クリンソウ・サクラソウ・カッコソウはいずれもサクラソウ科サクラソウ属で日本に在来する多年草です。花の形は類似しており、花の色も普通はピンク色であることから混同される3種です。しかし、その区別は葉の形を見ることで比較的容易に可能でしょう。ただし、サクラソウ属は自生種、園芸種含めるとかなり沢山の種類が知られており、それらと間違えないことも重要です。本記事ではクリンソウ・サクラソウ・カッコソウの分類について解説していきます。
クリンソウ・サクラソウ・カッコソウとは?
クリンソウ(九輪草) Primula japonica は日本の北海道、本州、四国に分布し、山間の湿地に生える多年草です。
サクラソウ(桜草) Primula sieboldii は日本の北海道、本州、四国;中国東北部、朝鮮半島、シベリヤ東部に生える多年草です。日本では江戸時代に育種が進み、数百に及ぶ品種が作られた古典園芸植物です。しかし、現在の園芸では全く別種のクリンザクラ Primula x polyantha やプリムラ・ジュリアン Primula x juliana、オトメザクラ Primula malacoides などの外来種と混同されています。
カッコソウ(勝紅草) Primula kisoana は日本の本州(群馬県)に分布し、山地の林下に生える多年草です。
いずれもサクラソウ科サクラソウ属で日本に在来する多年草です。花の形は類似しており、花冠は細長い花筒があり、上部は5裂して開くものとなっています。また茎が直立し、葉はすべて根生という点もサクラソウ属の共通点です。そのため区別が難しいかもしれません。ここで挙げた3種では全て花冠はピンク色です。
クリンソウ・サクラソウ・カッコソウの違いは?
サクラソウ属には日本だけでも14種知られており、更に園芸種も知られているため、厳密に全ての種類の区別点をここで全て紹介できませんが、ここで挙げた3種に限れば区別は容易です(大橋ら,2017;神奈川県植物誌調査会,2018)。他のサクラソウ属の多くは特定の地域で局所的に自生するものです。
まず、クリンソウでは葉の両面に毛がなく、下面に腺点状の粉状物があるのに対して、サクラソウとカッコソウでは葉の両面に毛があり、下面に腺点状の粉状物がないという違いがあります。
これは一目瞭然でしょう。
サクラソウとカッコソウに関しては、サクラソウでは葉の形は楕円形で、葉縁には重鋸歯があるのに対して、カッコソウでは葉の形は広円形で基部は心形になり、葉縁は掌状に浅く不規則に切れ込み、更に細かい鋸歯があるという違いがあります。
これも一目瞭然です。いずれの区別も葉が重要になってきます。花にも多少の違いがありますが、葉をしっかり記録することが大事です。
なお、カッコソウにはシコクカッコソウ Primula kisoana var. shikokiana という変種が知られており、四国の徳島県、香川県および愛媛県に分布し、山地の樹林下に生え、基変種とは異なり萼片が1.2~1.5cmと長く、花喉部は黄色を帯びています。
引用文献
神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726
大橋広好・門田裕一・邑田仁・米倉浩司・木原浩. 2017. 改訂新版 日本の野生植物 4 アオイ科~キョウチクトウ科. 平凡社, 東京. 608pp. ISBN: 9784582535341