【種子植物図鑑 #089】ヤシ科の種類は?写真一覧

種子植物図鑑
Trachycarpus fortunei 'Wagnerianus'

ヤシ科 Arecaceae は常緑の高木または低木。葉は掌状または羽状に分裂します。葉柄は基部が茎を抱き、鞘をなします。苞をもった円錐花序または肉穂花序つけ、1つ1つの花は小さい。熱帯~亜熱帯を中心に190属約2,400種が知られています。日本には琉球、小笠原を中心に6属6種が自生。数種が栽培され、ときに野生化しています。

本記事ではヤシ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

基本情報は塚本(1994)、佐竹(1999)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.0605 ワジュロ Trachycarpus fortunei

常緑高木。別名シュロ。関東以西では種子が鳥によって方々に運ばれ、市街地を中心に野生状態で生えているものが見られます。幹は直立し、高さ3〜7m、径10〜15cmとなり、上部は枯れた葉の葉柄と残存する葉鞘網で密におおわれます。葉は扇状円形、径50〜80cmになり、扇状に多数の裂片に深裂し、裂片は線形で、幅1.5〜3cm、内折し、先は鈍形で浅く2裂し、古くなると先端部分が折れて垂れ下がります。葉柄は長さ1m、幅4〜5cmに達し、基部付近に歯牙と刺状突起があります。雌雄異株。花期は5〜6月。葉腋から長さ30〜40cmになる大型の円錐花序を出します。雄花は雄花序にのみつき、淡黄色で、ほぼ球形。萼片は卵状楕円形、先は鈍形となり、長さ1.2mmで、花時には斜開します。花弁は3個で、広卵形、先は鈍形または円形、長さ3mmほどで、花時にも平開せずほぼ直立します。雄しべは6個で、花弁より明らかに長く突出し、花糸は円柱状となります。雄花には3個の退化雌しべがあります。雌花序には雌花と両性花がつく。雌花は淡緑色で、3個の雌しべをもち、6個の退化雄しべがあります。花柱は3個あり、子房よりも短く、先は浅く2裂します。液果は扁球形で、長さ10〜12mm、幅6〜9mmになり、緑黒色に熟します(日本の野生植物)。鳥によって種子散布されます。少なくとも中国中部(湖北省南部)・台湾・九州南部に自然分布しますが、各国で観賞用に広く栽培されているため、本来の自生地の特定は難しくなっています。『Flora of China』ではミャンマー南部から北部、インド北部にも自然分布するとされます。

ワジュロの樹形
ワジュロの樹形

No.0606 トウジュロ Trachycarpus fortunei ‘Wagnerianus’

常緑小高木。『NCBI Taxonomy』では Trachycarpus wagnerianus とされていますが、『Flora of China』、『Ylist』ではシノニム扱いであることから、ここでは品種とします。高さ4mほどになります。葉はシュロよりやや小さく、裂片の先は垂れ下がらなりません。雌雄別株。花期は5〜6月。初夏に黄色の花をつけます。日本では中国原産とされますが、カナダのGibbons(2003)によると、野生個体は知られておらず、19世紀後半にドイツ帝国ライプチヒの園芸家であるアルベルト・ワグネルが発見した日本での栽培個体が元となったとされています。ワグネルは19世紀に日本や中国に何度も採集に行き、またカリブ海や南米にも頻繁に出かけており、ドイツ北部の蒸気加熱式温室でヤシを栽培して商売をしていたと言います。『Flora of China』では上述のようにワジュロのシノニム扱いであり、トウジュロに関して特別な記述はありません。真相は筆者は不明です。

トウジュロの樹形
トウジュロの樹形

No.0606.a チャボトウジュロ Chamaerops humilis

常緑低木。樹高4m。幹は分枝せずに直立し、古い葉鞘の褐色の繊維に包まれています。成長が遅い。葉は幹の頂部分に螺旋状につき、直径50~80cmの円形で、掌状に深く切れ込み、裂片の先がさらに2裂します。葉柄は長さ1mぐらいあって、断面が3角形で縁に突起が並びます。雌雄異株で、花期は5~6月。初夏に頂上近くの葉の基部から肉質の円錐花序を出し、黄白色の小さな花を多数つけます。果実は直径1cmぐらいの偏球形の液果で、熟すと青黒くなります。ヨーロッパ南部原産。日本を含む各国で観賞用に栽培されます。

チャボトウジュロの樹形
チャボトウジュロの樹形
チャボトウジュロの葉
チャボトウジュロの葉
チャボトウジュロの樹皮
チャボトウジュロの樹皮

No.0608 カンノンチク Rhapis excelsa

常緑低木。短い地下茎を伸ばして繁殖します。茎は直立して高さ2mまで、太さは2cm程に達します。茎は分枝することなく、その表面は古い葉鞘とその繊維で硬く包まれます。繊維は黒褐色ですが、実際の樹皮は緑色。葉は茎の先端に集まって生じ、長い葉柄の先の葉身は長さ15~25cmほどで、掌状に4~8片に割れます。葉身には縦襞があり、表面に向かって膨らんでいて、先端は細かく割れ目が入ります。葉質は硬くて緑が色濃い。花期は初夏で、雌雄異株です。穂状花序は長さ20~30cmで、まばらながら円錐形に集まります。果実は広楕円状球形で、反り返った硬い鱗片で外側が覆われます。中国南部原産で、日本では江戸時代に栽培が始まり、以降に多くの品種を生み出し、古典園芸植物の1つとして扱われています。

カンノンチクの樹形
カンノンチクの樹形
カンノンチクの葉
カンノンチクの葉

No.0609 ビロウ Livistona chinensis

常緑高木。海岸近くの林に生え、高さは10~15mになります。葉は直径1mほどの円形で、掌状に中裂から深裂します。裂片はさらに中裂して、先端は折れ曲がります。花期は4~5月。葉柄の基部から円錐花序をだし、黄白色の小さな両性花を沢山咲かせます。果実は楕円形の核果で、青黒く熟します。日本の四国南部・九州・沖縄、台湾、中国南部に分布しています。海岸近くの林に生えます。

ビロウの葉
ビロウの葉
ビロウの樹皮
ビロウの樹皮

No.0610 オガサワラビロウ Livistona boninensis

常緑高木。高さは5~10m程。それ以上の高木になることもあります。幹は、葉柄が落ちた痕の環状模様が特徴。この模様は、古くなると消えてしまい、縦方向の割れ目が出てきます。幹の根元は、やや膨らみます。葉は掌状深裂で、100cm前後。先は2つに裂け垂れます。葉柄は150cm程。輪切りにすると三角形をしています。葉柄の基部には基部方向に曲がった2列の鋭い棘があります。中には棘のないものもあります。小笠原諸島に広く分布しています。海岸近くのふもとから山頂付近まで生育しています。

オガサワラビロウの葉
オガサワラビロウの葉
オガサワラビロウの樹皮
オガサワラビロウの樹皮

No.0610.a ウチワヤシ Licuala grandis

常緑高木。幹は細く単幹で、高さは3mほどになります。葉は大きな扇形で、葉身が分裂しません。雌雄異株で、葉の間から花序を伸ばし、円錐花序に薄黄色の小さな6弁花を多数咲かせます。花後に球形の赤い核果が成ります。バヌアツ・ソロモン諸島に分布し、日本を含む各国で観賞用に栽培されます。

ウチワヤシの葉上面
ウチワヤシの葉上面
ウチワヤシの葉下面
ウチワヤシの葉下面
ウチワヤシの樹皮
ウチワヤシの樹皮

No.0611 ココヤシ Cocos nucifera

常緑高木。通常、単幹で高さ15~30mとなり、樹幹頂部に長さ7~10mの羽状葉が20~30個着生しています。通常種で7~8年、矮性種で4~5年すると、各葉腋に分枝した花序をつけ、各小花序は肉穂花序をなし、花序の基部に1個の雌花とその上部に多数の雄花をつけます。「ココナッツ」と呼ばれる果実は円滑な外果皮、繊維質の中果皮、黒褐色をした固い殻の内果皮からなり、内果皮に沿って内側に約1cmの厚さの白色の胚乳である「ココナッツミルク」があります。さらにその内部の空洞は液状胚乳である「ココナッツジュース(ココナッツウォーター)」で部分的に満たされています(若い果実のみ)。液状の果実は受精後約70日でフルサイズに達しますが、成熟までには約1年かかります。有史以前から栽培されており、その野生種が明らかではありませんが、遺伝子研究では西東南アジアとメラネシアの間の地域である中央インド太平洋だと推測されています(Lew, 2018)。果実は海洋散布に適しています。野生型の果実は浮力を得るための角張った非常に隆起した形状、および果物が砂に食い込み、洗い流されるのを防ぐ尖った基部を持っています。人間の介入なしに内陸に到達することはできません。胚乳と殻の比率が高く、ココナッツの水分含有量が高くなったのはオーストロネシア語族を話すオーストロネシア人による人為選択の結果です。ナタデココはスペイン語で「ココナッツの上澄み皮膜」を意味し、ココナッツジュースを酢酸菌の一種であるナタ菌 Komagataeibacter xylinus(いくつかの記事で見られる Acetobacter xylinum はYamada et al.(2012)によってシノニム)を加えて発酵させ、凝縮したものを食用にするものでデザートや飲料に加えられます(伊藤ら,2013)。18世紀に誕生したパイナップルを原料とするナタ・デ・ピニャの代用品としてフィリピン出身の女性化学者 Teódula Kalaw África によって1949年に発明されました(Vergara et al., 1999)。

ココヤシの樹形
ココヤシの樹形
ココヤシの葉上面
ココヤシの葉上面
ココヤシの樹皮
ココヤシの樹皮

No.0611.a ブラジルヤシ Butia odorata

常緑低木。別名ココスヤシ。海外および日本のあらゆる媒体で Butia capitata として紹介されますが、Noblick(2011)によって Butia odorata であることが示されています。この事実が広くしられていないためか、多くの植物園、収集家、苗床業者はまだ学名を変更していません。本物の Butia capitata は特に丈夫ではなく、広く栽培されることはありません。高さ2~19m。葉は大きな羽状複葉で、薄緑色から青味がかった灰色、葉は大きく曲がり長さ1.5~3m、春に白~黄色の花を咲かせ、秋に果実が橙黄色に熟し食用となります。ブラジル最南端の海岸に沿って帯状に分布し、ウルグアイまで広がっています。主に海岸に沿った丘の上にある浅瀬(restinga)に生息します。日本を含む各国で観賞用に栽培されます。

ブラジルヤシの樹形
ブラジルヤシの樹形
ブラジルヤシの葉
ブラジルヤシの葉
ブラジルヤシの樹皮
ブラジルヤシの樹皮

No.0611.b ヤタイヤシ Butia yatay

常緑小高木。「ヤタイ」はアメリカ先住民のグアラニー語 yata’i に由来し、小さくて硬い果実を指します。幹は高さ6m前後、樹径50cm程。羽状葉は長さは2.5m程で、葉裏は青緑色。花は黄色で、果実は卵形で暗黄色~あかね色、食用になります。ブラジル最南端(リオグランデ・ド・スル州)、アルゼンチン(チャコ、コリエンテス、エントレ・リオス、ミシオネスおよびサンタフェの北中部の州)、ウルグアイ(パイサンドゥ県とリオ・ネグロ県)に分布し、パンパに生息します。日本を含む各国で観賞用に栽培されています。果実はウミアオコンゴウインコ Anodorhynchus glaucus の主食となっています(Yamashita & Valle, 1993)。

ヤタイヤシの葉
ヤタイヤシの葉
ヤタイヤシの樹皮
ヤタイヤシの樹皮

No.0612 オニジュロ Washingtonia robusta

別名ワシントンヤシモドキ。樹高は25m程度。葉は長さ1m程度の葉柄を持ち、その先に径1m程度で、扇形円形で、掌状に多数深裂し、先端部は白糸状に下垂する。葉は枯れても幹に長く残り、重なり合って下垂する。花序は、長さ3m程度で、淡いオレンジピンクの小花を多数つける。花後の果実は、径6~8mm程度の球状核果である。

オニジュロの葉
オニジュロの葉
オニジュロの樹皮
オニジュロの樹皮

No.0614 ニッパヤシ Nypa fruticans

常緑小高木。高さ9m前後に達します。湿地の泥の中に二叉分枝した根茎を伸ばします(この根茎が二叉分枝をすることは種子植物では数少ない例)。茎(地上茎)はなく地上部には根茎の先端から太い葉柄と羽状の複葉を持つ数枚の葉を束生します。葉の長さは5~10mで、小葉の長さは1m程度で、線状披針形、全縁、革質で光沢があり、先端は尖ります。花期には葉の付け根から花序を伸ばし、長さ80~100cm程度の細長い雄花序および、その先端に球状の雌花序をつけます。雌花序は頭状花序で、雄花序は尾状花序です。花弁は6枚。花期の後、雌花序は棘のある直径15~30cm程度の球状の集合果となります。繁殖は根茎を伸ばした先から地上部を出す栄養繁殖のほか、種子による繁殖を行います。集合果から分離した種子は直径尾4.5cm程度の卵形で海水に浮き、海流に乗って漂着した場所に定着する海流散布により分布を広げます。インド及びマレーシア、ミクロネシア、日本(沖縄県の西表島・内離島)に分布します。海岸に生育します。

ニッパヤシの葉
ニッパヤシの葉
ニッパヤシの葉
ニッパヤシの葉

No.0615 ヤエヤマヤシ Satakentia liukiuensis

常緑高木。茎は直立し、高さ15~20m、径20~30cmに達し、基部はさらに肥大します。茎は分枝せず、その表面には葉の落ちた跡が環状斑として残ります。葉は大きな単羽状複葉で、長さ4~5mに達します。葉柄は短く、葉身は革質で光沢があり、小葉は多いものでは90対を越えます。小葉は線状剣形、長さ30~70cm、幅3~4cmで、先端は浅く2つに裂けます。裏面は緑色で中肋に沿って褐色の鱗片が付きます。葉鞘は筒状になり、茎先端部を取り巻く筒を形成します。花序は茎先端に集まる葉の群より下から出て紡錘形の苞に包まれ、円錐状に2回分枝し、短い星状毛を密生しています。花序は長さ1mになり、その柄の基部は幅広くなって茎を抱きます。雌雄同株で、花は単性で黄色く、花序の軸に対して十字対生をなして穂状に多数つきます。花序の中央以下の部分では花は2個ずつまとまって付き、そのうち下側が雌花で上側が雄花、花序中央より先では雄花だけが2個ずつ着きます。雄花の萼片は3、互いに離れ、広卵形で先端が丸く、花弁も3、楕円形で先端は三角になっていますが尖りません。雄蕊は6、花弁より長く突き出す。雌花も萼や花弁は雄花とほぼ同じで、多少大きめ。退化雄蕊が3、扁平な三角形です。果実は卵状楕円形で熟して赤くなります。種子は長楕円形で長さ1cm、多少曲がっており、側面に全長に及ぶ臍があります。日本の八重山列島の石垣島と西表島の固有種で低地から山地の自然林に生えます。『環境省レッドリスト』、及び『沖縄県レッドデータブック』では準絶滅危惧。

ヤエヤマヤシの葉
ヤエヤマヤシの葉
ヤエヤマヤシの樹皮
ヤエヤマヤシの樹皮

No.0616 ノヤシ Clinostigma savoryanum

常緑高木。高さ5~10m程。幹は、若いときは淡緑色で根元近くが膨らみます。成長とともに灰色を帯びていきます。葉跡の輪紋が幾重にも並んでいます。葉は頂部に輪生してつき、長さ1~2m程。羽状複葉で、主脈まで深く切れ込みます。皮質。鈍い光沢があります。花期は7~9月。花序は、葉鞘の部分に先の凹んだボート状の苞に包まれています。1株に2~4本程です。大型の円錐花序が出ると苞を落とします。花は淡黄色。雌雄同種。雌花が中央、雄花が雌花を挟んで並んでいます。果期は5~6月ごろに赤色に熟します。父島列島と母島列島に分布している小笠原固有種です。山地の林内や谷間の土壌の深い場所に生息します。

ノヤシの葉
ノヤシの葉
ノヤシの樹皮
ノヤシの樹皮

No.0616.a ショウジョウヤシ Cyrtostachys renda

常緑中高木。株立ち性で、株元でよく分けつします。茎は細く竹状で高さ5m、径8cm程度、滑らかで光沢がある緑色です。葉が落ちた跡が竹の節に似た美しい環状紋になります。葉柄は約15cmで葉軸とともに明るい緋赤色、羽状葉は長さ1.5m程度でアーチ状に湾曲します。小葉は長さ50cm程度で披針形、約25対あり表面は濃緑色です。2月頃に葉えきから長さ30~60cmで分枝した穂状の花序を出し、白色の花が見られます。和名は葉丙や葉軸の色が中国の想像上の怪獣「猩々」の毛の朱紅色に似ていることから付けられました。マレー半島、カリマンタン島(ボルネオ島)が原産で、日本では観賞用に温室または路地(沖縄のみ)で栽培されます。

ショウジョウヤシの葉
ショウジョウヤシの葉
ショウジョウヤシの葉柄
ショウジョウヤシの葉柄

No.0617.a マニラヤシ Adonidia merrillii

常緑小高木。高さ5m。幼木の節間には早落性の鱗毛があります。幹には葉痕が浅い環状に残ります。葉は長さ2mで幹の先からアーチ状にのび、14~15個出ます。葉は全裂する羽状葉で、小葉は長さ60~70cmの披針形となり横断面がV字状です。基部の小葉のみ先が2裂します。葉柄は短いです。花は葉鞘の下部に単生する肉穂花序に多数つき、雄花と雌花があります。雄花は長さ1~1.2cmで淡い緑色、雌花は長さ0.6cmです。果実は長さ3cmほどの紡錘形で、光沢のある鮮深紅色に熟します。フィリピン諸島が原産で、日本を含む各国で観賞用に栽培されます。

マニラヤシの葉
マニラヤシの葉
マニラヤシの樹皮
マニラヤシの樹皮

No.0617.b アレカヤシ Dypsis lutescens

常緑小高木。幹は叢生し、高さ8m、径5~8cmで、基部で分枝し、約10㎝間隔で環状の葉痕があります。葉柄は黄または橙色を帯び、上部に狭くて深い溝があり、長さ30~60cmです。羽状葉は6~8個が上向し、長さ2~2.4cm、先端でカーブし優美です。小葉は幅の狭い革質で、光沢ある黄緑~黄色の葉軸に40~50対が規則正しく配列し、長さ30~50cm、幅約1.5cmです。肉穂花序は長さ40cmで分枝が多い。花色は白色であります。果実は一方がやや細長い長楕円形で、紫黒色、長さ2cmです。外果皮は繊維質です。種子は片側がややとがった楕円形または卵形で、長さ1.5cm、径1cmで黒褐色です。胚は長さ約2.5cm、幅約1.5cmである。マダガスカル島原産ですが、熱帯地方では庭園樹として、また室内装飾用鉢物として各地で人気があります。日本でも大量に温室栽培されています。

アレカヤシの樹形
アレカヤシの樹形

No.0618 トックリヤシ Hyophorbe lagenicaulis

常緑低木。幹は非常に奇妙な形を呈し、基部は大きくふくらみますが、上方に向かって急にフラスコのように細くなります。幹の高さは約4mで、最大径40~60cmで、一定の高さになると径25cmになります。葉柄は長さ30~40cmで、幼木で赤褐色ですが成木になると緑色になります。羽状葉は重々しくアーチ状に伸び、長さ1~2mで、幅60~90cmで、光沢のある黄色を帯びた緑色で、いくらかねじれて優美です。小葉は真っ直ぐでかたく40~60対あり、長さ30~40cmです。肉穂花序は長さ60cmで、雄花は黄緑色で長さ0.4cmで、萼片の下方半分は重なります。果実は楕円形で長さ2.5cm、径1.3~1.6cmで表面はざらつき橙色または黄黒色です。モーリシャスのラウンド島原産で、熱帯各地で庭園樹として栽培される人気のあるヤシです。

トックリヤシの葉
トックリヤシの葉
トックリヤシの樹皮
トックリヤシの樹皮

No.0619 ナツメヤシ Phoenix dactylifera

常緑高木。耐寒性は低いものの、乾燥には比較的強いです。雌雄異株。樹高は15~25mで、単独で生長することもありますが、場合によっては同じ根から数本の幹が生え群生します。葉は羽状で、長い葉柄は3mに達します。葉柄には棘が存在し、長さ30cm、幅2cmほどの小葉が150枚ほど付きます。実生5年目くらいから実をつけ始めます。樹の寿命は約100年程が普通であるものの、場合によっては樹齢200年に達することもあります。おそらくエジプトとメソポタミアにまたがる「肥沃な三日月地帯」が原産で、メソポタミアや古代エジプトでは紀元前6千年紀には既にナツメヤシの栽培が行われていたと考えられており、またアラビア東部では紀元前4千年紀に栽培されていたことを示す考古学的証拠も存在します。果実はデーツと呼ばれ、北アフリカや中東では食用されます。風によって受粉し、栽培下では人工授粉も行われます。

ナツメヤシの葉
ナツメヤシの葉
ナツメヤシの樹皮
ナツメヤシの樹皮

No.0620 カナリーヤシ Phoenix canariensis

常緑高木。幹は直立し、高さ15~20mにもなります。羽状葉は頂部で密集し、四方にアーチ状に伸長し、長さ4~6mで葉柄基部付近の刺は鋭い。肉穂花序は長さ2mで多く分枝します。花は黄色。雄花は長さ0.9cm、雌花は長さ0.4cmです。果実は長さ1.9cm、径1.3cmで橙色です。交雑種が多く原産地以外は本来の野生種は少ない。耐寒性が強く公園樹、街路樹に最適です。カナリア諸島(アフリカ大陸の北西沿岸の7つの島、スペイン領)原産。

カナリーヤシの葉
カナリーヤシの葉
カナリーヤシの樹皮
カナリーヤシの樹皮
カナリーヤシの果実
カナリーヤシの果実

No.0621.a サトウヤシ Arenga pinnata

常緑高木。樹高は20mほどになります。幹は古い葉の葉柄で覆われます。葉は長さ6~12m、幅1.5mの羽状葉で、羽片は1~6列で長さ40~70cm、幅5cmほどです。果実は類球形で直径7cmほど。未熟果では緑色ですが、熟すにつれて黒になります。インド東部からマレーシア、インドネシア、フィリピン東部までの熱帯アジアを原産で、東南アジアでは砂糖を得るために商業的に栽培され、サトウヤシの樹液から砂糖が作られる他、果実を食用したり、樹皮を繊維として用いられています。

サトウヤシの葉
サトウヤシの葉
サトウヤシの樹皮
サトウヤシの樹皮

No.0622.a テーブルヤシ Chamaedorea elegans

常緑低木。高さ1~2m。株立ち性で、茎は細くて緑色、環状斑を持ちます。葉は単羽状複葉で濃緑色、長さ70~90cm、小葉は先端が尖り、中程は幅広くてやや光沢があります。雌雄異株で、花は小型で鮮やかな黄色になります。果実は赤橙色を帯び、種子は小さくて黒い。メキシコ、グアテマラを原産で、丈夫なため観賞用に主に室内で栽培されます。

テーブルヤシの葉
テーブルヤシの葉

引用文献

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Noblick, L. R. 2011. Validation of the name Butia odorata. Palms 55(1): 48. https://www.growables.org/information/TropicalFruit/documents/ButiaOdorataValidation.pdf

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