カツラ科 Cercidiphyllaceae は落葉高木。葉は単葉で対生。花は小型で、花被がなく、雌雄異株。雄花はきわめて短い柄をもち、4個の小苞を伴い、小苞は膜質で早落します。雄しべは多数。雌花はやや細長い柄をもつ、果実は袋果、柄があり、狭円筒形で外へ反り、背面は鋭稜、内縫には溝があります。種子は2列にならび、小さくて翼があります。東アジアに1属のみがあります。
本記事ではカツラ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
No.1347 カツラ Cercidiphyllum japonicum
落葉高木(久保,2009;神奈川県植物誌調査会,2018)。雌雄異株。樹高30m。幹径1m以上。多くの萌芽からなる巨大な株を形成します。長枝には葉が対生し、節間は長い。短枝には年々、3個の芽鱗と1個の葉と1個の花がつきます。葉身は長さ3~7cmの円心形(ハート型)で秋には黄色くなります。落葉はカラメルのような甘い香りがします(和名香出(かづ)の由来)。大木になり、萌芽力が強い。萌芽により幹の世代交代を行い、1個体で数百年以上生存するとされます。春先の3~5月頃、開葉の前に開花。赤い花。風媒花で、花被はありません。雄花には、赤い葯をもつ雄しべが8~13本あり、雌花にはただ1つの雌しべがあります。毎年結実。2mmほどの小型の種子。風散布。埋土種子の形成。土壌が露出した場所で発芽。実生は双葉の頃は高さ1cmほどと極めて小さい。北海道、本州、四国、九州;中国の温帯に分布します。中程度の明るい光環境の渓畔域や崩壊跡地などの攪乱を伴う立地に生えます。白亜紀の地層から花粉の化石が出現します。人里近くでは、寺社のご神木として巨木が日本各地に存在し、街路樹。アメリカでも公園木や街路樹。寿命が長いため新潟県や福島県には、「カツラの巨木のあるところには人が埋められている」という伝承があり、カツラを埋葬の標木とする習慣がありました。花は長花糸型で、一般に花粉は強い風が利用でき、しかも短い距離移動するだけで他の個体の柱頭に到達できる場合の適応とされます(田中,2000)。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726
田中肇. 2000. 風媒性被子植物の花粉粒径と散布様式. 植物研究雑誌 75(2): 116-122. https://doi.org/10.51033/jjapbot.75_2_9406
久保満佐子. 2009. カツラ. 日本緑化工学会誌 34(4): 658. http://www.jsrt.jp/pdf/dokomade/34-4katsura.pdf