【種子植物図鑑 #139】ユズリハ科の種類は?写真一覧

種子植物図鑑
Daphniphyllum macropodum subsp. macropodum

ユズリハ科 Daphniphyllaceae は常緑の高木または低木。葉は枝先に密生して互生し、狭長楕円形で全縁。花は単性で雌雄異株。総状花序を腋生します。花弁はなく、萼は3~6個。雄しべは6~12個。心皮が3ではなく2なので、トウダイグサ科から分離独立されました。果実は核果で中に1種子があります。世界に1属30種、日本には2種が分布します。

本記事ではユズリハ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.1349 ユズリハ Daphniphyllum macropodum subsp. macropodum

常緑高木(樹に咲く花)。樹皮は灰褐色で縦に筋が入り、楕円形の皮目があります。若い枝は紅色を帯びます。古い枝は葉痕が目立ちます。葉は互生。枝先に輪生状に集まってつきます。葉身は長さ8〜20cm、幅3〜7cmの長楕円形〜倒披針形。先は短くとがり、基部はくさび形。ふちは全縁。側脈は10〜19対。革質で両面とも無毛。表面は光沢があり、裏面は白色を帯びます。葉柄は長さ3〜6cm、紅色を帯びることが多い。花期は5〜6月。前年枝の葉腋から長さ4〜12cmの総状花序を出します。雄花は花弁も萼片もなく、雄しべが6〜12個あります。花糸は離生し、褐紫色の葯が目立ちます。雌花の萼片は小さいかまたはありません。子房は長さ1〜2mmの狭卵形。柱頭は褐紫色で、2〜4個が外側にそり返ります。果実は核果。長さ8〜9mmの卵状楕円形で、11〜12月に藍黒色に熟し、表面は粉をふきます。花柱は宿存します。冬芽の頂芽は狭卵形で紅色を帯び、葉柄が変化した多数の芽鱗に包まれます。葉痕は倒卵形で大きく、維管束痕は3個。花をつける枝には花序枝痕があります。葉腋の小さなまるい芽は花芽。本州(福島県以西)、四国、九州、琉球;朝鮮、中国に分布します。暖地常緑樹林内に生えます。新葉が出てから旧葉が落ちるので、子が成長してから親が譲るのにたとえて譲り葉といいます(神奈川県植物誌調査会,2018)。観賞用に栽培されることもあり、正月の飾りに使われます。ハナバチ上科、ハエ目、コガネムシ科が送粉し(Yumoto, 1988)、鳥によって種子散布されます(小南,1999)。

ユズリハの樹形
ユズリハの葉上面
ユズリハの樹皮
ユズリハの果実

No.1350 エゾユズリハ Daphniphyllum macropodum subsp. humile

太平洋側の温暖な地方に分布するユズリハが、本州の日本海側の多雪地帯に適応した亜種(佐竹,1999)。常緑低木。雌雄異株。高さは1~3mほどになり、枝はしなり、折れにくい。葉は枝に互生し、長さ3~5cmの葉柄を持ち、葉の形は楕円形~倒卵状長楕円形で長さ9~20cm、幅5~6cm、基部は円形またはくさび形で、先は短く尖ります。葉の縁は全縁で、表面は光沢を持ち、裏面はやや緑白色を帯びます。花期は5~6月、花には花被がなく、葉腋から総状花序を出します。果期は10~11月、長い果柄を持つ卵形の果実をつけます。幹が曲がって樹高1~2mの低木状、葉身長10~17cmであることからユズリハと区別できます。北海道、本州の中北部の日本海側に分布し、多雪地の林床に自生します。ユキツバキ、ヒメモチ、ヒメアオキ、ツルシキミ、ハイイヌガヤなどの日本海要素の常緑地這植物とともに、ブナ林などの林床にみられます(福嶋,2017)。

エゾユズリハの樹形
エゾユズリハの葉上面
エゾユズリハの葉下面

No.1351 ヒメユズリハ Daphniphyllum teijsmannii

常緑高木(樹に咲く花)。東北地方南部以西〜沖縄の照葉樹林内に生えます。高さ10mほどになります。樹皮は灰褐色で皮目が散生します。若い枝は緑色。古い枝は葉痕が目立ちます。葉は互生。枝先にかたまってつきます。葉身は長さ4〜15cm、幅2〜6cmの挟楕円形〜倒披針形。ふちは全縁。側脈は8〜10対あり、網状脈がはっきりしています。革質で表面は光沢があり、両面とも無毛。葉柄は長さ1.5〜5cm、ふつう緑色まれに紅色を帯びます。雌雄別株。前年枝の葉腋から長さ1.5〜6cmの総状花序を出す。花期は5〜6月。花は花序枝の上部にかたまってつく傾向があります。雄花は長さ3mmほどの柄があり、花弁はなく、小さな萼片3〜6個と雄しべが4〜12個あります。雌花には長さ約0.5mmの小さな萼片が3〜6個あります。子房は狭卵形で長さ1〜1.5mm。柱頭は3〜4個、淡黄色で外側にそり返ります。果実は核果。長さ8〜9mmの楕円形で、12〜1月に藍黒色に熟します。表面は粉をふきます。花序は垂れ下がりません。核は直径6〜7mm。冬芽の頂芽は狭卵形で葉柄が変化した多数の芽鱗につつまれます。葉痕は大形で、維管束痕は3個。葉腋には小さな花芽がつきます。葉がやや小さく、側脈は8~10対で、透かして網状脈が見えることでユズリハと区別でき、透けて見えなくても、標本で網状脈が浮き出ていれば本種と判断できます。本州(福島県以西)、四国、九州、琉球に分布します。海岸近くに生えます。公園や街路に植栽されることがあります。

ヒメユズリハの葉上面

引用文献

福嶋司. 2017. 図説 日本の植生 第2版. 朝倉書店, 東京. 186pp. ISBN: 9784254171631

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

小南陽亮. 1999. 鳥類に食べられて運ばれた種子の空間分布. pp.17-25. In: 上田恵介編. 種子散布 助けあいの進化論 1 鳥が運ぶ種子. 築地書館, 東京. ISBN: 9784806711926

佐竹義輔. 1999. 日本の野生植物 木本1 新装版. 平凡社, 東京. 321pp. ISBN: 9784582535044

Yumoto, T. 1988. Pollination systems in the cool temperate mixed coniferous and broad-leaved forest zone of Yakushima Island. Ecological Research 3(2): 117-129. https://doi.org/10.1007/BF02346934

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