【種子植物図鑑 #137】マンサク科にはどんな種類がいる?写真一覧

種子植物図鑑
Corylopsis spicata

マンサク科 Hamamelidaceae は落葉或は常緑の高木または低木。しばしば星状毛を持ちます。葉は互生、単葉または掌状、葉柄があります。早落性の托葉があります。花は両性あるいは単性。放射相称、稀に左右相称、腋生、頭状または穗状に集まります。花被はあるかない(無弁または裸花)。萼は多くは4~5、基部は花弁と合着。花冠は4~5、瓦重ね状また敷石状。雄しべは2~8単輪、葯2室、縱裂。雌しべ1、子房中位、下位、稀に上位、2心皮、2室、中軸胎座、各1~2個の下垂性胚珠、花柱と柱頭2。蒴果は2室、房裂性または壁裂性。胚は直生。種子はときに翼状、少量の胚乳があります。世界の暖帯~亜熱帯に約27属110種が知られています。多くはアジア、特に東アジアに多く、残りがアフリカ、オーストラリア、北東アメリカ、インド、北部イラン、マダガスカルにあります。日本には5属約8種6変種があります。APG体系ではボタン科、カツラ科、ズイナ科、スグリ科などとともにユキノシタ目に所属。フウ属はマンサク科から同じユキノシタ目のフウ科 Altingiaceae として分離されました。

本記事ではマンサク科の植物を図鑑風に一挙紹介します。

写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。

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No.1337 トキワマンサク Loropetalum chinense var. chinense

常緑小高木(樹に咲く花 離弁花2)。ふつう高さ3mほど、大きいものは高さ8mになるものもあります。樹皮は黒褐色。若い枝には淡褐色の星状毛が密生します。葉は互生。葉身は長さ2〜6cm、幅1〜3cmの楕円形〜卵状長楕円形。左右不対称で、ふちは全縁。両面に星状毛が生え、裏面脈上や葉柄には密生します。葉柄は長さ2〜4mm。花期は4〜5月。枝先に白い花が集まって咲きます。花弁は4個。長さ1.5cmほどの広線形。萼片の外面には星状毛があります。果実はさく果。長さ約7mmの卵球形で、星状毛におおわれます。熟すと2裂し、長さ約5mmの種子をだします。花期は4〜5月。本州(静岡県、三重県)、九州(熊本県);中国(中南部)~ヒマラヤ東部に分布。普通に栽培されます。自家受粉が確認されていますが、葉緑体DNAの解析結果と花弁の内部にアザミウマ類が観察されていることから、他家受粉の可能性も否定できないとされ、昆虫や風を媒介としたアウトブリードの可能性が示唆されています(Gong et al., 2016)。種子は重力散布します。

トキワマンサクの葉
トキワマンサクの葉
トキワマンサクの花
トキワマンサクの花

No.1337.1 ベニバナトキワマンサク Loropetalum chinense var. rubrum

濃い紅色の花をつけるトキワマンサクの変種(Flora of China)。var. rubra という表記も日本では見られますが、有効性を確認できていません。観賞用に栽培され、中国南部で広く栽培されています。日本でも栽培されます。

ベニバナトキワマンサクの葉上面
ベニバナトキワマンサクの葉上面
ベニバナトキワマンサクの花
ベニバナトキワマンサクの花
ベニバナトキワマンサク薄紅色花型の葉上面
ベニバナトキワマンサク薄紅色花型の葉上面
ベニバナトキワマンサク薄紅色花型の葉下面
ベニバナトキワマンサク薄紅色花型の葉下面
ベニバナトキワマンサク薄紅色花型の花
ベニバナトキワマンサク薄紅色花型の花

No.1338 マルバノキ Disanthus cercidifolius

落葉低木または小高木(林,2011;菱山,2011;林,2014)。樹高は2~4m、樹形は卵形。幼木の樹皮は灰白色で滑らかで皮目が多数あり、若枝は赤褐色で毛はなく、成木の樹皮は灰褐色で滑らかで横に並ぶ皮目が目立ちます。葉には長さ3~6cm葉柄がありしばしば赤味を帯び、単葉で互生します。葉は長さ5~11cm、幅4.5~10cm(最大幅は基部寄り)の卵円形または円形、先端は短く尖り、全縁、基部は心形、表面は緑色で無毛、裏面は白緑色で無毛で葉脈の網目が見え、秋に鮮やかに紅葉します。若葉はしばしば赤紫色を帯びます。花期は10~11月。花は両性花で、葉の脇に極短い花柄の先に暗紅紫色の花を2個背中合わせに付けます。花弁は5個、長さ7~8mmの線状披針形で星形に平開します。萼片は長さ約2mm。果実は朔果で、倒円心形、長さ約1.5cm。開花の翌年の秋に暗褐色に熟し、4裂して種子を出します。種子は長さ4~5mm、黒色で光沢があります。最終氷期の残存種で日本の本州(中部地方~近畿地方、岡山県、広島県)、四国(高知県)と中国の温帯の地域内で局所的に分布します。山地の谷間、日当たりの良い岩場などに生育します。観賞用の庭木、公園樹、苗木や花材として利用されています。平らで放線形で、露出した蜜腺、短い雄しべ、および暗赤色の花はキノコバエ媒への適応です(Mochizuki & Kawakita, 2018)。中国の研究では花に日中ではハナアブ科の他、ショウジョウバエ科、シマバエ科、ヤドリバエ科などのハエ亜目が昼間に訪れますが、体が大きいにも関わらず、概して花粉を運ぶ量は少ないのに対して、日本で日没前後に18.5時間調べた研究では4目11科22種80匹の昆虫が記録された内、主にキノコバエ科(特にBoletina)が訪れ、かなりの量の花粉粒を前脚の大腿部や頭部の腹側に付着していることからも実証されています。

マルバノキの葉上面
マルバノキの葉上面
マルバノキの葉下面
マルバノキの葉下面

No.1341 ヒュウガミズキ Corylopsis pauciflora

落葉低木(樹に咲く花 離弁花2)。高さ1~3m。樹皮は灰褐色で枝は赤褐色。葉は互生、広卵形で基部は浅いハート型。葉身は長さ2~3cm、幅1.5~2.5cm、葉柄は5~15mm。葉裏は粉白色で脈上に長毛が散生します。葉縁は波状で芒状の歯牙があります。花期は3~4月、葉の展開前に開花します。前年の葉腋に1~3花からなる穂状花序をつけます。花は長さ約1.5cm。萼片は5枚、花弁は黄色で5枚。雄しべは5個で花弁よりやや短く、葯は黄色。雌しべは1個。果実はさく果で倒広卵形、直径約6mm。日本の本州(石川県~兵庫県)の日本海側の限られた地域、四国(高知県)、九州(宮崎県)、台湾に分布し、やせた岩地に生えます。庭や公園に観賞用に植栽されます。最も頻繁で優勢な訪花昆虫はビロウドツリアブ Bombylius major であることが未発表ですが示されています(Wong Sato & Kato, 2017)。ビロウドツリアブの出現は、日本におけるトサミズキ属の開花と同期しており、多くの昆虫が活動しにくい早春(3~4月)に開花するトサミズキ属では、ツリアブ科によって送粉する可能性が示されています。しかし、トサミズキ属の花の特徴(黄色や形態など)は、一般にツリアブ科にとって魅力的なものとは考えられていません。

ヒュウガミズキの葉上面
ヒュウガミズキの葉上面
ヒュウガミズキの葉下面
ヒュウガミズキの葉下面
ヒュウガミズキの花
ヒュウガミズキの花

No.1342 トサミズキ Corylopsis spicata

落葉低木(上原,1959;山中,1986;茂木ら,2008;加藤ら,2011)。トサミズキの「トサ」は自生地である高知(土佐国)から来ています。株立ちして高さ4mほど。葉はハート型で長さが5〜11cm、左右不対称のものもあります。先半分に波状の鋸歯があります。側脈は6〜8対ありますが、基部側の側脈からは縁に向かって分岐する脈が明瞭に見られます。樹皮は灰褐色で細かい皮目があります。花は3〜4月、葉が展開する前に咲きます。垂れ下がった花序に7〜10個の黄色い花が付き、同属のヒュウガミズキよりも大振りです。1個の花の大きさは約1cmです。日本本州の高知県内の一部の地域(高知県中央部:日高村〜高知市〜南国市)に分布する日本固有種で、標高約300m以下の蛇紋岩の岩山に生えます。種蒔や株分けで容易に増やすことができ、早春に可憐な花を咲かすことから、江戸時代中期から庭木としてよく植えられています。

トサミズキの葉
トサミズキの葉
トサミズキの樹皮
トサミズキの樹皮
トサミズキの花
トサミズキの花

No.1342.a シナミズキ Corylopsis sinensis

低木(Flora of China)。若枝と芽は有毛または無毛。托葉は狭長円形、長さ約20mm、まばらに毛があります。葉柄は長さ5~10mm、星状の綿毛があります。葉身は倒卵形、倒卵状円形~広卵形~長円状倒卵形、長さ3~9cm×幅2~6cm、下面は灰褐色の星状毛があるか無毛、上面は無毛または脈に毛があり、基部は非対称、心形または類切形、縁は鋸歯、歯は微突形、先は鈍形、鋭形、または尖鋭形、側脈は各側に7~9本、最も下側の2本は3次脈が不明瞭。花序は長さ3~4cm、果時に長さ3~6cm。花序柄は長さ1.2~1.5cm、毛があります。花序の基部の苞は卵状円形、長さ0.8~1cm、外側は毛があり、内側に絨毛があります。花の苞は卵形、長さ4~5mm、毛があります。小苞は長円形、長さ2~3mm。花の杯は星状毛があります。萼片は卵形、無毛、先は類鈍形。花弁はへら形、長さ5~6mm×幅3~4mm。雄しべは長さ4~5mm、花盤の鱗片は2裂し、先は鋭形、萼片の長さにほぼ等しい。子房は星状毛があります。花柱は長さ6~7mm、基部に毛があります。蒴果は長さ10~14mm×幅7~9mm、星状毛があります。種子は長さ4~5mm。中国に分布し、標高1000~1500mの森や山に生えます。

シナミズキの葉上面
シナミズキの葉上面
シナミズキの葉下面
シナミズキの葉下面
シナミズキの樹皮
シナミズキの樹皮
シナミズキの花
シナミズキの花

No.1345 イスノキ Distylium racemosum

常緑高木(樹に咲く花)。別名ヒョンノキ。幹は直立し、高さ20m、直径80cmほどになります。樹皮は暗灰色。老木ではうろこ状にはがれます。本年枝には褐色の星状毛があります。葉は互生。葉身は4〜9cm、幅2〜3.5cmの長楕円形。基部はくさび形で、縁は全縁。革質で表面はなめらか。両面とも無毛。葉柄は長さ5〜10mm。普通雌雄同株。花期は4〜5月。葉腋に円錐花序をだし、上部に両性花、下部に雄花がつきます。両性花には褐色の毛に覆われた雌しべがあり、上部は2裂します。雄しべは5〜8個あり、葯は紅色。雄花では雌しべは退化し、雄しべの花糸も短い。果実は蒴果で、長さ7〜10mmの広卵形、先端に花柱が残り表面には黄褐色の毛が密生します。熟すと2裂し、長さ5〜7mmの楕円形の種子を出します。黒くて光沢があります。日本の静岡県以西〜沖縄に分布し、常緑樹林内に生えます。受粉システムに関する情報は少ないですが、マンサク科のいくつかの属が無弁花で風媒花であることから本種も同様であると考えられています(Yagi et al., 2019)。一方、シマイスノキ D. lepidotum は虫媒花とされます。葉に虫えい(ヤノイスアブラムシのイスノキハタマフシ)が生ずることが多い。材は硬く、箸、しゃもじに賞用され、その灰は陶器のうわぐすり(釉薬)として利用されます。

イスノキの葉上面
イスノキの葉上面
イスノキの葉下面
イスノキの葉下面
イスノキの樹皮
イスノキの樹皮

No.1346.a シャクナゲモドキ Rhodoleia championii

常緑高木(Flora of China)。高さ12m以下。若い枝は丈夫、乾くと暗褐色、無毛。葉柄は長さ3~5.5cm。葉身は卵形~広卵形、長さ7~16cm×幅4.5~10.5cm、硬い革質、乾くと退色し、下面は白灰色、普通、無毛、ときに褐色の星状鱗片または星状毛が残り、乾くといぼ状になり、基部は広楔形、先は鈍形または類鋭形、基部に不明瞭な3脈があり、側脈は各側に7~9本、中脈に約60度でつき、両面で明瞭、網状脈は不明瞭。花期は2~3月。花序は長さ3~4cm、果時に幅2.5~3.5cm。花序柄は長さ2~3.8cm、数個の鱗片状の苞があります。総苞片は多数、卵状円形、褐色の毛があります。小苞は5または6個、鱗片状。花弁はへら形、長さ25~35(~40)mm×幅4~8mm。雄しべは花弁と同長。花糸は無毛、長さ1.5~2cm。葯は長さ4~6mm。子房は無毛。花柱は雄しべよりやや短い。果期は5~8月。蒴果は5個、卵状球形、約長さ1.2~1.5cm、花柱は宿存しません。果皮は薄い木質。種子は黄褐色、扁平。中国、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ベトナム原産。森林に生えます。

シャクナゲモドキの葉上面
シャクナゲモドキの葉上面
シャクナゲモドキの葉下面
シャクナゲモドキの葉下面
シャクナゲモドキの樹皮
シャクナゲモドキの樹皮

引用文献

Gong, W., Liu, W., Gu, L., Kaneko, S., Koch, M. A., & Zhang, D. 2016. From glacial refugia to wide distribution range: demographic expansion of Loropetalum chinense (Hamamelidaceae) in Chinese subtropical evergreen broadleaved forest. Organisms Diversity & Evolution 16(1): 23-38. https://doi.org/10.1007/s13127-015-0252-4

林弥栄. 2011. 日本の樹木 増補改訂新版. 山と溪谷社, 東京. 767pp. ISBN: 9784635090438

林将之. 2014. 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類. 山と溪谷社, 東京. 759pp. ISBN: 9784635070324

菱山忠三郎. 2011. 樹皮・葉でわかる樹木図鑑. 成美堂出版, 東京. 303pp. ISBN: 9784415310183

加藤雅啓・海老原淳. 2011. 日本の固有植物. 東海大学出版会, 秦野. 503pp. ISBN: 9784486018971

Mochizuki, K., & Kawakita, A. 2018. Pollination by fungus gnats and associated floral characteristics in five families of the Japanese flora. Annals of Botany 121(4): 651-663. ISSN: 0305-7364, https://doi.org/10.1093/aob/mcx196

上原敬二. 1959. 樹木大図説 第1巻. 有明書房, 東京. 1300pp. https://doi.org/10.11501/2489315

Yagi, H., Xu, J., Moriguchi, N., Miyagi, R., Moritsuka, E., Sato, E., … & Kusumi, J. 2019. Population genetic analysis of two species of Distylium: D. racemosum growing in East Asian evergreen broad-leaved forests and D. lepidotum endemic to the Ogasawara (Bonin) Islands. Tree Genetics & Genomes 15(6): 1-12. https://doi.org/10.1007/s11295-019-1386-x

山中二男. 1986. 日本と朝鮮のトサミズキ属. 植物分類、地理 37(4-6): 97-105. https://doi.org/10.18942/bunruichiri.KJ00001078588

Wong Sato, A. A., & Kato, M. 2017. Pollination system of Corylopsis gotoana (Hamamelidaceae) and its stonefly (Plecoptera) co-pollinator. Plant Species Biology 32(4): 440-447. https://doi.org/10.1111/1442-1984.12178

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