ヒルガオ・コヒルガオ・ハマヒルガオ・セイヨウヒルガオの違いは?似た種類の見分け方を解説

植物
Calystegia hederacea

ヒルガオ・コヒルガオ・ハマヒルガオ・セイヨウヒルガオはいずれもヒルガオ科に含まれるつる性多年草で、ヒルガオ科の中では比較的小型で、容易に見つけることができます。特にヒルガオとコヒルガオは都市部でも街路樹やフェンスに巻き付き、無数に開花している様子も見られ、とても身近な植物です。しかしこれらの花は似ており区別がつかない人がいるかもしれません。これらは苞葉と葉を中心に観察することで区別することができます。ただし、ヒルガオとコヒルガオには雑種もいるためこの点には注意が必要です。本記事ではヒルガオ属とセイヨウヒルガオ属の分類・形態について解説していきます。

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ヒルガオ・コヒルガオ・ハマヒルガオ・セイヨウヒルガオとは?

ヒルガオ(昼顔) Calystegia pubescens は日本の北海道・本州・四国・九州;朝鮮・中国に分布し、日あたりの良い草地や路傍に生えるつる性多年草です(神奈川県植物誌調査会,2018)。

コヒルガオ(小昼顔) Calystegia hederacea は日本の本州・四国・九州;東南アジアに分布し、日あたりの良い草地や路傍に生えるつる性多年草です。

ハマヒルガオ(浜昼顔) Calystegia soldanella は日本の北海道・本州・四国・九州;アジア・ヨーロッパ・アメリカ大陸西岸・オーストラリア・太平洋諸島に広く分布し、海岸の砂地に生えるつる性多年草です。

セイヨウヒルガオ(西洋昼顔) Convolvulus arvensis はユーラシア大陸(ヨーロッパ・アジア)と北アフリカの広域に分布し(RBG Kew, 2024)、日本では第二次世界大戦後、各地に帰化し、路傍に生えるつる性多年草です。

いずれもヒルガオ科に含まれるつる性多年草で、ヒルガオ科の中では比較的小型で、容易に見つけることができます。特にヒルガオとコヒルガオは都市部でも街路樹やフェンスに巻き付き、無数に開花している様子も見られ、とても身近な植物です。この2種では根茎によって栄養繁殖を盛んに行うため増殖力が高いです(伏見,2011)。

「昼顔」という名前の通り、「朝顔」に対して日中に開花していることが大きな共通点でしょう。

形態的にはヒルガオ科の多くの植物と同じように漏斗型の合弁花を持っている他、細かいですが花柱は1個で、柱頭は2又に分岐する点も共通しています。また花の下部にはほうまたは苞葉と呼ばれるものが存在する点も重要です。

しかし、これら4種の区別方法が分からない人がいるかもしれません。

ヒルガオ・コヒルガオ・ハマヒルガオ・セイヨウヒルガオの違いは?

これら4種はまず2グループに大別することができます(神奈川県植物誌調査会,2018)。

ヒルガオ・コヒルガオ・ハマヒルガオはヒルガオ属に含まれるのに対して、セイヨウヒルガオはセイヨウヒルガオ属に含まれています。

そのため、形態に大きな違いがあるということになります。

具体的には、ヒルガオ・コヒルガオ・ハマヒルガオでは苞が大型で、1つの花の基部に萼を包むように2枚あるのに対して、セイヨウヒルガオでは苞が小型で、1つの花の萼のずっと下に2枚つくという違いがあります。

また、ヒルガオ・コヒルガオ・ハマヒルガオでは普通は花冠の色が少なくとも部分的にピンク色になるに対して、セイヨウヒルガオでは普通は白色という違いがあります。

ただし、それぞれの品種として花が白色のシロバナヒルガオ f. albiflora、シロバナコヒルガオ f. sakuraii、シロバナハマヒルガオ f. albiflora というものが稀に存在することには注意しましょう。ピンク色がかるセイヨウヒルガオも存在します。

これらからセイヨウヒルガオは区別できるでしょう。

残り3種に関しては、ヒルガオとコヒルガオでは葉が薄く矛形または三角形であるのに対して、ハマヒルガオでは葉が厚く腎心形であるという違いがあります。

これはハマヒルガオが海岸で乾燥や高塩分濃度に耐えるために葉を厚くしているからです(Hesp, 1991; 萩野ら,2008;伏見,2011)。

ヒルガオとコヒルガオはかなりよく似ていますが、ヒルガオは葉の側裂片はあまり発達せず、花は径5~8cmで、花柄の上部に翼はないのに対して、コヒルガオでは葉は三角形で通常は鋭頭で側裂片は横に開出しときに2裂し、花は径3~5cmで、花柄の上部に縮曲する小さな翼があるという違いがあります。

「葉の側裂片」というのは分かりにくいかもしれませんが、要するにヒルガオでは3箇所しか尖っている部分が無いのに対して、コヒルガオでは5箇所尖っている部分があるということです。ただしコヒルガオは葉ごとに差があり3箇所しか尖らない場合もあるので、複数枚確認するのが良いでしょう。

苞葉はコヒルガオの方がヒルガオより尖っているのでこの点も参考になります。

ヒルガオの葉:側裂片なし
ヒルガオの花:大型、花冠の孔は蕾の時の虫食いの結果であり普通はない
ヒルガオの苞葉:先はあまり尖らず鈍頭|By KENPEI – KENPEI’s photo, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=318587
コヒルガオの細い葉上面:側裂片あり
コヒルガオの太い葉下面:側裂片あり
コヒルガオの花
シロバナコヒルガオの太い葉上面
シロバナコヒルガオの花:花冠が白い品種
シロバナコヒルガオの苞葉:先が尖る
ハマヒルガオの葉と花:葉は厚く腎臓形
セイヨウヒルガオの葉|By Dmitry Makeev – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107717973
セイヨウヒルガオの花:ヒルガオ属に比べると小型、葉はヨモギでセイヨウヒルガオの葉ではないので注意

他に似た種類はいる?

ヒルガオ属には他にヒロハヒルガオ Calystegia sepium という種類が知られており、こちらはほとんどヒルガオと同じ特徴を持っていますが、葉は三角状ほこ形の鋭頭で、花冠筒部は苞の上でやや膨らむという違いがあります(ヒルガオでは葉は三角状あるいは狭三角ほこ形で鈍頭で、花冠筒部は苞の上で膨らまない)。この種類は極めてヒルガオと似ているので混同されている可能性が高いです。

また、ヒルガオとコヒルガオの雑種であるアイノコヒルガオ Calystegia hederacea x C. pubescens が存在することにも注意です。この雑種は2種の中間的な特徴を示し、区別は難しいですが、花が小型なのに側裂片がない場合などはこの雑種を疑ったほうが良いでしょう。

セイヨウヒルガオ属にはコンボルブルス・クネオルム Convolvulus cneorum という種類が園芸で栽培されることがあります。こちらは葉が細く、ヒルガオ科では珍しい葉の形をしているため、混同することは少ないでしょう。

他にもヒルガオ科には「ヒルガオ」とつく種類は多数ありますが、数が多く、分類的には隔たりが大きいのでここでは省略します。

コンボルブルス・クネオルム(クネオルムセイヨウヒルガオ)の葉と花

引用文献

萩野香織・山田智・山中典和・魚住保幸・藤山英保. 2008. 砂丘自生植物ハマヒルガオの成長に及ぼす塩の影響. 日本土壌肥料学会講演要旨集 54: 105. ISSN: 0288-5840, https://doi.org/10.20710/dohikouen.54.0_105_1

Hesp, P. A. 1991. Ecological processes and plant adaptations on coastal dunes. Journal of Arid Environments 21(2): 165-191. ISSN: 0140-1963, https://doi.org/10.1016/S0140-1963(18)30681-5

伏見昭秀. 2011. ヒルガオ(Calystegia類). 草と緑 3: 38-44. ISSN: 2185-8977, https://doi.org/10.24463/iuws.3.0_38

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

RBG Kew. 2024. The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants. Plants of the World Online. http://www.ipni.org and https://powo.science.kew.org/

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