カスミソウと宿根カスミソウ(シュッコンカスミソウ)の違いは?似た種類の見分け方を解説!ほとんどの人が区別がついていない!?

植物
Gypsophila elegans

カスミソウと宿根カスミソウ(シュッコンカスミソウ)はいずれもナデシコ科カスミソウ属に含まれ、可憐で小さな花(主に白色またはピンク色)を多数つけ、花壇で植えられていることがある他、切り花やフラワーアレンジメントで盛んに利用されているのを見かけます。しかし、園芸サイトを見てもグーグルで調べても間違った情報が散見されます。カスミソウは一年草で、シュッコンカスミソウは多年草であるという違いの他にも葉のつき方に違いが見られます。切り花として販売されているものの大部分はシュッコンカスミソウだと思われます。本記事ではカスミソウ属の分類・形態について解説していきます。

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カスミソウと宿根カスミソウ(シュッコンカスミソウ)とは?

カスミソウ(霞草) Gypsophila elegans は別名ハナイトナデシコ。ユーラシア大陸(トルコ・ウクライナ・コーカサス・イラン)に分布し、世界中で導入され、日本では観賞用に園芸で栽培されます(RBG Kew, 2025)。

シュッコンカスミソウ(宿根霞草) Gypsophila paniculata は園芸では宿根カスミソウ、別名コゴメナデシコ。ユーラシア大陸(東ヨーロッパ~モンゴル)原産で、世界中で導入され、日本では観賞用に園芸で栽培される他、切り花として利用されます(RBG Kew, 2025;市村,2016)。熊本県・福島県・和歌山県・北海道で主に生産されています。

いずれもナデシコ科カスミソウ属に含まれ、可憐で小さな花(主に白色またはピンク色)を多数つけ、花壇で植えられていることがある他、切り花やフラワーアレンジメントで盛んに利用されているのを見かけます。和風な名前のためまるで日本原産のようですが、全く異なる外来種です。

形態的には花弁は明らかな爪部と舷部に分かれる点、萼が別れず不完全に合生して萼筒を作っている点、萼は鐘形である点などから特徴づけられます(神奈川県植物誌調査会,2018)。

見た目の可愛らしさに加えて、花言葉が「幸福」、「感謝」、「親切」、「清らかな心」であるとされ、葬式・仏壇・お墓に生けられているのもよく見かけ、私も祖父母が亡くなった後の法事のときよく見かけたのが印象的です。

しかし、カスミソウでGoogle検索するとほとんどシュッコンカスミソウが表示され、Googleの画像サジェストも間違っています。園芸サイトでも間違って紹介されています。

Google LLC も含めてこれら2種のことをほとんどの日本人が誤解して混同していると言えるでしょう。

カスミソウと宿根カスミソウ(シュッコンカスミソウ)の違いは?

多くのサイトでカスミソウとシュッコンカスミソウが品種レベルの違いであるかのように紹介されますが、生物学的には全くの別種です(Flora of North America Editorial Committee, 2005)。

カスミソウとシュッコンカスミソウの違いとして第一に挙げられるのは、名前の通り、カスミソウでは冬を越せない一年草であるのに対して、シュッコンカスミソウは冬でも茎や根に栄養分を蓄えて生き残り次の年にも葉を出す宿根草という多年草であるという点です。

ただ、生態的な違いである面が強くこれだけでは確実に外見では区別できないと感じるかもしれません。

しかし、葉のつき方に決定的な違いがあります。

2種はどちらも2枚の葉が茎で向かい合うように生えます(つまり対生します)が、カスミソウでは葉の基部が生えている茎を抱き合うことで葉同士が密着しているのに対して、シュッコンカスミソウでは葉の基部が生えている茎を抱き合わないことで葉同士が離れているという違いがあります。

そのため葉の基部が、カスミソウでは太く、シュッコンカスミソウでは細くなっています。

このほか、原種に関してはカスミソウでは花弁が6~15mmと大型であるのに対して、シュッコンカスミソウでは花弁が1~4mmとかなり小型です。しかし、シュッコンカスミソウは品種改良され大型のものもあります。

切り花では明確に区別は難しいですが、カスミソウでは開花調節技術が確立されておらず、長期出荷が可能になっていないのに対して、シュッコンカスミソウは開花調節技術が確立されており、周年供給が可能であることから、多くの販売されている切り花の「カスミソウ」はシュッコンカスミソウと考えて良いかもしれません。この園芸品種の多くは八重花になっています。

なお、花弁が赤いカスミソウはアカバナカスミソウ Gypsophila elegans var. carminea と呼ばれます。ピンク色のカスミソウは Gypsophila elegans ‘Rosea’ で、ウスベニカスミソウと仮称しておきます。

カスミソウの花
ウスベニカスミソウ(ロゼア)の葉:対生する葉が抱き合っている。
ウスベニカスミソウ(ロゼア)の花
シュッコンカスミソウの葉:対生する葉は抱き合わない。|『Protecting California’s environment and economy from invasive plants』より引用
シュッコンカスミソウの花:原種はかなり小型。|『Protecting California’s environment and economy from invasive plants』より引用
シュッコンカスミソウ(園芸品種)の花:(A) Gypsophila paniculata ‘My Pink’; (B) Gypsophila paniculata ‘Million Stars’; (C) Gypsophila paniculata ‘Cloudstar 8’; and (D) Gypsophila paniculata ‘Cloudstar 5’。|Li et al. (2019): Fig. 1 より引用

引用文献

Flora of North America Editorial Committee. 2005. Flora of North America: North of Mexico; Volume 5: Magnoliophyta: Caryophyllidae, part 2. Oxford University Press, Oxford. 690pp. ISBN: 9780195222111

市村一雄. 2016. 切り花の鮮度・品質保持基礎と実践 日持ちが消費のカギになる. 誠文堂新光社, 東京. 192pp. ISBN: 9784416516447

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

Li, F., Wang, G., Yu, R., Wu, M., Shan, Q., Wu, L., … & Yang, C. 2019. Effects of seasonal variation and gibberellic acid treatment on the growth and development of Gypsophila paniculata. HortScience 54(8): 1370-1374. https://doi.org/10.21273/HORTSCI14156-19

RBG Kew. 2025. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

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