ヤマノイモ科 Dioscoreaceae は草本またはつる植物で、全世界の熱帯~亜熱帯を中心に3属630種あまりが分布し、日本にはヤマノイモ属だけが分布しています。
本記事ではヤマノイモ科の植物を図鑑風に一挙紹介します。
基本情報は神奈川県植物誌調査会(2018)に基づいています。写真は良いものが撮れ次第入れ替えています。また、同定は筆者が行ったものですが、誤同定があった場合予告なく変更しておりますのでご了承下さい。
No.0281 ヤマノイモ Dioscorea japonica
多年草。地下部の薯 tuber は多肉質の棍棒状で長さ1m以上になるものもあります。薯は最上部にある茎芽形成部分 corm 以外はすべて1年生。茎は無毛で茶褐色や紫褐色を帯びます。葉はふつう対生しますが、成長初期や若苗などは互生することも多いです。葉身の先端は漸尖形。葉身(脈部分)の付根や葉柄はほぼ緑色だが葉柄上部は紫褐色を帯びることも多いです。葉腋に珠芽(ムカゴ)をつけます。花期は7~9月。花序は葉腋から1~3本出て、雄花、雌花ともに穂状花序につくが、雄花序は斜上、または直立し、雌花序は下垂します。花序の軸はほぼ真っ直ぐ。花被片はともに白色で肉質瓦状、半開します。蒴果は長さ約12~15mm、幅19~30mm。種子は全周に翼があり幅10~15mm。本州、四国、九州、琉球;朝鮮半島、中国、台湾の温帯~亜熱帯域に分布します。シイ・カシ帯~ブナ帯までの沖積地~山地の林縁、路傍、畑縁、空き地、公園の植樹帯などに普通に生えます。
No.0284 オニドコロ Dioscorea tenuipes
多年草。根茎 rhizome は長く所々で分枝します。茎は無毛、緑色でしばしば紫褐色を帯びる。葉は互生してつく。葉柄は緑色または紫褐色を帯びます。葉身は3角状卵形~3角状広卵形、全縁。基部は心形。5~6月頃に見られる成長初期の葉身は基部側方が耳状に張り出したり、葉縁が浅裂状になるものがしばしば見られます。葉身の付根は赤紫色を帯びることが多いです。花期は7~9月。雄花は直立または斜上する総状、円錐状花序につき、小花柄の長さは花径と同長かそれよりも短い。雄しべは6本。雌花は下垂する穂状または複穂状花序につきます。花被片はともに黄緑色。蒴果は長さ10~23mm、幅8~16mm。種子は片側にのみ翼があり長さ約15mm。市街地の植え込み内や丘陵地~山間地の草地や林縁に生えます。北海道、本州、四国、九州;朝鮮半島、中国の温帯~暖帯域に分布します。シイ・カシ帯~ブナ帯までの沖積地~山地の林縁、草地、空き地、公園の植樹帯内などきわめて普通に生えます。主にハエ目の昆虫が訪花し、送粉・受粉されます(工藤ら,2021)。花序の付き方は雌雄間で違いがあることが分かっており、雄花序では斜上傾向、雌花序では下垂傾向にあります。
No.0290 カエデドコロ Dioscorea quinquelobata
多年草。根茎 rhizome は所々で分枝します。茎は無毛。葉身裂片の頂裂片は鋭頭、側裂片は鈍頭。葉表は無毛、または短毛が散生します。葉下面は脈上に白毛が生えます。花期は8~9月。雄花は斜上する総状、円錐花序につき、雄しべは6本。雌花は下垂する総状花序につきます。花被片はともに黄橙色。蒴果は長さ10~16mm、幅14~18mm。種子は全周に翼があり、幅約10mm。丘陵地や山間の草地や林縁に生えます。本州(中部以西)、四国、九州、琉球?;朝鮮半島、中国の温帯~暖温帯域に分布します。本来の分布域ではない場所でも、植木とともに持ち込まれたものが市街地を中心に生育しています。
No.0291.a キッコウリュウ Dioscorea elephantipes
別名ツルカメソウ、ゾウノアシソウ。落葉多年草。高さ約50cm、幅約1mで生育は極めて遅いです。木質でドーム型の塊茎を持つ多肉植物。塊茎(塊状の根茎)は直径30~100cm、表面には木質の角張ったこぶ状の突起があり亀甲状となっています。一年生の蔓状茎を伸ばす。花は黄色で、秋に開花します。ナミビアと南アフリカ共和国(北ケープ州、西ケープ州、東ケープ州)に自生します。塊茎にはデンプンが豊富に含まれており、俗にホッテントットパンと呼ばれるように、アフリカの一部民族が食用とします。サポニンが非常に多く含まれており、食用とするにはそれら有毒な化合物の除去処理が必要で、本種を入手する為にも多大な労力が必要とされるため、現在では飢餓の時にのみ消費されています。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726
工藤葵・杉原優・太田敦士・寺内良平. 2021. 直立するオスと下垂するメス―雌雄異株植物オニドコロにおける花形質と訪花数の雌雄差. 日本生態学会講演要旨 68: P1-061. https://esj.ne.jp/meeting/abst/68/P1-061.html