Cyperus rotundus

別名ハマガヤツリ・コウブシ(香附子)。多年草。根茎があり、根元から匐枝を伸ばし、その先に塊茎や娘個体をつけます。茎はふつう単生し、高さ15~40cmくらい。基部に数枚の短い葉をつけます。葉はやや反り返り、上面には多少の光沢があり、幅は2~5mm。花序枝は1~5本あり、長さはごく短いものから8cmくらいまで長短あり、複生するものもあります。苞葉は1~2枚で花序とほぼ同長。小穂は線形で、長さ1~4cm、幅1.5~2mm。赤褐色で多少光沢があり、10~40個の小花がつきます。鱗片は長楕円形、長さ3~3.5mm。果実は長楕円形、長さ1~1.5mm、幅は長さの半分ほど。花柱は長さ1~1.5mm、柱頭は長さ約2.5mm。雄しべは3個。花(果)期は6~10月。本州(関東地方以西)、四国、九州、琉球;世界の熱帯から温帯に分布します。草原、畑、路傍に生育。

ハマスゲの葉
ハマスゲの葉
ハマスゲの小穂
ハマスゲの小穂

No.0720 ヒメクグ Cyperus brevifolius var. leiolepis

多年草。赤味を帯びた根茎が横にのびます。高さ5~20cm。葉は茎とほぼ同高で、幅2~3mm。頭状花序はアイダグよりもやや大きく、径7~10mmの球形。小穂は広披針形で長さ約4mm。鱗片は最長のもので長さ約4mm、2番目のもので長さ約3mmあり、竜骨は平滑。果実は倒卵形、長さ1~1.5mm、幅0.8~1mm。花柱は長さ約1.5mm、柱頭は長さ約0.5mm。雄しべは2個。花(果)期は7~10月。北海道、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国(北東部)の温帯~亜熱帯(稀)に分布します。水田の周辺や湿り気のある草地に生えます。小穂の長さが5mm以上あるものをオニヒメクグ f. macrolepis として区別することがあります。

ヒメクグの葉
ヒメクグの葉
ヒメクグの小穂
ヒメクグの小穂

No.0720.1 アイダクグ Cyperus brevifolius var. brevifolius

別名タイワンヒメクグ。多年草。根茎は赤味を帯び、横に這います。高さ10~30cm。葉は茎よりも短く、幅約2mm。苞葉は2~3枚で、長さ1.5~6.5cm。頭状花序はやや縦長で径5~8mm。小穂は楕円形で長さ3~3.5mm、上方の大きい2個の鱗片は長さ約3mmおよび約2.5mm。鱗片の竜骨部に透明であるが膜質ではない幅広い3角形状の斜上する小刺があります。果実は倒卵形、長さ約1mm、幅約0.8mm。雄しべは2個。花(果)期は7~10月。本州(千葉県以西)、四国、九州、琉球;全世界の熱帯~暖温帯に分布します。湿地や湿り気のある草地に生えます。ヒメクグと同所的に生育することから、同定を誤る可能性があります。

アイダクグの小穂
アイダクグの小穂

No.0721 イヌクグ Cyperus cyperoides

別名クグ。多年草。茎の高さは20~60cm。葉は幅3~6mmで有花茎よりも短く、葉鞘の基部はややふくらみ、赤褐色を帯びます。小穂は線形、長さ約5mm、幅約0.7mm、緑色、上部の1~2個の鱗片につく小花のみが稔ります。鱗片は長楕円形、長さ約3mm。果実は線状楕円形、長さ約2mm。花柱は長さ0.5~0.7mm、柱頭は長さ1mm弱。雄しべは3個。花(果)期は8~9月。本州(関東地方以西の太平洋岸)、四国、九州、琉球;世界の熱帯~亜熱帯に広く分布します。日当たりのよい草地に生育。

イヌクグの葉
イヌクグの葉
イヌクグの小穂
イヌクグの小穂

No.0722.a カミガヤツリ Cyperus papyrus

多年草(Flora of North America)。別名パピルス。根生葉は頑丈。茎は丸い三角錐で、300~500cm × 15~45mm、光沢があります。葉は鋸歯がありません。花序:花穂はゆるやかな円筒形で10〜20×6〜10mm、花序枝は40〜100本、垂れ下がるか弓なりになり、細長く10〜30cm、2次花序枝は8〜20cm、苞葉は4〜10本、±直立、V字形、3〜8cm×4~15mm、2次苞葉は2〜5mm、(1.5〜4~16cm×0.5~2mm、小軸は宿存、側面は離れ、基部はしっかりと付いたまま、翼幅0.3~0.4mm)。花托は6〜30個、やや圧縮された線形~四角形、6〜10×0.8〜1mm;花托は6〜16個、内側は赤みがかった横5裂、縁辺は白〜灰白色、卵型楕円形で1.8〜2.2×1.2〜1.5mm、頂部は尖るか鈍化します。花:葯は0.8〜1mm(接続部は葯を越えて0.2〜0.5mmの赤い小片状付属物として伸び、先端は通常とがります);花柱は0.2〜0.4mm;柱頭は0.8〜1.2mm。果皮は淡褐色で、無柄、長楕円形、0.8〜1×0.4mm、先端はほとんど尖らず、表面は凸凹しています。夏に結実します。原産地はスーダンの白ナイル川一帯とされ(CABI, 2022)、そこから西に中央アフリカ、南にマダガスカルとジンバブエまで広がったと考えられています。北緯13度、南緯26度が自生域の限界とされ、サハラ以南のアフリカの大部分を包含しています。自生域がアフリカのどこまで西に広がっているかは不明ですが、ベナンとナイジェリアには記録があります。あまりにも長い間、人間に役立ってきたため、人々が各地を移動する際に持ち運んできたので本当の自生域の限界は分かっていません。古代エジプトではよく利用されてきましたが、現在では同国では絶滅している可能性があります。南アフリカを含むアフリカ南部の湿地にも広く分布していますが、自生分布の多くの主張には異論があり20世紀初頭にボツワナのオカバンゴデルタに導入されたという考えもあります。渓流沿い、湿地帯に生息します。スペイン、イタリア、アメリカ、南アメリカ、オーストラリアなど、世界中の熱帯、亜熱帯、地中海性気候の国に導入されています。エジプトには、洪水の際に上流からナイル川デルタ地帯に流れてきた株があり、それを人手をかけて栽培し、記録のための媒体(パピルス紙、paperの語源)、儀式祭礼用品や履き物のような生活雑貨、綱、舟の帆や舟(葦船)そのものの材料として、また糖分や油分を豊富に含むことから柔らかい部位を生や加熱して若い葉や茎や根を食料としても利用していました。パピルス紙は現在の紙のように一度分散した繊維を絡み合わせるわけではなく、刈り取った茎の皮をそのまま水に晒して細菌に分解させた後に叩いて整形することで作ります。紀元前4000年頃にエジプトで最初に製造され、プトレマイオス朝時代(紀元前305年~紀元前30年)には、羊皮紙のような競合品もありましたが、安価なことからエジプトの輸出品として各地に広まり、ギリシア国家・ローマ国家でも使用されました。しかし、現代的な製紙法が紀元前150年以上前の中国の前漢で発明、唐で改良されており、唐とアッバース朝間で起こったタラス河畔の戦い(751年)の際、唐人の捕虜の中に製紙職人がいたとされ、サマルカンドに製紙工場が開かれてイスラーム世界に製紙法が伝わり、さらにヨーロッパにも伝わり800年頃にはパピルス紙は衰退しました。

カミガヤツリの外観
カミガヤツリの外観
カミガヤツリの小穂
カミガヤツリの小穂

No.0722.b メリケンガヤツリ Cyperus eragrostis

別名オオタマガヤツリ。多年草。叢生するが稀にごく短い横走根茎がある。茎は高さ30~100cm、比較的太くしっかりとしており、基部は赤色を帯びます。葉は長いものでは茎と同長で、幅4~8mm。苞葉のうち5~6枚は花序より長く、最下のものは長さ50cm以上になります。花序枝は5~10本前後で、長いものは長さ10cmを超え、枝先に5~20個の小穂が球形に集まります。小穂は少しふくらんだ偏平な線状長楕円形で、長さ5~20mm、幅約3mm、黄緑色~やや白色を帯びた緑色で、熟すと中央部が褐色になり、10~40個の小花がつきます。鱗片は長さ約2mmで中肋の緑色の部分がやや幅広く、縁は膜質で、背部は丸みを帯びた2つ折りとなります。果実は稜のはっきりした3稜形で長さ約1mm、幅約0.5mmの倒卵形。花柱は長さ約0.5mm、柱頭は長さ約0.5mm。雄しべは1個。花(果)期は6~11月。熱帯アメリカ原産。本州(宮城県、関東地方以南);オーストラリア、アジアの暖温帯~熱帯に帰化。川や溝などの水湿地、造成地などに生育。

メリケンガヤツリの葉
メリケンガヤツリの葉
メリケンガヤツリの小穂
メリケンガヤツリの小穂

No.0722.c シュロガヤツリ Cyperus alternifolius

多年草。大型で叢生または短い根茎から節ごとに茎を単生します。茎は生育条件がよいと高さ1mを超えます。葉は有花茎の基部に鞘状につきます。苞葉は長さ10~15cm、幅2~10mmで、10数枚が花序の基部に輪生します。花序枝は長さ5~7cmで複生します。小穂は長楕円形、長さ5~8mm、幅約1.5mm、白緑色からわら色、6~10個の小花がつきます。鱗片は披針形で、長さ1.5~1.8mm。果実は長さ約0.8mm、幅約0.5mmで、白味を帯びた褐色。花柱は長さ0.5~0.8mm、柱頭は長さ1~1.5mm。雄しべは3個。花(果)期は7~9月。マダガスカル原産で本州(関東地方南部以西)、四国、九州、琉球;世界の熱帯、亜熱帯、暖温帯に帰化。湿り気のある明るい草地や路傍に生育。温室や庭によく栽培され逸出しやすく、近年の地球温暖化、ヒートアイランド現象、排温水による河川の水温上昇などにより越冬できる機会が増えているものと思われます。英名の Umbrella plant が示すように、苞葉が傘を広げたようにも見えます。

シュロガヤツリの小穂
シュロガヤツリの小穂

No.0741 アイバソウ Scirpus wichurae f. wichurae

多年草(岡山県カヤツリグサ科植物図譜)。稈は高さ1〜1.5m、硬く、横断面は鈍3稜形。基部の鞘は密に稈を包みます。葉は長く、長さ20〜40cm、幅5〜15mm。花期は8〜10月。花序は1〜5個、頂生および側生し、数回分岐し、多数の小穂を密につけます。花序枝はざらつきます。苞葉の葉身は葉状。小穂は1〜5個ずつ集まってつき、長楕円形、長さ4〜8mm、幅3〜4mm、赤褐色。鱗片は広倒卵形、長さ約2mm。そう果は長さ約1mm、横断面は扁3稜形。刺針状花被片は6本あり、糸状、屈曲し、長く縮れていて、先端には疎らに上向きのざらつきがある。柱頭は3個。植物体は叢生します。アイバソウ f. wichurae は小穂が単生する型。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国などに分布。平地や山地の湿地に普通に生えます。

アイバソウの小穂
アイバソウの小穂

No.0742 アブラガヤ Scirpus wichurae f. concolor

多年草。Scirpus wichuraeの小穂を複数個つける型。本州、四国、九州に分布。

アブラガヤの葉
アブラガヤの葉
アブラガヤの小穂
アブラガヤの小穂

No.0752.1 チシママツバイ Eleocharis acicularis var. acicularis

マツバイ Eleocharis acicularis var. longiseta は水田などでは1年草もしくは夏緑性多年草の生活史をとりますが、湧水地などで沈水状態で生育するもののなかには、1年を通じて見られるものがあるので、本質的には常緑性多年草と考えられます。極細の匍匐根茎を長く四方に広げ、節より複数の毛状の茎を叢生し、パッチ状~マット状となって生育します。刺針状花被片は3~4個で小逆刺があり、不同長ですが果実より著しく長いです。北海道、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、台湾、中国~シベリア東部などに分布します。チシママツバイ var. acicularis はマツバイの変種で刺針状花被片が1~3個と少なく果実より短いか、まったく退化することで区別されます。台湾、ロシア、カザフスタン、ベトナム、インドネシア、フィリピン、太平洋諸島、アジア西部、ヨーロッパ、アフリカ(モロッコ)、北アメリカ、南アメリカ、日本の東北地方、徳島県に分布します。

チシママツバイの葉
チシママツバイの葉

No.0761 イソヤマテンツキ Fimbristylis sieboldii

多年草。高さ15~40cm。小穂は長さ7~15mm、幅約3mm。鱗片は褐色で中脈が細く、長さ3.5mm、鱗片上部には実体顕微鏡下で認められる微毛があり光沢がありません。果実は倒卵形で横断面はレンズ状、長さ1~1.2mm、暗褐色に熟し、表面は平滑。小穂が1個のものはヤマイに、複数つくものはナガボテンツキと誤りやすいです。ヤマイとは小穂が細く濃褐色で光沢がなく、果実基部が明らかな柄にならないことで区別できます。ナガボテンツキとは果実がほとんど平滑で鱗片の中脈が細く、葉鞘の合わせ目の膜質部分が水平に切れることで区別できます。本州(関東地方・北陸地方以西)、四国、九州、琉球に分布する。海岸に生えます。学名は F. ferruginea var. sieboldii とされることもありますが、F. ferruginea とイソヤマテンツキは形態が異なり別種と考えられることから独立種としての学名を採用されています。

イソヤマテンツキの葉
イソヤマテンツキの葉
イソヤマテンツキの小穂
イソヤマテンツキの小穂

No.0765 ヤマイ Fimbristylis subbispicata

多年草。叢生し、高さ15~50cm。葉の幅0.7~1mm。小穂がふつう1個なのでハリイ属と紛れやすいですが、小穂基部に苞葉が1個あり、刺針状花被片がないのでテンツキ属と分かります。種子散布期に小穂の鱗片が開出しやや宿存する様子はハリイ属やテンツキ属には見られない特徴であり、遠くからも識別しやすいです。小穂は長さ1~2cm、幅4~7mm。鱗片は長さ4~6mm、多数の脈があり、淡黄色でやや光沢があり無毛。果実は倒卵形で基部に明らかな柄があり、横断面はレンズ状、長さ1~1.2mm、暗褐色に熟し、表面は平滑。北海道、本州、四国、九州、琉球;東アジアに分布。湿地に生えます。

ヤマイの小穂
ヤマイの小穂

No.0779.a シラサギカヤツリ Rhynchospora colorata

多年草(Flora of North America)。叢生または単生、高さ70cm以下。根茎は細く、鱗片があり、太さ2mm以下。稈は直立、細く、基部に葉があり、三角形、数個のうねがあります。葉は広がり~直立し、稈により越水し、葉身は狭線形、基部は扁平になり、幅0.5~3mm、先は細くなり、三角形。花序は頂生、1個つき、頭状、密に白色の葉状の総苞がつき、総苞片は数個、フレアー状~反曲、広い基部~中間近くまで白色、そこから細くなった先まで緑色。長い苞は長さ13cm、幅2~7mm。小穂は白色、卵形、長さ5~7mm、先は鋭形。雌鱗片は多数、舟形、鋭い曲がった竜骨があり、長さ3~4(~5)mm、先は鋭形または鈍形。花は花被がありません。果実は小穂に数個、長さ1.5~1.7(~2)mm。柱基を除いた果実本体は黄色~マホガニー色、広梨状倒卵形、薄いレンズ形、長さ約1mm、幅0.5~0.7mm、先が最も広く、縁は厚くなり、先端の疣の基部で終わり、表面に横の波打つしわがあり、うねに短い線形のパピラがあります。先端の疣は広三角形、0.5~0.6mm、灰色、甲殻質、先は短い尖鋭形。晩春から夏にかけて結実します。北アメリカ、メキシコ、西インド諸島、中央アメリカ、南アメリカ(フランス領ギアナ)に分布し、沼沢地、海岸、草地、沼沢地の縁の砂、泥炭、シルト、時には沼沢地、通常は中性の基盤上に生息します。観賞用に日本を含む各国で栽培されます。カヤツリグサ科では例外的に虫媒花で、北米ではクマバチ属 Bombus、コハナバチ科の仲間 Augochlorella、ハナアブ科の仲間 Palpada、オオマエグロメバエの仲間 Physocephala、ドロジガバチ属 Sceliphron が訪れた記録があります(Dow, 2019)。白色の葉状の総苞は昆虫を惹き付けるためだと考えられます。

シラサギカヤツリの小穂
シラサギカヤツリの小穂

No.0813.a タニガワスゲ Carex forficula

多年草。根茎は短く、叢生します。高さ30~50cm。基部の鞘は葉身がなく、濃褐色で糸網を生じます。葉は幅2~4mm。花穂は3~6個。頂花穂は雄性で長さ2~4cm。側花穂は雌性で直立し、長さ2~5cm、幅2~4mm。雌花の鱗片は側面が黒紫色で中肋が緑色。果胞は鱗片より長く、長さ3.5~4mm、嘴は長く縁には小歯があり、口部は鋭く2裂し、面は平滑。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国北部に分布。渓谷の水辺に生えます。

タニガワスゲの葉
タニガワスゲの葉
タニガワスゲの小穂
タニガワスゲの小穂

No.0817 ゴウソ Carex maximowiczii

多年草。根茎は短く、叢生します。高さ40~70cm。基部の鞘は葉身がなく、淡褐色で軟らかく、糸網は生じません。葉は幅4~6mm。花穂は2~4個。頂花穂は雄性、線形で長さ2~4cm。側花穂は雌性で長さ1.5~3.5cm、幅5~7mm、垂れ下がります。鱗片は褐色を帯び、鋭頭または鈍頭芒端。果胞は乳頭状の突起があり、長さ3.5~5mm。北海道、本州、四国、九州、琉球;千島、朝鮮、中国に分布。湿地に生えます。

ゴウソの小穂
ゴウソの小穂

No.0821 アゼナルコ Carex dimorpholepis

多年草。根茎は短く、叢生します。高さ40~80cm。基部の鞘は葉身がなく、褐色で、竜骨があり、少し糸網を生じます。葉は幅4~10mm。花穂は4~6個、垂れ下がり、上方のものは雌雄性、下方のものは雌性、長さ3~6cm、幅5mm。鱗片は長さ2.5mm、淡緑色で褐色を帯び、凹頭芒端。湿地に生えます。果胞は乳頭状の突起があり、長さ2.5~3mm。北海道、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、インドシナ、インドに分布。

アゼナルコの葉
アゼナルコの葉
アゼナルコの小穂
アゼナルコの小穂

No.0841 ナキリスゲ Carex lenta

多年草。根茎は短く、株は叢生し、匐枝は出しません。高さ40~80cm。葉は幅2~3mm。基部の鞘は褐色で繊維に分解します。果胞は脈が目立ち、やや開出した短毛があります。本州(宮城県、新潟県以南)、四国、九州;朝鮮、中国、インドに分布。樹林内や林縁に生えます。センダイスゲモドキ f. simplex はナキリスゲの根茎が少し伸びたもの。

ナキリスゲの小穂
ナキリスゲの小穂

No.0851 アオスゲ Carex leucochlora

多年草。密に叢生し、匐枝は出しません。高さ15~50cm。基部の鞘は褐色でやや光沢があり、古くなると繊維に分解し、葉は有花茎とほぼ同長で、幅2~3mm。雄花穂は多数の花をつけ棍棒状、長さ1~2cm。雌花穂は2~3個で、互いに接近してつき、多数花を密生し、長さ1~2cm、幅3~4mm。苞はほとんど無鞘で、葉身は有花茎と同高またはやや高い。根際に雌花穂をつけることはほとんどありません。雌花の鱗片に長い芒があります。果胞には不明瞭な脈があり、長さ2.5~3mm、まばらに毛があります。北海道、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、台湾、ウスリー、ヒマラヤに分布。草地に普通に生えます。『神植誌88』、『大井誌』、『保育原色草III』ではアオスゲを C. breviculmis としていますが、C. breviculmis はオーストラリアのもので、有花茎は葉よりも短く、苞の葉身が著しく長く、果胞には太い脈が多数あるなど、さまざまな点で異なり、日本のアオスゲと同種に扱うことはできません。日本のアオスゲは中国を基準産地とする C. leucochlora であると考えられています。

アオスゲの葉
アオスゲの葉
アオスゲの小穂
アオスゲの小穂

No.0865 オオシマカンスゲ Carex oshimensis

多年草。根茎は短く、叢生し、高さ20~50cm。基部の鞘は濃褐色で、古くなると繊維状に分解して残ります。葉は常緑で硬く、幅3~6mm。雄花穂は濃褐色を帯び、長さ2~5cm。雌花穂は3~5個、上部に短く雄花部があり、長さ1.5~5cm、幅約5mm。雌花の鱗片は褐色を帯び、凹頭芒端。果胞は鱗片よりも短く、長さ約3mm、まばらに短毛があります。果実の頂部には環状の付属体がある。伊豆諸島に分布。庭に植えられ、ときに逸出しています。

オオシマカンスゲの葉
オオシマカンスゲの葉
オオシマカンスゲの小穂
オオシマカンスゲの小穂

No.0865.1 オオシマカンスゲ(エバーゴールド) Carex oshimensis ‘Evergold’

葉が斑入りになるオオシマカンスゲの園芸品種。稀にハチジョウカンスゲ Carex hachijoensis ‘Evergold’とされることもありますが、どちらが正しいのか科学的文献は未確認です。『Google Scholar』では「”oshimensis” ‘Evergold’」で47件(最新:Sun et al.,2022)、「’Evergold’ “hachijoensis”」で6件(最新2007年)という結果からオオシマカンスゲの品種とするのが現在の主流のようです。

オオシマカンスゲ(エバーゴールド)の葉
オオシマカンスゲ(エバーゴールド)の葉
オオシマカンスゲ(エバーゴールド)の小穂
オオシマカンスゲ(エバーゴールド)の小穂

No.0897 カサスゲ Carex dispalata

多年草。匍匐根茎をもち、群生することが多いです。高さ40~100cm。茎の基部の鞘は赤紫色を帯びます。葉は幅4~8mm。雄花穂は線状円柱形、長さ4~7cm。雌花穂は3~6個で、長さ3~10cm、幅4~6mm。苞は葉身が発達し無鞘。雌花および雄花の鱗片には赤紫色の部分があり、鋭頭芒端。果胞は熟しても膨らまず、長さ3~4mm、乾くとやや褐色に変色します。柱頭は3岐。北海道、本州、四国、九州;東アジアに分布。池や湿地に生えます。

カサスゲの葉
カサスゲの葉
カサスゲの小穂
カサスゲの小穂

No.0898 キンキカサスゲ Carex persistens

多年草(日本のスゲ)。横走する地下茎があり群生します。基部の鞘は淡色で一部赤紫色を帯びることがあります。葉はやややわらかく幅4〜8mm。有花茎は高さ30〜70cm。頂小穂は雄性、長さ3〜7cm。側小穂は雌性、長さ3〜12cm。雌花および雄花の鱗片には赤紫色の部分があり、鋭頭芒端、果胞より長い。果胞は長さ3〜4mm、無毛まれに有毛、熟しても膨らまず、乾くとやや褐色に変色します。花柱は細長く、宿存し、柱頭は3岐。果期は5〜6月。日本の本州(近畿以西)の山地の河畔や湿地に生えます。

キンキカサスゲの葉
キンキカサスゲの葉

引用文献

CABI. 2022. Invasive Species Compendium: Cyperus papyrus (papyrus). https://doi.org/10.1079/cabicompendium.17503

Dow, A. M. 2019. Native Plant Landscaping for Pollinators on Eastern North Carolina Solar Farms. Master’s Thesis, East Carolina University. http://hdl.handle.net/10342/7468

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

田中肇. 1976. 虫媒花と風媒花の観察. ニュー・サイエンス社, 東京. 109pp. ISBN: 9784821600236

Sun, X., Zhou, Y., Tian, A., Kuang, J., Zhang, Z., & Tang, Q. 2022. Ecological Restoration of Construction and Demolition Waste Landfills by Plants: a Case Study in Suzhou, China. Polish Journal of Environmental Studies 31(5): 4873–4883. https://doi.org/10.15244/pjoes/150385

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