【種子植物図鑑 #026】ウマノスズクサ科の種類は?写真一覧

種子植物図鑑
Asarum megacalyx

ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae は多年草または低木で、つる性のものもあります。葉は互生し、托葉を欠きます。花は一般に両性で、花弁は普通退化し、3個の花弁状の萼があり、その基部は筒状に合着するものが多いです。世界の熱帯から温帯に約8属660種があり、日本には2属約64種が分布します。

本記事ではウマノスズクサ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.0088 カンアオイ Asarum nipponicum var. nipponicum

別名カントウカンアオイ。葉は卵形で、長さ10cm前後、基部は深い心形。10~11月に開花し、越冬して花の形のまま果実となります。萼筒は暗紫色で、筒状の鐘形、上部はくびれず、長さ約1cm。萼筒内部の縦の隆起線は9~12本、萼裂片は先の尖った3角形でやや波曲し先はやや外側に反り返ることが多いです。内面は粗渋で、短毛があります。萼裂片基部の萼筒の口の周囲は白っぽく縁どられれます。この特徴で、花があれば一見して識別できます。花柱の先は浅く2列し、その基部に柱頭がります。関東地方南部から静岡県、さらに三重県志摩半島に分布します。

カンアオイの葉上面
カンアオイの葉上面
カンアオイの葉下面
カンアオイの葉下面
カンアオイの花
カンアオイの花
カンアオイの花内部
カンアオイの花内部

No.0093 コシノカンアオイ Asarum megacalyx

常緑多年草。根茎は暗紫色をし、短いが太く、地上を匍匐する。根茎の節間はふつう短くつまるが、ときに節間が伸びて1.5cmに達するものもあります。茎先から葉柄が出て、葉柄は長く20cmに達することもあり、ふつう暗紫色になります。葉質はやや厚く、葉身は卵状広楕円形または卵状ほこ形で、長さ9~12cm、幅6~8cmになり、先端は鋭頭、基部は心形になります。葉の表面は暗緑色で光沢は無く、斑紋があるものと無いものがあり、短毛が散生し、裏面は淡色で毛は無く、葉脈が紫色を帯びます。花期は3~5月。茎先に全体が暗紫色または淡紫色の花を1個つけます。花に花弁は無く、萼裂片が花弁状になります。萼筒は太く大きな筒状で、萼筒上部がくびれることはなく、長さ15~20mm、径14~24mmになります。萼筒内壁には格子状に隆起した襞があり、9~15個の縦襞と約7個の横襞があります。萼裂片は広卵形で、質が厚く無毛で、長さ約12mm、幅約14mmになり、平開し、表面はなめらかです。雄蕊は暗紫色で12個あり、子房壁に短い花糸で内外2輪につき、葯は外側を向きます。子房は上位で萼筒内で高く盛り上がります。花柱は6個あり、それぞれが合着しないで直立し、背部が伸びて長い角状になって萼筒の入口付近まで達します。柱頭は楕円形になり、花柱の角状突起の外側に側生します。日本固有種で本州の日本海側、秋田県南部、山形県、新潟県、福島県西部、長野県北部に分布し、低地から山地のおもに落葉広葉樹林の林下に生育します。日本海側多雪地帯に適応した種です。

コシノカンアオイの葉
コシノカンアオイの葉
コシノカンアオイの花
コシノカンアオイの花

No.0095 ランヨウアオイ Asarum blumei

常緑多年草。葉は広卵形で、長さ10cm前後、基部は深い心形で両側は外方に張り出す傾向が強く、上面は鮮緑色で光沢があり、質はやや薄いです。4~5月に開花し、花は淡紫褐色、萼筒は鈍4角形で上部はわずかにくびれ、裂片は開出し先はやや内側に曲がります。花径は約2cm、萼筒の径は約1cm、内面の格子状の隆起線は外側で少し凹みます。縦線は17~20本。花柱の先端は浅く2裂し、その基部外側に点状の柱頭があります。雑木林の林床に生えます。本州(関東地方南部~東海地方南部)に分布します。

ランヨウアオイの葉
ランヨウアオイの葉

No.0097 タマノカンアオイ Asarum tamaense

常緑多年草。葉は卵円形~広楕円形で、長さ10cm前後、上面は暗緑色で光沢は鈍く、葉脈は少し凹む。4月に開花し、春のうちに結実します。花径は3~4cm、萼筒は太く肉厚で、やや先が開いた筒形、暗紫色。萼裂片は広卵形で波曲し、内面に短毛を密布し、内面基部に白色の板状の隆起があります。花柱は短く、先端は逆長靴形で上端に線状の柱頭があります。雑木林の林床に生えます。関東南西部に分布します。かぎられた地域にのみ産し、生育環境は失われつつあります。キノコバエ類が訪花することが知られています(菅原,2009)。

タマノカンアオイの葉
タマノカンアオイの葉

No.0108.a センカクアオイ Asarum senkakuinsulare

多年草。葉は対生、卵心形~広卵状円形で、先端はやや丸みを帯び、長さ10~17cm程度、表面は濃緑色、裏面は淡緑色で、光沢があります。花期は2~4月。花のように見えるのは花弁ではなく3枚の萼片です。萼片は広卵形で、縁は反り返らず、色は帯緑淡紫色。萼片の根本にある萼筒は円筒形で、長さ15mm程度。萼片の基部(口環)にいぼ状の突起があり、黄色みを帯びるのが特徴です。雄しべは12個、雌しべは6個。日本固有種で琉球諸島の魚釣島のみに分布します。園芸用の採取や魚釣島に放逐されたヤギによる生育環境である森林植生のかく乱等が要因で、自生地及び個体数を減らしています。環境省レッドリスト絶滅危惧IA類(CR)。

センカクアオイの葉上面
センカクアオイの葉上面
センカクアオイの葉下面
センカクアオイの葉下面

No.0113 フタバアオイ Asarum caulescens

背の低い多年草。茎は地上を横に這い、多肉質で紫を帯びた褐色、節の間が長く伸び、枝分かれしてその先端には鱗片葉を互生します。葉は茎の先端に生じ、対生状に2つ(時に1つだけ)つきます。葉は1年生で、長い柄があります。葉身は薄くて卵心形で、先端は尖り、基部は深い心形で半円形の側片があります。葉の面には、初めは両面、特に葉脈の上に白く短い毛があり、同様の毛は葉の縁に沿っても並ぶ。花期は3~5月。花は対をなす葉柄の基部から出て一つだけ生じ、花柄には毛があります。花弁はなく、花弁状に発達した萼片は淡紫色で、下半分は融合して椀形となり、その外面には毛が多いです。萼片の先端の三角状の列片は反り返って萼片基部に接します。訪花昆虫は不明です(河野,2007)。温帯域の広葉樹林、あるいは針葉樹の混じった森林に生育し、暗い林床に生えます。日本固有種で、本州の福島県以南から九州まで分布します。

フタバアオイの葉
フタバアオイの葉

No.0113.a ヤクシマアオイ Asarum yakusimense

多年草。葉は広卵形、長さ7~15cm、幅7~12cm。葉の先端は鋭頭~鈍頭、基部は心形。表面は光沢のある明るい緑色、普通白斑は入らず、中肋にわずかに毛があり、裏面は無毛。葉柄も無毛。花期は3~4月。花は大きくて暗紫色か帯黄色を帯び、萼筒は短筒形、長さ13~15mm、径12~15mm、上部はほとんど括れない。萼筒入口には口環があり、その周りに隆起した白い板状の突起がある。萼裂片は平開し、卵状三角形で長さ10~15mm、帯黄色の表面に黒紫色の短毛があり、先は強く反りかえる。萼筒内壁には格子状の襞がある。雄しべは12個、花柱は6個。日本固有種で屋久島の高地の花崗岩地に生息します。

ヤクシマアオイの葉
ヤクシマアオイの葉

No.0113.b クワイバカンアオイ Asarum kumageanum

葉の長さ10cm程度の多年草。葉は卵状三角形で厚くて光沢があり、脈が窪みます。先は鋭頭で、基部は心形。基部の両側片が切形のため矢じり形になります。若い葉には両面脈上と縁、葉柄に毛があります。花は暗紫色、萼筒は円筒形で長さ約1cm、外側に毛が散生します。萼裂片は卵状三角形で、縁はうねります。雄しべは12個、雌しべは6個。日本固有種で屋久島の高地の花崗岩地に生息します。

クワイバカンアオイの葉
クワイバカンアオイの葉

No.0114 ウマノスズクサ Aristolochia debilis

多年生のつる草本。全株無毛で葉は粉緑色。花の長さ約3cm、基部は球形。川の土手、手入れの悪い植込みなどに生える。本州(奥羽地方以南)、四国、九州、琉球;中国に分布する。ラッパ状の花から臭いを発し、クロコバエ科 Milichiidae やキモグリバエ科 Chloropidae を呼び寄せて受粉します(Sugawara et al., 2016)。

ウマノスズクサの葉
ウマノスズクサの葉

引用文献

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

菅原敬. 2009. 牧野富太郎博士も研究したカンアオイ類 ―その奇妙な花と繁殖―. 分類 9(1): 19-26. https://doi.org/10.18942/bunrui.KJ00005379907

Sugawara, T., Hiroki, S., Shirai, T., Nakaji, M., Oguri, E., Sueyoshi, M., & Shimizu, A. 2016. Morphological change of trapping flower trichomes and flowering phenology associated with pollination of Aristolochia debilis (Aristolochiaceae) in central Japan. Journal of Japanese Botany 91(2): 88-96. https://doi.org/10.51033/jjapbot.91_2_10648

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