スズメウリとオキナワスズメウリの違いは?カラスウリ類との違いは?似た種類の見分け方を解説!受粉方法は不明だった?かわいい果実は鳥が好き?人は食べられる?

植物
Zehneria japonica (Thunberg, 1989)

スズメウリとオキナワスズメウリはいずれもウリ科でつる性1年草であることに加え、形態的にも花は小型で、果実表面は無毛で平滑という点も共通しています。更に『Google検索』のサジェストが間違っていることもあり、見たことがないと違いが分からないかもしれません。同じく日本に自生するウリ科の仲間であるカラスウリ属とは花・果実・葉を観察すれば区別できます。スズメウリとオキナワスズメウリは属が異なり、分布が異なることに加えて、形態の違いとしては果実の模様と色が代表的ですが、巻きひげ・葉・花といった部分にもその違いがよく現れています。花は白色の星形で毛深く、その形態から昆虫を惹き寄せるものと思われますが、その具体的な昆虫は全く調査されていません。果実はどちらも球形でスズメウリは白く、オキナワスズメウリは赤くなります。色が変わる点からも動物、特に鳥によって食べられ種子散布されると考えられていますが、やはりこちらも具体的な鳥の種類の調査はなされていません。スズメウリのみ食べられます。本記事ではスズメウリとオキナワスズメウリの分類・形態・送粉生態・種子散布について解説していきます。

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スズメウリ・オキナワスズメウリとは?

スズメウリ(雀瓜) Zehneria japonica は日本の本州、四国、九州;朝鮮(済州島)に分布し、原野や水辺などに生えるつる性1年草です(林ら,2013;神奈川県植物誌調査会,2018)。和名は果実がカラスウリより小さいこと、または果実をスズメの卵に見立てたことに由来するとされます。

オキナワスズメウリ(沖縄雀瓜) Diplocyclos palmatus は日本のトカラ列島の口之島以南の琉球列島;台湾、南中国、インド、マレーシア、オーストラリア、熱帯アフリカに分布し、低地の野外に生え石灰岩地帯に多いつる性1年草です(初島,1975)。日本本土には普通分布しませんが、北海道、本州、四国、九州でも緑陰として好まれたり、縦縞模様のある赤熟する果実が好まれ、近年琉球オモチャウリ(琉球おもちゃウリ)という名で流通し、個人の宅地などで園芸栽培されていることがあります(神奈川県植物誌調査会,2018)。

いずれもウリ科でつる性1年草であることに加え、形態的にも花は小型、雄しべは3個、果実表面は無毛で平滑という点も共通しています。そのため名前のみでは違いが分からないかもしれません。特にインターネットでは『Google検索』のサジェストが間違っているせいで(2023年6月1日現在)、勘違いする可能性があります。

分布的には普通はオキナワスズメウリは琉球諸島で自生しますが、北海道~九州でも栽培されることがあるので、本土ではどちらも見かける可能性があります。

スズメウリとカラスウリ類との違いは?

同じく自生するウリ科の植物にはカラスウリ、キカラスウリを代表としたカラスウリ属の仲間がいます。これらとはどのような違いがあるのでしょうか?

共通の大きな違いとしては、スズメウリとオキナワスズメウリでは花と果実は小型で装飾はなく、巻きひげは単一か2分岐であるのに対して、カラスウリ属では花は大型で花冠の縁は糸状に細裂し、果実もやや大型で、巻きひげは1~5分岐するという点が挙げられます。

カラスウリ属の花冠の縁の糸状の構造は後述のようにスズメガという蛾を呼ぶ特殊なもので、これがあるのはカラスウリ属だけです。

また、スズメウリの和名の由来は果実がカラスウリより小さいからであるという説からも、スズメウリとカラスウリの果実の大小関係は明らかです。

この他、葉の形はカラスウリ属では葉は3~5に浅裂~深裂し鋸歯がありますが、スズメウリでは切れ込みがなく、オキナワスズメウリでは鋸歯がありません。

カラスウリ属の違いを知りたい人は別記事を御覧ください。

キカラスウリの葉
キカラスウリの花
カラスウリの果実

スズメウリとオキナワスズメウリの違いは?

スズメウリとオキナワスズメウリの違いとしてはまずそもそもスズメウリはスズメウリ属 Zehneria に含まれるのに対して、オキナワスズメウリはオキナワスズメウリ属 Diplocyclos に含まれています。そのため様々な形態に違いがあります(神奈川県植物誌調査会,2018)。

具体的にはスズメウリでは巻きひげは単一か稀に2分岐、葉は3角形状の卵心形で、明瞭な鋸歯を持つのに対して、オキナワスズメウリでは巻きひげは2分岐、葉は5~7中裂し、全縁または低く分かりにくい鋸歯を持つという違いがあります。オキナワスズメウリの葉の切れ込みは浅裂~深裂まで変異があります。

花に関しては、スズメウリとオキナワスズメウリどちらも花冠が毛深いですが、オキナワスズメウリの方がより長い毛を持つという違いがあります。

果実に関しては、スズメウリでは模様はなく、熟すと灰白色になるのに対して、オキナワスズメウリでは白の縦線があり、熟すと赤くなるという違いがあります。

以上で確実に判別できます。なお、クロミノオキナワスズメウリ Zehneria liukiuensis は果実が黒い全くの別種で、少しややこしいですがスズメウリ属に含まれます。

スズメウリの葉上面:鋸歯あり
スズメウリの葉下面
スズメウリの花|By Dalgial – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12347556
スズメウリの果実
オキナワスズメウリの浅裂葉|By Keisotyo – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=35230027
オキナワスズメウリの深裂葉|『charm楽天市場店』より引用・購入可能
オキナワスズメウリの花|By Dinesh Valke from Thane, India – Shivalingi (Sanskrit: शिवलिङ्गी), CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=51496680
オキナワスズメウリの未熟果|『園芸ネットプラス楽天市場店』より引用・購入可能
オキナワスズメウリの果実|By 海獺 – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=110747448

花の構造は?

スズメウリとオキナワスズメウリは多くのウリ科と同様に「雌雄同株(雌雄異花同株、monoecy)」です。雌雄同株とは単性花(雄しべか雌しべどちらかしか付けない花)をつける植物のうち、雄花と雌花が同一個体上につける植物のことです。

スズメウリは花期が8〜9月。雌花、雄花ともに葉腋に単生しますが、枝先では時に雄花が総状につくこともあります。花は直径約6~7mmで深く5裂し、白色の星形で、花冠には透明で微小な突起毛が密生します。雌花は下部の子房が目立ちます。

オキナワスズメウリは花期が7~8月。雄花と雌花は同一の葉腋から複数が束のように生じます。雌雄とも花は白で小型、径は1cmほど、萼も花冠も5裂し、裂片は広鐘形、縁はなめらかです。雄花の花糸は短いです。雌花には仮雄しべが3個あり、柱頭は3個でそれぞれ2裂します。

受粉方法は?

スズメウリとオキナワスズメウリは明らかに昆虫に目立つ構造で虫媒花だと考えられますが、その具体的な訪花昆虫の記録は属レベルでありません(Dwivedi et al., 2018)。そもそも野生のウリ科の受粉方法の研究自体が不足しています(de Wilde & Duyfjes, 2010)。カラスウリは夜に咲き、花冠の縁が分裂した糸状の構造でスズメガにアピールし受粉していることはよく知られていますが(田中,2001)、スズメウリやオキナワスズメウリにはそのような構造はなく同じ生態ではないでしょう。今後スズメウリとオキナワスズメウリの花を見かけたときは注意深く観察すると新たな発見があるかもしれませんよ。

果実の構造は?

スズメウリとオキナワスズメウリは多くのウリ科と同様に液果で、ウリ科の液果は特に「ウリ状果(pepo)」と呼ばれます。3心皮からなり、外果皮は花床筒と癒合して硬化し、中果皮・内果皮は多肉質で内部に海綿状の広い胎座が発達し、多数の種子を持っています(清水,2001)。スイカやキュウリを想像するのが一番分かりやすいでしょう。しかし、これらの植物ほど可食部がしっかり発達しているわけではありません。

スズメウリの果実は直径1〜2cmの球形または卵形で、熟すと灰白色になります。

オキナワスズメウリの果実は果実は球形で直径2cm、白の縦線があり、熟すと赤くなります。

種子散布方法は?毒性は?

スズメウリとオキナワスズメウリの果実もまた明らかに目立ち、また多肉質が存在することから、動物被食散布であることは間違いありません。その動物の中でも鳥散布であると考えられています(Dwivedi et al., 2018)。

実際に最近の研究で鳥の糞の中からスズメウリの種子が確認されています(高槻,2023)。

具体的な鳥の種類は不明ですが、カラスウリとともにスズメウリの果実はとくに大きく、短径がヒヨドリの嘴幅(15.4mm)に近いから、ヒヨドリが啄む可能性があると考察されています。

オキナワスズメウリの果実は一見美味しそうにも見えますが、少なくともヒトに対しては毒があるとされています(堀田,2002)。中国名は「毒瓜」となっており、果実に加え、根には有毒成分があるとされています。しかしその具体的な成分に関する確実な研究は発見できませんでした。『中国語版Wikipedia』ではウリ科に広く含まれるククルビタシンという苦味成分が原因で、多量に摂取すると腹痛や嘔吐、下痢になることがあるとしています。これが本当ならば鳥のみによって種子散布されることを裏付ける事実でしょう。一方で『東京でとって食べる生活』というブログで実際に食べた報告がありますが、未熟果はまずいものの、熟果は「ちょっと甘い!?苦味がマイルド」とコメントしています。ここでは実際に食べることはおすすめできませんが、興味深いコメントだと思います。

なお、スズメウリの果実の毒性は一般的に知られておらず、未熟果をサラダにする書籍も確認できます(木佐森,2010)。また熟果については『野食ハンマープライス』というブログで実際に食べた報告がありますが、「強くはないが、カキとスイカの中間のようなさわやかな甘みがある。」とコメントしています。

これらを総合すると、スズメウリについては哺乳類が全く食べられないという訳ではないのかもしれません。また、具体的にどのような鳥によって食べられているのかというデータは今のところ全くありません。こちらもやはり研究が不足しています。スズメウリの果実とオキナワスズメウリの果実の進化的な違いが分かれば興味深いでしょう。

引用文献

de Wilde, W. J. J. O., & Duyfjes, B. 2010. Cucurbitaceae. Flora Malesiana-Series 1, Spermatophyta 19(1): 1-333. ISSN: 0374-7778, https://repository.naturalis.nl/pub/579350

Dwivedi, M. D., Barfield, S., Pandey, A. K., & Schaefer, H. 2018. Phylogeny of Zehneria (Cucurbitaceae) with special focus on Asia. Taxon 67(1): 55-65. https://doi.org/10.12705/671.4

初島住彦. 1975. 琉球植物誌. 沖縄生物教育研究会, 那覇. 1002pp.

林弥栄・門田裕一・平野隆久. 2013. 山溪ハンディ図鑑 1 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社, 東京. 664pp. ISBN: 9784635070195

堀田満. 2002. 世界有用植物事典. 平凡社, 東京. 1499pp. ISBN: 9784582910599

神奈川県植物誌調査会. 2018. 神奈川県植物誌2018 電子版. 神奈川県植物誌調査会, 小田原. 1803pp. ISBN: 9784991053726

木佐森千砂子. 2010. 野草と野菜・果物まるごと活用術 木佐森流節約エコライフ. 法研, 東京. 127pp. ISBN: 9784879547927

清水建美. 2001. 図説植物用語事典. 八坂書房, 東京. xii, 323pp. ISBN: 9784896944792

高槻成紀. 2023. 都市孤立樹木の結実パターンと鳥類による種子散布:舗装を利用した種子回収の試み. 保全生態学研究 2130. https://doi.org/10.18960/hozen.2130

田中肇. 2001. 花と昆虫、不思議なだましあい発見記. 講談社, 東京. 262pp. ISBN: 9784062691437

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