【種子植物図鑑 #149】ブドウ科の種類は?写真一覧

種子植物図鑑
Ampelopsis glandulosa var. heterophylla f. citrulloides

ブドウ科 Vitaceae はつる性の木本または草本。茎の変化した巻ひげによって高く上昇しますが、小数の属は巻ひげをもたない。巻ひげと葉は対生します。葉は互生し、単葉、または複葉。単葉のときは掌状に裂けることが多い。花序は通常葉と対生。花は両性、または雌雄同株または異株。萼は小型、杯状、4~5裂。花弁は4~5個、辺合状で、開花時に展開します。雄しべは4~5個、花弁と対生します。果実は軟らかな果肉をもつ漿果、または水分を失って乾燥し、2室または1室で、1~4個の種子を包みます。種子は通常倒卵形で嘴があり、種皮は殻質。APG体系では1科でブドウ目として独立しました。世界の熱帯から温帯にかけて14属800種あまりが知られます。

本記事ではブドウ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

スポンサーリンク

No.1441 ヨーロッパブドウ Vitis vinifera subsp. vinifera

つる性木本(Flora of China)。茎は不規則に広がり、高くよじ登り、まばらに分枝します。枝の樹皮はズタズタに剥離します。節の隔壁は厚さ3~5mm。小枝は円柱形~わずかに角があり、毛があり、ときに無毛になります。成長する先には展開する葉は発達しません。巻きひげは小枝の端から端までにつき、宿存します。巻きひげは(または花序)は連続する2節だけにつきます。節は赤帯ではありません。托葉は普通、長さ3.5mm以上。葉柄は葉身の長さにほぼ等しい。葉身は心状卵形~心状円形、長さ12~20cm、普通、3肩があるか、3~5浅裂し、ときに深裂し、先は鋭形~短い尖鋭形、下面は粉白を帯びず、まばらに毛があるかほぼ無毛、全体に毛が見えます。上面は普通。花期は4~6月。花序は長さ10~20cm、疎~密、葉に対生し、基部の枝はよく発達します。花序柄は2~4cm、無毛またはまばらにクモ毛があります。花柄は長さ1.5~2.5mm、無毛。花芽は倒卵形、長さ2~3mm、先は丸い。萼は無毛、波打つ。花は両性。花糸は糸状長さ0.6~1mm。葯は黄色、楕円形、長さ0.4~0.8mm。雌しべは雄花では未成熟。子房は楕円形。花柱は短い。柱頭は広がります。果期は8~9月。液果は普通、赤紫色~ほぼ黒色、ときに黄緑色、±粉白を帯び、球形~長円形~楕円形、直径8~25mm(普通15~20mm)、皮は果肉に密着し、皮目はありません。種子は倒卵形~楕円形、先はほぼ丸く、合点の結び目(chalazal knot)は楕円形、縫線(raphe)はわずかに隆起し、腹の穴は基部から上方向に約1/4の広い溝があります。日本のインターネットではブドウ類の植物学的な区別がまともに記されていませんが、『Flora of North America』ではアメリカブドウ V. labruscaとは両性花で、果実は長楕円形で、果皮は果肉に付着している点から区別されることがわかります。南西アジアと南東ヨーロッパ原産で、新石器時代の狩猟採集民と初期の農民によって収穫され、諸説あるものの紀元前4000年頃には肥沃な三日月地帯でオリーブ、イチジク、ナツメヤシ、ザクロとともに栽培化が行われたと考えられ(Diamond, 1997)、その野生種は Vitis vinifera subsp. sylvestris です。栽培化はヒトの栽培利便性や美味しさの向上のために、大きな果実と房のサイズ、より高い糖度、変更された種子の形態、雌雄異体から雌雄同体の交配システムへの移行を含む形態学的変化を引き起こしました(Zhou et al., 2017)。文献上の最古の記録は紀元前3000年頃の古代シュメール語の『ギルガメシュ叙事詩』に見出すことができ、古代エジプト人、ギリシア人、エトルリア人、フェニキア人を通して古代ローマ人も栽培・醸造技術を発展させ、ローマ帝国では特にワイン用に栽培されてきました(Charters, 2006)。ワインは安価で安全な飲用水としても広がりましたが一方でアルコール依存症も増加させ、ブドウ栽培の法規制も行われました(Robinson, 2006)。中世にはヨーロッパ南部ではワインが常飲され、北部と東部では、ビールが飲まれていました。特にシャンパン、ブルゴーニュワイン、ボルドーワインなどようにフランスとドイツ(当時は神聖ローマ帝国)は現代にも続く最大のワイン生産国です。アメリカ大陸にはカトリックであるスペインによってワインが不可欠であった聖餐用に持ち込まれ、メキシコワイン、アメリカワインが発展しました。食用としてはデザートとして生食、乾燥させレーズンにし、パンに練り込みレーズンパンとしたり、ラム酒に浸したラムレーズンはアイスクリーム、ケーキ、チョコレート等に利用され、バターに練り込んだレーズンバターは酒(特に洋酒)のおつまみとされ、ビスケットに挟むことがあります。飲み物は葡萄ジュースや未熟な果実を絞ったヴェルジュもある他、最も代表的なワイン(葡萄酒)は伝統的には搾った果汁を樽や甕に入れ、出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae によりアルコール発酵させたあと、滓(おり)引きを行い、樽で数か月から数年間熟成し瓶詰めされ製造される果実酒の一種です。熟成時に Lacobacillus属、Pediococcus属、Oenococcus oeni などの乳酸菌によってマロラクティック発酵が起こりリンゴ酸が乳酸になることで酸味が減少し(Fugelsang & Edwards, 2007)、土地独自の風味も生まれます。ワインは白ブドウなど主に色の薄い果皮のブドウを原料とし、発酵には果汁のみを使用する白ワイン、黒ブドウや赤ブドウをまるごと原料とし発酵させ、果皮に含まれる色素やタンニンによって白ワインよりも渋みがあり、長期保存が可能である赤ワイン、白ワインと赤ワインを様々な生産過程で混ぜることによってできるピンク・ワインとも呼ばれる赤みを帯びた淡い色調のロゼワインに3種に分類されます。

ヨーロッパブドウの葉上面
ヨーロッパブドウの樹皮
ヨーロッパブドウの未熟果

No.1443 エビヅル Vitis ficifolia

落葉つる性木本(樹に咲く花)。巻ひげで他物にからみつきます。本年枝は細く、はじめクモ毛があります。葉は互生。葉身は長さ幅ともに5〜8cmの卵形〜広卵状三角形。ふつう3〜5裂しますが、切れ込み方は変化が多い。縁には浅い鋸歯があります。基部は深いハート形。表面ははじめクモ毛がありますが、後に無毛。裏面は淡褐色または白色のクモ毛に覆われ、秋まで残ります。葉柄は長さ2.5〜8cm。雌雄別株。花期は6〜8月。葉と対生して長さ6〜12cmの円錐花序を出し、黄緑色の小さな花をつけます。花弁は開花と同時に落ちます。両性花の花序は雄花序より小形で花はまばらにつきます。雄花の雄しべは長く、両性花の雄しべは短い。果実は液果。直径約6mmほどの球形で、黒く熟します。種子は暗赤褐色で長さ4mmほど。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国に分布。丘陵から山地の林内や林縁に生えます。

エビヅル♀の葉上面
エビヅル♀の葉下面
エビヅル♀の未熟果
エビヅル♂の葉上面
エビヅル♂の葉下面
エビヅル♂の雄花

No.1449 ツタ Parthenocissus tricuspidata

別名ナツヅタ。落葉つる性木本(樹に咲く花)。樹皮は黒褐色。節から先端が吸盤になった巻きひげをのばし、樹冠や岩盤をよじ登ります。本年枝は赤褐色〜黄褐色で無毛。丸い皮目が多数あります。短枝が発達します。葉は2形あり、花のつく短枝の葉は大きく、長い葉柄がある。葉身は長さ幅とも5〜15cmの広卵形で、上部は3裂し、裂片の先は鋭く尖り、縁には先が芒になるまばらな鋸歯があります。基部は深いハート形。質はやや厚く、ほぼ無毛。葉柄は長さ約15cm。花のつかない長枝の葉は小さく、葉柄も短い。切れ込みのないものから1〜3裂するもの、3小葉のものが混じります。花期は6〜7月。短枝から長さ3〜6cmの集散花序を出し、黄緑色の小さな花を多数つけます。花は直径2〜3mm。花弁と雄しべは5個。果実は液果。直径5〜7mmの球形で、秋には藍黒色に熟します。表面には白い粉がつきます。種子は長さ4〜5mmの倒卵形。冬芽は長さ1〜2mmの円錐形。芽鱗は褐色で3〜5個。葉痕はほぼ円形。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国に分布。山野の林内や林縁に生えます。

ツタの大きい葉
ツタの小さい葉上面
ツタの小さい葉下面
ツタの紅葉
ツタの未熟果

No.1451 ヤブカラシ Cayratia japonica

別名ヤブガラシ。つる性多年草(野に咲く花)。長く根を引いて繁殖します。若い部分には粒状の突起毛があります。茎には稜角があり、托葉は卵状三角形で、膜質。葉は互生し、柄があり、鳥足状に配列する5小葉よりなります。頂小葉は長さ1〜3cmの柄があり、狭卵形でとがり、長さ4〜8cm、波状の鋸歯があり、鋸歯の先は小さな突起に終わります。表面は深緑色で、側脈は6〜8対あり、表面ではくぼみ、裏面では隆起します。側小葉は頂小葉より小型で、柄も短い。巻きひげは葉もしくは花序と対生し、先は分枝します。花期は6〜8月。花序は扁平な集散花序で、突起毛があります。花は径5mm。萼片は低い。花弁は4個あり、卵状三角形で長さ3mm、淡緑色、平開し、背面には突起毛があり、先端は僧帽状。雄蕊は4個、葯は長楕円形。花盤は平らに広がり、はじめ紅色、のちに橙色に変わります。子房は1個、花柱は1個、柱状で直立します。液果は球形まれにややだるま形で黒熟します。種子は広卵形で長さ4mm。関東以西に分布する2倍体のものはよく結実しますが、近畿以東に分布し東日本に多い3倍体のものは結実しません。北海道(西南部)、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、インド、マレーシアに分布。畑ややぶに普通に生えます。

ヤブカラシの葉
ヤブカラシの花

No.1452 ノブドウ Ampelopsis glandulosa var. heterophylla

落葉つる性木本(樹に咲く花)。2分岐した巻きひげで他物にからみつく。茎は暗灰褐色で節の部分は膨らみます。茎は毎年枯れますが、基部は木質化して直径4cmほどになります。枝ははじめ粗い毛が密生しますが、のちに無毛。円形の皮目が多い。巻きひげは各節からでます。葉は互生。葉身は長さ8〜11cm、幅5〜9cmのほぼ円形で、3〜5裂します。裂片の先は尖り、縁には粗く浅い鋸歯があります。基部はハート形。裏面の脈腋にはまばらに毛があります。花期は7〜8月。葉と対生して集散花序をだし、小さな花を多数つけます。花は直径3〜5mm。花弁と雄しべは5個、雌しべは1個。果実はブドウタマバエやブドウトガリバチの幼虫が寄生して、虫えいを作ることが多く、紫色や碧色などになる(この点はかなり疑問が多いです、以下記事参照)。正常な果実は少ない(これも怪しいです)。種子は長さ3〜5mm。冬芽は半円形の葉痕の奥に隠れて見えません。北海道、本州、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、千島、ウスリーに分布。山野に生えます。

ノブドウの葉上面
ノブドウの葉下面
ノブドウの花
ノブドウの果実

No.1452.1 キレハノブドウ Ampelopsis glandulosa var. heterophylla f. citrulloides

葉が深裂し、裂片にスイカの葉のような湾入のはいるノブドウの品種。

キレハノブドウの葉上面
キレハノブドウの葉下面
キレハノブドウの果実

引用文献

Charters, S. 2006. Wine and Society: The Social and Cultural Context of a Drink. Routledge, London. 376pp. ISBN: 9780750666350

Diamond, J. M. 1997. Guns, germs, and steel: the fates of human societies. W.W. Norton, New York. 480pp. ISBN: 9780393038910 [=2012. 銃・病原菌・鉄 上巻. 草思社, 東京. ISBN: 9784794218780]

Robinson, J. 2006. The Oxford Companion to Wine, 3rd Ed. Oxford University Press, Oxford. 813pp. ISBN: 9780198609902

Fugelsang, K. C., & Edwards, C. G. 2007. Wine microbiology: practical applications and procedures. Springer, Boston. 414pp. ISBN: 9780387333410

Zhou, Y., Massonnet, M., Sanjak, J. S., Cantu, D., & Gaut, B. S. 2017. Evolutionary genomics of grape (Vitis vinifera ssp. vinifera) domestication. Proceedings of the National Academy of Sciences 114(44): 11715-11720. https://doi.org/10.1073/pnas.1709257114

タイトルとURLをコピーしました