【種子植物図鑑 #028】モクレン科の種類は?写真一覧

種子植物図鑑
Magnolia liliiflora var. gracilis

モクレン科 Magnoliaceae は常緑または落葉の木本。葉は単葉で互生。花被片は離性で輪生し、3数性を示します。雄しべや雌しべは多数がらせん状につきます。アジアおよびアメリカの温帯および亜熱帯に2属約300種が知られ、日本には1属7種が自生しています。植栽され、ときに逸出しています。モクレン科の花の匂いは詳しく調べられています(東,2004)。

本記事ではモクレン科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

基本情報は林(2014)、神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.0118 シモクレン Magnolia liliiflora

落葉低木~小高木。葉身長8~16cm、最大幅は先寄り~中央。葉柄1~2cm。葉はコブシより大きく、ハクモクレンより小さいです。本種の特徴は、花が紫色であること以外に、葉縁がよく波打ち、葉は中央付近で幅が最大になる傾向が強く、花芽はラッキョウのように先が狭まる形で、普通は株立ち樹形で樹高2~4mと小型になることです。中国原産。庭木、公園樹にやや普通。

シモクレンの葉
シモクレンの葉

No.0119 トウモクレン Magnolia liliiflora var. gracilis

トウモクレンは全体にシモクレンより小型で、葉の幅が狭く、花被片の内側は白っぽく、先端がややとがるとされる変種。『Ylist』に従いましたが、品種 ‘Gracilis’ とされることもあり、特にシモクレンと区別されないこともあります。

トウモクレンの葉
トウモクレンの葉
トウモクレンの樹皮
トウモクレンの樹皮
トウモクレンの花
トウモクレンの花
トウモクレンの未熟果
トウモクレンの未熟果

No.0120 ハクモクレン Magnolia denudata

落葉高木。時に街路樹。葉身長10~18cm、最大幅は先寄り。葉柄1~3cm。葉はコブシやシモクレンより大きく、丸みが強い形で葉先がつまみのように突き出て目立ち、縁はあまり波打たず平面的。花は白色、花弁は9枚で半開き状。単幹で樹高7~15m。中国原産。庭木、公園樹に普通。

ハクモクレンの葉上面
ハクモクレンの葉上面
ハクモクレンの葉下面
ハクモクレンの葉下面
ハクモクレンの樹皮
ハクモクレンの樹皮
ハクモクレンの花芽
ハクモクレンの花芽
ハクモクレンの花
ハクモクレンの花
ハクモクレンの花内部
ハクモクレンの花内部

No.0120.a ソコベニハクモクレン Magnolia x soulangeana

ハクモクレンとシモクレンの雑種。別名サラサモクレン、ニシキモクレン、ソトベニハクモクレン。花は外側ほどピンク~紫色を帯び、内側は白いものが多いです。樹形や葉形はハクモクレンに似るものが多く、高木になります。栽培されています。

ソコベニハクモクレンの花
ソコベニハクモクレンの花

No.0121 コブシ Magnolia kobus

落葉高木。葉は互生し倒卵形または広倒卵形で長さ6~15cm、幅3~9.5cm、基部はくさび形に細まります。花期は4月。葉を開く前に開花します。通常は花の下に1枚の小さい葉があります。萼片は3個、小型で細く、緑色、外側に軟毛を密生し、早落性、ときに花弁状になる。花弁は6個、白色でときに基部がかすかに紅色を帯びます。袋果は熟すと革質または木質になり、背面で裂開し、1~2個の種子が細長い種糸(珠糸)で垂れ下がります。北海道、本州、四国、九州;朝鮮半島に分布。落葉樹林内で普通に見られ、公園や庭にも広く植栽されています。花粉を採餌する小さな甲虫のいくつかの種が最も効果的な花粉媒介者である事がわかっています(Ishida, 1996)。報酬のない雌期の花は、報酬のある雄期の花を模倣する「異性間擬態」を行っている可能性があります。

コブシの葉上面
コブシの葉上面
コブシの葉下面
コブシの葉下面
コブシの樹皮
コブシの樹皮
コブシの花
コブシの花
コブシの果実
コブシの果実

No.0124 シデコブシ Magnolia stellata

落葉高木~低木。葉身長5~10cm、最大幅は中央~先寄り。葉柄0.2~1cm。葉も丈も小型で、樹高は2~5m。葉は細い梢円形で先が丸いので見分けやすいです。花弁は12枚以上と多いです。愛知、岐阜、三重の温帯に自生。低地~丘陵の湿地周辺に稀。庭木、公園樹に普通。主にコウチュウ目(ハネカクシ科)・アザミウマ目・ハエ目の昆虫が訪花し、送粉されることが知られています(鈴木ら,2009)。

シデコブシの葉上面
シデコブシの葉上面
シデコブシの葉下面
シデコブシの葉下面
シデコブシの樹皮
シデコブシの樹皮

No.0127 ホオノキ Magnolia obovata

落葉高木。葉は枝の先端に輪生状に集まってつき、葉身は倒卵形または倒卵状長楕円形で長さ20~40cm、幅10~25cm、全縁。托葉は膜質で基部は葉柄と合着し、次の葉を包み、早落性、落痕は枝を一周します。花期は5~6月。花は頂生し、上向きに開いて芳香があります。萼片は3個で紅色を帯びた淡緑色で早落性。花弁は6~9個、初めは白色、後に黄変します。雄しべは多数で花糸は赤みを帯びます。集合果は長さ10~15cmの長楕円状で、多数の袋果からは赤色の種子が糸で垂れ下がります。北海道、本州、四国、九州;南千島に分布。落葉樹林内に生育します。公園などに植栽されることも多いです。ケシキスイなど小型の甲虫や小型のハナアブ・マルハナバチが訪花し、送粉・受粉します(河原,2002)。雌性先熟が起こりますが、ホオノキの個々の花の開花は同調していないため、隣花受粉という自家受粉の一種が起こります(石田,2002)。にも関わらず開花の非同調が起こるのは、雄性期の花粉目当てに飛来する昆虫が、蜜も花粉も出さない雌期花に誤って訪花する頻度を高めることに役立っているという説があります。

ホオノキの葉
ホオノキの葉
ホオノキの樹皮
ホオノキの樹皮

No.0128 タイサンボク Magnolia grandiflora

常緑高木~小高木。樹高6~15m前後。葉身長15~25cm、最大幅は中央~先寄り。葉柄2~4cm。葉は大型で肉厚で硬く、裏は毛が密生して赤茶色~金色に見えるので見分けやすいです。花はホオノキに似て、径25cmにも達し、日本で見られる樹木では最大級。果実は長さ約10cm。北米原産。庭木、公園樹に普通。ハナムグリなどの甲虫が訪花送粉します(北川,1991)。

タイサンボクの樹形
タイサンボクの樹形
タイサンボクの葉上面
タイサンボクの葉上面
タイサンボクの葉下面
タイサンボクの葉下面
タイサンボクの花
タイサンボクの花
タイサンボクの樹皮
タイサンボクの樹皮

No.0128.1 ホソバタイサンボク Magnolia grandiflora var. laceolata

葉がやや細いタイサンボクの栽培変種。広狭に変異があり、日本で植栽されているものは、ホソバタイサンボクが多いといわれ、上記の個体もホソバタイサンボクに含まれる可能性があります。

ホソバタイサンボクの葉
ホソバタイサンボクの葉
ホソバタイサンボクの樹皮
ホソバタイサンボクの樹皮

No.0130 オガタマノキ Magnolia compressa

常緑高木。葉身長6~12cm、最大幅は先寄り。葉柄2~3.5cm。コブシを常緑にしたような雰囲気で、葉はコブシより細く、葉柄はより長いです。若枝や葉柄、冬芽に、金色を帯びた毛があることが特徴ですが、カラタネオガタマほど粗い毛ではありません。樹高10~15m前後になります。関東~沖縄の暖温帯・亜熱帯に自生。沿海の照葉樹林内にやや稀。社寺植栽、庭木にやや稀。

オガタマノキの葉上面
オガタマノキの葉上面
オガタマノキの葉下面
オガタマノキの葉下面
オガタマノキの樹皮
オガタマノキの樹皮
オガタマノキの未熟果
オガタマノキの未熟果

No.0130.a カラタネオガタマ Magnolia figo

常緑小高木。葉身長5~10cm、最大幅は先寄り。葉柄0.1~0.3cm。葉は短い倒卵形で、枝や芽に濃い褐色の剛毛が多いことが特徴です。花は縁が紅色を帯びた黄白色で初夏に咲き、バナナに似た強い香りがあります。樹高3~5mになります。中国原産。庭木、社寺植栽、公園樹にやや稀。

カラタネオガタマの葉上面
カラタネオガタマの葉上面
カラタネオガタマの葉下面
カラタネオガタマの葉下面
カラタネオガタマの樹皮
カラタネオガタマの樹皮
カラタネオガタマの花
カラタネオガタマの花

No.0131 ユリノキ Liriodendron tulipifera

別名ハンテンボク、チューリップツリー。若枝は褐色または紫褐色。葉は4~6浅裂し、無毛。5~6月、枝先にチューリップ形の花を上向きに咲かせます。花被片は長さ4~6cm、緑かかった黄色で基部に橙色の斑紋があります。雌しべは突出しません。翼果は鋭頭。北アメリカの東部~南部原産で、明治初期に渡来。街路樹や公園樹として広く植栽され、ときに植栽木の周辺に逸出したものが見られます。

ユリノキの葉
ユリノキの葉
ユリノキの樹皮
ユリノキの樹皮

No.0131.1 フクリンユリノキ Liriodendron tulipifera ‘Aureomarginatum’

別名オーレオマルギナツム。葉の辺縁が黄色になっているユリノキの品種。

フクリンユリノキの樹形
フクリンユリノキの樹形
フクリンユリノキの葉上面
フクリンユリノキの葉上面
フクリンユリノキの葉下面
フクリンユリノキの葉下面
フクリンユリノキの樹皮
フクリンユリノキの樹皮

引用文献

東浩司. 2004. モクレン科の花の匂いと系統進化. 分類 4(1): 49-61. https://doi.org/10.18942/bunrui.KJ00004649594

林将之. 2014. 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類. 山と溪谷社, 東京. 759pp. ISBN: 9784635070324

Ishida, K. 1996. Beetle pollination of Magnolia praecocissima var. borealis. Plant Species Biology 11(2-3): 199-206. https://doi.org/10.1111/j.1442-1984.1996.tb00146.x

石田清. 2002. ホオノキの受粉特性と近親交配. 林業技術 729: 14-19. ISSN: 0388-8606, https://www.jafta-library.com/pdf/mri729.pdf

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

河原孝行. 2002. ホオノキ. 林業技術 729: 8-12. ISSN: 0388-8606, https://www.jafta-library.com/pdf/mri729.pdf

北川尚史. 1991. タイサンボクの花と受粉. 植物分類、地理 42(1): 44. https://doi.org/10.18942/bunruichiri.KJ00001078703

鈴木節子・石田清・ 戸丸信弘. 2009. シデコブシの雌性繁殖成功と訪花昆虫の関係. 日本生態学講演要旨 56: PB2-647. https://www.esj.ne.jp/meeting/abst/56/PB2-647.html

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