【種子植物図鑑 #032】バンレイシ科にはどんな種類がいる?写真一覧

種子植物図鑑
Annona muricata

バンレイシ科 Annonaceae は常緑まれに落葉の高木または低木、ときにつる性木本。アジア、アメリカ、アフリカの熱帯~亜熱帯に130属2,300種ほどが知られます。日本には琉球にクロボウモドキ Monoon liukiuense 1種のみが分布します。アケビガキは栽培個体が逸出します。

本記事ではバンレイシ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

基本情報は林(2014)、神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.0132 アケビガキ Asimina triloba

別名ポーポー、ポポー。葉や花の雰囲気がカキに似て、果実はアケビに似るのでアケビガキの名があります。葉は互生、葉柄があり、葉身は倒卵状楕円形。花は紫褐色、両性で3数性。萼は3個。花弁は6枚あり、外側の3枚が大きく、内側の3枚は小さいです。春、葉が展開する前に開花し、秋に結実します。果実は肉質の集合果で、1つの花から1~4個が結実し、形はアケビに似て、秋に緑黄色に熟します。果実は食用にされます。北アメリカ原産。本州(関東地方以西)で屋外栽培されます。市街地周辺の雑木林などに逸出したものが見られることがあります。

アケビガキの葉上面、ポポー
アケビガキの葉上面
アケビガキの葉下面、ポポー
アケビガキの葉下面
アケビガキの樹皮、ポポー
アケビガキの樹皮

No.0135 トゲバンレイシ Annona muricata

常緑小高木(Flora of China)。高さ10mほど。樹皮は粗いです。葉身は斜長〜楕円形で5〜18×2〜7cm、紙質、外面は緑色で光沢があり、二次脈は中央脈の両側に6〜13本、両面でやや顕著、基部は広角から丸く、頂部は鋭角から鈍角になります。花序は腋窩につき、1~2輪。花は直径約3.8cm。花柄は0.5〜2.5cmで、光沢があります。萼片は卵状楕円形から卵状三角形で3~5mm。花弁は緑色で後に黄色くなり、内側には赤い斑点がありません。外側の花弁は厚く、広三角形で2.5〜5×2〜4cm、内側は細かい軟毛で、頂部は鋭角から鈍角。雄しべは4〜5mm、花糸は肉厚で、先端が拡張しています。花托は約5mmで、軟毛があります。果皮は緑色で卵形、しばしば斜めまたは湾曲し、10〜35×7〜15cm、柔らかい刺状突起に覆われ、基部はくぼみ、先端は丸いです。果肉は白色で、種子は褐黄色、連珠形、約2×1cm。花期は4〜7月。果期は7~12月。果実はサワーサップと呼ばれ、Annona属の中では最も大きいです。生食するほか、シャーベットにしたり、飲み物に使われます。果肉はワインやコニャックと一緒に飲まれることもあります。熱帯アメリカ原産で、南北アメリカ、東南アジアの一部、中国、台湾などで栽培されます。結実と収量は非常に少なく、風力受粉と自家受粉は1.5%と低く他家受粉が必要です(CABI, 2022)。外側の花弁は夕方に近づくと開き花粉が排出されます。内側の花弁はかなり遅れてごくわずかに開き、花の香りに誘われた小さな昆虫が入り込みます。具体的な送粉者としてはケシキスイ科の仲間(CarpophilusUroporus)やコガネカブト属 Cyclocephala のような甲虫が重要であると考えられています(Peña et al., 2002; Parizotto & Grossi, 2019)。

トゲバンレイシの葉上面
トゲバンレイシの葉上面
トゲバンレイシの葉下面
トゲバンレイシの葉下面
トゲバンレイシの樹皮
トゲバンレイシの樹皮
トゲバンレイシの蕾
トゲバンレイシの蕾

No.0135.a チャボイランイランノキ Cananga odorata var. fruticosa

イランイランノキの矮性変種。常緑低木。樹高は2~3m程度。葉は長楕円形で、光沢があります。葉は全縁ではありますが葉縁は波を打ち、枝に互生します。長い花柄を持った花は初め淡緑色で、やがて黄緑色へと変化します。開花時には芳香を放ち、花は高級な香水の原料となります。シャネルの香水にも使われています。中国南部~東南アジアに分布します。

チャボイランイランノキの葉上面
チャボイランイランノキの葉上面
チャボイランイランノキの葉下面
チャボイランイランノキの葉下面
チャボイランイランノキの樹皮
チャボイランイランノキの樹皮

引用文献

CABI. 2022. Invasive Species Compendium: Annona muricata (soursop). https://www.cabi.org/isc/datasheet/5812

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

Parizotto, D. R., & Grossi, P. C. 2019. Revisiting pollinating Cyclocephala scarab beetles (Coleoptera: Melolonthidae: Dynastinae) associated with the soursop (Annona muricata, Annonaceae). Neotropical entomology 48(3): 415-421. https://doi.org/10.1007/s13744-018-0647-y

Peña, J. E., Nadel, H., Barbosa-Pereira, M., & Smith, D. 2002. Pollinators and pests of Annona species. pp.199-221. In: Tropical fruit pests and pollinators: biology, economic importance, natural enemies and control. ISBN: 9780851994345, https://doi.org/10.1079/9780851994345.0000

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