セイヨウカボチャ・ニホンカボチャ・ペポカボチャはいずれもウリ科カボチャ属に含まれるつる性一年草で、アメリカ大陸原産ですが日本でも非常に好まれ、普段の食卓とハロウィンを盛り上げる重要な役割を担っています。しかし、3種は非常に混同され、その違いを理解して記述しているサイトはありません。分類上は葉・花・果柄を見ることで区別できます。用途の違いについてその日本だけに限って簡潔にまとめてみると、セイヨウカボチャは現在最もメジャーで果実は甘く粘りがあり、煮物やサラダに使用されています。ニホンカボチャは太平洋戦争以前まではメジャーで果実は淡白な味が特徴で、煮物に使用されていましたがセイヨウカボチャに入れ替わりました。ただしお菓子のピューレは依然ニホンカボチャです。ペポカボチャはキンシウリのような品種があるものの非常にマイナーでしたが、戦後はズッキーニやハロウィンのジャック・オ・ランタンに使うコネチカットフィールドパンプキンで一般化しました。カボチャは全て日本でも西洋のものでもなくアメリカ大陸にあったものです。驚くべきことに西洋ではニホンカボチャがメジャーです。果実は本来絶滅したマストドンのような大型哺乳類が食べ種子散布してたと考えられています。本記事ではカボチャ属の分類・形態・歴史・文化について解説していきます。
セイヨウカボチャ・ニホンカボチャ・ペポカボチャとは?
セイヨウカボチャ(日本南瓜) Cucurbita maxima は南アメリカ(アルゼンチン・ボリビア)原産で、世界中で果実を食用にするために栽培されるつる性一年草です(RBG Kew, 2026)。
ニホンカボチャ(日本南瓜) Cucurbita moschata は別名トウヨウカボチャ(東洋南瓜)、ボウブラ。中央アメリカ(ベリーズ・グアテマラ・メキシコ)原産で、世界中で果実を食用するために栽培されるつる性一年草です。膨大な品種のうち、代表的な日本の変種として果実が細長く首の部分が鶴の首に似ているツルクビカボチャ(鶴首南瓜) var. luffiformis と、果実は縦に深い溝があり横断面が菊の花に見えるキクザカボチャ(菊座南瓜) var. meloniformis、ひょうたん形のサイキョウカボチャ(トウナス(唐茄子)・シシガタニカボチャ(鹿ヶ谷かぼちゃ)) var. meloniformis ‘Toonas’ などが知られています。
ペポカボチャ(ペポ南瓜) Cucurbita pepo は中央アメリカ(メキシコ)原産で、世界中で果実を食用や観賞用にするために栽培されるつる性一年草です。膨大な品種があり、亜種として食用のズッキーニ subsp. pepo ‘Melopepo’ 、園芸品種や亜種としてジャック・オ・ランタンに使用される果実が偏球形のコネチカットフィールドパンプキン subsp. pepo ‘Connecticut field’、観賞用に果実が変な形をしたカザリカボチャ(飾り南瓜) subsp. texana(var. ovifera はシノニム)が有名です(Gong et al., 2012)。
いずれもウリ科カボチャ属に含まれるつる性一年草です。匍匐性で、最大の特徴である大きく肉質な果実に加え、黄色く鐘形の花冠は分類上も重要な特徴です。
しかし、「ニホンカボチャ」や「セイヨウカボチャ」という原産地という意味では間違った命名のせいで、まるでニホンカボチャが在来の種類でセイヨウカボチャが西洋からやってきたのだという誤解を生む元となっています。
これは日本に両種が伝わるまでの歴史的経緯を踏まえたものですが、実際は上述のようにアメリカ大陸原産であり、日本のものでも西洋のものでも一切ありません。
しかもセイヨウカボチャ・ニホンカボチャ・ペポカボチャは全くの別種であるにもかかわらず、まるで品種のち外のように扱われ、具体的な形態的な違いを指摘するサイトは少なく、更に誤解を加速させています。
ペポカボチャに至っては影が薄く知名度がありません。しかし、食用のズッキーニはペポカボチャの園芸品種ですし、ハロウィンのジャック・オー・ランタンはペポカボチャの園芸品種であるコネチカットフィールドパンプキンが使用されます。
3種は園芸品種も多いため、「〇〇カボチャ」という品種が説明もなく使用され、混乱の元となっています。
セイヨウカボチャ・ニホンカボチャ・ペポカボチャの違いは?
まずは3種の生物学的・形態学的な違いから整理していきます。様々な品種が乱立していますが、生物学的には最も一般的なものは3種で、3種さえ理解しておけば問題ありません。
大前提として上述のように自然分布が異なっており、セイヨウカボチャは南アメリカ(アルゼンチン・ボリビア)原産、ニホンカボチャは中央アメリカ(ベリーズ・グアテマラ・メキシコ)原産、ペポカボチャは中央アメリカ(メキシコ)原産です。
3種は共通の祖先から進化したことは間違いないですが、特にセイヨウカボチャは南アメリカに分布することからも、3種が自然下で交雑することなく完全に別れてしまっていることが分かると思います。
具体的な形態の違いを考えていきます(Wu et al., 2011)。
ニホンカボチャでは花の萼片が線形で先端は葉状で、果実の果柄は先端で著しく拡大するのに対して、セイヨウカボチャとペポカボチャでは花の萼片が線状~線状披針形で先端は細く、果実の果柄は先端で大きく肥大しないという違いがあります。
「花の萼片が線形で先端は葉状」というのは少し分かりにくいですが、花の後ろについている萼片が少しだけ横に伸び表面積を増やし普通の葉と少し似た形になるということです。セイヨウカボチャとペポカボチャではシンプルな細い萼片ものとなっています。
「果柄は先端で著しく拡大する」というのも分かりにくい表現ですが、要するにニホンカボチャでは果実のヘタの部分に落ち窪んで円形の白っぽくなった果柄の先端がありますが、セイヨウカボチャとペポカボチャではこれがなく平らでシンプルな見た目です。ニホンカボチャが「ゴツゴツ」して見る理由の一つです。ただし、ツルクビカボチャのように形が変わった結果、この特徴が目立たない品種もあります。
セイヨウカボチャとペポカボチャに関しては、セイヨウカボチャでは葉身が腎形~球形でほぼ全縁で、萼片は披針形、果実の小柄は角溝がなく先端が厚くならないのに対して、ペポカボチャでは葉身が三角形~卵形三角形で不規則に5~7裂し、萼片は線状披針形、果柄は角溝があり、先端がわずかに厚くなるという違いがあります。
これに関しては葉の形を見れば十分だと思います。セイヨウカボチャは葉が別れない、ペポカボチャでは葉が別れるという程度に理解でいいでしょう。
果実の形態についてはあまりにも多様化しているため、3種を分けるうえでは参考にはなりません。しかし、それぞれのの品種の形を覚えていれば区別できますし、今ならGoogle画像検索で比較的容易に品種名も特定できるでしょう。
このほか、栽培されるカボチャには、クロダネカボチャ Cucurbita ficifolia や Cucurbita argyrosperma がありますが日本ではマイナーなので省略します。












パンプキンとスクワッシュの違いは?
英語ではカボチャをpumkin(パンプキン)やsquash(スクワッシュ)と分けて呼ぶことがあります。
しかし、これは生物学的に3種を区別するものではなく、パンプキンは果皮がオレンジ色のカボチャ属の品種のカボチャの総称で、スクワッシュは果皮が緑色のカボチャ属の品種のカボチャの総称です。
したがって、日本で最もメジャーなセイヨウカボチャの品種はスクワッシュと呼ばれます。ややこしすぎますね。
セイヨウカボチャ・ニホンカボチャ・ペポカボチャの歴史と利用方法の違いは?
セイヨウカボチャ・ニホンカボチャ・ペポカボチャの用途は国によってかなり多様化しており異なっています。そのため、一言でまとめるのは難しいです。
日本だけに限って簡潔にまとめてみると、セイヨウカボチャは現在最もメジャーで果実は甘く粘りがあり、煮物やお菓子が作られてます。ニホンカボチャは太平洋戦争以前まではメジャーで果実は淡白な味が特徴で、煮物に使用されていましたがセイヨウカボチャに入れ替わりました。ペポカボチャはキンシウリのような品種があるものの非常にマイナーでしたが、戦後はズッキーニやジャック・オ・ランタンのコネチカットフィールドパンプキンで一般化しました。
日本でメジャーなのはセイヨウカボチャで、ヨーロッパでメジャーなのはニホンカボチャです。
3種はそれぞれがネイティブ・アメリカンの栽培化による小進化と品種改良によって大きく形を変えてきました(Bisognin, 2002; Spengler, 2020)。トウモロコシやトマトなどと同様にネイティブ・アメリカンの尽力のおかげで現在の食卓が豊かになっているのです。
巨大な種子・果実が食用となることから珍重されていますが、最初から巨大だったわけではありません。
まず、大きな種子を求める選抜が、果実の大型化につながったと考えられます。一般的に苦味のある果実には苦味のない種子が含まれていたため、種子が最初に食用として利用されたと考えられます。その後、未熟果実は苦味のない果肉を求めて選抜され、成熟果実は苦味のないデンプン質の果肉と木質化していない皮を求めて選抜されました。
セイヨウカボチャの用途は?
セイヨウカボチャは上述のように原産地は南アメリカなので、長らくネイティブ・アメリカン以外の他の民族に利用されていませんでした。北アメリカや世界中に広がり始めたのはコロンブスの到来(1492年~)による「コロンブス交換」以降です(Nee, 1990)。16世紀にはネイティブ・アメリカンによって様々な品種が利用されていた記録があります。日本では1863 年にアメリカ合衆国から2~3種類の品種が導入され、さらに明治初年に開拓使によって多くの品種が導入され、各地に土着化していきました(藤田,2010)。
そのため「セイヨウカボチャ」とは言いますが、原産地という意味では西洋とは縁もゆかりもありません。これは日本独自の命名で、アメリカ合衆国から伝来したからです。
しかも、セイヨウカボチャは生育にかなりの高温を必要とし、北ヨーロッパ・イギリス諸島、あるいは夏が短いまたは涼しい地域ではあまり定着していません(Boswell, 1949)。そのため後述のようにヨーロッパのパンプキンパイは「ニホンカボチャ」が利用されます!この事実は大混乱の元です。
セイヨウカボチャの用途は基本的には果実の食用です。セイヨウカボチャはニホンカボチャに比べると粘着系の食感が特徴です(泉,2006)。
熱帯アメリカ・日本・アメリカ合衆国の一部の地域の他(Boswell, 1949)、アフリカ・インド・バングラデシュ・ミャンマーでも食され(Ferriol & Nuez, 2004)、日本では特に人気があり、後述のニホンカボチャと入れ替わるように利用されています。「カボチャの煮付け」・カボチャスープ・カボチャの天ぷらとしてやサラダに薄切りにして使用されます。西洋では皮肉なことに後述のようにニホンカボチャが食用としては好まれています。
栄養素が豊富に含まれており、品種に関わらず、非常に有益な食物繊維、そしてカリウム・カルシウム・リン・マグネシウム・硫黄・ケイ素・鉄・亜鉛などのミネラルを食事に補給するのに最適です(Czech et al., 2018)。
更に日本国内の品種での記録ですが、可食部100 g当たりのβ-カロテン当量を比較すると、ペポカボチャのキンシウリで49 μg、ニホンカボチャで730 μgなのに対し、セイヨウカボチャは4000 μgでおよそ5.6倍も含まれています(藤田,2010)。
また、ビタミンC含量は、ペポカボチャ(キンシウリ)は11 μg、ニホンカボチャでは16 μgであるのに大して、セイヨウカボチャは43 μgとおよそ3倍で、大玉トマトのビタミンC含量を超えます。
カボチャの種も食用に利用されており、炒った状態でタンパク質・脂質・ビタミンB1などが豊富に含まれています。
ニホンカボチャの用途は?
ニホンカボチャに関しても中央アメリカ原産のため長らくネイティブ・アメリカンに利用され、重要な食用植物であり、植民地時代以前のアメリカの多くの経済においてトウモロコシや豆に次ぐ位置を占めていました(Boswell, 1949)。花・種子・果肉が食用とされていました。
ただし、セイヨウカボチャとは異なり、北アメリカにはネイティブ・アメリカンよってペポカボチャとともに早々に栽培化され、利用されています。一方で南アメリカへは到達することはありませんでした。
ヨーロッパを介して世界中に広がり始めたのはやはりコロンブスの到来(1492年~)による「コロンブス交換」以降です。
ニホンカボチャは開花期には干ばつと霜にも耐えることができ、熱帯植物であるものの、セイヨウカボチャに比べると寒さに強いことからヨーロッパで最もメジャーなカボチャとなっています。ヨーロッパのパンプキンパイはニホンカボチャを使用しています。アメリカ・メキシコ・インド・中国・ブラジルなど多くの国でも食用にされています(Men et al., 2021)。
日本にはセイヨウカボチャより先に渡来しており、1542年に、ポルトガル船が豊後に漂着し、1549年に貿易の許可を申請した大友宗麟にニホンカボチャを献じたのが始まりとされています(西,1980;藤田,2010)。
大友宗麟は戦国時代から安土桃山時代にかけての豊後国(現在の大分県)の武将・大名で、キリシタン大名として支配した九州から南蛮貿易を行い、キリスト教や西洋文化を積極的に取り入れたことで知られています。
カボチャの語源は「カンボジア」であることは有名ですが、このときポルトガル船から伝えられたものがカンボチャ国(ポスト・アンコール時代のカンボジア)で産したものであったからだと言われています(青葉,2000)。
1573年には長崎に入り、広く農家で栽培が始まり、次第に日本全国へ広まっていったとされています。ツルクビカボチャやキクザカボチャやシシガタニカボチャはここから土着の品種として生まれていきました。黒皮かぼちゃ(日向かぼちゃ)・小菊かぼちゃなどもあります。
このようにセイヨウカボチャより先に日本に入り、土着の品種が多く多様化して生まれたことから、ニホンカボチャと名付けられたようです。しかし、やはり元々日本に存在しなかった上に、現在の日本ではマイナー野菜と化していることを考えると誤解を生む命名と言えるでしょう。
第二次世界大戦の太平洋戦争中または戦後はニホンカボチャは重要な食料でした。現在はカボチャの煮物といえば甘いセイヨウカボチャの品種を用いたものをイメージしますが、当時はニホンカボチャを使用したもっとあっさりとしたものでした。
現在では伝統野菜として上述の品種が残っているものの日本ではかなりマイナーと感じるかもしれません。しかし、海外からの輸入品ですが、パンプキンピューレにはニホンカボチャが使用されているので、市販のパンプキンパイミックスの原材料・ハロウィンのときに売られるお菓子やスイーツに多用されていることを考えるとまだまだ食卓には形を変えて残り続けています。
ニホンカボチャの現在の用途は基本的には果実の食用です。ニホンカボチャはセイヨウカボチャに比べると淡白なのが特徴です。これはニホンカボチャの果肉中の炭水化物含有量は78.64%と高く、セイヨウカボチャの果肉(69.51%)の炭水化物含有量を大幅に上回っていることが関係しているのかもしれません(Men et al., 2021)。
栄養素は炭水化物・食物繊維(ペクチンなど)・ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEに加えて、ミネラル(マンガン・マグネシウム・カリウムなどのミネラルも豊富です。
日本国内では上述のように栄養がセイヨウカボチャより少ないとされ評価が低いですが(藤田,2010)、海外では詳細に含有栄養分が研究されており、注目されています(Men et al., 2021)。これは日本の品種との違いもあるのかもしれません。
ペポカボチャの用途は?
ペポカボチャもやはり中央アメリカ(メキシコ)原産のため、ネイティブ・アメリカンに利用され、 8,000~10,000年前のメキシコ南部オアハカと、約7,000年前のメキシコのタマウリパス州オカンポで既知の中では最も古い記録があります(Nee, 1990)。ニホンカボチャとともに植民地時代以前のアメリカの多くの経済においてトウモロコシや豆に次ぐ位置を占めていました(Boswell, 1949)。花・種子・果肉が食用とされていました。
北アメリカや世界中に広がり始めたのはやはりコロンブスの到来(1492年~)による「コロンブス交換」以降です。1552年にペポカボチャの品種がドイツで記載された記録があります。
食用や観賞用に膨大な品種が開発され(Gong et al., 2012)、イタリアでは特に人気が出て19世紀後半には品種の一つであるズッキーニが生まれています。他のカボチャとは異なり夏に収穫することから欧米では夏カボチャ(Summer squash)の一種とされます。ズッキーニは水分が多い未熟果や花を食用とするためこれがカボチャであるということを認識している人は少ないもしれません。フランスのラタトゥイユはズッキーニを使う代表的な料理です。
また、ハロウィンに使用されるジャック・オ・ランタンの原料はセイヨウカボチャではなくペポカボチャのコネチカットフィールドパンプキンという品種です。ペポカボチャの亜種のカザリカボチャは完全に飾り用の品種で、美味しくありません。
ハロウィンはケルト人の収穫祭であるサウィン祭にキリスト教が加わったものが起源で、悪霊が家に寄り付かなくなることを目的にジャック・オ・ランタンを作成しましたが、元々はサトウダイコンやカブが使用されていました。カボチャが用いられるようになったのはケルト系移民がアメリカ合衆国に移った頃からです。ジャックの物語は作り話です。
ペポカボチャが日本に伝来したのは日清戦争(明治27~8年、1894~1895年)後、華北の品種が導入されたのが最初ですが、あまり普及しませんでした(西,1980)。果肉がそうめんのように糸状にほぐれる品種のキンシウリ(金糸瓜、錦糸瓜)はおそらくこの時のものです。
むしろ、太平洋戦争後に西洋文化として、全く別の経路でズッキーニとコネチカットフィールドパンプキンが到来して、これがペポカボチャと認識されずに定着しています(泉,2006)。ズッキーニはイタリア料理がブームになった1970年代後半ごろ(昭和50年代初め)にアメリカから輸入されたのが始まりです(農山漁村文化協会,2004)。
用途としては、基本的には果実の食用ですが、ズッキーニでは「花ズッキーニ」として花を食べたり、コネチカットフィールドパンプキンやカザリカボチャなど一部は食べても美味しくない完全な観賞用となっているのが他の種類にない特徴です。
種子散布方法は?カボチャの果実は絶滅した動物が食べていた!?
人間にとっては栄養豊富で救世主のようなカボチャ属の果実ですが一つ大きな疑問があります(Kistler et al., 2015)。
自然界では一旦どんな動物が果実を食べ、糞を介して種子散布を行っているのでしょうか?
一見熟せば野生動物も食べられると思われるかもしれませんが、カボチャは熟しても硬い果皮に覆われており、普通の動物は食べられません。
その上、果肉には細胞毒性があり、強い苦味もあるトリテルペノイド化合物のククルビタシンを産生しているため、小型哺乳類を寄せ付けないことが分かっています。ヒトも生では食べられません。
しかも仮に食べられたとしても種子を丸ごと飲み込んでくれるほどの動物でないと糞に入らないので生息地を広げることができません。ネズミのように種子だけ食べるというケースは一番最悪です。
実は最近の研究では、カボチャは現存する動物ではなく、完新世以前にアメリカ大陸に生存していた大型哺乳類(メガファウナ)が食べて種子散布を散布していたと考えられています。
実際にマストドン(原始的なゾウ類)の糞堆積物中に無傷のカボチャ属の種子が見つかっています。確かにマストドンが踏みつければ果実を上手く食べられそうです。
このような大型哺乳類は全て完新世以降にネイティブ・アメリカンによって絶滅させられましたが、次はネイティブ・アメリカンが栽培することで種子散布者となっています(Spengler, 2020)。
このような現在の環境と適応がズレた現象は「進化的な時代錯誤(ecological anachronism)」と呼ばれ、アボカド・カカオ・アメリカハリグワ・アメリカサイカチ・フクベノキでも同様であると考えられています。
引用文献
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