ギョリュウバイ(マヌカ)とワックスフラワーの違いは?似た種類の見分け方を解説!マヌカハニーは本当に健康効果がある?

植物
Leptospermum scoparium

ギョリュウバイとワックスフラワーはいずれもフトモモ科に含まれ、オーストラリア原産の「ネイティブフラワー」や「ワイルドフラワー」と総称されるものの1種として観賞用に栽培されたり、生け花の枝物として利用されます。更にギョリュウバイの場合は一部の品種が蜜源植物として知られておりマヌカハニーの原料です。2種の区別はついていない人もいるかもしれませんが、葉のつき方や形に大きな違いがあります。花や果実も異なりますが少し確認するのが難しいかもしれません。マヌカハニーは抗菌作用があるのは確実ですが全身には効果はなく、胃から小腸までの効果はまだ良く分かっていません。本記事ではギョリュウバイとワックスフラワーの分類・形態について解説していきます。

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ギョリュウバイ・ワックスフラワーとは?

ギョリュウバイ(御柳梅) Leptospermum scoparium は別名マヌカ、マヌカブッシュ、スコパリウム、檉柳梅、ネズモドキ。オーストラリア南東部・ニュージランドに分布し、イギリスに導入された低木または小高木です(RBG Kew, 2025)。日本では観賞用に園芸で栽培される他、生け花の枝物として利用されます。名前は葉の形がギョリュウ(泳柳)に似ており、花がウメ(梅)に似ていることに由来します。

ワックスフラワー Chamelaucium uncinatum は別名カメラウキウム・ウンキナツム、ジェラルトンワックスフラワー。オーストラリア西部に分布し、イギリスとニュージランドに導入された低木です。日本では観賞用に園芸で栽培される他、生け花の枝物として利用されます。名前は花がワックス状に光沢があることに由来します。

いずれもフトモモ科に含まれ、オーストラリア原産の「ネイティブフラワー」や「ワイルドフラワー」と総称されるものの1種として観賞用に栽培されたり、生け花の枝物として利用されます(外岡・船越,1991)。あまり日本にはないユニークな形であることからエキゾチックな雰囲気を味わうことができます。

更にギョリュウバイの場合は一部の品種が蜜源植物となっており、花からセイヨウミツバチによって収集され作られたマヌカハニーとして知られています。マヌカとはマオリ語でギョリュウバイそのものです。これを認知している人は少ないかもしれません。

2種は形態的には低木で、葉は線形で鋭く、花弁が5枚であることの他、花の中央部が凹み蜜腺・蜜盤があり、それを囲むように輪状に雄しべが生える点などが共通しています。

花弁の色は様々ですが、いずれも白色~赤色になることがあるため区別がつかず混同されていることも多そうです。

ギョリュウバイとワックスフラワーの違いは?

ギョリュウバイとワックスフラワーの違いは様々な部分にあらわれています(Flora of North America Editorial Committee, 2021)。

大前提として、ギョリュウバイはギョリュウバイ属に含まれるのに対して、ワックスフラワーはカメラウキウム属に含まれています。

形態的にはまず、葉に関してはギョリュウバイでは互生であるのに対して、ワックスフラワーでは対生であるという違いがあります。

つまりギョリュウバイでは葉が茎に対して交互につきますが、ワックスフラワーでは向き合うようにつくということです。

また、どちらも葉身は細長く葉先は鋭いですが、ギョリュウバイでは葉身が幅広で板状であるのに対して、ワックスフラワーでは葉身が細長く筒状であるという違いがあります。

花に関しては、ギョリュウバイでは花柱(雌しべの先端である柱頭から下の細い部分)に毛がないのに対して、ワックスフラワーでは柱頭のすぐ下あたりの花柱に輪状に生えた小さな毛があるという違いがあります。

花の中央部にある雌しべをよく観察すれば分かると思いますが、かなり細かい違いです。

その他、ギョリュウバイでは子房が6~12室で、果実が乾燥すると種子をこぼす蒴果であるのに対して、ワックスフラワーでは子房が1室で、果実がナッツ状で丸くなり乾燥しても固いままであるという違いがありますが、この点を確認できる機会は少ないかもしれません。

ギョリュウバイの葉:幅広く板状。
ギョリュウバイの花:雌しべに毛はない。
ギョリュウバイの果実|蒴果で子房が別れているのが分かる。|By Forest & Kim Starr, CC BY 3.0 us, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=71883792
ワックスフラワーの葉:細く筒状。
ワックスフラワーの花:雌しべに輪状の毛が僅かにある。低画質では分かりにくい。
ワックスフラワーの花序

マヌカハニーは本当に健康効果がある?

ギョリュウバイから作られるマヌカハニーは抗菌効果をもたらすメチルグリオキサールなど含み、抗菌作用・プレバイオティクスとしての整腸作用などがあるなどとして最近急速によく名前を聞く存在となっているでしょう(加藤,2019)。

ただし、ギョリュウバイの花蜜にメチルグリオキサールそのものが存在するわけではなく、前駆物質であるジヒドロキシアセトンが存在しており、花蜜とともにミツバチにより巣に運ばれたジヒドロキシアセトンが、巣の中で徐々にメチルグリオキサールに変化します。

ギョリュウバイはニュージーランドでの木の栽培・植林が本格的に進められており、ニュージーランドでは10年後にマヌカの栽培面積が10万ヘクタールにも達することを予測する研究者もいるほど重要な存在となりつつあります。

マヌカハニーは実際に効果があるのでしょうか?

まず皮膚に当てる形での創傷治癒ガーゼやジェルといった利用では抗菌活性により外部からの感染を防御しつつ、治癒を早める作用も期待されるでしょう。

一方、口から摂取してた場合は、口内では効果はありますが、メチルグリオキサールはほとんど化学的消化が行われて、体内からは消えてしまうので「体中の病気を治す!」というのは間違いです。

胃から小腸までの効果は微妙なところで、胃のピロリ菌を殺す作用はシャーレではあるものの体内では現在科学的に確認されておらず、小腸に関しては効果がないという結果と善玉菌を増やす効果があるという結果が混在しています。

とはいえ、抗菌作用があることは確実なので効果的に利用できるシーンがあることは間違いなく、今後も重要な植物として注目されていくことになるでしょう。

引用文献

Flora of North America Editorial Committee. 2021. Flora of North America: Volume 10, Magnoliophyta: Proteaceae to Elaeagnaceae. Oxford University Press, Oxford. 488pp. ISBN: 9780197576076

加藤陽二. 2019. マヌカハニーの特徴とその機能性. 日本家政学会誌 70(2): 97-101. https://doi.org/10.11428/jhej.70.97

RBG Kew. 2025. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

外岡慎・船越桂市. 1991. 枝物の需要動向に関する研究. 静岡県農業試験場研究報告 36: 11-16. https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010491099

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