センリョウ科 Chloranthaceae は草本または低木。葉は対生し、単葉で鋸歯があり、葉柄基部には托葉があります。花序は穂状をなし、頂生または腋生。花は単性か両性で、両性花には花被はありません。雄しべは1本または3本。両性花では雄しべは子房の背面にあり、子房は1室で、柱頭は無柄、稀に短い花柱があります。果実は核果で、種子は胚乳が多く、卵形から球形。東アジア、ニューギニア、南アメリカ、マダガスカルに5属75種があり、日本に2属4種があります。
本記事ではセンリョウ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
No.0077 ヒトリシズカ Chloranthus quadrifolius
多年草。茎はふつうは分岐せず単立し、高さ20~30cm。葉は円形から楕円形、長さ3~10cm、幅3~5cm、先端は急鋭尖、基部は円形から鋭形、上面は光沢があります。花期4~5月。花序は通常1本で頂生し、長さ2~4cmで、白色花を密につけます。果実は球形から広卵形で、長さ2.5~3mm。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国(中北部、東北)、サハリン、アムールに分布する。丘陵~山地にかけて広く見られます。従来、ヒトリシズカは C. japonicus とされていましたが、シーボルトコレクションの該当標本はフタリシズカであることが判明し、レクトタイプとして選定された標本もフタリシズカでした。
No.0079 フタリシズカ Chloranthus serratus
多年草。茎は通常単立し、高さ30~50cm、無毛。葉は2対、ときに3対があるが、ヒトリシズカほど接近してつかないので、輪生状には見えません。葉身は楕円形で、長さ8~15cm、幅2~8cm、縁には鋸歯があり、質薄く両面ともに無毛。花期は5月。花序は通常頂生で、2本または3本、ときに数本の花序をだすこともあります。夏に鱗片葉の腋から閉鎖花をつけることがあります。北海道、本州、四国、九州;朝鮮、中国、サハリン。樹林内に生えます。シイ・カシ帯~ブナ帯までの全域に普通に見られます。
No.0080 チャラン Chloranthus spicatus
直立またはやや匍匐する常緑小低木。高さ30~150cm。茎は緑色で細く、円筒形、無毛、節はやや膨れます。葉は対生し、葉柄は長さ0.4~1.8cm、葉身は楕円形から卵状楕円形、4~13.5 × 2~8.5cm、表面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡黄緑色、表裏とも無毛、先端は鋭形または鈍形、基部はくさび形、葉縁には低い波状鋸歯があります。葉脈は羽状、側脈は4~8対。托葉は膜質、微突形、長さ2~3mm。花期は4~7月、芳香がある花を多数つけた花序がふつう頂生、ときに腋生します。花序は長さ2~5cm、10~20個に分枝して円錐状の複穂状花序となります。花は両性花、強い芳香を発し、三角形の苞に腋生し、花被を欠きます。雌しべの子房の背側(背軸側)に雄しべがついています。雄しべは黄緑色から黄色、3個が合着し(または1個が3裂し)、半球状卵形で雌しべ上部を包んでおり、中央裂片は2個の葯をもち、ときに先端がさらに3裂、左右の裂片にそれぞれ1個の葯があります。雌しべの子房は卵形。果期は8~9月、果実は緑色〜黄色、楕円形で長径約4mm。中国南部に自生していますが、東南アジアなどで広く栽培されており、帰化している地域も多いです。日本は江戸時代に渡来し、観賞用に栽培されますが、沖縄では逸出し野生化したものが人里近くの雑木林で見られることがあります。
No.0081 センリョウ Sarcandra glabra
常緑低木。高さ50cm~1.2m。全体に無毛で緑色。葉は滑らかで、上面は光沢があり、楕円形~卵状披針形、長さ6~15cm、幅2~6cm、先端は鋭尖頭、基部はくさび形、縁はあらい鋸歯があります。相対する葉柄の基部は広がって茎を抱きます。花期は6~7月。花序は頂生し、2~3個の穂状花序をつけ、黄緑色花をつけます。雄しべは1個で、子房に合着していて、横に張り出しています。果実は冬に赤くなり、径3~5mm。本州(関東地方南部以南)、四国、九州、琉球;朝鮮、中国、東南アジアに分布しています。照葉樹林内に生えます。庭にも栽培されるので、逸出している可能性もあります。
No.0081.1 キミノセンリョウ Sarcandra glabra f. flava
センリョウの実の黄色になる品種。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726